新型コロナウイルス感染症の第七波が想定以上の感染者を出しているため、カロナール(アセトアミノフェン)の安定供給が不安視されています。
今回は仮にカロナールが使えなくなった場合に困らないように、あらかじめ考えておこうと思います。
目次
感染症時の対症療法としての場合
まずは新型コロナに罹患した際に対症療法として使用する場合についてです。
現在、流行中のBA.5は症状が平均7日程度と初期のオミクロン株より長引くことや発熱、咽頭痛があるようですのでそれに対応するために需要が増えているのだと思います。
ロキソプロフェンやイブプロフェンじゃダメなんですか?
メガネ
るるーしゅ
それでいいと思う。
新型コロナ流行初期に理論的根拠でNSAIDsの使用は重症化リスクをあげるというのが出たので、使いづらいイメージあるけど、今のところ重症化リスクが上がるという報告はないからね
これが一応メタ分析で、NSAIDsの使用がリスクをあげるというデータは示していないよってやつです
Zhou, Qi, et al. “Use of non-steroidal anti-inflammatory drugs and adverse outcomes during the COVID-19 pandemic: A systematic review and meta-analysis.” EClinicalMedicine 46 (2022): 101373.
対症療法としてカロナールが使用できない場合は、ロキソプロフェンやイブプロフェンでいいと思います。
CKD患者について
つづいて頭を悩ませるケースとしては、CKD患者さんですよね。CKD患者さんにはNSAIDsは使用せずに、カロナールを使用するのが一般的だと思います。
もし本当にカロナールが入手困難で別の代替薬を使用しなければいけない場合はどうするか?
ロキソプロフェン、イブプロフェン、セレコキシブってところですかね?
セレコキシブは選択的COX-2阻害薬なのでいいのでは?
メガネ
るるーしゅ
そこは悩ましいところだと思う。選択的COX-2阻害薬でも腎障害のリスクは同等だったという研究がでているからね。
Zhang, Xinyu, et al. “Non-steroidal anti-inflammatory drug induced acute kidney injury in the community dwelling general population and people with chronic kidney disease: systematic review and meta-analysis.” BMC nephrology 18.1 (2017): 1-12.
るるーしゅ
ちなみにセレコキシブは他のNSAIDsと比較して腎障害リスクが低いという報告もでているようです
るるーしゅ
いよいよ少なくなってきたら高齢者やCKD患者さんへの使用を優先する通知を専門学会に期待したいですね
- GFR<30mL/分/1.73m2では投与を避ける。
- GFR<60mL/分/1.73m2では長期投与は推奨されない。
- リチウム使用中は投与しない。
- RAS阻害薬の使用中は投与を避ける。
上記は腎臓病薬物療法コンサルテーションにて紹介されていたNSAIDs使用時の注意事項です。こういったリスクの高い患者には注意しなければいけないと覚えておく必要はありそうですね。
カロナール細粒20%、カロナールシロップへの対応
あゆみ製薬から発表がありました。
カロナール細粒20%とカロナールシロップ2%は限定出荷ではなく、出荷停止ということでした。これは小児科や耳鼻科の門前の薬局はけっこう大変ですよね。
カロナール細粒20%やカロナールシロップを使用している薬局が多いと思います。カロナール細粒50%も出荷調整なので実績がない以上、切り替えは難しいです。
るるーしゅ
2017年にカロナール細粒の原薬不正問題で供給問題起きたときと同様の対応が必要になるかもですね
カロナール錠も出荷調整のため、在庫が潤沢にあるわけではないですが、カロナール錠の粉砕で対応する場合は以下の記事を参考にするのをオススメします。
要望書が2022年7月29日にでていましたので共有します。
内容については、日本小児科学会からアセトアミノフェン製剤の要望書がでているので、その対応という感じですかね。
一応、内容を転載します。
アセトアミノフェン製剤の安定供給について
医薬品の安定供給につきましては、平素より御尽力いただき、厚く御礼申し上げます。
今般、新型コロナウイルス感染症患者の増加に伴い、その治療薬であるアセトアミノフェン製剤の需要が急増していると承知しています。
ついては、別添の日本小児科学会からのアセトアミノフェン製剤の安定供給に関する要望等をふまえ、小児など必要とされている方へ安定的に継続してアセトアミノフェン製剤の供給することができるよう、下記のとおりの対応について、貴管下関係医療機関、薬局及び医薬品卸売販売業者等へ周知いただきますようお願いいたします。
記
- アセトアミノフェン製剤については、返品が生じないよう、買い込みは厳に控えていただき、当面の必要量に見合う量のみの購入をお願いしたいこと。
- 解熱鎮痛薬として、アセトアミノフェン製剤だけでなく、代替薬として他の解熱鎮痛薬(イブプロフェン、ロキソプロフェンなど)の使用についても考慮していただきたいこと。
その際、1.と同様に買い込みを厳に控えていただきたいこと。
つづいて日本小児科学会から要望書です。
小児用アセトアミノフェンの安定供給に関する要望書
日頃より小児医療にご理解ご高配いただき感謝申し上げます。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、診療に必要となる薬剤の需要が増加している状況から、薬剤によっては供給不足が懸念をされております。
小児、特に乳幼児においては、感染に伴う発熱に対する解熱剤としては、ほぼアセトアミノフェンのみが使用されております。これは、他の解熱剤の使用が急性脳症の発症に関連することなどから、安全性の観点よりアセトアミノフェンを第一選択として、診療が行われております。
現在、多くの乳幼児を含む小児が新型コロナウイルス感染症に感染しており、その診療にアセトアミノフェンの必要度は高く、もし供給不足に問題が生じますと小児医療に多大な影響を与えることこととなります。
こうした特殊な小児医療の状況をご理解いただき、小児用のアセトアミノフェン製剤の安定的な供給を国として確保いただきます様に要望を致します。
終わりに
今回はカロナール(アセトアミノフェン)がもし枯渇するならどうしよう?ということを考えてみました。
全然想定しているケースが少ないので、あとで追記等しなきゃいけないですが、とりあえずやっつけで思ったことをまとめてみました。
「こういうケースではこっちがいいと思いますよ」等々、ご専門の方々アドバイスいただけますと幸いです。