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【調べてみた】CYP阻害薬服用中、睡眠薬はどれを選ぶべきですか?

本日もお勉強ネタです。
多剤併用な時代ですから、薬物相互作用の回避とマネジメントを実施するのも薬剤師の仕事の一つですよね。

今回は日常でよく出会うCYP阻害薬服用中の場合、どの睡眠薬を選択すればいいか考えていきたいと思います。

想定されるケース

処方箋お願いします
最近、寝つきが悪くて…

患者

患者

るるーしゅ

るるーしゅ

へい、らっしゃい。
(トリアゾラムか…)
今は他に飲んでいるくすりってありますか?

あ~爪水虫のくすり飲んでいます

患者

患者

というようなケース、よくありますよね。
今回は爪水虫の薬イトラコナゾール(CYP阻害薬)×トリアゾラム(CYPで代謝される薬剤)です。

トリアゾラム単独でしたら、左の画像のようにCYPで代謝されて血中から消失していきます。しかし、CYP阻害薬を服用中だと、真ん中もしくは右の画像のように代謝されず血中濃度が上昇します。

るるーしゅ

るるーしゅ

真ん中なら用量を減らして経過観察でもいいかもしれない。
右だったら、別の薬剤に変える以外の選択肢がないかな…

相互作用がある=別の薬剤へ切り替えるではないですよね。その相互作用の影響がどの程度かによって減量で対応できるのか?それとも別薬剤への切り替えかが変わってくるかと思います。

…とはいっても、今回のイトラコナゾール×トリアゾラムは併用禁忌です。

禁忌(次の患者には投与しないこと)
次の薬剤を投与中の患者:イトラコナゾール,フルコナゾール,ホスフルコナゾール,ボリコナゾール,ミコナゾール,HIVプロテアーゼ阻害剤(インジナビル,リトナビル等),エファビレンツ,テラプレビル(「相互作用」の項参照)
トリアゾラムの添付文書より

どのような対応が必要だろうか?

とりあえずトリアゾラムは禁忌のため、このまま調剤することはありませんよね。
さて、どういった対応をしましょうか?

  1. 患者さんにイトラコナゾールは服用しないように伝える
  2. 処方医に「併用禁忌です」と疑義照会する

どっちもダメだろっ思うんですが、上記のような対応をとる薬剤師のかたも中にはいますよね。
(処方医との関係もあるので、上記の対応がいいケースもあるかもしれません)

模範解答としては、代替薬を選んだうえで処方医へ疑義照会する

トリアゾラムの代替薬候補は?

それではトリアゾラムの代替薬候補を選んでいきますが、まずトリアゾラムがどのような薬剤かおさらいしましょう。

トリアゾラムは超短時間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬ですね。

超短時間型

商品名一般名Tmax代謝酵素
(CYP)
添付文書上での
イトラコナゾールとの併用
マイスリーゾルピデム0.7~0.91A2
2C9
3A4
記載なし
ルネスタエスゾピクロン0.8~1.53A4
2E1
併用注意
アモバンゾピクロン0.75~1.172C8
3A4
併用注意
ハルシオントリアゾラム1.23A4併用禁忌

トリアゾラム以外は、非ベンゾジアゼピン系(Z系ドラッグ)と呼ばれている薬剤ですね。上記以外の選択肢としては以下の薬剤があるのではないかと思います。

その他の候補薬

商品名一般名Tmax代謝酵素
(CYP)
添付文書上での
イトラコナゾールとの併用
レンドルミンブロチゾラム1.0~1.53A4併用注意
ベルソムラスボレキサント1.0~1.53A4併用禁忌
デエビゴレンボレキサント1.0~1.53A4併用注意

どの薬剤もCYP3A4での代謝の影響を受けるようですが、マイスリー(ゾルピデム)のみ添付文書上に相互作用の記載がないため候補としては選びやすいですよね。

マイスリー、君に決めた!

ただせっかくなので、添付文書 based medicine ではなくもう少し考えていたいと思います。

マイスリーは以前飲んで効かなかったら嫌だ!!

患者

患者

となるかもしれませんからね。

不眠症のタイプによる睡眠薬・抗不安薬の選び方

入眠障害
(超短時間型、短時間型)
中途覚醒、早朝覚醒
(中間型、長時間型)
神経症的傾向が弱い場合
脱力・ふらつきが出やすい場合
(抗不安作用・筋弛緩作用が弱い薬剤)
ゾルピデム
ゾピクロン
エスゾピクロン
ラメルテオン
クアゼパム
神経症的傾向が強い場合
肩こりなどを伴う場合
(抗不安作用・筋弛緩作用を持つ薬剤)
トリアゾラム
ブロチゾラム
エチゾラム
フルニトラゼパム
ニトラゼパム
エスタゾラム
腎・肝機能障害がある場合
(代謝産物が活性を持たない薬剤)
ロルメタゼパムロラゼパム
内山真(睡眠障害の診断・治療ガイドライン研究会)編:睡眠障害の対応と治療ガイドライン第2版. じほう,2012; p111
るるーしゅ

るるーしゅ

これを見ると、ブロチゾラムがいいかなって思うよね

どの程度、相互作用の影響を受けるか?

添付文書上では併用注意の記載だけど、実際は併用禁忌といってもいいのではないの?というレベルのものもあったりします。ただ添付文書やインタビューフォームだけでの相互作用の影響度は想定できません。

ここで有用なのがPISCSですね。
(PISCSって何?という方は下記の記事を読んで下さいね)

簡単に説明すると、添付文書上の併用注意がどの程度かを簡易的に推測するツールです。
CYP阻害薬がどの程度CYPを阻害するのかの阻害率(IR)とCYPで代謝される薬剤はどの程度影響を受けるのかの寄与率(CR)が分かれば下記の表で相互作用の影響度が分かります。

イトラコナゾールのIR(阻害率)は0.95です。

商品名一般名CR(寄与率)
マイスリーゾルピデム0.40
ルネスタエスゾピクロン0.56
アモバンゾピクロン0.44~0.54
ハルシオントリアゾラム0.93
レンドルミンブロチゾラム0.85
ベルソムラスボレキサント0.64
デエビゴレンボレキサント0.77

マイスリー…PISCSに記載あり(過去記事参照)

ルネスタ…インタビューフォームより計算

アモバン…Aranko K., et al.:Br. J. Clin. Pharmacol. 38:363-367, 1994、Jalava K. -M., et al.:Eur. J. Clin. Pharmacol. 51:331-334, 1996

ハルシオン…PISCSに記載あり(過去記事参照)

ブロチゾラム…PMID: 15521894

ベルソムラ…添付文書より計算

デエビゴ…添付文書より計算

それでは、こちらを先ほどの表にあてはめてみて、AUCがどの程度上昇するか推算してみたのが下の図です。

PISCSによるAUC上昇割合

  • ハルシオン(トリアゾラム)…14倍
  • レンドルミン(ブロチゾラム)…5.4倍
  • デエビゴ(レンボレキサント)…3.5倍
  • ベルソムラ(スボレキサント)…2.4倍
  • その他…1.6倍

相互作用の影響を予測した上で…

このPISCSは予測(精度は概ね67%~150%)に過ぎないのですが、添付文書上で併用注意のブロチゾラムやレンボレキサントが、併用禁忌のスボレキサントより相互作用の影響が大きいですよね。

そしてPISCSで相互作用の影響を予測せずに、添付文書 based medicineだけですと…

レンドルミン、君に決めた!

という疑義照会をしてもおかしくないですよね。

相互作用のありなし問題ではなく、相互作用がどの程度なのか意識したうえで、考えると、よりよい患者さんへの薬物療法を実践できるんじゃないかなと思います。

また疑義照会の際も併用禁忌だけではなく、AUCが10倍以上になることが予想できるためなどと伝えたほうが医師も問題を認識しやすいのではないかと思います。

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