2022年8月5日に、処方箋医薬品以外の医薬品の販売方法について再周知が出されました。
今回はその内容及びそれに至った背景なども踏まえて、処方箋医薬品以外の医薬品の販売(通称:零売と呼ばれている)についてまとめていこうと思います。
るるーしゅ
これを読めば、あなたもゼロバイマスター
いや、だから零売(レイバイ)って読むんだって
メガネ
目次
処方箋医薬品以外の医薬品の販売方法について
それではまず先日出た通知についてです。
処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売方法等の再周知について
処方箋医薬品以外の医療用医薬品(薬局製造販売医薬品以外の薬局医薬品をいう。以下同じ。)の販売方法等については、「薬局医薬品の取扱いについて」(平成26年3月18日付け薬食発0318第4号厚生労働省医薬食品局長通知。以下「薬局医薬品通知」という。)において、薬局医薬品の取扱い及び留意事項等を示しているところですが、薬局医薬品通知の趣旨を逸脱した不適切な販売方法が散見されることから、下記のとおり改めて整理しましたので、御了知の上、貴管下関係団体、関係機関等へ周知いただき、不適切な事例については指導を徹底されるようお願いします。
記
- 処方箋医薬品以外の医療用医薬品の処方箋に基づく薬剤の交付
処方箋医薬品以外の医療用医薬品については、処方箋医薬品と同様に、医療用医薬品として薬剤師、薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者、医師、歯科医師若しくは獣医師又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者(以下「薬剤師等」という。)によって使用されることを目的として供給されるものであるため、薬局医薬品通知の第1の1.(2)に掲げる場合を除き、薬局においては、処方箋に基づく薬剤師による薬剤の交付が原則であること。 - 処方箋医薬品以外の医療用医薬品の処方箋に基づく薬剤の交付の例外
(1)考え方
薬局における処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売又は授与(以下「販売等」という。)は、要指導医薬品又は一般用医薬品(以下「一般用医薬品等」という。)の販売等による対応※を考慮したにもかかわらず、やむを得ず販売等を行わざるを得ない場合に限られていること。なお、販売等に当たっては、(2)の事項を遵守すること。また、(3)に掲げるような表現を用いて、処方箋医薬品以外の医療用医薬品の購入を消費者等に促すことは不適切であること。
※要指導医薬品又は一般用医薬品の販売等による対応
同様の効能効果を有する一般用医薬品等がある場合はまずは当該一般用医薬品等を販売等することとし、一般用医薬品等の在庫がない場合は他の薬局や店舗販売業を紹介等するなど、一般用医薬品等の販売等による対応を優先すること。
(2)遵守事項
ア 受診勧奨
必要な受診勧奨を行った上で、販売等しなければならないこと。
イ 必要最小限の数量
処方箋医薬品以外の医療用医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者及び当該医療用医薬品を使用しようとする者に対し、他の薬局開設者からの当該医療用医薬品の購入又は譲受けの状況を確認し、医療機関を受診できるまでの期間及び医薬品の特性等を考慮した上で、販売等を行わざるを得ない必要最小限の数量に限って販売等しなければならないこと。また、反復継続的に医薬品を漫然と販売等するようなこと(いわゆるサブスクリプションなどを含む。)は、医薬品を不必要に使用するおそれがあり、不適切であること。
加えて、薬事承認された効能・効果、用法・用量の範囲を超えた、適応外使用を目的とする者への販売等は不適切であること。
ウ 販売記録の作成
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和36年厚生省令第1号。以下「医薬品医療機器等法施行規則」という。)第14条第3項及び第4項の規定に基づき、処方箋医薬品以外の医療用医薬品の品名、数量、販売等の日時等を書面に記載し、当該書面を2年間保存しなければならないこと。
また、同条第6項の規定により、当該医薬品を購入し、又は譲り受けた者の連絡先を書面に記載し、これを保存するよう努めなければならないこと。
エ 保管場所
調剤室又は薬局等構造設備規則(昭和36年厚生省令第2号)第1条第1項第9号に規定する貯蔵設備を設ける区域において保管しなければならないこと。
オ 分割方法
調剤室において、薬剤師自らが必要最小限の数量を分割した上で、販売等しなければならない。なお、医薬品の販売等にあたり、あらかじめ決まった数量に分包等しておくことは、小分け製造に該当するため、医薬品製造業の許可等が必要であること。
カ 対面による販売等及び服薬指導の実施
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第36条の4及び医薬品医療機器等法施行規則第158条の8の規定により、薬局開設者は、その薬局において医薬品の販売等に従事する薬剤師に、当該薬局内の情報の提供及び指導を行う場所において、対面により、書面等を用いて必要な情報(用法、用量、使用上の注意、当該薬局医薬品との併用を避けるべき医薬品その他の当該薬局医薬品の適正な使用のために必要な情報)を提供させ、処方箋医薬品以外の医療用医薬品が一般用医薬品とは異なり医療において用いられることを前提としていることを十分に考慮し、必要な薬学的知見に基づく服薬指導を行わなければならないこと。また、薬剤師は、あらかじめ、当該医薬品を使用しようとする者の年齢、他の薬剤又は医薬品の使用の状況、性別、症状等を確認しなければならないこと。
さらに、当該医薬品を使用しようとする者に対して提供した当該情報及び服薬指導の内容を理解したこと並びに質問の有無について確認しなければならないこと。
キ 直接の容器又は被包への記載
分割販売する処方箋医薬品以外の医療用医薬品には、医薬品医療機器等法第50条に規定する事項及び同法第52条に規定する容器等への符号等の記載又はその写しの添付を行うなどしなければならないこと。
ク 使用者本人への販売等
医薬品医療機器等法第36条の3第2項の規定により、薬剤師等が業務の用に供する目的で薬局医薬品を購入し、又は譲り受けようとする場合に販売等する場合を除き、使用しようとする者以外の者に対して、正当な理由なく、販売等を行ってはならないこと。なお、正当な理由については、薬局医薬品通知の第2の2.のとおり。
ケ 薬剤服用歴の管理
販売等された処方箋医薬品以外の医療用医薬品と医療機関において処方された薬剤等との相互作用・重複投薬を防止するため、当該医薬品を使用しようとする者の薬剤服用歴の管理を実施するよう努めなければならないこと。
また、医薬品の適正使用の観点から、当該医薬品を使用しようとする者の状況や、販売等した数量を適正と判断した理由を記載すること。
コ お薬手帳
処方箋医薬品以外の医療用医薬品を使用しようとする者が手帳を所持していない場合はその所持を勧奨し、当該者が手帳を所持している場合は、必要に応じ、当該手帳を活用した情報の提供及び服薬指導を行わなければならないこと。
サ 薬剤使用期間中のフォローアップ
医薬品医療機器等法第36条の4第5項及び医薬品医療機器等法施行規則第158条の9の2の規定に基づき、処方箋医薬品以外の医療用医薬品を購入し、又は譲り受けた者における当該医薬品の使用状況を継続的かつ的確に把握し、必要な情報を提供し、又は必要な薬学的知見に基づく服薬指導を行わなければならないこと。
シ 手順書の作成及び手順書に基づく業務の実施
処方箋医薬品以外の医療用医薬品を販売等する場合は、薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令(昭和39年厚生省令第3号)第1条第2項第4号及び第5号に規定する手順書に、その販売等に必要な手順等を明記する必要があること。また、当該手順書に基づき、適正に業務を実施しなければならないこと。
ス 広告
医薬品を使用しようとする者のみの判断に基づく選択がないよう、引き続き、処方箋医薬品以外の医療用医薬品を含めた全ての医療用医薬品について、一般人を対象とする広告は行ってはならないこと。
(3)不適切な表現
薬局における処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売等は、やむを得ず販売等を行わざるを得ない場合に限られており、次のような表現を用いて、処方箋医薬品以外の医療用医薬品の購入を消費者等に促すことは不適切であること。
・「処方箋がなくても買える」
・「病院や診療所に行かなくても買える」
・「忙しくて時間がないため病院に行けない人へ」
・「時間の節約になる」
・「医療用医薬品をいつでも購入できる」
・「病院にかかるより値段が安くて済む」
また、上記に限らず、やむを得ず販売等を行わざるを得ない場合以外でも、処方箋医薬品以外の医療用医薬品を購入できるなどと誤認させる表現についても同様であること。
るるーしゅ
零売に関しては、やむを得ない場合にのみ必要最低限の量を販売してもいいよという通知を出していたけど、最近零売を主とする薬局が増えてきたから、具体的事例ものせて再周知として出したって感じかな
これはPNBで行き過ぎた広報活動を行うことは(零売)のそもそもの趣旨と反するため、牽制のために再周知を出したことと言ってます。
今回の再周知に至った背景として
さて何故、このようなことが再周知に至ったかというと、ずばり零売を主とする薬局がめちゃくちゃ増えたからでしょうね。
るるーしゅ
少し前まではオオギ薬局とセルフケア薬局しか知らなかったですが、最近たくさんの零売する薬局でていますからね…
数が増えると、どうしても目立ってしまいます。そんなわけで日本眼科医会に目を付けられます。
指摘内容としては、零売のルールとしては、必要最低限なのにまとめ売りの情報がウェブサイトに掲載していること、リスクの高いステロイド点眼薬・眼軟膏も販売していていることを問題視していました。
つづいて今度は薬剤師会のなかでも問題視する意見がでてきます。
日薬としては、零売という言葉を使わずに処方箋医薬品以外の医薬品の販売という表現を使いたいそうです。(個人的にはどうでもいいと思ってます)
今後、零売専門の薬局はどうなる?
今後、増えすぎた零売薬局どうなるんですかね?
私自身、オオギ薬局やセルフケア薬局が出てきたときは、「OTCでいいじゃん」みたいな認識だったのですが、ここまで増えているということは、ニーズがあるってことですよね。
るるーしゅ
これは保険調剤どっぷり浸かっている者の価値観では分からなかったことですね。自分の価値観で物事を考えていたんだなと反省。
とはいえ、今後はり零売メインの薬局を出そうというところは減るんじゃないかなと思います。
日本薬剤師会も政策提言2022の中で医療用一般用共用医薬品(仮称)類型の創設というのを掲げていますし、国としてもスイッチOTCの推進は今後進んでいくのではないかなと。
OTC薬の数も増えて、値段も下がれば、わざわざ零売にこだわる必要はなくなりそうですよね。ただ現状も市販薬では駄目で、零売じゃないとダメという事例がどれくらいあるのだろう?という点は興味津々です。
るるーしゅ
SNS等で情報発信しているから信頼できるみたいなところだと、これはかかりつけ薬剤師の新たなゾーンな気もして興味深い
零売の通知に関する過激派の意見
今回の通知に対しての反応ではないですが、零売薬局の先駆けの薬局アットマークさんの記事が面白かったので、ちょっと紹介します。
「しょせん“通知”は厚労省のお願いに過ぎないから、そんなお願い嫌だと言えばそれだけの話なんです」
2005年ドラッグトピックス 第1818号 薬事法改正以降もなくならない”非処方箋医薬品”の零売より
るるーしゅ
確かに処方箋医薬品の販売はのっているけど、処方箋医薬品以外の医薬品の販売については罰則なども設けられていませんからね。
今回の厚生労働省からの再周知の案内は、薬局アットマークさんの事例のように、通知だから無視してOKとするのか個人的に気になっています。
無視していると、そのうち日本医師会の定例記者会見で取り上げられたりして、肩身が狭くなったりしないかなと思ってしまいます。
最後に
今回はいまをときめく零売薬局について、PNBのニュース記事などを参考にまとめてみました。
薬剤師の中でも処方箋医薬品以外の医薬品の販売に対して、肯定的な人もいれば、否定的な人もいると思います。
私の意見としては、医師の薬剤師不在の院内調剤は問題視するくせに、薬剤師による零売は肯定するのってダブルスタンダードな気がするんですよね。
医師の診断というのは専門性が高いので、現状の処方箋医薬品以外の医薬品に該当しても薬剤師による臨床推論だけで販売するのは不適切な医薬品はあると思います。それこそ、日本眼科医会が問題視したステロイド点眼とかはそうですよね。
るるーしゅ
あとは医薬品の使用における避けることのできない重大な副作用のリスクですよね。
零売だからといって、副作用の給付が受けられないわけではないようですが、適切な使用だったのかが論点になった際、医師による診断があったうえでの使用だったのかは問われそうですよね。
例えばシングレア®の使用で起きた場合(何が起きるか知りませんが)
仮にの話なので、「んなことあるかい」みたいなツッコミはなしで、このケースは適切な使用だと思います。
こっちのケースですと、多分、適切な使用だったのか担保できそうな気はしませんよね。
個人的見解なので、実際の事例が出た際にどのように判断されるか分かりませんが、一応可能性の話として、このあたりも考慮しないといけないのではないかなと思います。
最後は余談も含めましたが、零売を取り巻く状況について、簡単にまとめてみました。