2023年6月30日に厚生労働省がオンライン診療や遠隔診療の普及がまだまだなので、「オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針」を発表しました。
この基本方針とともに、すでにオンライン診療や遠隔診療を実施している15の好事例を共有しました。
基本方針を策定する上で、オンライン診療を導入している医療機関及び地域における遠隔医療の導入を支援する自治体に対して、導入経緯や取組の特徴、課題と解決策、導入効果等を書面調査及びヒアリングを実施いたしましたので、事例集としてまとめさせていただきました。本事例集には、地域特性や診療科などの異なる医療機関 13 件及び自治体2件の事例を掲載しております。これから遠隔医療を導入することを検討している医療機関やその支援を進めようとしている自治体の皆様にとって有効に活用され、普及促進につながることを期待しております。
オンライン診療その他の遠隔医療に関する事例集のはじめにより
しかし、この好事例として紹介している内容が不適切ではないか?ということで、業界紙に取り上げられ、その結果、現在はこの事例集は非公開になりました。
この事例集がどのような内容だったか気になる薬剤師の方も多いと思いますので、記録として残しておこうと思います。
るるーしゅ
国が療担規則に違反しているような内容を好事例と紹介するのは本当にギャグです。
目次
事例集の中で問題になった部分
このオンライン診療等の事例集は、これをまだ実施していない医療機関が参考にするための事例集として作成されたものです。
事例集には、紹介してくれた医療機関の①基本情報、②導入経緯、③実施しているオンライン診療の特徴(利用方法、利用する患者像、職員や患者への理解促進、薬剤の処方・調剤の処方、受診料の回収方法、その他の工夫)、④課題と解決策、⑤導入効果が記載されています。
今回、問題視されたのは薬剤の処方・調剤の処方の部分です。
薬剤の処方・調剤の処方
オンライン診療実施後に処方箋を発行してから薬を患者へ届けるまでの方法を記載している。
療担規則違反疑い事例:処方箋の誘導では?
それでは、紹介されている好事例のなかで療担規則違反が疑い事例として、処方箋を特定の薬局に誘導しているのではないかというものがありました。
(薬剤の処方・調剤の方法)
処方箋は、主に当該医療機関指定の薬局へ FAX で送付している。薬の受取については、薬局から患者宅へ配送している。患者が希望する場合には、処方箋を患者宅へ配送し、近隣の薬局で薬を受け取る方法でも対応している。
こちらの内容が好事例として紹介されていました。
薬局で勤務している方なら、ピンとくると思いますが、特定保険薬局への誘導の禁止に抵触している可能性があります。
保険医療機関及び保険医療養担当規則第 2 条の 5
保険医療機関は、当該保険医療機関において健康保険の診療に従事している保険医(以下「保険医」という。)の行う処方せんの交付に関し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行ってはならない。
なお、この医療機関のウェブサイトでは、このような不適切な内容は記載されていません。
診察が終わりましたら処方箋をご自宅に郵送いたします。届いた処方箋をかかりつけの薬局にお持ちください。また薬局よっては薬を直接郵送していただくことが可能な場合があります。対応しているかどうかは薬局に直接お問い合わせください。
特定の薬局ってどこだったんですかね?
メガネ
るるーしゅ
このクリニックから一番近いのは、なの花さんだけど、どこが特定の薬局かまでは分からないな…
ちなみに、紹介されている事例集の中で他のところ(適切)なところは以下のように記載されています。
(薬剤の処方・調剤の方法)
処方箋は、患者宅への配送又は患者から指定された薬局への FAX、オンライン服薬指導のいずれかを患者が選択している。薬の受取については、患者に直接薬局へ行ってもらうか、もしくは薬局から患者宅へ配送してもらうかのいずれかの方法を患者が選択している。
違反疑い事例:看護師が調剤?
つづいての内容ですが、ちょっとこれは私も何に違反しているのかあまりわかっていないのですが、離島でのオンライン診療の事例です。
(薬剤の処方・調剤の方法)
島内に薬局がないため、電子カルテ上で処方箋を発行し、看護師が薬を包装して手渡すという形で院内処方を行っている。院内に在庫がない薬を処方する場合には、その場で処方箋を印刷・交付して、患者に本土の薬局まで行ってもらうこともある。
(薬剤の処方・調剤の方法)
島内に薬局がないため、電子カルテ上で処方箋を発行し、〇〇診療所で看護師が薬を包装して手渡すという形で処方を行っている。〇〇診療所に在庫がない場合、必要な薬を自治体が手配して診療所へ配送し、次回来院時に手渡している。
離島で薬剤師いないんだから、仕方ないじゃないかとも思いますが、離島等の診療所における医師及び薬剤師不在時の医薬品提供の考え方についてという通知が出ているんです。
この通知のなかで、看護師が荒天時などで薬剤師が離島に行けない場合にのみなので、常に看護師にやらせちゃダメみたいです。(わたしも知りませんでした)
日頃から薬事行政に対して御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。薬剤師法(昭和35年法律第146号)第19条の規定に基づき、医師等が自己の処方箋により自ら調剤するときを除き、薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならないとされております。今般、「令和3年の地方からの提案等に関する対応方針」(令和3年12月21日閣議決定)において、「離島等の診療所において、荒天等により医師及び薬剤師が渡航できないことにより不在となる場合において、当該診療所に従事する医師が患者に対して遠隔でオンライン診療を行った場合の調剤については、当該医師又は薬剤師が、映像及び音声の送受信による方法で、当該診療所の看護師又は准看護師が行うPTPシート等で包装されたままの医薬品の取り揃えの状況等を確認することで、当該医薬品の提供を可能とすることの考え方や条件等について検討し、令和3年度中に結論を得る。その結果に基づいて必要な措置を講ずる。」とされたことを受け、離島等の診療所における医師及び薬剤師不在時の医薬品提供の考え方について下記のとおり整理しましたので、業務の参考としていただくとともに、その取扱いに遺漏のないよう、貴管内の医療機関、薬局等に対し周知をお願いします。
- 地域における医薬品提供体制については、薬剤師又は医師が調剤したものを供給できる体制を整えることが前提であり、そのために関係部局及び関係団体等が協議・連携して、都道府県の医療計画等に基づき、薬剤師の確保、医療提供施設相互間の連携等により地域の実情に応じた医薬品提供体制の構築に取り組み、当該医薬品提供体制の構築について地域で合意が得られていることが重要であること。
- ①の取組を行った上で、離島等の診療所において、荒天等により医師及び薬剤師がやむを得ず不在となる場合において、当該診療所に従事する医師が遠隔でオンライン診療を行った場合の調剤について、当該医師又は薬剤師が、当該診療所の看護師又は准看護師に処方箋に記載された医薬品(当該診療所内において適切に保管・管理されているものであって、PTPシート又はこれに準ずるものにより包装されたままの医薬品に限る。)の必要量を取り揃えるよう伝え、映像及び音声の送受信による方法で、その取り揃えの状況や取り揃えられた薬剤が処方内容と相違がないか等を確認した上で、当該診療所の看護師又は准看護師が、患者に当該薬剤を渡すことは差し支えないこと。
- ②による行為は、当該医師又は薬剤師の責任の下、実施されるものであること。
- 診療所の管理者は、当該診療所において、⓶を行うことが想定される場合にあっては、保健衛生上支障を生ずるおそれのないよう、適切な医薬品の管理、当該業務の実施に係る手順書の整備、当該業務を実施する者に対する薬事衛生上必要な研修の実施その他の必要な措置を講じること。
最後に
今回は厚生労働省がオンライン診療の推進するための好事例と紹介していた内容が、実は不適切という「何やってんの?馬鹿なの?」案件を紹介しました。
お役所仕事だから、こういうところはしっかりしているかと思いきや、案外ザルなこともあるんだなと思いました。(尚、本件は薬剤系の技官は関与していなかったことが要因なのかもしれません)
たいした内容ではないですが、こんなギャグみたいなことがあったんだよということで記録として残しておこうと思います。
るるーしゅ
ちなみに非公開になった事例集ですが、普通にネット上に転がっています。
上記で見つけられると思います。