2021年2月5日に日本初の経口GLP-1受容体作動薬のリベルサス錠が発売されました。
ただリベルサス錠は他の糖尿病治療薬として注意しなければいけないことが多いため、薬局薬剤師として最低限知っておくべきことを今回紹介します。
- 処方監査で注意すべき点とその理由
- 服薬指導で注意すべき点とその理由
- 調剤後のフォローアップで注意すべき点とその理由
- その他のリベルサスのQ&A
ぼうそう医薬情報室や新薬情報オンラインさんがすでに詳しくまとめているので、もっとリベルサスについて知りたい方はぜひ
目次
リベルサス錠の基本情報
販売名 | リベルサス錠3mg・7mg・14mg |
一般名 | セマグルチド |
薬効 | 経口GLP-1受容体作動薬 |
効能・効果 | 2型糖尿病 |
用法・用量 | 初回4週間:1回3㎎ 3㎎を4週間以降経過後:1回7㎎ 7㎎を4週間以降経過後:1回14㎎ |
処方監査で注意すべき点とその理由
用法用量について
通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として 1日1回7mgを維持用量とし経口投与する。ただし、1日1回3mgから開始し、4週間以上投与した後、1日1回7mgに増量する。なお、患者の状態に応じて適宜増減 する、1日 1回7mgを 4週間以上投与しても効果不十分な場合には、1日1回14mgに増量することができる。
初回から7㎎での処方は保険で切られますので注意しましょう。また適宜増減であることから、3㎎を維持量としても問題ありません。
なんで少量からスタートなんですか?
高用量になるにつれて胃腸障害の副作用の頻度も増えるし、注射剤のGLP-1受容体作動薬も少量から徐々にあげていくからね
「リベルサス錠14mg を投与する際には、7mg 錠を 2 錠投与することは避けること。」
メーカー側が各規格を在庫させようとする罠ですね
いや、違うよ。
このリベルサスという薬は分子量が大きいバイオ医薬品だから、消化管から吸収させるのには結構苦労しているんだ
SNAC(サルカプロザートナトリウム)という吸収促進剤(添加物)により消化管からの吸収を可能にしているんだけど、このSNACの量が多いと吸収が落ちる可能性があるため2錠はダメみたいなんだ
- リベルサスを初回投与の際は3㎎から始めること
- リベルサス7㎎の処方箋を応需した際は、3㎎が4週間以上処方されているか確認すること
- リベルサス14㎎の処方箋を応需した際は、7㎎が4週間以上処方されているか確認すること
- 適宜増減のコメントがあるため、3㎎を維持量してもかまわない
- 1回2錠は効果減弱の可能性や同等性も試験していないためダメ
併用薬について
リベルサス錠の重要な基本的注意において「本剤と DPP-4 阻害剤はいずれも GLP-1 受容体を介した血糖降下作用を有している。両剤を併用した際の臨床試験成績はなく、有効性及び安全性は確認されていない。」とされているので、DPP-4 阻害剤との併用は避けること。
DPP-4阻害薬との併用は避けること
- グラクティブ錠
- ジャヌビア錠
- エクア錠
- ネシーナ錠
- トラゼンタ錠
- テネリア錠
- スイニー錠
- オングリザ錠
- ザファテック錠
- マリゼブ錠
- エクメット錠
- イニシンク錠
- メトアナ錠
- リオベル錠
- カナリア錠
- スージャヌ錠
- トラディアンス錠
赤字はDPP-4阻害薬を含む合剤
同じインクレチン関連薬だからと気づけば、大丈夫だと思うけど、ウッカリ出そうな気もするので、ちゃんと疑義照会しましょう。
第一選択薬での処方について
糖尿病治療の第一選択薬として使用する際には、医師側が必要と判断した理由を診療報酬明細書に記載する必要があります。
薬局側にレセプト記載の必要はないかと思いますが、糖尿病治療の第一選択薬の場合は、処方医に確認したほうがベターだと思います。
服薬指導で注意すべき点とその理由
どんな薬と患者に説明する?
- この薬は、経口GLP-1受容体作動薬と呼ばれる薬で、1日1回の使用で効果が持続するように製剤的な工夫をした薬です。
- この薬は、主に膵臓(すいぞう)にはたらきかけ、血糖値が高くなると、インスリンの分泌を促して血糖値を下げます。
- この薬はからだの中にあるGLP-1というホルモンに似た作用をもち、ご自身の血糖値に応じてすい臓からインスリンを分泌させて血糖値を下げます。
どんな薬か説明する際は、患者向医薬品ガイドやメーカーの患者さん向け資料を参考にするといいと思います。
服用方法の注意
本剤の吸収は胃の内容物により低下することから、本剤は、1日のうちの最初の食事又は飲水の前に、空腹の状態でコップ約半分の水(約120mL以下)とともに 3mg錠、7mg錠又は 14mg錠を 1錠服用すること。また、服用時及び服用後少なくとも30分は、飲食及び他の薬剤の経口摂取を避けること。分割・粉砕及びかみ砕いて服用してはならない。
- 空腹時に服用(起床時がオススメ)
- 水の量も約120mL以下
- 服用後30分は飲食および他薬の服用もダメ
- BP剤と違い服用後、横たわるのは構わない
服用の際の水の量も多すぎると、効果減弱する可能性があるため、制限されているからね
保管方法の注意
- 本剤は吸湿性が強いため、服用直前にPTPシートから取り出して服用するよう指導すること
- 本剤は吸湿性が強く、PTPシートで防湿しているため、ミシン目以外の場所で切り離さないこと。
MRさんが切り離しても大丈夫って言ってたけどホント?
メーカーの社内資料で、リベルサス錠をミシン目以外の場所で切り離しても1カ月くらいは大丈夫という情報を口頭で受けた薬剤師もいますよね。
るるーしゅ
文書で出してくれると根拠として使えるのだけど…
メーカーの問い合わせ窓口によると、この情報をもとにメーカー側がミシン目以外の場所で切り離していいですという回答することはありません。
あくまで、ミシン目以外の場所で切り離してもいても一カ月は吸湿性に影響がなかったという社内での未公表の社内データがあるというだけです。
わたしもこんな感じの情報しか知らないので、この情報だけでミシン目以外でも切っても問題ないとは言えないと思ってます。
理由としては、
- どのような条件下で吸湿性を検討したのか?
- 患者宅の保管状況はどのような条件下になりそうか?
この辺をしっかりと把握したうえじゃないと、あまりミシン目以外では切りたくないと思ってしまいます。
もしミシン目以外で切って渡すという判断した場合は、ユニパックに乾燥剤と一緒に入れて、こっちから先に使ってくださいと指導すれば、リスクは最小化できるのではないかなと思います。
あくまでも個人的な見解ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
調剤後のフォローアップで注意すべき点とその理由
薬機法改正により義務付けられた調剤後のフォローアップですが、正直このリベルサスについては、あまりないかなという印象です。
新薬ですので処方は2週間までですし、安全性も治験データや先に発売している海外からの情報で大きな懸念点は見当たりません。
重大な副作用としての低血糖と急性膵炎が挙げられていますので、これらの初期症状の確認及び服薬状況や保管状況の確認を初回後1週間くらいにフォローアップしてもいいかもしれません。
重大な副作用 | 主な自覚症状 |
---|---|
低血糖 | お腹がすく、冷汗が出る、血の気が引く、疲れやすい、 手足のふるえ、けいれん、意識の低下 |
急性膵炎 | 吐き気、嘔吐、激しい上腹部の痛み、背中の痛み、お 腹にあざができる、お腹が張る |
以上の自覚症状を、副作用のあらわれる部位別に並び替えると次のとおりです。
これらの症状に気づいたら、重大な副作用ごとの表をご覧ください
部位 | 自覚症状 |
---|---|
全身 | 冷汗が出る、疲れやすい、けいれん |
頭部 | 意識の低下 |
顔面 | 血の気が引く |
口や喉 | 吐き気、嘔吐 |
腹部 | お腹がすく、激しい上腹部の痛み、お腹が張る |
背中 | 背中の痛み |
手・足 | 手足のふるえ |
皮膚 | お腹にあざができる |
その他のリベルサスのQ&A
リベルサス錠の名前の由来は?
リベルサス錠の名前の由来はインタビューフォームにのっていません。MRさんに聞いたところ、特にないそうです(本当かどうか不明)
アレグラのアレルギーグランドチャンピオンみたいにオープンに出来ないだけかと思ったのですが、本当にないみたいです。全世界で呼びやすい名前にしたとか…
いつから長期投薬が可能ですか?
薬価収載が2020年11月18日(ミッキーマウスの誕生日!)なので、2021年12月1日より長期投薬は可能です。
どれくらいでHbA1Cは下がってきますか?
このデータから、1カ月で0.5くらい、2ヵ月で1.0くらいですかね。
体重は落ちるんですか?
14㎎は体重落ちそうですね
よくある副作用は?
胃腸障害が気になりますね
- リベルサス錠添付文書
- リベルサス錠インタビューフォーム
- リベルサス錠審査報告書
- リベルサス錠患者向医薬品ガイド
- リベルサス錠保険診療における留意事項
- リベルサス錠のMSDのWEBサイト
2 件のコメント
服用時点が類似しているビスフォスフォネート製剤との併用の場合、リベルサスの服用はスキップするとのメーカからの返答でした。理由は、併用の経験がないから…
デイリーのビスフォスフォネート製剤とは併用できないことになります。
>斎藤孝史さん
コメントありがとうございます
そうなんですよね、BP剤との併用が厄介ですよね。
情報ありがとうございます、月1なら、リベルサススキップで
よさそうですね