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薬局薬剤師で医学論文を読んでいる人は12人に1人?

「薬剤師なら、添付文書だけでなく原著論文にあたるべき」

正論です。ぐうの音も出ません。しかし、毎日何十枚もの処方箋を監査し、投薬し、薬歴を書いている日々のなかで、ゆっくり腰を据えて英語の論文を読む時間がどれだけあるでしょうか?

今回は、少し耳の痛いデータを直視しつつ、「論文を読める」というスキルが、これからの薬剤師キャリアにおいてどういう意味を持つのか(あるいは持たないのか)、現実的なラインを探っていきます。

根性論で「読め」とは言いません。ただ、読める側に行くと「何が回収できるのか」について、判断の材料を共有します。

そもそも、日本の薬剤師は論文を読んでいるのか?

まずは現状把握から始めましょう。少し前のデータになりますが、宮城県の薬剤師を対象にした興味深い(そしてシビアな)調査結果があります。

データで見る「12人に1人」の現実

病院薬剤師と薬局薬剤師で、論文に接する頻度にどれくらいの差があるかご存じでしょうか。以下の表をご覧ください。

質問項目病院薬剤師 (n=342)薬局薬剤師 (n=254)
日常的に論文を読む習慣がある19.5%8.3%
業務上、論文を読む必要があると思う85.8%74.4%
読めない理由(1位)時間がない (43.1%)時間がない (41.4%)
読めない理由(2位)言語の壁 (26.9%)医学論文にアクセスできない (19.7%)
(出典:石井勇太, et al. Yakugaku Zasshi 140.9 (2020): 1195-1198. より筆者作成)

薬局薬剤師で「日常的に読む」と答えたのは8.3%。つまり、およそ12人に1人しか読んでいません。

ここ、誤解されやすいので先に言うと、薬局薬剤師の意識が低いわけではありません。「読む必要がある」と感じている人は7割を超えています。問題は、「必要性は感じているが、物理的・環境的にできていない」という構造にあります。

正直、このデータって数年前のものですよね?今は認定薬局制度とかかかりつけ機能の強化で、もっと増えてるんじゃないですか?

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

鋭いですね。確かに意識は高まっていますが、劇的に改善したとは考えにくいのが現場の実感です。むしろ業務が多様化して『時間はもっとない』という状況かもしれません。

なぜ「論文読解」がキャリアの分水嶺になるのか

「みんな読んでないなら、私も読まなくていいのでは?」
そう思うのが普通です。しかし、私なら「逆に言うと、ここがブルーオーシャンだ」と判断します。理由は以下の2点です。

1. 医師との「共通言語」を持つため

医師への疑義照会やトレーシングレポート(服薬情報提供書)を書く際、添付文書レベルの情報だけでは「それは知ってるよ」で終わるリスクがあります。

医師が薬剤師に期待する知識として「大規模な臨床試験の結果」を挙げる声は少なくありません。
「ガイドラインではこうですが、今回の患者さんの背景(腎機能や併用薬)を考えると、〇〇という文献のデータが参考になるかもしれません」
この一言が言えるかどうか。これが、単なる「薬の渡し役」から「薬物療法のパートナー」へ変わる境界線です。

2. 「なんとなくの慣習」から脱却するため

現場だとここで詰まりがちです。「先輩がこう言っていたから」「前の病院ではこうだったから」という、根拠のない慣習。

これを断ち切るには、一次情報(論文)というファクトが必要です。リスク管理の観点からも、誰も守ってくれない「伝言ゲームの情報」より、自分で確認した「エビデンス」を持つほうが安全性が高いのは間違いありません。

でも英語ですよ? Google翻訳やDeepLを使っても、専門用語ばかりで時間が溶けていくのが怖いです…。

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

全部を精読する必要はありません。まずはAbstract(要旨)の結論部分だけ見る、あるいは日本語の信頼できる解説記事から原著へ飛ぶ、という『つまみ食い』からで十分ですよ。

病院から薬局へ、薬局から専門職へ

キャリアの視点でこのデータをどう使うか、ポジション別に整理します。

病院薬剤師の方へ:そのスキル、薬局では「レアカード」です

もしあなたが病院勤務で、日常的に論文を検索し、DI業務を行っているなら、そのスキルは調剤薬局市場において極めて希少価値が高いと言えます。

専門医療機関連携薬局など、薬局の機能分化が進む中、「ポリファーマシーの解決」や「高度な薬学的管理」ができる人材のニーズは高まっています。
「病院より給料が良いから」という理由だけで転職するのも一つですが、「あなたの当たり前が、薬局業界のレベルを引き上げる」という視点でキャリアを選ぶと、待遇交渉でも強気に出られます。

薬局薬剤師の方へ:環境を変えるか、自分が変わるか

今、薬局にいて「勉強したいのに、論文なんて読んでると白い目で見られる」という場合。ここ、心当たりありませんか?
「意識高いね(笑)」と揶揄されるような環境であれば、それは「組織が腐っている」サインかもしれません。

ドラッカーは「自分がところを得ていないとき」は辞めるべき時だと示唆しています。
もし職場が学習を阻害するなら、以下の2ステップで動きます。

  1. 小さなアウトプットを見せる
    「この論文によると、この副作用モニタリングが必要みたいです」と、患者さんの利益になる形で還元する。
  2. それでも評価されないなら転職
    学習意欲を「コスト」ではなく「投資」と捉えてくれる薬局は必ずあります。

じゃあ、明日からPubMedで論文検索して、薬局長に見せればいいんですね!

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

待ってください、いきなり業務中に読みふけるのはNGです。まずは患者さんへの回答など、必要に迫られたタイミングで『根拠を探す癖』をつけるところから始めましょう。

まとめ:判断軸は「自分を守れるか」

記事のまとめ
  • 現状: 薬局薬剤師で日常的に論文を読むのは約8%(12人に1人)。
  • 課題: 時間と言語の壁が大きいが、裏を返せば「読めるだけで差別化」になる。
  • 判断軸: 医師との対等な連携やリスク管理のため、EBMスキルは必須になりつつある。
  • 行動: 環境が許さないなら、そのスキルを評価してくれる場へ移動するのも手。

私ならまず、「今月の気になった処方」について、一つだけでいいのでガイドラインや論文のAbstractを確認してみることから始めます。

いきなり英語論文を読みこなす必要はありません。ただ、「誰かが言っていたこと」ではなく「検証された事実」を情報源にする。この習慣の積み重ねが、5年後、AIにも代替されないあなたの「信頼」を作ります。

もし、読み方がわからない、基礎から学びたいという場合は、記事中でも紹介されていた書籍などを手に取ってみるのも良い投資です。

参考資料・一次情報
・中川直人, et al. “日本および米国における薬剤師の臨床試験の論文利用に関する比較調査.” 医薬品情報学 19.4 (2018): 180-187.
・石井勇太, et al. “臨床試験論文の利用に関する薬剤師の実態調査.” Yakugaku Zasshi 140.9 (2020): 1195-1198.

コロロ

コロロ

前任者がブログを閉鎖すると聞き、直接ご連絡させていただいた上で、私が引き継ぐ運びとなりました。臨床現場での実践経験を背景に、エビデンスに基づいた薬学情報や最新の業界動向、実用的なスキルをこれまで以上に分かりやすくお伝えして参ります。

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2 件のコメント

  1. いつも楽しみに拝見しております。
    私自身の所感ですが、どういったことに対してみればいいのかがわからないというのが正直なところですね。ですので、読み方を勉強しないと・・・といったところですね。

    • >ピソピソさん
      楽しみにしていただいて、誠にありがとうございます。
      確かに目的もなく読むのって難しいかもしれないですね。
      当たり前のように効くと思っている薬がプラセボと比較して
      どれくらい効くんだろう?みたいなのをまずは審査報告書から
      見つけて読んでみるってのがいいかもしれないですね。

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