「かかりつけ薬剤師の契約、今月は何件とれた?」
この言葉を聞くたびに胃がキュッとなる方、いませんか。私も以前、毎日のように上司からプレッシャーをかけられ、患者さんの顔を見るより数字のことばかり考えていた時期がありました。
かかりつけ薬剤師制度が始まって約10年。2025年は「患者のための薬局ビジョン」で掲げられた「すべての薬局がかかりつけ薬局になる」目標年次でしたが、中医協の資料でも「十分に達成されたとは感じられない」と率直に認められています。制度の理念と現場の実態には、まだ大きな溝があるのが正直なところです。
この記事では、最新の調査データをもとに、かかりつけ薬剤師のノルマの現状を整理し、「このまま続けるか、環境を変えるか」を判断するための軸をお伝えします。
目次
かかりつけ薬剤師のノルマ、そもそもなぜ存在するのか

ノルマと聞くと、それだけで嫌な気持ちになりますよね。でも、ここは一度冷静に「なぜノルマがあるのか」を整理しておきたいところです。
かかりつけ薬剤師指導料は76点。通常の服薬管理指導料(45〜59点)より高く設定されています。会社からすれば、算定件数を増やすことは収益に直結します。だから数字で管理したくなる、という構造自体は理解できます。
でも、患者さんがそもそも望んでいないなら、声をかけること自体が押し売りみたいで気が引けるんですが…

オカメインコ

ポッポ先生
そこ、よく言われます。ただ、過去の調査では「費用が高くなってもかかりつけ薬剤師を持ちたい」と答えた患者さんが15%程度いた一方で、実際の算定実績は5%程度にとどまっています。つまり、本当は必要としている患者さんに届いていない可能性もあるんですね
私ならまず、「ノルマ=悪」と決めつけず、患者さんのニーズを掘り起こす手段として機能しているかどうかで判断します。ただし、ここで注意したいのは「数字の妥当性」と「達成できないときの扱い」です。来局患者の50%を取れ、なんて目標は現実的ではありません。
2025年の最新データ―中医協資料から見えてきた現状

では、実際にどれくらいの薬局でノルマが課されているのでしょうか。
令和7年度の薬局および医療機関における薬剤師の業務実態調査によると、業務ノルマを課している薬局は全体の17.2%でした。そして、ノルマがある薬局のうち、約半数がかかりつけ薬剤師指導料の算定回数や同意件数をノルマに設定しています。
| ノルマの内容 | 割合 |
|---|---|
| トレーシングレポートの件数 | 56.8% |
| かかりつけ薬剤師指導料の算定回数 | 53.5% |
| かかりつけ薬剤師指導料の同意の件数 | 50.5% |
| フォローアップの件数 | 43.6% |
| 残薬整理に係る業務の件数 | 24.4% |
| ポリファーマシー対策に係る取組の件数 | 17.8% |
ここ、心当たりありませんか。トレーシングレポートやフォローアップもノルマ化されている薬局が多いんです。
17%って、意外と少なく感じますけど…

オカメインコ

ポッポ先生
数字だけ見るとそう見えますね。ただ、問題はノルマの有無より「達成できないときにどう扱われるか」です。毎日のように詰められる環境と、目標として提示されるだけの環境では、精神的な負荷がまったく違います
もうひとつ気になるデータがあります。認定NPO法人COMLに届く患者さんからの相談です。
COMLに届く相談の声
- 「初めて会った薬剤師から『私をかかりつけにしてください』と軽く頼まれて戸惑った」
- 「薬局に行くたびに同意を求められるので、薬局に行くのが苦痛」
- 「話しやすいA薬剤師に頼みたかったのに、資格がないからとB薬剤師を勧められ困惑」
これ、現場で働いていると胸が痛くなりませんか。私たちも本当は丁寧に関係を築いてから声をかけたい。でもノルマがあると、どうしても声かけが先になってしまう。中医協資料でも「患者がかかりつけ薬剤師を選ぶような構造になっていない」と指摘されています。
ノルマに苦しむとき、どう判断すればいいか

「つらい」と感じたとき、すぐに辞めるべきか、もう少し頑張るべきか。ここ、迷いやすいところです。
私なら、次の3つの軸で整理します。
1. 精神的な負荷は許容範囲か
出勤前に動悸がする、患者さんの顔を見ても数字のことしか考えられない、休日も仕事のことが頭から離れない。こうした状態が2週間以上続いているなら、それは「頑張りどき」ではなく「逃げどき」のサインです。
2. 会社の評価軸と自分の価値観は合っているか
会社がかかりつけ件数を重視しているのに、自分は調剤の正確性や患者対応の質で評価されたいと思っている。このズレが大きいと、どれだけ頑張っても報われない感覚が続きます。
3. 改善の余地はあるか
上司に相談して配慮してもらえる可能性はあるか、異動で解消できるか。社内で解決できる選択肢を一度は検討したほうが安全です。
正直、上司に相談しても「もっと頑張れ」で終わりそうで…

オカメインコ

ポッポ先生
その感覚、大事にしてください。相談しても改善されない、むしろ悪化する、という場合は社内での解決が難しいサインです。そのときは外部の選択肢を持っておくことが心理的な安全につながります
具体的な対処法と転職という選択肢

では、具体的にどう動けばいいか。状況別に整理します。
かかりつけ契約がゼロで詰められている場合
誤解されやすいので先に言うと、契約ゼロのまま「かかりつけなんかやりたくない」という姿勢を貫くのは、大手チェーンでは難しいです。会社の方向性と明らかに合っていないなら、中小薬局など別の環境を探したほうがお互いにとって良い結果になることが多いです。
達成不可能なノルマを課されている場合
まずは客観的な視点を入れることをおすすめします。社内の別の人(他店舗の先輩など)や、社外の友人に状況を話してみてください。「それは無理だよ」と言われるなら、あなたの感覚は正しい。
精神的に限界を感じている場合
無理に頑張り続けないでください。
転職エージェントに登録しておくだけでも「逃げ道がある」という安心感が生まれます。いまの状況では転職の決心がついていなくても、相談に乗ってもらえるところは多いです。
\ 悪質な転職サイトは利用しないで /
薬剤師が転職する際に利用する人材紹介会社(転職エージェント)、どこも同じだと思っていませんか?
現在、国は医療の分野において紹介料目当てで頻繁な転職を促す悪質な人材紹介会社への対策を強化しています。

ポッポ先生
悪質な人材紹介会社の利用は、ミスマッチする可能性が高いです。
このような悪質な人材紹介会社には絶対に相談してはダメです!!(悪質とは言っても国の許可を得ているという矛盾もありますが…)
薬剤師が、キャリア相談や転職時に、転職エージェントを利用する場合は、適正な有料職業紹介事業者の認定を受けている転職エージェントを利用しましょう。
薬剤師の分野で優良認定を受けているところは、ファルマスタッフ、その他数社とまだ少ないです。
悪質な人材紹介会社がどこか分かれば対策しやすいのですが、そのような情報はなかなか表に出てきません。なので我々としては、優良認定を受けているところを優先するのが望ましいでしょう。
でも、転職って準備が大変そうで、今の状態だとそこまで気力が…

オカメインコ

ポッポ先生
最初から全部やろうとしなくて大丈夫です。まずは登録だけ、面談だけ、自分の市場価値を聞くだけ。小さく始めて、動ける範囲で動くのが続けやすいです
転職先選びで確認しておきたいこと
- かかりつけ薬剤師のノルマがあるか
- 達成できないときの扱いはどうか
- 人事評価で何を重視しているか
- 診療科の特性(ニーズに差がある)
口コミサイトの情報には報告バイアスがあるので、参考程度にとどめ、面接時に直接聞くのが確実です。
まとめ:判断軸を持って、小さく動く

かかりつけ薬剤師のノルマは、制度の構造上、今後もなくなる可能性は低いと私は見ています。中医協でも問題点は認識されていますが、すぐに点数体系が変わるわけではありません。
だからこそ、「自分はどこまで許容できるか」「この会社の評価軸と自分は合っているか」を言語化しておくことが大事です。
次の一歩として
- 今の状況を紙に書き出す(何がつらいのか、どうなれば楽になるのか)
- 社内で解決できる選択肢があるか検討する
- 転職という選択肢を持っておくかどうかを決める
追い詰められたら、無理せず逃げてください。あなたが健康に働ける場所は、必ずあります。
確認先(一次情報)
- 令和7年9月10日 中央社会保険医療協議会 総会資料「調剤(その1)」
- 令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査「かかりつけ薬剤師・薬局の評価を含む調剤報酬改定の影響及び実施状況調査」
- 令和7年度薬局および医療機関における薬剤師の業務実態調査


