現在、日本は新型コロナウイルス感染症の第七波の直面しており、新型コロナとの向き合い方を考えなければいけないと頭では分かっているけど、「いやいや、やばいでしょ」という状況だと勝手に思っています。
そんなこんなの状況ですが、先日7月22日に岸田首相が「医療従事者も4回目のワクチン接種を推奨する」ということを発信したため、医療従事者の方たちは「4回目接種したほうがいいの?」となっていると思います。
というわけで今回は新型コロナワクチンの4回目接種の是非について自分なりにまとめてみます。
目次
4回目の新型コロナワクチンの有効性は?
新型コロナワクチンの4回目接種の有効性について、簡単に表で示します。
研究 | 国 | デザイン | P | E | C | O | 有効率 | 追跡期間 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Breznik et al (June 29, 2022) | カナダ | 前向き コホート | 老人ホームの 入居者997名 | P社or M社 | 3回目 | 感染症の 確認 | 81 (70-88) | ~15週 |
Muhsen et al (June 23, 2022) | イスラエル | 後ろ向き コホート | 介護施設の 60歳↑の 入居者 43,775人 | P社 | 3回目 | ①感染 ②入院 ③重症 ④死亡 | ①36 (31-40) ②66 (57-73) ③72 (61-80) ④76 (58-87) | ~12週 |
Magen et al* (April 13,2022) | イスラエル | Target trial | 60歳以上 364,244 | P社 | 3回目 | ①感染 ②発症 ③入院 ④重症 ⑤死亡 | ①52 (49-54) ②61 (58-64) ③72 (63-79) ④64 (48-77) ⑤76 (48-91) | ~4週 |
るるーしゅ
こう見ると効果あるじゃんって思うかもしれませんが、2ヵ月くらいすると感染予防効果がすごく下がってくることを示しているデータもあります。
またウイルス量も4回目接種しているから少ないということもないようです。
NEJMでこんな風に記載されています。
Furthermore, we observed low vaccine efficacy against infections in health care workers, as well as relatively high viral loads suggesting that those who were infected were infectious. Thus, a fourth vaccination of healthy young health care workers may have only marginal benefits.
さらに、医療従事者の感染症に対するワクチン効果は低く、また、ウイルス量が比較的多いことから、感染症に感染していることが示唆されました。したがって、健康な若い医療従事者への4回目のワクチン接種は、わずかな効果しかない可能性がある。
Regev-Yochay, Gili, et al. “Efficacy of a fourth dose of COVID-19 mRNA vaccine against omicron.” New England Journal of Medicine 386.14 (2022): 1377-1380.
なんで今まで対象ではなかったのに対象になったの?
4回目接種の対象者の考え方については、
2022年4月27日の検討においては、4回目接種の感染予防効果は限定的であるというエビデンス、諸外国状況等を踏まえ、4回目接種の対象者は
① 60歳以上の者及び
② 18歳以上で基礎疾患を有する者その他重症化リスクが高いと認める者とされた。
ただ、7月に入ってから、新規感染者が急速に増加している。そしてWHOが医療・介護従事者へのmRNAワクチンによる4回目接種は短期的な利点が示されているとの見解が示された。
4回目接種について、未査読のものを含め、新たな知見があるものの、4回目接種の感染予防効果は限定的との
エビデンスに特段変わりはない。
- 新規感染者が急速な増加傾向にあることから、重症化リスクの高い者が多数集まる医療機関・高齢者施設等において従事者を通じた集団感染が生じ、重症者が発生することや、医療提供体制に影響が生じることが懸念される。
- このため、4回目接種の感染予防効果は限定的とのエビデンスに特段変わりはないものの、医療機関・高齢者施設等の従事者であって、60歳未満のものに対する4回目接種を、予防接種法に基づく予防接種として位置付けることとする。
- 具体的には、重症化リスクが高い多くの方々に対してサービスを提供する医療機関や高齢者施設・障害者施設等の従事者を対象とする。
るるーしゅ
平時では、4回目のワクチン接種の感染予防効果は期待できない(有効期間が短い)から推奨しないけど、第七波の非常時ではこの短い期間の感染予防効果でも医療を逼迫させないために重要と判断されたわけです。
新型コロナワクチンって副反応が強い部類のワクチンなので新型コロナという重大な疾患の重症化を予防するなどの名目がなければ、許可されなかったという専門家の話を聞いたことがあります。
そのため2回目、3回目で強い副反応に悩まされた医療従事者にとっては4回目接種はなかなか悩ましいのではないかなと思います。
第七波ってやばいの?
今回のBA.5による第七波は結構やばい数の感染者が出ていると思いますが、遅れて重症者、死者が増えてくると思います。
海外のいくつかの国ではすでにBA.5による感染も落ち着いているところがありますが、そういう国ってBA.1による大きな感染があったうえでBA.5を乗り切っています。
日本もBA.1による感染拡大はあったのですが、海外と比較するとうまく乗り切っています。BA.1に罹っていればBA.5に罹るリスクは低い(予防効果93%というデンマークからの報告)ようですが、日本では多くの人が罹っていない。(BA.5に対する防御力が低い状態です)
そしてワクチンの有効率も減弱している、日本の夏はクソ暑いからエアコンつけて換気が不十分、行動制限もあまりできていない等、要因が重なり、本当にまずい状態になるんじゃないかなと危惧しています。
るるーしゅ
さらにBA.5は入院するリスクも高いことが示唆されているのでマジでやばそうですね
だから、上記で示した短期間の感染予防効果でも、この感染力の強いBA.5の流行状況を鑑みると、接種したほうがいいという意見もあります。
Cohen, Matan J., et al. “Effectiveness of the BNT162b vaccine fourth dose in reducing SARS-CoV-2 infection among healthcare workers in Israel, a multi-center cohort study.” medRxiv (2022).
諸外国の4回目接種の対応状況につい て
るるーしゅ
ドイツとイスラエルくらいですね、医療従事者も対象にしているのは
最後に
医療従事者への4回目のワクチン接種は賛否分かれるんだろうなと思います。変異株対応の新しいワクチンが秋ごろに出るようですが、現状の抗体価のデータからは期待できなさそうなんですよね…
るるーしゅ
BA.5には従来型と変わらなさそうというのと、次に流行する株に効果があるかはまた別の問題になりそうなので…
ハイリスクではない方への4回目接種は得られるベネフィットが乏しいですが、そのベネフィットも今の日本では必要なのかもしれませんね。
とはいえ、私自身、みんなに「4回目接種しようね」と強く言えないというのが正直なところですね。
ちなみに3回接種が完了していて、一度罹患しているような人は4回目の接種は必要ないと思っています。
2回目、3回目でも強い副反応出てしまった人は、4回目でも同様に強い副反応出ると思いますので、そのあたり本当に悩ましいと思います。