保湿剤はいつ塗るべきなのか?
患者さんの中には、医師からはお風呂あがりにすぐに保湿剤を塗るように言われたけど、薬局で薬剤師に別にお風呂あがりすぐに塗っても効果は変わらないからどっちでもいいという指導をうけて、どうなんだろう?と思ってしまった経験があるのではないでしょうか?
今回は薬剤師の立場で、何故そのような医師と薬剤師で意見が割れてしまうのか、そして保湿剤はどのタイミングで塗ったほうがいいのかをアドバイス致します。
保湿剤の塗るタイミングって、どっちでも変わらないが正解ではないんですね?
メガネ
るるーしゅ
現状では、どっちがいいかは分かっていないというのが正しいかな?という印象だね。 とりあえずまとめてみようかね。
保湿剤は、入浴後すぐに塗ったほうがいい派
るるーしゅ
まずは国立成育医療研究センターの書籍からだね。
皮膚洗浄の後、何もしなければ皮膚は時間とともに乾燥していきます。このため皮膚を洗ったらなるべく早く、例えばお風呂の脱衣場で服を着る前に外用薬を塗るようにしてください。
こどものアレルギー (国立成育医療研究センターBookシリーズ)P73より引用
るるーしゅ
つづいて、皮膚科の権威の宮地先生
保湿剤は入浴後早めに「適量」(かろうじて光る量あるいはティッシュペーパーが付着する程度の量)と思われる量よりやや多めに外用することで、さらに保湿効果が高まることは明らかであり~
薬局で役立つ皮膚科治療薬FAQP279より引用
うんうん、よく聞く主張ですよね。
メガネ
保湿剤は、いつでもいい派
いつでもいいというのは大谷先生ですよね
メガネ
るるーしゅ
そうだね、大谷先生は下記の文献3つから、どっちでも構わないと主張している先生だね。
小児の健常者とアトピー性皮膚炎患者計10人を
(1)入浴のみ
(2)入浴直後に保湿剤を塗布
(3)入浴後30分後に保湿剤を塗布
の3群で保湿効果を比較⇒保湿効果に差はなかった
n数が少ないですね…
メガネ
認証ありだから、読めないけど入浴後に早めに塗っても有意差はでなかった文献らしい
保湿剤の至適外用方法の検討より
文献には、入浴後は早めに塗布した方が高い保湿効果が得られることが示唆されたなんですね。
メガネ
健常成人8名を対象に40°C,20分間入浴の1分後と1時間後にヘパリン類似物質含有製剤,白色ワセリンおよび尿素軟膏を2週間塗布し,角層中水分量を試験前および開始後に測定した.角層中水分量はいずれの保湿剤でも,入浴の1分後と1時間後の間に有意差は認められなかった.
保湿剤の効果に及ぼす入浴と塗布時期の関係
って、これ大谷先生の文献じゃないですか
メガネ
るるーしゅ
健常人対象だし、n数も少ないから解釈は難しいよね
結局、お風呂あがりすぐがいいのか、それともいつでもいいの?
ちなみに、るるーしゅさんはどう説明しているんですか?
メガネ
るるーしゅ
お風呂あがりすぐをオススメしているよ、ただそこまで強い根拠があるわけではないから子どもの世話で忙しかったら少し落ち着いてからしっかり塗ればOKだよ!っていうゆるい説明だね。
るるーしゅ
ちなみに調剤と情報2017年3月号にも同様の記載があるね。
保湿剤を塗布しない入浴は乾燥を助長するため、入浴後に保湿剤を塗る必要がある。しかし、入浴直後の保湿剤塗布と30分後の塗布において90分後の皮膚水分保持に差が認められなかったという報告があり、入浴直後に塗布しなければならないかどうかは議論の余地がある。筆者は、入浴後速やかに塗布する必要があるが慌てる必要はなく、丁寧い十分量を塗布するように説明している。
調剤と情報 2017.3 P37 堀向健太先生の小児のスキンケアより引用
なるほど、これくらい融通があったほうがいいような気もしますね
メガネ
るるーしゅ
そうそう、肌の保湿ケアは夏はエアコンで乾燥するしで一年中かもしれないから、あまり患者家族の負担にならないようならライン(実施可能)が重要な気がするよね
今回は、保湿剤の塗るタイミングについて様々な意見を紹介致しました。
わたくし、個人の見解ではお風呂あがりすぐが効果的だろうがそこまでこだわりすぎなくてもいいといった、すこしゆるいくらいの指導が妥当な気がしますが皆さまいかがでしょうか?
皆さまのお役に少しでもたてば幸いです。
その他にも外用薬の関連記事がございますのでよろしければお読みください。
参考資料
調剤と情報 2017年 03 月号 [雑誌] (特集:小児アトピー性皮膚炎 アレルギーマーチを食い止めろ! ―)
薬局で役立つ皮膚科治療薬FAQ
こどものアレルギー (国立成育医療研究センターBookシリーズ)
日経DIクイズ 皮膚疾患篇
Simpson, Eric L., et al. “Emollient enhancement of the skin barrier from birth offers effective atopic dermatitis prevention.” Journal of Allergy and Clinical Immunology 134.4 (2014): 818-823.
Chiang, Charles, and Lawrence F. Eichenfield. “Quantitative assessment of combination bathing and moisturizing regimens on skin hydration in atopic dermatitis.” Pediatric dermatology 26.3 (2009): 273-278.
中村 光裕, 上村 康二, 根本 治, 宮地 良樹, 保湿剤の至適外用方法の検討, 皮膚の科学, 2006, 5 巻, 4 号, p. 311-316
野澤 茜, 大谷 道輝, 松元 美香, 大谷 真理子, 山村 喜一, 成谷 さやか, 杉浦 宗敏, 内野 克喜, 江藤 隆史, 保湿剤の効果に及ぼす入浴と塗布時期の関係, 日本皮膚科学会雑誌, 2011, 121 巻, 7 号, p. 1421-1426[/box]