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緊急避妊薬について
緊急避妊薬について、また取り巻く環境が変化し始めていますので、ここで議論を整理したいと思います。尚、わたしは緊急避妊薬に対する知識や実際に扱ったことがないため、不適切な部分もあるかもしれませんが、その辺りはご了承ください。
緊急避妊薬を取り巻く課題とこれまでの議論
日本では、人工妊娠中絶数が年間164,621人に上る中、避妊の手段の一つである緊急避妊薬が処方薬であることや入手しづらいことについて、これまで繰り返し議論されてきた。
2017年、「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」において緊急避妊薬のスイッチ
OTC化が、「性教育の浸透」等の周辺環境に関する課題等を理由に見送られた。一方で、SNSなどを利用した海外からの輸入薬の転売や譲渡が散見され、2019年2月には、フリマアプリを使用した転売によって逮捕事例が発生するなど、違法なやりとりが横行している。
*参考:平成2 9 年度衛生行政報告例の概況
なぜ緊急避妊薬はOTC化されなかったか?
2017年、「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」において緊急避妊薬はパブリックコメントのなかでOTC化に賛成320件、反対28件と賛成多数でしたが、OTC化は見送られました。
評価検討会議でOTC 化が認められない理由として、以下の理由をあげています。
- OTC となった際は、緊急避妊薬の使用後に避妊に成功したか、失敗したかを含めて月経の状況を使用者自身で判断する必要があるが、使用者自身で判断することが困難であること。
- 本邦では、欧米と異なり、医薬品による避妊を含め性教育そのものが遅れている背景もあり、避妊薬では完全に妊娠を阻止させることはできないなどの避妊薬等に関する使用者自身のリテラシーが不十分であること。
- 薬剤師が販売する場合、女性の生殖や避妊、緊急避妊に関する専門的知識を身につけてもらう必要があること。例えば、海外の事例を参考に、BPC(Behind the pharmacy Counter)などの仕組みを創設できないかといった点については今後の検討課題である。
- 実際の処方現場では、緊急避妊薬を避妊具と同じように意識している女性が後を絶たない。OTC となった場合、インターネットでの販売も含め、安易に販売されることが懸念されるほか、悪用や濫用等の懸念があること。
- 緊急避妊薬に関する国民の認知度は、医療用医薬品であっても現時点で高いとは言えないこと。
- スイッチ OTC として承認された医薬品については、医薬品医療機器法第 4 条第 5 項第 4 号の厚生労働省令で定める期間の経過後、特段の問題がなければ、要指導医薬品から一般用医薬品へと移行される。現行制度では、劇薬や毒薬でない限り、要指導医薬品として留め置くことができないため、要指導医薬品として継続できる制度であることが必要であること。
- 本剤は高額であることから、各店舗に適切に配備できない可能性が高く、薬局によって在庫の有無がばらつく懸念があること。
評価検討会議内で薬剤師についてなんか言ってたか?
医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議内で薬剤師についても言及していますので紹介します。
東京医科歯科大学産婦人科の寺内と申します。前回の会議に出席された国際医療センターの矢野先生の御都合がつかないということで、日本産婦人科学会の一員として代理で出席させていただいております。
パブリックコメントをいろいろ拝見して、この問題に関して、様々な立場から様々な御意見があるということを非常によく理解できた次第です。特に、リプロダクティブヘルス/ライツの観点から、OTC化を望まれる声が非常に多く寄せられているということに関しては、私どもとしても真摯に受け止めていく必要があるかと考えております。
一方で、産婦人科を受診して緊急避妊薬を要望された場合、非常に不愉快な思いをされたというパブリックコメントも多数お見受けしましたので、こういった点に関しては、早急に私どもとしても改善をしていけるものはしていきたいと考えております。ただ、スイッチOTC化ということに関してですが、この薬効成分に関しては、非常に複雑な問題が背後にいろいろあると感じております。例えば、緊急避妊という手段を取る以前の、妊娠や避妊といったこと全般に関わる啓発や情報提供及び診療を、今後どのように行っていくかという問題。それから、薬剤に関しては、有効性が80%程度とされておりますので、本薬剤が意図する効果を発揮しなかった場合に、出ている意見ですが、自然妊娠に対する診断や治療を遅滞なく行うことができるか、あるいは人工妊娠中絶などの処置を遅滞なく行うことができるかどうかという、そういう重大な問題も背後にあります。
また、緊急避妊のやむなきに至った背景として、性暴力の問題等が存在する可能性もあり、そのような場合には、社会的な対処が必要となる可能性もありますので、本日の議題に上がっているような他のスイッチOTC化を検討される成分とは少し複雑性が異なっているように感じますので、今後はそういった全てのことを含めて、我が国における避妊に関する情報提供と診療ということを学会・医会はじめ、いろいろな関係者の方々とともに大きな枠組みの中で進めていくべきことではないかと感じております。今回この会議で、例えば、拙速にスイッチOTC化するということはやはり難しいのではないかと感じております。以上です。
実はびっくりするぐらいの賛否が来ているのだという実感をいたしました。ただ、読ませていただくと、結局ここの部分に関しては、女性の権利という部分をどのように国全体が考えるかということにかかってくるのではないかと思います。ですから、例え動機がどうであろうとも、この国の形としてどのような女性の立ち位置があるのかということを、しっかりと協議した上で考えていかなければならない問題ではないかというのが、個人的な感想です。
昨日も常務理事会があり、どうしようかという話をしたのですが、性急すぎるというのが医会内のコンセンサスです。ただし、一部の先生には当然、例えば性暴力に遭ったような場合の女性に関しては、逆に言うと、販売というよりは、国がただで保障してあげるぐらいの配慮があってしかるべきであるというような考え方をなさる先生もいらっしゃいます。ですから、OTCそのものという考え方であれば、現時点では性急すぎるのではないかと医会全体としての考え方はそのようでございます。
この薬に関してだけではないのかもしれませんが、要望を2つ申し上げます。私は今回のOTC化しないという結論については、ここでの多くの方の御意見に賛同したいと思います。その上でのお願いです。
今回少し気になったのは、先生方の御懸念が薬そのものの安全性であるよりも、むしろ患者の理解であるとか、薬剤師の知識や理解の不足などといった、環境や使われ方への御懸念が多かったことです。もちろん市販薬ですから、そうした要素があることは不可欠だと思います。ただ、中にはこういった薬を使える患者や薬剤師もいるだろうことを考えると、そういった方たちにとっては、日本で使えないのは不都合だということになります。
前回の検討会の議論を振り返ると、学会や医会の先生方から、「薬剤師への教育や説明能力の向上が必要」「薬剤師に生殖や避妊、緊急避妊に関する専門的な知識を身に付けてもらうことが重要」という意見がありました。こうした教育や指導を、もしかしたらこの薬に限らずなのかもしれませんが、是非実際に始めていただけないかと思います。これが要望の1つです。
なぜそういうことを申し上げるかと言いますと、OTC化が不適当とされた薬が今後どうなるかという出口については、まだ決まっておりません。一般の人が要望を出す仕組みであること考えると、再び同じ薬の要望が上がってくることが考えられます。
来月、再来月に、同じ薬について再び検討するのは適当でないと思いますし、かといって金輪際検討しないというものでもないと思います。特に今回皆さんの間で御懸念が大きかったのは、環境に関するものでした。この環境が整わないから出せない、環境を整える努力もないということですと、ずっと出ないままだということになります。環境が整えられるかどうか、恐らく薬剤師の理解については、この薬に限っては非常に大事なことだと思いますので、そういった御努力を頂ければ有り難いと思います。
もう1つは事務局への要望です。この薬については「OTCではなく、Behind the Pharmacy Counterの扱いにすべき」「一定期間後にネット販売される現状では反対せざるを得ない」というような意見がありました。今日議論される薬の中にも、同じように販売時の制約をある程度掛けることができれば、患者の利便性が上がるのかもしれないと思える薬がありました。例えば薬剤師の目の前で1錠だけ実際に飲むことを確認するような薬の出し方ができるのかできないのか、併せて御検討いただければ有り難いと思います。以上です。
日本薬剤師会の乾です。今、佐藤委員が発言された内容については、環境整備の中に薬剤師の教育、研修等の産婦人科領域について、まだまだ十分にできていないのではないかという御懸念がありました。そういうものについては、しっかりと真摯に受け止めまして、日頃から当然ながら医療従事者として、特に処方箋調剤等では、こういう産婦人科領域の薬も当然ながら調剤し、服薬指導を行っております。それゆえ、できていないという懸念を払拭するために、具体的に今後、今までも日本薬剤師会は生涯教育研修制度等でいろいろと薬剤師は研修し、各都道府県においても同じようにやっているところですが、そういうことをしっかりと環境整備の中の懸念の1つが払拭できるように、しっかりとやっていきたいと思います。
また、制度に関しては、繰り返しになって申し訳ございませんが、やはり対面で薬剤師が販売し、情報提供、服薬指導をしなければならない成分というものがあると考えますので、是非製品のリスク区分が要指導医薬品に留まるような制度を構築していただきたいと希望いたします。
研修制度についても、今までも医師の先生方にいろいろと協力いただきながら進めているところもありますし、その辺についても今後しっかりとやっていきたいと考えています。以上です。
中毒情報センターの黒木です。今回の結果に関しては、OTCとすることはできないということで賛成です。しかしながら、今後の環境整備によっては考えていく。薬剤師の知識のアップと同時に、懸念しているのは先ほど御発言があったように、緊急避妊ということについては、性的な暴力の問題等があると思うのです。
薬局でお薬を買って、その薬について説明を受けたから、それで患者はいいかというと、かなりメンタル的なフォローも必要になってくるかと思います。そういう意味では、産婦人科を受診できるような社会環境を整備して、きちんと緊急避妊すると同時に、メンタルの面もつないでいくような体制、OTCになったとしても薬剤師がメンタルに関してもアドバイスできるような体制というものが重要かと思います。
宗林です。それほど違わない意見なのですが、今回スイッチ化しないということについては特段反対するものではありませんが、この「使用できる環境整備」という言葉の中に、例えば避妊の啓発という全体の話もありましたが、それ以外に具体的に今の仕組みの中ではできない、どこか変えなくてはいけない、薬剤師のインターネットでの販売ができない、対面販売に限るという要指導薬ではないですが、そういうような枠組みに入れることができるのかとか、今、黒木委員もおっしゃいましたが、それとはまた違った意味で、有効性が100%ではないということで、その後にすぐに産婦人科にかかるというような連携をするというところも、この薬については特にそういうようなことをする仕組みというものが必要だと思います。
それに加えて、今、薬剤師会からお話がありましたが、薬剤師の全部が平準化しているわけではないので、格差を是正するのか、あるいは拠点を決めるのかというようなことで、これを取り扱える所はどこでどのようにするのかということを、薬剤師会としても、対面で1錠だけ飲んでいただくという形にするのかどうか、具体的なプログラムを作っていただきたいと思います。
そういうような使用できる環境整備を宿題として、もうこれっきり検討する場がないかもしれないと思うので、今お話をしたことは、会議が開かれなくてもきちんとやっていただいて、数年あるいは10年後ということではなくて、使える環境整備に対して向かっていくということを発言として残しますし、皆さん、女性が発言して、同じようなことをお話されていますので、そういったことであることを皆さん感じていただいて、よろしくお願いしたいと思います。
女性薬剤師会の小縣です。パブリックコメントを見せていただいて、賛成と反対と数では随分差が出ていましたが、内容的なものを考えるに当たって、反対部分の意見にももっともなところがあり、賛成の意見にも共通の部分が多かったですが、もっともだと思うものがありました。
薬剤師に対して、残念ながら、今この時点でお任せいただけるというところがないのは、薬剤師としては残念な部分ではありますが、当然これは今後しっかりと場を踏んで、この薬を受け入れられるようにしなければいけないものとは思っていますが、先ほど乾委員もお話になられましたように、薬剤師の努力と研修だけでは積めない部分があって、医薬品の規則のところで、法律的な部分を直さなければいけないと考えている部分があります。これについては薬剤師だけではどうにもならず、国でこれを変えていくにはどれぐらいの年限が掛かるのか、学校教育の問題も前回から出ていますが、これに対しては厚労省だけではなくて文科省の問題も出てきますので、省庁間を超えた問題をどのように解決していくと、果たしてどれぐらいの年月が掛かるか、その辺りをどれぐらいの時間が必要なのかというところをある程度見ていただいて、継続的な審議にしていただきたいと思っています。決して、現段階で「すぐにお願いします」というものではありません。ただ、現状では、これをスイッチにするわけにはいかないと思っておりますので、各省庁、各御担当の薬剤師でない方の部分にも、かなりの努力をしていただく必要があると考えております。
この製品については、前回もかなり議論を重ねました。パブリックコメントも非常に多く頂きましたが、その多くは、前回議論された問題と思います。
パブリックコメントの中には医学的な問題、薬剤師の問題、国民の教育の問題、法的な問題など広範な問題があることは、御理解いただいたと思います。前回の会議では時期尚早という話、あるいは「性急だ」という話も出ましたが、先ほどのリプロダクティブヘルス/ライツの話は、大きな問題として、これから議論を重ねていただくことだろうと思います。
OTC化については「否」としてよろしいかということを確認したいと思います。その条件として、御指摘のあったように、ここで否が出た場合にどう対応するかは、これまで議論していなかったと思います。ここでは、国民のニーズも取り上げることになっていますが、これだけ関心がありながら、前回認知度は33%という話も出ました。日本全体の問題としてどう考えるかという将来的な議論を、決してここで妨げることではないということは確認したいと思います。また、そういう意味でこの緊急避妊薬のアクセスに関するいろいろな医療上の問題、薬剤師の問題、国民の教育と啓発の問題も含めて、今後関係学会、医会、薬剤師会においても、問題の整理と、解決策の提言等について検討を進めていただきたいというお願いだったと思います。
このパブリックコメントから国民もまた、こうした問題点をOTCのスイッチ化という議論を通して深く考えていただく機会になれたらと思うことを付け加えまして、この会議としては前回の会議結果を変更しないで「否」ということで確認を取りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
パブコメで挙がった意見
- 効能・効果は「緊急避妊」とされているが、受精卵を着床し難くすることは中絶であると考えられ、この薬剤によって簡単に中絶ができることは、人の生命の軽視に繋がると考えられる。
- 日本人の月経や避妊・妊娠の医学的知識は、他の先進国と比較して低く、若い世代だけでなく、30 代の年齢でさえもその知識は不正確である。
- 薬局薬剤師における産婦人科領域の薬剤の知識が十分ではなく、個別に対応できる状況とは思えない。
- 望まぬ妊娠の可能性があって、病院に行きにくい人が、薬局であれば来られるのか疑問。
- 必要なことは OTC 化ではなく、緊急避妊薬の一般への認知度を高め、必要時に受診するサポート体制作りだと思う。
- 緊急避妊薬が薬局で購入できるようになると、不確実な避妊法を繰り返す人が増える可能性がある。また、緊急避妊が不成功に終わった場合、病院受診がさらに遅れてしまう危険性がある。
- 海外で処方箋なしで購入できるのに、本邦で認められないのはおかしい。海外旅行者が増え、東京オリンピックを機に多くの観光客が訪日した際、緊急避妊薬を受診でしか購入できない事実を知られることになれば、我が国における医療の提供の在り方について諸外国から疑問を呈される可能性がある。
- 連休中や週末の場合、72 時間を過ぎてしまうことがある。いつでも避妊薬にアクセスできることは、女性の権利(リプロダクティブヘルス/ライツ)である。
- 本邦における人工妊娠中絶件数は 17.6 万件と出生数と比較しても多く、特に 20 歳代以下がその半数を占め、望まない妊娠の実態がある。これらの負担を少しでも減らせるように、女性の健康と安全を確保するためにも市販化を望む。
- 産婦人科医の労働環境を改善するためにも、緊急避妊薬の市販化を望む。
- 未成年者を含む若い女性にとっては、やはり産婦人科は来院のハードルが高い。
- WHO(2017 年)の緊急避妊に関する勧告では、「意図しない妊娠のリスクを抱えたすべての女性および少女には、緊急避妊にアクセスする権利があり、緊急避妊の複数の手段は国内のあらゆる家族計画プログラムに常に含まれねばならない」と述べられている。
- 2016 年の最新のデータによると、緊急避妊薬の女性の認知度は 50%を超えている。緊急避妊薬が市販化されることで、認知度はさらに上がると思う。
- OTC 化にあたり、薬剤師の質の向上が必須だと思う。服薬指導や面談の際は緊急避妊薬を取り扱える専門知識があるコンサルティング薬剤師(できれば女性)を常駐させ、対応できるようにすればよいのではないか。
- 産婦人科において緊急避妊薬の使い方等の指導を受け、指導を受けた方に認定カードを発行し、当該カードを薬局等で提示することで緊急避妊薬を購入するようなシステムを構築してはどうか。また、何度も繰り返す人に対しては産婦人科にて再教育等を実施させればよいのではないか。
- 緊急避妊薬を服薬指導する又は患者と面談する専用の別室やスペースを設け、患者がリラックスして話せる環境を整えるべきではないか。また、乱用防止のため、購入したその場で服用させるべきではないか。
- 緊急避妊薬服用後、速やかに産婦人科のある医療機関の受診を義務づければ、子宮外妊娠に対する懸念も払拭されると考えられる。薬局による迅速な服用のタイミング確保と専門医師によるフォローをセットに考えればよいのではないか。
- 一般用医薬品となると、ネット販売で購入することが出来るため、薬剤師による対面販売を義務としている要指導医薬品に留めた方がよい。
- 米国や英国は使用年齢を 18 歳以上及び 16 歳以上に処方されるが、日本の性の倫理観を考慮すると未成年(20 歳未満)の販売に対しては、問診表や薬歴のチェックを行い専門機関への受診を勧め、販売の際は保護者同伴の同意販売を必要とした方がよい。
- 販売店を HP などで検索できるようにし、掲載されている店舗では常時在庫しておくようにしておく等の取り決めを作ればよいのではないか。
- 医療用医薬品と同様に承認条件に適正使用ガイドライン策定などを設けることを検討すべきではないか。
オンライン診療での緊急避妊薬について
2017年で緊急避妊薬と薬剤師の話題については一旦なりを潜めていたのですが、オンライン診療で再度、緊急避妊薬と薬剤師の話題がでてきます。
ただ、この5つの中で少し位置づけが違うと思うのが、一番下の緊急避妊薬、アフターピルと呼ばれているもののことです。
特に、望まない妊娠だけではなくて、例えば、デートレイプと言われるような拒否ができなかった、あるいは一番問題は性的被害に遭ったというような、特に十代の若い女性も被害を受けていることが結構多いです。そういう中で、きょう、このメンバーの中で、オブザーバーの方以外で女性は私しかいないので、敢えて発言させていただきます。実は性的被害ということを受けたときに、非常に心の傷になってしまって、受診の必要は、私はあると思うのですけれども、受診そのもの自体のハードルが物すごく高いと思っています。それを、例えば、オンライン診療で、まず、お話ができて、それでアフターピルということで八十何パーセント防げるということからすると、安心感を得た上で、そして、受診をする必要性をそこで感じて理解した上で受診する。通常と逆の順番のほうが安心できることが多いのではないかと、このことに関しては、そう思っています。特に、被害を受けて、それを隠そうとする方も結構いらして、妊娠しなかったら誰にもわからなかったしからと自分の胸にだけしまってしまう。あるいは、子供の場合だったら自分を責めてしまって、親であったり、他人に対しても隠そうとしているということが、私自身の経験も含めて、周りを見ていてもそういう人が比較的多いなということを思って
います。もし、妊娠してしまいますと、その人の人生にもかかわることですし、その女性だけではなくて、女性の子供自体、その2つの命ということに大きくかかわってくる。心の傷も絡んでくるということを考えたときには、できれば、これはオンライン診療で初診から認めていくという方向で考えてはどうなのかなと思います。実際、アフターピルということでは、なかなか認められないことで、本当は何の薬かわからないものが裏で横行しているという現実を考えると、医師というきちんとした人を通して出してもらうほうが安心感につながるのではないかと思っているところです。
ただ、1つ懸念は、アフターピル専門みたいな感じで、そこだけを商売にしてしまうようなオンライン診療があってはいけないので、そこに対しては、きちんと本人確認も含めた対策を講じることは必要だと思うのですけれども、女性を守るという観点からも、ここはほかと位置づけを違えて考えるべきできないかなと思っております。
オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会により、初診でもオンライン診療で緊急避妊薬を処方しようという流れになります。ここでもOTC化同様に懸念点がでてきますが、対応案も示されています。
オンライン診療による緊急避妊薬の処方に対する懸念点と対応案
①容易に緊急避妊薬が入手可能になり、適切な避妊法が行われなくなるのではないか。
繰り返しアフターピル処方を求める利用者
内服の確認を徹底するとともに、他の避妊方法の紹介や産婦人科受診勧奨を入念に行う。
②緊急避妊薬を用いても避妊を防げないことがあるなど、使用者が十分な知識を持ち得ていないのではないか。
知識不足や緊急避妊の失敗する懸念に対して
十分な知識を持った医師が説明を行い、近医産婦人科を紹介する等、3週間後の産婦人科受診の約束を取り付けること。
緊急避妊薬を求める女性の中に、犯罪被害が疑われる場合、十分な対応が困難ではないか。
利用者が犯罪被害を受けた可能性がある場合
最寄りの警察署への相談を促す。未成年の場合は、児童相談所に通報する。同時にカウンセリングを実施する。
緊急避妊薬が必要以上に流通すると、転売等により組織的な犯罪に使用されるのではないか。
転売等のリスクに対して
医師は一回分のみの処方を徹底し、薬局での薬剤師の前での内服する等を推奨する。
このような対応案が示されたので、2017年のOTC化の反省を踏まえ、日本薬剤師会は、あまり仲がよくない日本保険薬局協会、日本チェーンドラッグストア協会なども呼んで、オンライン診療に伴う緊急避妊薬の調剤に関する全国担当者会議を実施しました。
るるーしゅ
薬剤師、ちゃんと研修受けて準備万端ですってアピールして、この数年後にはOTC化を狙っていたわけさ
オンライン診療での緊急避妊薬調剤時に薬局で行うこと
患者応対で薬局がおこなうこと
- 患者がオンライン診療を受診した本人であることを確認する
- 患者の心理状態や社会状況に心を寄せる
- プライバシー空間の確保や話しやすい環境に心がける
・対応場所(個室・パーテンションの利用)の配慮
・声の大きさやトーンの配慮 - 調剤済の薬剤(1錠)と飲料水・紙コップを用意して、面前で服用させる。
- 患者が服用したことを確認する
- 服薬指導を行い、服用後の注意事項を伝える。
- より確実な避妊法について説明する
- 約3週間後に必ず産婦人科医の対面診療を受診するように伝える
- 何か質問があるかを聞き、適切にこたえる。
なんで目の前で飲んでもらわなきゃいけないんですか?
メガネ
るるーしゅ
一応、理由としては以下の3つが挙げられているね
- 性交後できるかぎり速やかに服用
- 患者本人の確実な服用を確認
- 緊急避妊薬の不正な入手の防止
日本の薬剤師で意見が割れてるところ
緊急避妊薬を薬局で販売できるようにすることに反対している薬剤師はあまり目にしませんが、SNS上で少し気になる点は、すべての薬局で売れるようにすることか、研修などを受けて承認を受けた薬局のみで売れるようにすべきかというところで意見が割れているような気がします。
前者の意見ですと、薬局の数はコンビニ以上ですので入手に対するハードルは下がるかと思います。ただ上記に挙げている薬局でおこなうべきことの徹底ができるかどうかは不安ですよね。
また2017年のパブリックコメントに産婦人科を受診して緊急避妊薬を要望された場合、非常に不愉快な思いをされたというパブリックコメントも多数、ということからもこれと同じことが薬局で起きてほしくないなと思ってしまいます。
後者の意見ですと、取り扱っている薬局を探さなきゃいけない等の手間が増え、必要な女性に届かないのではないかという意見があるかと思います。
るるーしゅ
海外等の先行事例から、人口どれくらいに対して緊急避妊薬を販売する薬局があればいいかを見積もってみるのがいいかもしれないね(わたしはやらない)
ちなみにすべての薬局で販売したらどうなりそう?
2020年9月に報告された民間の依存症支援団体利用者を対象とする依存実態の再解析及び追加調査によると
「個人経営の薬局では店内に陳列せず、店の奥に隠してあった。手で『5 本』などとサインを送ると、何箱でも売ってくれる状態であった(症例 11)」や「某ドラッグストアでは、製品を多く買うと安くしてくれるサービスがあった(症例 13)」といった証言からは、乱用・依存に対する警戒心が低いだけではなく、乱用・依存を後押しするような大量販売・不適切販売を続けている薬局・ドラッグストアも存在することが明らかになった。
るるーしゅ
これがあるとなると、懸念点で挙げられていた緊急避妊薬が必要以上に流通すると、転売等により組織的な犯罪に使用されるのではないかは確かにそうだとなりますよね…
でも本当にこんなことやる薬局は一部ですよね?
メガネ
るるーしゅ
もちろん、ただやっぱり最善の道を選びたいなと思ってしまう
緊急避妊薬をOTC化するための道のり
日本薬剤師会も、緊急避妊薬をOTC化したいという気持ちがあるのは知ってます。(元日大教授の亀井先生とか)
日薬として、薬剤師の質云々というところを払拭するために現地での講習会を地域の産婦人科学会所属の医師とやりました!だから薬剤師に任せてくださいというスタンスで、オンライン→OTC化を徐々に考えています。
正直、わたしとしてこの日薬の戦略が間違っているようには思えません(他に案があれば教えてください)
・・・ただOTC化にするための手順として、もう一個あると思います。
0410対応で緊急避妊薬の調剤実績を出す!(ジャーン)
緊急避妊薬って、0410で処方箋だせるんです。そしてこの場合ですと、オンライン診療での緊急避妊薬と違い、患者の面前服用と講習会の実績は必須ではありません。
緊急避妊薬のオンライン診療についてのお知らせ
オンライン診療については、令和2年4⽉ 10 ⽇、厚労省から「新型コロナウイルス感染症の拡⼤に際しての電話や情報通信機器を⽤いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」の事務連絡が都道府県等の⾃治体を通して医療機関、薬局等に周知されました。緊急避妊薬はこの中での除外薬には該当せず、緊急避妊薬は性交後72時間以内に服⽤するという縛りがあり、また、感染拡⼤により薬局に直接取りにくることが困難な場合も想定されるため、この事務連絡に従い、下記の様に、処⽅可能と解釈されます。
- 処⽅箋は本⼈への郵送に限らず、薬局への FAX 送付も可能である。
- 処⽅箋を受け取った薬局は、処⽅後、原則対⾯で1錠服⽤させるのが望ましいが、状況によっては、患者への薬の郵送も可能である。
- オンライン診療を⾏う場合、産婦⼈科以外の医師、薬剤師は原則緊急避妊薬に関する研修を受けることが望ましく、研修を受けた医師名と医療機関、薬剤師名と薬局は厚労省ホームページに公開されているので、これを参照する。しかし、コロナ感染の影響で研修が困難な地域もあるため、研修を受けていることは必須ではない。
産婦人科以外でも構わないので、近隣の医療機関に緊急避妊薬の処方箋をつくってもらうような依頼をして薬局で調剤する実績(大丈夫というエビデンス)を出していくと、OTC化が早まるのではないかと思います。
今、産婦人科の辺見先生とかが薬局で買えるようにということで声をあげてくださっていますが現状でも薬剤師として出来ることはあるような気がします。
すこし強引な実績作りを提案しましたが、正規ルートでもしっかりと薬剤師でも緊急避妊薬の対応大丈夫という実績を作っていってもらえればと思います。
◎ オンライン診療での緊急避妊薬調剤
〇 講習うけた医師から0410で調剤
△ 講習受けていない医師から0410で調剤
るるーしゅ
ねだるな勝ち取れ
尚、情報提供書などは千葉県薬剤師会の資料が参考になるかと思います。