「薬剤師を取り巻く環境が変化するから、ちゃんとこれからの薬剤師のキャリアを考えて」って私よく言っていました。
わたしが考えていた業界の変化は、大手チェーン薬局の寡占化ですね。これはもうすでに起こっていて、わたしの大学時代の同期で薬局勤務者(大手チェーン薬局勤務者なし)のほとんどが大手チェーン薬局に所属になっていましたし、私の前の職場周辺にあった薬局もすべて大手チェーンの所属になっています。
るるーしゅ
広島県のファーマシィがアインにM&Aされたのはビックリしましたよ
ただ、どうやら上記の記事以上に大きな変化が起きそうな気がするのが、調剤の外部委託を踏まえた流れですね。
この外部委託の話は2022年1月19日の医療・介護・感染症対策ワーキング・グループの中で話題になり、先日の2022年5月27日に進めていく方向で決着がついたようです。
(3)医療DXを支える医療関係者の専門能力の最大発揮
<基本的考え方>
我が国では、3年後には全てのベビーブーム世代が 75 歳以上に到達するなど 、高齢化がますます進行し、医療ニーズの拡大と多様化も見込まれる一方で、多くの地域、特に、過疎地域などで、医療関係者の人材確保がより大きな課題となっていくことが予想される。このような状況の下、患者本位・利用者本位の医療を実現するためには、医療現場において医療関係者が専門能力を最大限発揮し、限られた医療リソースを最適かつ効果的・効率的に活用することが重要であり、喫緊の課題である。そのため、患者等のニーズに専門的な知見をもってきめ細やかに対応するための薬剤師の対人業務の強化や、限られた医療リソースの適切な配分等を可能とするための医療・介護関係職間でのタスクシフト/タスクシェアの推進、地域医療構想調整会議の運営の透明化及び社会保険診療報酬支払基金等の審査・支払業務の円滑化を図る必要がある。
以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。
<実施事項>
ア 薬剤師の地域における対人業務の強化(対物業務の効率化)
【a:令和4年度検討・結論、b:令和4年度措置、c:令和4年度以降継続的に措置】
a 厚生労働省は、患者への服薬フォローアップなど薬剤師の高度な薬学的な専門性を活かす対人業務を円滑に行い得る環境を整備するとともに、調剤の安全性・効率性の向上を図る観点から、薬局における調剤業務のうち、一定の薬剤に関する調製業務を、患者の意向やニーズを尊重しつつ、当該薬局の判断により外部に委託して実施することを可能とする方向で、その際の安全確保のために委託元や委託先が満たすべき基準、委託先への監督体制などの技術的詳細を検討する。
検討に当たっては、以下の論点を中心に具体的検討を進める。
・委託可能な調製業務の対象
・委託先の範囲
・委託元―委託先の役割分担及び責任関係の在り方(委託元薬局の薬剤師が故なく法的責任を負うことがないための配慮等を含む。)
規制改革推進会議 第13回資料より抜粋
目次
調剤の外部委託で薬局はどうなるか?
調剤の外部委託が実施されることにより、門前薬局が減り、かかりつけ化がすすむことが会議の中で指摘されていました。もちろん急性期の処方は外部委託には向かないと思いますので、そのような市中薬局は必要です。
るるーしゅ
日本の薬局は非効率な部分があり、それがコストをあげている要因であることも示されていますからね
日本の薬局の非効率なところ
規制緩和の波に逆らえないと思う理由としては、日本総研の成瀬さんの研究で紹介されていた日本の薬局の非効率です。
わが国の薬局の技術料と薬価差益のGDP比は 0.43%と、イングランド(同0.14%)、ドイツ(同 0.16%)と比べて突出して高い。こうした違いが生じる原因として次の3点が指摘できる。第1に、人口当たりの薬局数・薬剤師数の過剰ともいえる多さである。第2に、一人当たりの薬剤数の多さであり、家庭医制の不在に伴うわが国の外来受診回数の多さが関連している可能性がある。第3に、1剤当たりの調剤コストの高さである。手間のかかる計数調剤、IT化の後れなど、わが国の薬局業務に非効率な部分があり、コストを押し上げている可能性がある。
またこの論文の中で、以下のことも指摘されています。
わが国の調剤報酬は調剤基本料において、処方箋受付回数が少ない小規模な薬局を優遇する仕組みとなっており、これが健全な競争を阻害し、薬局数が多い一因となっている可能性がある。すなわち、患者を多く獲得すれば調剤基本料が下がってしまう一方、競争に敗れ患者を減らした薬局は調剤基本料が上がるため淘汰されにくい制度ともいえる。
約5割は小規模薬局なので、外部委託の需要はある
上記の薬局でのタイムスタディのデータを見ていただくと、対物業務に2割程度の時間を使っていることがわかります。ここが外部委託できることで、その分、対人業務に専念できるようになるのはプラスに働く薬局もあると思います。
また今後、薬剤調製料も下がるうえに医薬品の在庫適正化や廃棄の問題を考えると、メリットはけっこうありそうだと思います。
外部委託すると、調剤ミスとか気になりますが…
メガネ
るるーしゅ
外部委託を受けるところは、最新の調剤機器をいれていると考えると、そこまで心配ないような…
たぶん調剤エラー防止システム(ミスゼロ子やポリムス)入っていないところのほうが多いと思う。
外部委託に絶対反対!でもいいけど…
外部委託にはたいしては未知のリスクがあるから絶対反対や、薬剤師の独占業務を手放すとはなんぞやという方はいると思います。
ただ現状のリスクについても考えなきゃいけないと思います。以下は外部委託の際に医師の佐々木先生からの指摘内容です。
今日参考で提示されたプレゼンテーションを聞けば、薬剤師さんの業務が現状いかに非効率に行われていて、これによって本来業務ができていない状況があるのかということは、もう自明だと思うのですが、薬剤師会さんからのプレゼンテーションでは、薬剤師の当事者意識が希薄になるのではないかとか、患者に対して新たなリスクが発生するのは自明の理であると表現をされています。
現状、恐らく薬剤師会さんたちは、現状患者さんたちに大きなリスクが生じているということについて、まず、当事者意識を持っていただきたいと私は思っています。狭間先生のプレゼンにもありましたけれども、現状、例えば処方カスケードとかポリファーマシーとか、あるいは残薬の問題とか、あるいはドクターの不適切処方に対して十分な疑義照会が行われていない、疑義照会をしたのだけれども、結局その患者の処方箋に活かされない。そんな状況があって、実際患者さんたちに大きな健康被害は現状生じていると思います。その責任は誰にあるのでしょうか。それを何とかするために、こういう議論をしているのではないかと私は思うのですけれども、新しいリスクが生じるから、対人業務、対物業務、特に対物という部分について、日調さんが、御紹介ありましたけれども、業務の集中化で、一包化が4分 45 秒に減ると、そのうち2分 45 秒は機械が勝手にやってくれるわけですから、実際の仕事は2分に減るわけですね。どうしてこういうことに取り組むことに足踏みをしなければいけないのかというのが、逆に理解ができないのですけれども、現状、薬剤師会さんたちは、皆さん方が薬剤師として、果たすべき職責というのはどういうことなのかというのを、ちょっと具体的にお聞きしたいです。薬をちゃんと調剤するというのは、飽くまで手段であって、目的は患者さんたちの命と健康を守ることですね。それが現状できていないのを何とかする、そのために対人業務を充実させなくてはいけないという議論をしているのですけれども、前回と全く同じ内容のこの紙が返ってきているというのが、私はちょっと理解ができないので、そこは是非御説明をいただきたいと思います。
ちなみにこの指摘への薬剤師会の返答は、ちょっと性格悪すぎじゃね?(議事録読んでいる限りですが)と思いました。以下に示します。
佐々木先生、前回も、すみません、冒頭お伝えさせていただきたいのは、私自身も 20年前から、富山の山の中、ぽつんと一軒家のところまで行っていました。ずっと十数年、そういうところに通って医療を提供してきたというところがあります。それで、先日、東京の日本薬剤師会のすぐ近くの四谷3丁目という交差点で、薬剤師さんにばったり会いましてね、彼は、物すごい在宅を頑張っている薬剤師さんで、佐々木先生のところとも一緒にチーム医療をさせていただいているという彼が、本当に前回、佐々木先生から、いや、そんな薬剤師を見たことがないという意見があったということで、すごい愕然としてショックを受けていましたので、彼の名誉のためにも、頑張っている薬剤師がいるということだけは、先生に御理解いただきたいというのが、まず大前提です。そ
の上で、先生の御質問、お気持ち、我々も本当にこれから対人業務を充実していく、ポリファーマシー対策をやっていく、いろいろな形で患者さんのためにやっていこうというのは同じでございます。
私は個別の薬剤師が仕事をちゃんとしていないと言ったつもりはどこにもありませんし、議事録にもそうは残っていないと思いますけれども
この薬剤師会の指摘、陰険だなと思ってしまいました。それは置いておいて、現状出来ていなくて、患者にリスクを背負わせていることについて、どう対処するんですか?ってことですよね。
外部委託しなくても、ちゃんと出来ているところは外部委託しなきゃいいだけでしょうし…
薬歴の記載を効率化するのも先ではないでしょうか
メガネ
るるーしゅ
それもあると思う。薬歴のせいで対人業務が出来ていないっていう薬局があるなら記載内容がどれほどのものかチェックしてみたい。
規制緩和で薬局はどうなるの?
規制緩和されたからといって、全部が全部オンラインになるわけではないと思いますが、実店舗に行かずオンラインで完結する事例もでてくると思います。
患者はお昼休みに医療機関にオンライン診療を受けて、電子処方箋を発行。帰宅後に電話で推しの薬剤師にオンライン服薬指導を受ける。翌日の帰り道に宅配ロッカーでくすりを受け取る。
上記のようなことが当たり前になってくると、Amazonのような資本力いっぱいのところが有利になるのかもしれませんね。
オンラインで完結するなら薬剤師は容姿が整っていて、相応の知識があればファンがついたりするのではないかなと(わたしがあと10年若ければ・・・)
るるーしゅ
アメリカでは、Amazonファーマシーの影響はそこまでみたいですが日本の薬局も同様に影響は出ないとは言い切れませんよね
調剤の外部委託をやっている国は、海外でもごく一部なので参考にする必要はないという意見ももっともです。ただ日本ほど人口に対して薬剤師が多い国もないですし、さらには少子高齢化もすごい(コロナで10年以上早まった)ので、この方向性でいくんだと思います。
規制緩和に反対なの?賛成なの?
今回の調剤の外部委託についてですが、わたしがツイッターで目に入ってきた情報としては反対という意見のほうが目につきました(中には前提となる知識不足で何言ってるの?というのもありましたが・・・)
賛成の方の意見を少し探してみます
以前に実施した日経DIの調査によると、若い世代で賛成の割合が多いようです。(ツイッターやっているのは老人が多いのかもしれないですね)
るるーしゅ
6年生の人たちは調剤業務(作業)よりもっと対人業務を充実したいと思っているのかもしれないですね
反対の意見
つづいて反対の意見としては、雇用の問題を耳にしました。既得権益といわれようがしがみついて、薬剤師の需要を減らさないことが重要、きれいごとなんかじゃないといった感じです。
ちなみにこれって構図としたら、リフィル処方箋を頑なに否定する医師と同じでは?と質問したら「その通りです」という回答でした。
るるーしゅ
医師のリフィル反対には文句言って、薬剤師の調剤の外部委託には反対(既得権益を守るため)っていうのは、ダブルスタンダードかもしれないですね。
その他には、今回の外部委託では一包化だけ進めていく方向なのですが、それで業務が本当に効率化するのか疑問という意見もありました。はい、そこはわたしもそう思います。
是非とも考えてもらいたい意見
今回の外部委託については、そういう選択肢を選べる体制を作ろうとしているだけで、決してすべての薬局が調剤を外部委託しなければいけないというわけではありません。
るるーしゅ
ただ認めたことで多くの薬局で導入して、それがスタンダードになるのでは?という危惧はあるかもしれませんが…
調剤の外部委託の議論を追っていくと、もしかして完全に反対という姿勢を取っているのは日本薬剤師会だけなのでは? と思えてきました。既得権益を守るというのが職能団体の原則なのかもしれませんが、こんなにも世論が薬剤師を次のステージへ向かわせるために背中を押してくれているときに本当にそれでいいのか? という違和感を覚えずにはいられません。
上記のケアネットの早耳うさこ先生の記事より
ツイートとケアネットの記事をあげましたけど、外部委託に反対することで既得権益を守っているように見えるかもしれないが、実は変化する機会を失っているかもしれないってことは頭にいれておいてほしいです。
これらの情報を踏まえて、個々の薬剤師はどうするべきか?
なんとなく内容は分かった、では私はどうすればいい?と思う若手の薬剤師の方がいるかもしれないのでアドバイスしたいと思います。
るるーしゅ
そんなの人それぞれだから、一概には言えない!!
はい、ものすごく当たり前のことしか言っていなくて、ほとんど何も言っていないのと同義です。申し訳ございません。
ただ規制改革の会議の中だけではなく、薬局薬剤師のこれからを話し合う会議の中でも同様のことが話題に挙がっていて、現状の薬局や薬局薬剤師の問題点はこんなところで、もっとこうしていったほうがいいということには目を向けておいたほうがいいと思います。
新型コロナを機に一気にオンラインも進みましたし、来年には電子処方箋の導入です(医療事務さんどうなりますかね)し、このあたりの規制改革もとんとん拍子で進んでしまうかもしれません。
ところでナスルディンの鍵という寓話を知っていますか?
ある晩、家に帰る途中の男が、街灯の下で四つん這いになっているナスルディンに出くわした。
「何か探し物ですか?」と男が尋ねたところ、「家の鍵を探しているんです」とナスルディンは答えました。
一緒に探しましょうと、二人で四つん這いになって探すのですが見つかりません。そこで男は再び尋ねました。
「ナスルディン、家の鍵を落とした正確な場所はわかりますか?」すると、ナスルディンはふたりが探していた街灯付近から10メートルほども離れた木を指さしました。
「じゃあなんでこんなところで探しているんですか?」と男は信じられない口調で尋ねてみると、
「だってここのほうが明るいじゃないですか」とナスルディンは答えました。
ナスルディン、意味が分からないんだけど(笑)と思う方が多いですよね。ただこれ、実際にはこんな人、身近にいませんか?
今の勤務先で働いていても、将来のキャリアアップも望めないのは分かっているけど、変化を拒んで何もしない薬剤師の人たちのことです。
るるーしゅ
頑張っても無駄だから、出来る限り楽をする自己防御のキャリア論ですね。
現状維持で楽をするというのは、今の薬局業界では大丈夫かもしれませんが、今後のことを考えるちょっと不安があると思います。自転車やコマなどもそうですが、動き続けることで安定するということがキャリアでもあると思いますから。
とりあえず、今後の薬局業界の大まかな方向性を理解しつつ、自分はどんな働き方がしたいかな?とか考えてみるのがいいんじゃないかなと思って今回の記事を書きました。
また寓話のナスルディンのように、そこに鍵はないと分かっていても楽だからと惰性を起こしてしまっているなら、一歩を踏み出してみましょう。
違う病院で働く友人、知人、先輩、SNS上での知り合い等、誰でもいいと思います。自分の立ち位置や人生観を振り返るために、他者から見える自分を知る機会を作ることが大切です。
るるーしゅ
他者から見て、自分はどうなのかを知ることがまず一歩です。
最初は、素人から見た自分の他者目線の発掘です。つづいてプロの視点で評価してもらうといいです。
これから薬剤師過剰時代を迎えるため、薬剤師として多様な働き方や自分らしい生き方をイメージするためにはプロによる他者目線を取り入れることをオススメします。
プロの視点は転職エージェントを利用するのがいいと思います、無料ですし。
\ 悪質な転職サイトは利用しないで /
薬剤師が転職する際に利用する人材紹介会社(転職エージェント)、どこも同じだと思っていませんか?
現在、国は医療の分野において紹介料目当てで頻繁な転職を促す悪質な人材紹介会社への対策を強化しています。
るるーしゅ
悪質な人材紹介会社の利用は、ミスマッチする可能性が高いです。
このような悪質な人材紹介会社には絶対に相談してはダメです!!(悪質とは言っても国の許可を得ているという矛盾もありますが…)
薬剤師が、キャリア相談や転職時に、転職エージェントを利用する場合は、適正な有料職業紹介事業者の認定を受けている転職エージェントを利用しましょう。
薬剤師の分野で優良認定を受けているところは、ファルマスタッフ、その他数社とまだ少ないです。
悪質な人材紹介会社がどこか分かれば対策しやすいのですが、そのような情報はなかなか表に出てきません。なので我々としては、優良認定を受けているところを優先するのが望ましいでしょう。
るるーしゅ
今後、ICT化していくので、それにのれない薬局で働く人たちは結構大変だと思います。日薬の政策でも電子薬歴の標準化をかがげていましたし…
ナスルディンの鍵の話にならないように、しっかりと中長期的なキャリア戦略を立てることをオススメします。