先日、GPT-4の利用が開始され、ますます目が離せないChatGPTですが、今回は、このChatGPTを使って、薬剤師国家試験に挑戦してみます。
尚、別の記事では医学論文の要約や批判的吟味にも挑戦していますのでよかったらみてください。
目次
試験問題の選定および出題方法
今回、使用する薬剤師国家試験の問題は第107回の中から15問をピックアップして、ChatGPT(GPT-4)にコピペして出題していきます。
尚、今年の第108回ではなくて、第107回の薬剤師国家試験を使用する理由は、コピペして貼り付けることができるからです。
るるーしゅ
第108回もコピペおよび画像での質問が可能になったらやってみたいと思います。
そしてピックアップした問題については、純粋にコピペしやすかったものです。(化学式などの図が入ったものはChatGPTに出題できないため)
問題およびChatGPTの回答
それでは私の独断で選んだ薬剤師国家試験の問題15問に対するChatGPTの回答を記載します。ChatGPTは解説も記載していますが、内容が正しいか判断しておりませんので、ご了承ください。
第1問:基礎系
1 エレクトロスプレーイオン化(ESI)法
エレクトロスプレーイオン化法(ESI)は、液体クロマトグラフィーと質量分析法を組み合わせる際に一般的に使用されるイオン化手法です。他のイオン化法は主にガスクロマトグラフィー/質量分析法(例:CI、EI)や固体試料の質量分析法(例:FAB、MALDI)に使用されます。
るるーしゅ
正解です。
第2問:ホルモンについて
1 黄体形成ホルモン(LH)
黄体形成ホルモン(LH)は、排卵の開始を誘発するために、月経周期中に急激に分泌量が増加し、ピークに達します。
るるーしゅ
正解です。
第3問:コデインの代謝酵素
3 CYP₂D₆
CYP2D6は、コデインをより活性の高いモルヒネに代謝する酵素です。この代謝プロセスは個人差があり、遺伝的な要因が影響することが知られています。
るるーしゅ
正解です。
第4問:疾患の臨床所見
3 低カリウム血症
原発性アルドステロン症は、アルドステロンの過剰分泌によって引き起こされます。アルドステロンは、腎臓でナトリウムの再吸収を促進し、カリウムの排泄を増加させるため、低カリウム血症(血中カリウム濃度が低い状態)が典型的な臨床所見となります。
るるーしゅ
正解です。
第5問:日本の厚生労働省のこと
4 医薬品・医療機器等安全性情報
医薬品・医療機器等安全性情報は、厚生労働省が定期的に発行し、医薬品や医療機器の安全性に関する情報を提供する資料です。これにより、医療関係者や患者に対して重要な安全性情報が周知されます。
るるーしゅ
正解です。
第6問:分配係数
まず、弱酸HAの解離度を求めます。解離度は次の式で求められます。
解離度 = 10^(pH – pKa) = 10^(5.0 – 5.3) = 10^(-0.3) ≈ 1/2
緩衝液中のHAの解離度は1/2なので、緩衝液中の分子形(非解離形)は1/2で、解離形は1/2です。
抽出率が75%なので、緩衝液中に残ったHAの分子形(非解離形)の割合は25%、つまり1/4です。有機溶媒中に移行したHAの分子形は、緩衝液中の分子形の3/4です。分配係数KDは、有機溶媒中の分子形の濃度と緩衝液中の分子形の濃度の比で求められます。
KD = (有機溶媒中の分子形の濃度) / (緩衝液中の分子形の濃度)
= (3/4) / (1/4)
= 3
しかし、選択肢に3がありません。ここで、前提条件で「1.0 * 10^(-0.3) ≈ 2」とありますので、この近似値を使用して計算を行います。
解離度 = 1/2 ≈ 2
緩衝液中の分子形(非解離形)の割合は1/2、解離形の割合は1/2です。
抽出率が75%なので、緩衝液中に残ったHAの分子形(非解離形)の割合は25%、つまり1/4です。有機溶媒中に移行したHAの分子形は、緩衝液中の分子形の3/4です。
KD = (有機溶媒中の分子形の濃度) / (緩衝液中の分子形の濃度)
= (3/4) / (1/4)
= 3 * 2
= 6
したがって、弱酸HAの分配係数KDに最も近い値は6です。答えは3(6.0)。
るるーしゅ
正解は5の9.0なので不正解です。
第7問:確認試験
2 イソプロパノールはこの確認試験で陽性となる。
この確認試験はホルミル基(-CHO)を検出するために用いられます。ヨードホルム反応において、ヨウ素は求電子剤として働き、水酸化ナトリウムはヨウ素を活性化させるために使用されます。ヨードホルム(淡黄色の沈殿)が生成するのは、ホルミル基を持つ化合物が存在する場合です。イソプロパノールはホルミル基を持たないため、この試験で陽性とはなりません。
るるーしゅ
正解は3なので不正解です。
第8問:血小板に関連する分子
1 セロトニンは、血管の損傷部位で活性化された血小板から放出される。
4 トロンボキサン A2 は、血小板内の Ca2+ 濃度を上昇させ、血小板凝集を促進する。
セロトニンは血小板から放出され、血管収縮や血小板凝集の調節に関与します。トロンボキサン A2 は、血小板の活性化に関与し、血小板内のCa2+濃度を上昇させて血小板凝集を促進します。一方、プロスタグランジン I2 は血小板凝集を抑制する作用を持ち、血小板内のサイクリックAMP(cAMP)量を増加させることで、血小板凝集を抑制します。
るるーしゅ
正解です。
第9問:免疫系の組織と細胞
1 骨髄では、造血幹細胞が分裂している。
5 小腸のパイエル板では、上皮層の M 細胞を介して取り込まれた抗原に対する免疫応答が行われる。
骨髄は、造血幹細胞が分裂・分化し、免疫細胞が産生される場所です。一方、小腸のパイエル板は、腸管免疫の一部を担っており、M細胞を介して取り込まれた抗原に対する免疫応答が行われます。胸腺では、T細胞が正の選択と負の選択を受け、成熟したT細胞として機能するように分化します。リンパ節では、樹状細胞がT細胞に対して抗原提示を行います。肝臓は、老化した赤血球を除去する役割を持ちますが、血液中の抗原に対する免疫応答は主にリンパ節や脾臓で行われます。
るるーしゅ
正解です。
第10問:疫学調査について
1 関連の一致性とは、対象とする要因と疾病に関して、調査の時期、場所、対象集団などを変えても同様の結果が得られることである。
4 関連の時間性とは、疾病の発生以前に要因の曝露があることである。
一致性は、異なる状況下でも同様の結果が得られることを意味し、因果関係の証拠を強めます。時間性は、因果関係を示すために、要因の曝露が疾病の発生より先にあることが必要であることを指します。他の選択肢は、因果関係の判断基準としては正確ではありません。
るるーしゅ
正解です。
第11問:精神疾患症例問題
1 線条体におけるドパミン D2 受容体遮断
5 脳下垂体前葉におけるドパミン D2 受容体遮断
リスペリドンは、ドパミン D2 受容体を遮断することで、統合失調症の症状を改善します。しかし、線条体におけるドパミン D2 受容体遮断によって、錐体外路症状(手のふるえや筋肉が突っ張る感覚)が引き起こされます。また、脳下垂体前葉におけるドパミン D2 受容体遮断によって、プロラクチン分泌が亢進し、高プロラクチン血症が生じます。これが月経異常の原因となります。
るるーしゅ
正解です。
第12問:症例問題(処方提案)
1 カルベジロールを減量する。
4 アトルバスタチンを追加する。
1: カルベジロールは心拍数を低下させる効果がありますが、患者の現在の心拍数は110拍/分と高いため、減量すると症状が悪化する可能性があります。ただし、患者の血圧が140/88 mmHgと高いので、カルベジロールの減量は適切ではないかもしれません。
4: 患者のLDLコレステロール値は165 mg/dLと高いため、アトルバスタチンのようなスタチン系薬剤を追加することで、コレステロール値を改善し、心血管イベントのリスクを低減することができます。
るるーしゅ
正解は、2と4なので不正解です。
第13問:症例問題(副作用モニタリング)
1 腎機能検査値は基準値内と判断する。
5 今後、処方 1 や処方 4 の薬剤により血清カリウム値が上昇しすぎないか注意する。
1: 患者の腎機能検査値(BUN 18 mg/dL、血清クレアチニン値 0.9 mg/dL)は基準値内であり、適切なモニタリング対象です。
5: 処方 1(エナラプリルマレイン酸塩)および処方 4(エプレレノン)は、血清カリウム値の上昇を引き起こす可能性があります。患者の血清カリウム値は2.9 mEq/Lで、これは現時点では基準値内ですが、今後の治療で値が上昇しすぎないか注意する必要があります。
るるーしゅ
正解です。
第14問:症例問題(DI)
2 診療ガイドライン
3 UpToDate
診療ガイドラインは、エビデンスに基づいた治療方針を提供しており、患者に適切な治療を選択する際に役立ちます。UpToDateは、臨床医や薬剤師が最新の医学情報を入手できるオンラインの情報サービスで、多くの疾患や治療法についてのエビデンスに基づいた情報が提供されています。これらの資料を使用することで、タモキシフェン単独療法と他剤との併用療法の有用性に関する情報を調査できます。
るるーしゅ
正解です。
第15問:症例問題(認知症)
2 患者が軽・中程度のアルツハイマー型認知症であること
3 患者が過去に貼付剤によってかぶれたことがあるか
リバスチグミン経皮吸収型製剤は、軽・中程度のアルツハイマー型認知症の治療に適用されるため、患者がその範囲に該当するかを確認することが重要です。また、貼付剤による過去のかぶれやアレルギーがあるかどうかを確認することで、副作用リスクを評価することができます。
るるーしゅ
正解です。
解答結果のまとめ
第107回の薬剤師国家試験の中から15問ピックアップして、ChatGPT(GPT-4)に出題したところ12問正解しました(正答率80%)。
今回出題できたのは15問ですが、おそらく全問(345問)出しても合格ラインにはのってくるのではないかなと思います。
ちなみに第108回薬剤師国家試験のなかでSNSで盛り上がった問題も出題してみました
長井長義によって世界で初めて単離されたのはどれか?1つ選べ
1 モルヒネ
2 エフェドリン
3 アトロピン
4 サリチル酸
5 コカイン
2 エフェドリン(正解)
長井長義は日本の薬学者で、1885年にエフェドリンをエフェドラ属の植物から世界で初めて単離しました。エフェドリンは、気管支拡張作用や中枢神経刺激作用を持つアルカロイドであり、その後の医療や薬学に大きな影響を与えました。
薬剤師とAIの未来
以前のブログ記事でも伝えましたが、本当にこのChatGPTは我々ホワイトカラーのゲームチェンジャーだと思っています。
るるーしゅ
GPT-4のレポートでも長年の経験や教育が必要な仕事に影響を与えることが示唆されています。
このChatGPTが出てきたことで、薬剤師が不要になるとかはないですが、今後重要視される能力が変わると思います。
項目 | AIの役割 | 薬剤師の役割 |
---|---|---|
処方箋解析 | 処方箋の解析を高速で行い、 適切な薬物選択をサポート | AIの解析結果をもとに最終的な判断を行い、 患者への説明を担当 |
副作用予測 | 大量のデータから副作用の予測を 行い、薬剤師に情報提供 | AIの提供した予測情報をもとに患者への アドバイスや注意喚起を行う |
患者との コミュニケーション | – | 患者の状況や感情に応じた適切な コミュニケーションを担当 |
個別対応 | – | 患者の個別の状況に合わせたアドバイスや 治療方針を提案 |
直感的判断 | – | 人間の感性や直感に基づく判断を行い、 AIの限界を補完 |
こAIは、処方箋解析や副作用予測などデータ処理が主なタスクとなりますが、患者とのコミュニケーションや個別対応、直感的判断は薬剤師が担当すると思います。
このような分担により、効率的で質の高い薬剤業務が実現されることが期待されますので、いかにChatGPTにようなAIを効率的に活用できるかはひとつのスキルになるのではないかと思います。
るるーしゅ
色々な角度から、薬剤師業界の変化が迫っていますね。ものすごくワクワクします。
この変革が迫る今こそ、もし現在の仕事に魅力を感じないなら、自分の薬剤師としてのキャリアを振り返るチャンスです。
新たな技術や環境に触れることで、薬剤師としてのスキルや知識をさらに磨くことができ、自分自身の成長にも繋がります。
AIとの連携がもたらす新しい薬剤師の働き方や、より質の高い医療の実現を目指して、ぜひ新たなチャレンジをしてみてください。