今回は2022年2月10日に特例承認された新型コロナウイルス感染症の内服治療薬のニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッド)について薬局薬剤師として最低限知っておいてほしいことをまとめたいと思います。
2022年4月22日より、無床診療所で院外処方が可能になりましたので調剤する薬局は増えると思います。
- 3/3:2月28日の改正版の案内資料の内容追記
- 3/3:医療薬学会の「パキロビッドの薬物相互作用マネジメントの手引き」の追記
- 4/27:4/22に修正に伴い変更
目次
添付文書上の基本情報
まずはパキロビッドパックの添付文書上の情報からです。
まず添付文書は一番上に重要なことが書いてあり、大体は禁止事項なのですがパキロビッドについては以下の内容は一番上に記載されています。
本剤は、本邦で特例承認されたものであり、承認時において有効性、安全性、品質に係る情報は限られており、引き続き情報を収集中である。
そのため、本剤の使用に当たっては、あらかじめ患者又は代諾者に、その旨並びに有効性及び安全性に関する情報を十分に説明し、文書による同意を得てから投与すること。
るるーしゅ
2021年12月に先に特例承認されたラゲブリオと同様の記載内容です。
禁忌 | 1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 2.次の薬剤を投与中の患者:アンピロキシカム、ピロキシカム、エ レトリプタン臭化水素酸塩、アゼルニジピン、オルメサルタン メ ドキソミル・アゼルニジピン、アミオダロン塩酸塩、ベプリジル塩 酸塩水和物、フレカイニド酢酸塩、プロパフェノン塩酸塩、キニジ ン硫酸塩水和物、リバーロキサバン、リファブチン、ブロナンセリ ン、ルラシドン塩酸塩、ピモジド、エルゴタミン酒石酸塩・無水カ フェイン・イソプロピルアンチピリン、エルゴメトリンマレイン酸 塩、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、メチルエルゴメトリンマレ イン酸塩、シルデナフィルクエン酸塩(レバチオ)、タダラフィル (アドシルカ)、バルデナフィル塩酸塩水和物、ロミタピドメシル酸 塩、ベネトクラクス〈再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リ ンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期〉、ジアゼパム、クロラゼ プ酸二カリウム、エスタゾラム、フルラゼパム塩酸塩、トリアゾラム、 ミダゾラム、リオシグアト、ボリコナゾール、アパルタミド、カル バマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、ホスフェニトイ ンナトリウム水和物、リファンピシン、セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品 3.腎機能又は肝機能障害のある患者で、コルヒチンを投与中の患者 |
効能効果 | SARS-CoV-2による感染症 |
用法用量 | 通常、成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、ニルマト レルビルとして1回300mg及びリトナビルとして1回100mgを同時に 1日2回、5日間経口投与する。 |
臨床試験における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有する等、本剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること。また、本剤の投与対象については最新のガイドラインも参考にすること。
重症度の高いSARS-CoV-2による感染症患者に対する有効性は確立していない。
SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与を開始すること。臨床試験において、症状発現から6日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない。
中等度の腎機能障害患者(eGFR[推算糸球体ろ過量]30mL/min以上60mL/min未満)には、ニルマトレルビルとして1回150mg及びリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与すること。重度の腎機能障害患者(eGFR 30mL/min未満)への投与は推奨しない。
臨床試験における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有する等、本剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること。また、本剤の投与対象については最新のガイドラインも参考にすること。
重症度の高いSARS-CoV-2による感染症患者に対する有効性は確立していない。
本剤は併用薬剤と相互作用を起こすことがあるため、服薬中のすべての薬剤を確認すること。また、本剤で治療中に新たに他の薬剤を服用する場合、事前に相談するよう患者に指導すること。
るるーしゅ
ここまでの情報からザックリとまとめると以下の感じ
- 医療機関が処方するにあたって同意書が必要
- 12歳以上で使用可能(ラゲブリオは18歳以上)
- 健常人はニルマトレルビル2錠、リトナビル1錠だが、腎機能中等度低下でニルマトレルビル1錠、リトナビル1錠へ減量の必要(渡し方は後述)
- 他剤との相互作用が多すぎる(禁忌あり)
- 処方されるのは重症化リスクの高い人
- 抗ウイルス薬なので早期投与が重要(6日目以降は不明)
調剤するにあたっての注意事項は?
今回のパキロビッドパックもラゲブリオカプセル同様に保険薬局で調剤可能です。 ただ流通に関しては、卸に発注してという形ではないため注意が必要です。
薬局でパキロビッドパックを調剤する際の流れは以下のような感じです。
院外処方(外来診療を行う医療機関、往診(無床診療所を含む))
医療機関の院外処方に基づき、パキロビッド対応薬局が本剤を患者の居宅や療養先に交付する。
- あらかじめ、薬局は本剤を調剤するための準備を行い、パキロビッド登録センターへの登録を行う。
- パキロビッド対応薬局は、患者の発生に備えてあらかじめ一定数の在庫を発注しておく。
- 配送に協力する配送業者からパキロビッド対応薬局に本剤が納品される(原則、発注後1~2日程度(日曜祝日を除く))。
- 投与対象となりうる患者が発生した際、医療機関において、処方箋とともに適格性情報や同意取得等に関する情報を記載した「適格性情報チェックリスト」を患者が希望するパキロビッド対応薬局にファクシミリ等で送付する。このとき、処方箋送付先のパキロビッド対応薬局には事前に電話等で一報することが望ましい(開局時間外の場合は確実に電話等で一報すること)。
処方箋原本と「適格性情報チェックリスト」原本は、ファクシミリ等で送付した薬局に送付する。
※対象医療機関は、地域の在庫を保持するパキロビッド対応薬局のリストを患者に示すことにより、患者が希望する対応薬局を確認する。投与対象及び院外処方となりうる患者が当該医療機関を受診した場合、患者に対し本剤を処方するパキロビッド対応薬局を迅速に紹介できるよう、パキロビッド対応薬局のリストは、都道府県から当該医療機関に共有する。 - 処方箋及び「適格性情報チェックリスト」を受け取ったパキロビッド対応薬局は、「適格性情報チェックリスト」を必ず活用して、患者の併用禁忌や併用注意の薬剤について確認し、必要な調剤、服薬指導等を実施し、本剤の提供を行う。必要に応じて当該患者のかかりつけ薬剤師・薬局や、当該患者が過去に利用したことのある薬局と連携も行うこと。本剤提供時は、自宅療養や宿泊療養の患者が来所しなくても済むよう、患者の居所に本剤を配送又は持参することを原則とする。
なお、「適格性情報チェックリスト」と「パキロビッドパック投与前チェックシート」は類似しているため、薬局は必ず処方箋と付帯して送られてくる資料が「適格性情報チェックリスト」であることを確認すること。 - パキロビッド登録センターの指示に従って当該患者の投与実績を入力すること。
- 以降、必要に応じて②~⑥を適宜行う。
るるーしゅ
処方箋と一緒にFAXで送られてくる適格性情報チェックリストを必ず確認するように
るるーしゅ
尚、パキロビッドパック投与前チェックシートは以下のやつね。上記のものと間違えないように
保険薬局における対応
- 医療機関から処方箋情報の送付を受けた薬局は、本書類情報が添付されていることを確認すること。その際、<医療機関情報>と<適格性情報>の入力内容に不備(チェック漏れ等)がないことを併せて確認すること。
- 医療機関から処方箋原本を入手するまでの間は、ファクシミリ等により送付された処方箋を薬剤師法(昭和35年法律第146号)第23条から第27条、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第49条における処方箋とみなして調剤等を行うこと。
- 調剤等を行った後速やかに(当日中を原則とする)、パキロビッド登録センターの依頼に従って、当該患者の適格性情報を同登録センターに登録すること。
- 可能な時期に医療機関から本書類原本と処方箋原本を入手し、以前にファクシミリ等で送付された本書類情報、処方箋情報とともに保管すること。
ラゲブリオと同様だろうと思い、作成しています。
以下、Q&Aもでていましたので関係しそうな部分のみ転記します。
Q.2 「パキロビッド」の配分を依頼する際、医療機関および薬局における在庫は認められるのか。
3/3更新
パキロビッド対応薬局においては、一定数の在庫配置を可能としています。
集中して患者を受け入れ、ただちに本剤を投与する必要がある患者が発生した場合に確実に対応できるよう、都道府県が選定した医療機関に対し、予め一定数の在庫の配置を認めます。医療機関への在庫の配分は、原則として、都道府県が作成するリストへの掲載に協力いただけることを前提に行うこととします。院内処方として本剤を患者に直接提供する必要性がある対象医療機関が、リストの掲載対象となります。なお、これは、医療機関が在庫の確保を希望する場合に限った取扱いであり、現に本剤による治療を必要としている患者のために、医療機関に本剤を配分することを妨げるものではありません。 投与対象となりうる患者が受診する可能性のある診療・検査医療機関において、患者に対し本剤を処方する医療機関を迅速に紹介できるよう、都道府県においては、当該医療機関のリストを作成し、管内の診療・検査医療機関に共有いただくようお願いします。なお、リストの共有の範囲について、地域の実情に応じ、医療圏ごととするなどの対応を行うことは差し支えありません。
また、本剤の供給量に限りもあることから、新型コロナウイルス感染症患者の治療に備えた過度な在庫や、必要以上の配分依頼は控えていただくよう配慮の程よろしくお願いします。
Q.3 パキロビッドを扱う医療機関や対応薬局のリストはどのように閲覧すればよいか。
パキロビッド登録センターへの登録が済んだ対象機関は、承認直後の試験運用期間においては、都道府県から共有されるパキロビッド対象機関リストで確認することができます。当面の間、製造販売業者から各都道府県にも週3回(月・水・金)メールで共有することとします。
診療・検査医療機関において、患者に対し本剤を処方する登録済み医療機関を迅速に紹介できるよう、都道府県においては、製造販売業者からメールで共有された登録済み医療機関のリストを、管内の診療・検査医療機関に共有をお願いします。また、必要に応じ管内の保健所設置市・特別区や地域の医師会・薬剤師会等に共有いただくことも差し支えありません。なお、リストの共有の範囲について、地域の実情に応じ、医療圏ごととするなどの対応を行うことは差し支えありませんが、共有に際しては、個人情報等の取扱にご留意ください。
Q.4 「パキロビッド登録センター」に投与対象者数を入力してから、どれくらいの期間で本剤が配布されるのか。
「パキロビッド登録センター」では、各対象機関からの配分依頼を、日曜祝日を除く各日15時時点で取りまとめることとしています。各日15時までに取りまとめられた配分依頼については、地域等により多少の差異がありますが、原則1~2日程度(日曜祝日を除く)で配送されます。
Q.7 無症状の患者には使用できるのか。
無症状の患者は臨床試験に組み入れられておらず、有効性及び安全性が確認されていないため、対象としておりません。
Q.8 妊婦・授乳婦には使用可能か。
妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとなっております。妊娠中本剤の使用に関するヒトデータは得られていないため、本剤に関連する有害な発達上のリスクは明らかになっていません。
なお、授乳婦は、治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討することとなっております。リトナビルは、ヒト授乳中へ移行することが報告されています。
Q.9 本剤の処方における注意点はなにか。
本剤は、併用禁忌および併用注意の薬剤が多くあります。このため、処方に当たっては、患者が服薬中のすべての薬剤を確認してください。また、本剤で治療中に新たに他の薬剤を服用する場合、事前に相談するよう患者に指導してください。
なお、併用禁忌の成分には、一般用医薬品(ピロキシカム、イソプロピルアンチピリン)や食品(セイヨウオトギソウ、St. John’s Wort、セント・ジョーンズ・ワート)に含まれているものもありますので、これらも含めて注意してください。
併用禁忌(併用しないこと)
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 腎機能又は肝機能障害のある患者で、コルヒチンを投与中の患者
- 以下の併用禁忌薬
抗結核薬 | リファブチン (ミコブティン) |
抗結核薬 | リファンピシン (リファジン) |
抗真菌薬 | ボリコナゾール (ブイフェンド) |
抗悪性腫瘍薬 | ベネトクラクス (ベネクレクスタ) |
抗悪性腫瘍薬 | アパルタミド (アーリーダ) |
鎮痛薬 | アンピロキシカム (フルカム) |
鎮痛薬 | ピロキシカム (バキソ、フェルデン) |
高脂血症治療薬 | ロミタピドメシル酸塩 (ジャクスタピッド) |
子宮収縮薬 | エルゴメトリンマレイン酸塩 |
子宮収縮薬 | メチルエルゴメトリンマレイン酸塩 (パルタン) |
抗凝固薬 | リバーロキサバン (イグザレルト) |
降圧薬 | オルメサルタン メドキソミル・ アゼルニジピン (レザルタス配合錠) |
降圧薬 | アゼルニジピン (カルブロック) |
抗不整脈薬 | アミオダロン塩酸塩 (アンカロン) |
抗不整脈薬 | ベプリジル塩酸塩水和物 (ベプリコール) |
抗不整脈薬 | フレカイニド酢酸塩 (タンボコール) |
抗不整脈薬 | プロパフェノン塩酸塩 (プロノン) |
抗不整脈薬 | キニジン硫酸塩水和物 |
肺高血圧症 治療薬 | シルデナフィルクエン酸塩 (レバチオ) |
肺高血圧症 治療薬 | タダラフィル (アドシルカ) |
肺高血圧症 治療薬 | リオシグアト (アデムパス) |
抗精神病薬 | ブロナンセリン (ロナセン) |
抗精神病薬 | ルラシドン塩酸塩 (ラツーダ) |
抗精神病薬 | ピモジド |
催眠鎮静薬 抗不安薬 | クロラゼプ酸二カリウム (メンドン) |
催眠鎮静薬 抗不安薬 | エスタゾラム(ユーロジン) |
催眠鎮静薬 抗不安薬 | フルラゼパム塩酸塩 (ダルメート) |
催眠鎮静薬 抗不安薬 | トリアゾラム (ハルシオン) |
抗てんかん薬 | ホスフェニトインナトリウム水和物 (ホストイン) |
頭痛治療薬 | エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェ イン・イソプロピルアンチピリン (クリアミン) |
麻酔薬 抗てんかん薬 | ミダゾラム (ドルミカム、ミダフレッサ) |
抗不安薬 抗てんかん薬 | ジアゼパム (セルシン、ホリゾン) |
抗てんかん薬 | カルバマゼピン (テグレトール) |
抗てんかん薬 | フェノバルビタール (フェノバール) |
抗てんかん薬 | フェニトイン (ヒダントール、アレビアチン) |
片頭痛治療薬 | エレトリプタン臭化水素酸塩 (レルパックス) |
片頭痛治療薬 | ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩 |
勃起不全改善薬 | バルデナフィル塩酸塩水和物 (レビトラ) |
その他 | セイヨウオトギリソウ |
併用注意(併用に注意すること)
抗菌薬 | クラリスロマイシン、エリスロマイシン |
抗HIV薬 | ジドブジン、ネビラピン、エファビレンツ、エトラビリン、 その他のHIVプロテアーゼ阻害薬(アタザナビル硫 酸塩等)、マラビロク |
抗C型肝炎ウイルス薬 | グレカプレビル水和物・ピブレンタスビル |
抗真菌薬 | ケトコナゾール、イトラコナゾール、 ミコナゾール、フルコナゾール、ホスフルコナゾール |
抗寄生虫薬 | キニーネ |
抗悪性腫瘍薬 | ダサチニブ水和物、ゲフィチニブ、ニロチニブ塩酸塩水和物、 ビンカアルカロイド系抗悪性腫瘍薬(ビ ンブラスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩等)、 イリノテカン塩酸塩水和物、タモキシフェンクエン酸塩、 トレミフェンクエン酸塩、エベロリムス、イブルチニブ、 エンコラフェニブ、ベネトクラクス〈再発又は難治 性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の 維持投与期、急性骨髄性白血病〉、 アファチニブマレイン酸塩 |
副腎皮質ステロイド | デキサメタゾン、フルチカゾンプロピオン酸エステル、 ブデソニド、トリアムシノロンアセトニド |
麻薬性鎮痛薬 | フェンタニル、フェンタニルクエン酸塩 |
免疫疾患治療薬 | エベロリムス、シクロスポリン、タクロリムス水和物 |
高脂血症治療薬 | アトルバスタチンカルシウム水和物、シンバスタチン、 ロスバスタチンカルシウム |
痛風治療薬 | コルヒチン |
経口避妊薬 | エチニルエストラジオール |
女性ホルモン製剤 | エストラジオール安息香酸エステル |
抗凝固薬 | ワルファリンカリウム |
降圧薬 | アムロジピンベシル酸塩、ジルチアゼム塩酸塩、 フェロジピン、ニカルジピン塩酸塩、 ニフェジピン、ニトレンジピン、ニルバジピン |
抗不整脈薬 | リドカイン塩酸塩、ベラパミル塩酸塩等 |
ジギタリス製剤 | ジゴキシン |
肺高血圧症治療薬 | ボセンタン水和物 |
気管支拡張薬 | サルメテロールキシナホ酸塩、テオフィリン |
腸運動抑制薬 | ロペラミド塩酸塩 |
抗精神病薬 | クエチアピンフマル酸塩 |
抗うつ薬 | トラゾドン塩酸塩 |
抗不安薬 | アルプラゾラム |
抗てんかん薬 | ラモトリギン、バルプロ酸ナトリウム |
パーキンソン病治療薬 | ブロモクリプチンメシル酸塩 |
局所麻酔薬 | リドカイン |
勃起不全改善薬 | シルデナフィルクエン酸塩(バイアグラ)、 タダラフィル(シアリス、ザルティア) |
その他 | タバコ |
3/3NEW
Q.10 添付文書上、中等度の腎機能障害患者ではニルマトレルビルを減量し、重度の腎機能障害患者では本剤の投与が推奨されていないが、腎機能について検査を行わなければならないか。
年齢や基礎疾患、病歴等を踏まえ、必要に応じて、腎機能検査を実施し、患者の状態を確認してください。
3/3NEW
Q.11 中等度の腎機能障害患者に処方・調剤を行う際の注意点はなにか。
本剤のシート1枚には通常用法・用量の1日分(朝及び夕方の2回分)のニルマトレルビル錠(計4錠)及びリトナビル錠(計2錠)が含まれています。中等度の腎機能障害患者に対する用法・用量が処方された場合、朝及び夕方の服用分それぞれから、ニルマトレルビル錠2錠のうち1錠を取り除き、取り除いた箇所に専用のシールを貼り付けて交付することになっています。
薬剤交付時には、シート1枚には1日分(朝及び夕方の2回分)が含まれるため、1回に服用すべき錠剤を患者に指導するようお願いいたします。また、中等度の腎機能障害患者に対する用法・用量が処方された患者には、シートから不要な錠剤が除かれていることを説明していただきますよう、お願いします。取り除いた錠剤は医療機関または薬局の手順に従って、適切に廃棄ください。特段の記録は必要ありません。
なお、中等度の腎機能障害患者に対する用法・用量を処方する際には、下記に示す処方箋の記載例を参考に、分かりやすく記載してください。
通常用量の場合(全量):
1日2回×5日
パキロビッドパック 1シート
中等度の腎機能障害患者(コルヒチンを投与中の患者を除く)の場合(半量):
1日2回×5日
パキロビッドパック Low Dose(ニルマトレルビル 300mg、リトナビル 200mg) 1シート
更新により削除された部分
また、本剤はPTP包装の薬剤ですが、PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、さらには穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがありますので、PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出し服用するよう指導してください。
るるーしゅ
ここ少し、解説します。
Q.12 新型コロナウイルス感染症と診断された場合、患者は医療機関から処方箋を受け取って薬局に直接訪問してもよいのか。
感染対策の観点から、患者がパキロビッド薬局を直接訪問することは避けるようにしてください。医療機関において本剤を交付せず、薬局から患者に交付する場合は、医療機関は患者に帰宅を指示したうえで、患者が希望する薬局に処方箋と適格性情報等のチェックリストを送付し、処方箋を受け取った薬局は患者の自宅に本剤を配送することが望ましいです。
Q.13 医療機関から処方箋を受け取った薬局が、パキロビッド登録センターに使用実績報告を入力する際に、適格性情報の確認はどのように行うのか。
医療機関が処方を行う際は、パキロビッド対応薬局に、処方箋とともにチェックリストがファクシミリ等で送られます。受け取った薬局は、製薬会社の登録センターの指示に従って使用実績報告に入力してください。処方箋の内容やチェックリストの内容に疑義がある場合には、処方元の医療機関に確認を行うようにしてください。
Q.14 配布を受ける医療機関及び薬局側に、費用負担は発生するのか。
当面の間は、本剤を厚生労働省が購入し、投与対象者へ使用される時点で対象機関に無償譲渡されるため、薬剤費を支払う必要はありません。取り扱いに変更がある場合には、あらためて御連絡します。
なお、本剤は、保険外併用療養費制度において、保険診療との併用が認められています(本剤以外の医療費(医療機関にあっては初・再診料、処方料・処方箋料等、薬局にあっては調剤基本料、調剤料、薬剤服用歴管理指導料等)については、通常どおり保険請求してください)。
Q.15 本剤を処方する場合は公費負担の対象となるのか。
本剤を入院において処方する場合には、感染症法に基づき公費負担となります。また、自宅・宿泊療養中の患者に対して、外来において本剤を処方する場合、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金による新型コロナウイルス感染症対策事業の補助対象とすることが可能です。
Q.16 抗原定量検査陽性例でも、PCR 検査を実施せずに、本剤を処方することができるのか。抗原定性検査についても同様か。
抗原定量検査で SARS-CoV-2 感染が確認された場合は、再度 PCR 検査を行わずとも本剤を処方することが可能です。患者に対して速やかに本剤を投与するため、抗原定性検査を使用する場合についても同様に、当該検査の有効性なども踏まえて、検査結果に基づき医師による確定診断が行われれば、処方することが可能です(※)。
※ なお、「「新型コロナウイルス感染症の検査体制整備に関する指針」について」(令和3年 10 月1日事務連絡)において、抗原定性検査キットについて、「例えば、インフルエンザ流行期における発熱患者等への検査の場面など、地域のかかりつけ医や診療・検査医療機関においては、迅速・スムーズな診断・治療につなげるべく、実情を踏まえて、抗原検査キットの積極的な活用を検討すること」とされていることを踏まえ、必要に応じ活用を検討ください。
Q.17 電話や情報通信機器による服薬指導を行い、患者宅等に薬局から本剤を配送するにあたっての支援はあるのか。
この場合、「薬局における薬剤交付支援事業」(令和2年4月 23 日薬生発 0423 第2号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知の別紙)による補助対象となります。薬局から患者宅等に本剤を配送する場合の配送料等(配送業者を利用した場合の配送費等)の補助を受けることが可能です。
Q.18 新型コロナウイルス感染症と診断された場合、本剤の投与にあたって保健所の指示を待つ必要はあるのか。
本剤については、通常の薬剤と同様、投与に当たって保健所の指示を待つ必要はなく、添付文書等を確認の上、医師が必要性を認めた場合には、速やかに投与していただいて差し支えありません。
Q.19 別紙本文中に「本剤を処方する医療機関においては、投与後に定期的なフォローアップをするようお願いすることとしております。(p.6)」とあるが、どのような対応が必要か。
フォローアップの頻度、方法、期間等については、個別の患者ごとに適切に実施していただくものですが、例えば、投与後に患者の容態が変化した際に速やかに相談・受診ができるような体制が整っており、夜間休日診療所等で処方を行う場合は、輪番制とする、もしくは平日日中の相談・受診先をあらかじめ患者に指示しておく等の対応を取ることが望ましいです。
なお、処方後に別の入院医療機関や宿泊療養施設などに移動する場合は、その施設の医師が患者の容態変化をフォローアップするとともに、処方医師におかれては、移動後の患者の容態変化について可能な限り情報収集を行うようお願いいたします。加えて、製造販売業者においても承認後使用の成績に関する調査を行うこととなって
おります。医療機関が製造販売業者による調査に協力していただけるよう、周知方お願いしているところであり、製造販売業者からの依頼も踏まえ、対応いただきますようお願いします。
有効性・安全性について
有効性・安全性についてはNEJMで報告された論文及び審査報告書にて紹介します。
上記の新型コロナ患者に、パキロビッドパックもしくはプラセボを投与し、28日後までに起きた新型コロナに関連した入院もしくは死亡が起きた患者割合を比較しています。
パキロビッドの有効性について
結果なのですが、3日以内に投与したデータと5日以内に投与したデータが公開されているのですがあまり変わらないので5日以内のデータを示します。
イベント内容 | パキロビッド (n=1039) | プラセボ (n=1046) |
---|---|---|
入院もしくは死亡 | 8人(0.77%) | 66人(6.31%) |
入院 | 8人 | 65人 |
死亡 | 0人 | 12人 |
るるーしゅ
相対リスクは87.8%減少です。
パキロビッドの安全性について
こちらは審査報告書からです。有害事象のため、因果関係は不明です。
味覚不全と下痢に注意する必要があるのではないかと思います。
尚、ラゲブリオ同様ですが、治験時のデータが市販後の安全性を担保しているわけではありませんので注意しましょう。国際試験のため、日本人への投与実績もありますが数例ですので…
薬剤師が服薬指導する上で知っておきたいこと
COVID-19に対する薬物治療の考え方 第13版でパキロビッドを投与時の注意事項が以下の通りです。
①臨床試験における主な投与経験を踏まえ、COVID-19 の重症化リスク因子を有する等、本剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること。
②本剤の有効性・安全性に係る情報は限られていること等を踏まえ、1)の「重症度リスク因子を有する等、本剤の投与が必要と考えられる患者」としては、臨床試験における選択基準等に基づき、次に掲げる重症化リスク因子を有する者が、本剤を投与する意義が大きいと考えられる。
- 60 歳以上
- BMI 25kg/m2 超
- 喫煙者(過去 30 日以内の喫煙があり、かつ生涯に 100 本以上の喫煙がある)
- 免疫抑制疾患又は免疫抑制剤の継続投与
- 慢性肺疾患(喘息は、処方薬の連日投与を要する場合のみ)
- 高血圧の診断を受けている
- 心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作、心不全、ニトログリセリンが処方された狭心症、冠動脈バイパス術、経皮的冠動脈形成術、頚動脈内膜剥離術又は大動脈バイパス術の既往を有する)
- 1 型又は 2 型糖尿病
- 限局性皮膚がんを除く活動性の癌
- 慢性腎臓病
- 神経発達障害(脳性麻痺、ダウン症候群等)又は医学的複雑性を付与するその他の疾患(遺伝性疾患、メタボリックシンドローム、重度の先天異常等)
- 医療技術への依存(SARS-CoV-2 による感染症と無関係な持続陽圧呼吸療法等)、等
③重症度の高い COVID-19 患者に対する有効性は確立していない。なお、重症度が高いとは、概ね中等症Ⅱ以上が該当すると考えられる。
④COVID-19 の症状が発現してから速やかに投与を開始すること。臨床試験において、症状発現から 6 日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない。
⑤本剤は併用薬剤と相互作用を起こすことがあるため、服用中の全ての薬剤を確認すること。また、本剤で治療中に新たに他の薬剤を追加する場合、相互作用を確認すること。リトナビルは CYP3A の強い阻害作用、CYP1A2 の中等度誘導作用、P-gp および OATPの阻害作用などを有するため、薬物間相互作用に注意する。そのため、本剤を使用する際には、服薬中の薬剤や、新規に開始する薬剤との相互作用について、添付文書等を事前に確認する。なお、既に HIV 治療薬として使用されているリトナビル製剤(ノービア®)の併用禁忌薬には、キニジン、ベプリジル、フレカイニド、プロパフェノン、アミオダロン、ピモジド、エルゴット誘導体、PDE5 阻害薬、アゼルニジピン、リバーロキサバン、ジアゼパム、クロラゼプ酸、エスタゾラム、フルラゼパム、トリアゾラム、ミダゾラム、ルラシドンなどがある。また、参考として欧米における併用禁忌薬剤については、国立国際医療研究センターの薬剤リスト などを参考にされたい。
参考資料「パキロビッド®パックとの併用に慎重になるべき薬剤リスト」の公開について(PDF)
⑥中等度の腎機能障害患者(eGFR[推算糸球体ろ過量]30mL/min 以上 60mL/min 未満)には、ニルマトレルビルとして 1 回 150mg 及びリトナビルとして 1 回 100mg を同時に 1 日2 回、5 日間経口投与すること。重度の腎機能障害患者(eGFR 30mL/min 未満)への投与は推奨しない。
服薬指導で確認すること
上記を踏まえて、服薬指導時に確認したいことをまとめたいと思います。
- 新型コロナの発症日
→パキロビッドは5日以内なのでその確認 - 併用薬の確認(サプリメントも含め)
→パキロビッド内のリトナビルが相互作用起こしまくるので絶対確認
3/3追記医療薬の「パキロビッド(ニルマトレルビル/リトナビル)の薬物相互作用マネジメントの手引き」を参考にすること - 腎機能の確認
→腎機能が低下している場合は投与量を調整する必要がありますので腎機能を推算しましょう。 - 新型コロナワクチンの接種状況
→ワクチン接種者のパキロビッドの有効性は不明のため確認してもいいかも - 新型コロナの重症化リスク因子について
→パキロビッドの適応を確認、ただ重症化リスクを有する人は入院勧告のはずでは?
(入院の手続きが必要になるまでタイムラグがあるようです) - 新型コロナの病状について(咳、筋肉痛、頭痛、発熱等)
→無症状のかたへの有効性は不明のため、無症状の方への投与は適切ではありません。 - パルスオキシメーターの有無や数値について
→ハイリスク因子があるので持っているとは思います。また数値の確認および説明ですね。
(持っている人少ないみたいですね、保健所に連絡して送ってもらう??) - シックデイ時の対応について
→糖尿病薬やCKDシックデイの薬剤が処方されているようなら確認
フォローアップで確認すること
パキロビッドについては処方側の医療機関がフォローアップが求められています。
本剤を処方する医療機関においては、投与後に定期的なフォローアップをするようお願いすることとしております。
ただ実際にクリニックがフォローアップするのか不明ですし、薬剤師は薬機法でフォローアップが義務付けられていますので、このパキロビッドについては調剤後のフォローアップが原則必要と思っていいと思います。
そこで、調剤後に連絡する際にどのようなことを確認すればいいかをまとめたいと思います。フォローアップするのは、3日後などの健常人なら軽快傾向に向かうタイミング、もしくは飲み切るタイミングの5日後でもいいのではないかと思います。
ただ症状が改善傾向にない場合は、急に重症化する発症後7日後あたりにフォローアップも必要だと思います。
- 病状について
ハイリスク因子をもつ方なので症状の程度やSPO2の値などを確認しましょうね。 - 薬の服薬状況について
テレフォンフォローアップするタイミングにもよりますが、きちんと飲み切るように指示しましょう。 - 薬による副作用について
パキロビッドは治験段階ではプラセボと比較しそこまで気にする副作用の報告はありませんが以下の内容および、リトナビルの重大な副作用は確認する必要があると思います。
- 味覚不全
- めまい
- 高血圧
- 下痢
- 悪心
- 嘔吐
- 消化不良
- 胃食道逆流性疾患
- 肝機能検査値異常
- 発疹
- 筋肉痛
- 隔離について
これは現状、10日間だと思います。くすり飲んでいるとはいえ7日くらいまでは他者への感染力がありそうなの熱もないし薬も飲み終わったからと油断しないように注意喚起ですね
くすりをお渡しする際に、「〇日後にこの内容をチェックしますからね」とチェックシートのようなものをお渡しできるとお互い、フォローアップがスムーズになると思います。
さいごに
今回は、経口の新型コロナウイルス感染症治療薬のパキロビッドパックについて薬局薬剤師に知っておいてもらいたいことを紹介しました。まだまだ不明瞭な部分も多いので随時加筆修正していきます。
オミクロン株による感染拡大がものすごい勢いで増えているため、調剤するケースが増えてきていると思います。今回の記事を読んで、しっかりとフォローアップも実施していただければと思います。
るるーしゅ
ただパキロビッドパックは当面は、ラゲブリオ以下の供給と聞いていますので納入できる薬局はごく一部だと思います。
SNSで「パキロビッドきた~」とかやると身バレするかもしれないので注意してください。
また腎機能低下患者には、パキロビッドの投与量調節するんですが、ニルマトレルビル捨てるのもったいない気がしますよね…海外の情報だとパキロビッド1人分(ニルマトレルビル150mg:20錠/リトナビル100㎎:10錠)は530ドル(ラゲブリオは700ドル)で約61,000円ですよね。
パキロビッド中のリトナビル、日本だとノービア錠100㎎は1錠97.8円です。(アメリカだと10.7ドル?)
そうなると、ニルマトレルビル150㎎は1錠あたり2000~3000円で計算になりますかね。
るるーしゅ
もったいないお化けが出てきそうですね…
その他のパキロビッドパックについての情報は以下の内容もご確認ください。
- パキロビッドパック添付文書
- 新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬(パキロビッド®パック)の医療機関及び薬局への配分について(別紙及び質疑応答集の修正)
- 一般社団法人 日本感染症学会 COVID-19に対する薬物治療の考え方 第13版(2022年2月10日)
- パキロビッドパック(患者向け医薬品ガイド)
- パキロビッドパック(患者向けRMP資材)
- Hammond, J. et al. Oral nirmatrelvir for high-risk, nonhospitalized adults with covid-19. N. Engl. J. Med. (2022) doi:10.1056/nejmoa2118542
- パキロビッドパック審査報告書