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【薬剤師が解説】GLP-1ダイエットってどうなの?安全性は大丈夫?

GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、痩せホルモンとして、メディアに紹介されたこともあり、美容・痩身目的の自費処方でGLP-1受容体作動薬を使用している事例があるようです。

「GLP-1ダイエット」といったキーワードで検索すれば、そこら中に広告記事がでているのが現状です。

るるーしゅ

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わたしにもブログに広告だしませんか?という内容が来ました…

25000円もらえるなら、広告出してみても…

メガネ

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るるーしゅ

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さすがにそれは・・・

今回は、肥満でも糖尿病でもない方は、GLP-1受容体作動薬を美容・痩身目的で使用するのって安全性とか大丈夫なのか、薬剤師の立場で解説しようと思います。

GLP-1ダイエットについて

まずGLP-1受容体作動薬がどのようにして、痩せるかについてザックリと紹介します。薬剤師なので、本当はここに力を入れなきゃなんでしょうが、正直メカニズムとか苦手…

それでは痩せホルモンと言われるGLP-1についてです。

GLP-1は、我々の体が食事を摂取したときに腸から分泌されるホルモンで、血糖値の調節や食欲の抑制に重要な役割を果たしています。

具体的には、GLP-1は、膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を促進し、これにより食後の血糖値の上昇を抑制します。

さらに、GLP-1は脳の食欲をコントロールする部分に作用し、食欲を抑制する効果もあります。これは、食事を摂ることで満腹感を感じ、食事の量を自然と減らすことを可能にします。

以上を踏まえて、GLP-1ダイエットを解説すると…

まず、GLP-1は脳の食欲中枢に働きかけることで食事の量を抑制します。この効果により、人々は自然とカロリー摂取量を減らし、体重を落とすことが可能になります。

加えて、食欲抑制により間食や過食を避けることができ、ダイエット効果をさらに高めることができます。

次に、GLP-1はインスリン分泌を促進し、血糖値の調節を助けます。

これは体重減少に直接的に関連しているわけではありませんが、食事後の血糖値上昇を抑制することで、飢餓感を抑えるのに役立ちます。

また、血糖値のコントロールはメタボリックシンドロームや2型糖尿病といった生活習慣病の予防にも寄与します。

したがって、GLP-1ダイエットは、食欲抑制と血糖値管理の2つのメカニズムを通じて体重減少を実現し、同時に全体的な健康状態の改善にも寄与します。

GLP-1ダイエットの学会等の見解について

GLP-1受容体作動薬に体重減少作用があることについては、これは紛れもない事実です。

ではこのGLP-1ダイエットについて日本糖尿病学会や日本医師会がどのような反応をしているか紹介します。

まずは2023年4月に出た日本糖尿病学会の見解からです。

GLP-1 受容体作動薬および GIP/GLP-1 受容体作動薬の適応外使用に関する
日本糖尿病学会の見解

一般社団法人 日本糖尿病学会

今般、一部のクリニック等において、2 型糖尿病治療薬である GLP-1 受容体作動薬やGIP/GLP-1 受容体作動薬を、適応外使用である美容・痩身・ダイエット等を目的として自由診療での処方を宣伝する医療広告が散見されます。また、肥満症を適応とする新規薬剤の臨床試験では、BMI ならびに肥満に関連して有する健康障害についての参加基準が厳格に定められています。

医師とくに本学会員においては、不適切な薬物療法によって患者さんの健康を脅かす危険を常に念頭に置き、誤解を招きかねない不適切な広告表示を厳に戒め、国内承認状況を踏まえた薬剤の適正な処方を行ってください。また、特に本学会専門医による不適切な薬剤使用の推奨は、糖尿病専門医に対する国民の信頼を毀損するもので本学会として認められるものでないことを警告します。

つづいて日本医師会です。こちらは2022年6月ですね。

今村聡副会長は、糖尿病治療薬の一部が”痩せ薬”として不適切使用されている実態について、報告した。
 同副会長は、まず、これまでの糖尿病治療について、日医が日本糖尿病学会、日本糖尿病協会、日本歯科医師会と協力し、「日本糖尿病対策推進会議」を設立するとともに、『糖尿病治療のエッセンス』の作成等により、啓発を進めてきたことを紹介。その上で、「糖尿病治療薬の一部が、個人輸入や美容クリニックにおいて、”痩せ薬”として不適切に使用されている実態がある」と述べ、強い懸念を表明した。
 具体的な事例としては、近年承認された「GLP―1受容体作動薬」を用いて、インターネット上で「GLP―1ダイエット」と広告し、自由診療として行っていることを例に挙げ、「健康な方が医薬品を使用することのリスク及び医薬品適正使用の観点からも、このような行為を禁止すべきである」と強調。同薬には重大な副作用のリスクや禁忌があることについても説明し、医薬品を投与する前提として、「リスクがあるとしてもなお、治療が必要で効果が期待される方に対して投与されるべきであり、国民の健康を守るべき医師が、治療の目的を外れた使い方をすることは”医の倫理”にも反する」と指摘した。
 同副会長は更に、医薬品を医療機関に納入している卸売業者や製薬企業など、流通業界における対応にも課題があるとの見方を示し、厚生労働省による医薬品の適正な流通確保を要望する姿勢を示した他、医療広告のあり方に関しても、特にインターネット上でガイドラインの規定を外れた表記が散見されることから、日医として取り締まりの更なる強化を関係部局へ申し入れていく方針を示した。

問題点としては…

日本糖尿病学会、日本医師会ともに、GLP-1ダイエットの自由診療に対して、不適切であると指摘しています。

不適切な理由としては、GLP-1受容体作動薬に体重減少効果はあるが、健常人に使用した際の安全性については課題があるってことです。

健常人に対して有効性や安全性は不明

るるーしゅ

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有効性や安全性に対して、検証されているのは、あくまでも肥満や糖尿病のある人だけですからね…

GLP-1ダイエットの安全性のリスクについて

日本糖尿病学会も日本医師会も問題視しているGLP-1ダイエットですが、現時点でどのような安全性のリスクがあるのかを解説していこうと思います。

わたしが調べた感じでは大きく2つあります。

ひとつめは、通称”ozempic face”(オゼンピックフェイス)と呼ばれる症状と、症例報告として神経性やせ症を発症した事例があります。

ozempic face(オゼンピックフェイス)について

オゼンピックフェイスというのを聞いたことがありますか?

オゼンピックフェイスとは、GLP-1受容体作動薬のオゼンピックの副作用として起こる可能性のある顔の変化を表すために使用される用語です。

オゼンピック使用中に急激に体重が減少すると、顔 (および体) の皮膚が過剰になり、たるみやシワが発生する可能性があります。

海外でオゼンピックという薬が顔を歪める可能性があるとしてニュースになりました。

そしてそれが現在、ソーシャルメディアで「オゼンピックフェイス」と呼ばれ、広く使われています。

このフレーズは、オゼンピック使用後、顔がくぼんでしまったり、やつれて見えたりする可能性があるという事実を指します。

るるーしゅ

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どんな感じになるかはozempic faceと画像検索してみるといいと思います。

なお、このオゼンピックフェイスは、GLP-1受容体作動薬に限局した事象ではなく、急激に体重が減少すると起きてしまう可能性があります。

なので、他のダイエット方法でも起きうることですので、オゼンピックじゃなきゃ大丈夫ってことではありません。

神経性やせ症について

つづいて症例報告ですが、神経性やせ症(通称:拒食症)を発症してしまった事例です。

志熊淳平, 2022). GLP-1受容体作動薬の美容・痩身目的での使用と神経性やせ症発症の危険性. 肥満研究, 28(2), 91-92.

これは、18歳の女性(BMI:21.1)がリラグルチドを使用し、2ヵ月で体重が3㎏減り、リラグルチドを中止後も下がり続けBMI14.7になり、この報告したクリニックに受診し、神経性やせ症と診断された事例です。

BMIが21.1→14.7と言われても、ピンとこないと思いますので、身長160㎝と仮定してみると

53㎏→38㎏くらいになってしまったということです。

この事例なのですが、GLP-1受容体作動薬の薬理作用が原因で発症したというわけではなさそうです。

るるーしゅ

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GLP-1受容体作動薬でメンタル系に影響を及ぼすとかいうのはなさそうです

この症例報告の著者の見解によると、痩せへの憧れに対して、GLP-1受容体作動薬を使用し、短期間での体重減少が成功体験となり、より痩せへの執着を駆り立ててしまったみたいです。

発症因子の心理・社会的ストレスに加えて,GLP-1受容体作動薬で得られた少しのやせ体験(2か月で3kgの減少)が一時的な安堵感を生み、さらなる食事制限行為を促したために発症した可能性があると考えている。すなわちGLP-1受容体作動薬による少しのやせ体験が病的な自己効力感を高めてしまった可能性がある。

肥満研究, 28(2), 91-92.より

最後の考察部分も重要ですので引用します。

神経性やせ症の「予備軍」となるような潜在的リスクの高い若年女性が多く存在している可能性がある.自由診療で診察もなく簡単にGLP-1受容体作動薬を手にできるということは,「予備軍」の神経性やせ症発症を加速させる可能性が危惧される。
美容・痩身を目的とするGLP-1受容体作動薬の不適切な使用には,神経性やせ症発症防止の観点から最大限の注意を払う必要があるということを,すべての医療者が認識するべきである

肥満研究, 28(2), 91-92.より

自殺念慮や自傷行為のリスク?

2023年7月に、EMA(欧州医薬品庁)が、オゼンピック(セマグルチド)、Saxenda(リラグルチド)、ウゴービ(セマグルチド)など、GLP-1受容体作動薬として知られる医薬品1による自殺念慮と自傷行為の念のリスクに関するデータを検討していることがニュースであがっていました。

これも詳細がでてみないと、なんとも言えませんが、前述の神経性やせ症と同様な気がしますよね。

痩せ信仰は、さまざまなメディア(テレビ、映画、雑誌、ソーシャルメディアなど)を通じて強化され、人々に痩せることに対する強迫観念を抱かせる可能性があります。

痩せ信仰は一部の人々に対し、自己価値が体形や体重に結びついているという誤った認識を与え、過度のダイエットや食事制限、過度な運動など、健康を害する可能性のある行動を引き起こすことがあります。

るるーしゅ

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痩せ信仰→GLP-1ダイエット→成功体験→神経性やせ症発症→自殺念慮といった感じの呪いになるのかも

まとめ

今回は薬剤師の視点で、GLP-1ダイエットについて解説しました。

わたしのブログ見に来る方の大多数は、薬剤師でしょうから、薬剤師として以下のことを知っておいてください。

  • 日本糖尿病学会も日本医師会も、自由診療でのGLP-1ダイエットについては問題視している。
    (ネットパトロールが追い付いていない現状みたいです)
  • 安全性のリスクとして、オゼンピックフェイスと神経性やせ症の発症促進が危惧される。

美容・痩身目的で使いたがる方に、質問されることもあると思いますので、上記の内容については説明できるようにしておいていただければ幸いです。

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薬局薬剤師です。
若手の薬剤師教育や学会発表、論文投稿などに興味があります。
m3や雑誌への寄稿や、某大学非常勤講師歴もあります。
ファクトベースで物事を話さない(=感覚でものを言う)人は苦手です。
今後の業界の変化に対応できるように、業界情報や専門的なスキル、そして薬剤師としての働き方などについて情報発信していきます。
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