知り合いの薬剤師が指定難病のひとつである潰瘍性大腸炎になってしまいました。
私自身、今まで潰瘍性大腸炎の知識が少なかったので、これを機に少し勉強しようと思ったら、件の薬剤師より「患者目線で質問に答えてあげる」というありがたいお言葉をいただきましたので今回、ブログにまとめました。
もちろん、本人よりブログで公開することは了承をえていますのでご安心ください。
目次
潰瘍性大腸炎の概要
潰瘍性大腸炎は、大腸の内壁が炎症を起こし、ただれ(潰瘍)ができ、出血や下痢を引き起こす病気です。炎症はほとんどの場合、直腸と結腸の下部に影響を及ぼしますが、結腸全体に影響を与える可能性があります
潰瘍性大腸炎は治癒することはできませんが、通常はコントロールすることができます。潰瘍性大腸炎のほとんどの人は一般の方と同様の生活を送ることができます。
潰瘍性大腸炎の原因
潰瘍性大腸炎の原因は不明ですが、遺伝的要因と環境要因が関係しているのではないかと言われています。
遺伝的要因
潰瘍性大腸炎は家族で発症する傾向があります。ただ遺伝的要因はそこまで強くなく、一親等で約10%~25%程度です。
環境要因
遺伝的感受性のある人がトリガー(病気や環境内の何かなど)にさらされると、免疫系が活性化される可能性があります。これが起こると、免疫系は結腸の内壁を異物として認識して攻撃し、炎症を引き起こします。
さらに、潰瘍性大腸炎は、人が喫煙をやめた後に現れる可能性があります。ただし、すべての状況で既知のトリガーであることが証明されている単一の要因はありません。
潰瘍性大腸炎の症状および経過
潰瘍性大腸炎の炎症が起きて症状が強く現れる「活動期」と、症状が治まっている「寛解期」があります。
主な症状は下痢で、血液や粘液が含まれている可能性があります。臨床症状によって軽症、中等症、重症と分類します。
軽症 | 中等症 | 重症 | |
---|---|---|---|
排便回数 | 4回以下 | こ | 6回以上 |
顕血便 | (+)~(-) | の | (+++) |
発熱 | (-) | あ | 37.5℃以上 |
頻脈 | (-) | い | 90/分以上 |
貧血 | (-) | だ | Hb10g/dL 以下 |
赤沈またはCRP | 正常 | 30mm/h以上 3.0mg/dl以上 |
潰瘍性大腸炎の治療
潰瘍性大腸炎の治療目標は、以下の二つです。
- 症状をコントロールする(寛解を達成する)
- 症状が再発しないようにする(寛解を維持する)
治療の基本は5-ASA薬です。多くの方は治療後4~6週間で症状が緩和されます。寛解を維持するために、5-ASA薬による継続的な生涯にわたる治療が推奨される場合があります。
潰瘍性大腸炎の人に有効な食事内容は?
潰瘍性大腸炎の人の症状を和らげることが証明されている特定の種類の食事はありません。患者の個々の経験で乳製品を食べると調子が悪くなるなどの個々の経験に基づいて対応する必要があります。
潰瘍性大腸炎の人に注意すべき薬剤は?
一般的にNSAIDsは症状を悪化させる恐れがあるため、推奨されません。必要な場合はアセトアミノフェンを使用します。
潰瘍性大腸炎の薬剤師へインタビュー
潰瘍性大腸炎と診断された経緯はなんだったんですか?
3年、4年くらい前ですかね、急に下痢がひどくなってしまったんです。日頃から胃腸の調子が良いほうじゃなかったので初めは気にしてなかったんですが、時期を追うごとにひどくなってきてしまいました。
1日10回とかトイレ行くようになってしまって。それでも仕事のストレスかなと思ってました。
(仕事のストレスか…)
便に血も混じってたんですが、痔がもともとあった事もあり、特に血便っていうような意識もなく過ごしてましたね。ただ最終的にどうにも腹痛がひどくなってしまい、「これはやばいかも」と思って受診し検査したのがきっかけですね。
ちなみに家族歴はあったんですか?
家族歴はないですね。
喫煙はどうですか?
タバコは3年ほど前まで吸ってました。
禁煙してから下痢がひどくなってしまい、それが続き受診に至ってます。
潰瘍性大腸炎は喫煙でリスクが下がると言われてるので、タバコで潰瘍性大腸炎の症状が抑えられてたのかなと感じてます。
ですから発症したのは本当はもっと以前なのかもしれませんね。
とは言え、あえて喫煙再開する予定はないです(笑)
タバコと潰瘍性大腸炎の関係は、なかなか興味深いですね。
自分で潰瘍性大腸炎かも?と疑ってましたか?
薄々思ってましたね。
それで大腸内視鏡検査を受けて、予想通り潰瘍性大腸炎だったって感じですね。
難病とは言え、医師から告げられても驚きはなかったです。
ショック受けなかったんですか?
ユアーショックってなりそうじゃないですか
もちろん少しはショックを受けたんですが、「薬を飲めば楽になるのか」と思うと、少しほっとしたのをよく覚えてます。
それくらい辛かったです(笑)
(そんなに辛いのか…)
下痢の回数とかはどうなんですか?
体調による面が大きいんですが、落ち着いていればそれほど変わらないですね。気になるほどではないです。
ただ下痢傾向の時は「おなら」をするのが怖いので、排便回数で支障がというより、便意なのかおならなのかで、結構トイレの回数は多くなります。私だけかもしれませんが(笑)
難病というと、構えてしまいますけど、そんな感じなんですね。
重症度は軽症ですか?
中等症の、全大腸炎型ですね。
股関節やひざに痛みがでる場合もあるってみましたけど、どうですか?
う~ん、2年程前から足首の痛みが続いてるんですけど、潰瘍性大腸炎の合併症かは分からないです。
でもなんかおかしな痛みはずっと続いてます。大したことはないんでしょうけれど、でも地味にこういうのが毎日の生活でストレスになってるのが正直な所ですね。
ちなみに治療薬は何使っているんですか?
今は、リアルダ錠+整腸剤です。
整腸剤は……効果あるんですかね?(笑)
整腸剤は…きっと何にでも効くポテンシャルを秘めていると思ってます
はじめは「同じメサラジンなら、後発品のある薬にしてくれないと医療費が……」って思ってたんですが、リアルダの1日1回のメリットは大きいですね。
1日1回でも飲み忘れそうになるので気をつけています。
うんうん、ですよね
(あまり分かっていない)
落ち着いていれば服用するのは2錠ですし、体調によっては上限の4錠です。
リアルダ錠って錠剤が大きいし、冷所保存なのがやっかいですね。
「整腸剤」に関しては、乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌、3つの製剤があるのはご存知と思いますが、使い分けという部分に関しては、処方する医師も曖昧なのが現状かなと思います。
やっぱり薬飲むのは大変ですか?
4錠まとめて服用は、相当きつい大きさです(笑)
4錠だと5gくらいなので、結構重いですよ
飲み忘れはしないもんですか?
どんな薬とも同じように、毎日だと忘れそうになります。
飲み忘れるというよりは、飲んだか飲んでないか分からなくなってしまうんですよね。
分かります。私もインフルエンザでタミフル5日分出たとき、ちゃんと飲めませんでした。
飲んだか飲んでいないか分からなくなりましたね
アドヒアランスとか、薬を飲む大切さとか、そんなんじゃなくて忘れます。
「きちんと忘れず服用してくださいね」なんてアドバイス言われても、意味ないですよね
それ言っちゃいけないヤツー
ちなみに飲み忘れると症状悪くなるとかあるんですか?
今服用してるリアルダの特長かもしれませんが、1回忘れて急に調子が悪くなる事はないですね。
ペンタサなどメサラジン(5-ASA製剤)を1回、2回忘れて悪くなるというよりは、例えば30日分処方されてるのに20日分くらいしか飲んでないとかだと影響あるのかもしれません。
基本きっちり飲んでるので、神経質になりすぎないようにはしてます。
潰瘍性大腸炎になる前となった後で、生活にどんな違いが起きていますか?
治療である程度症状がコントロール出来るようになってからは、あまり生活の違いは無いですかね。
潰瘍性大腸炎の治療指針って、医師によって大きく異なると聞きます。
(そうなんだ、指定難病なんだから統一しててほしいのに…)
私は一つの病院にしかかかってないんですが、例えば食事制限にしても「細心の注意を払ってしっかりやるべきだ」という医師もいれば、「体調悪いときは気をつけてね」程度の医師もいます。
やはり原因が分からない分、日常の過ごし方なども、医師の治療方針に左右されるものも大きいのかなと感じます。
私も何がいいかというのは分かりませんが、ストレスを極力ためないようにだけはと思ってます。
でも働いているとどうしたってストレスは抱えてしまいますね。ただそれをいかに減らすかは気をつけてます。
生活に違いというよりは、仕事に対するスタンスを変えましたね。
潰瘍性大腸炎になって、一番なにがつらいですか?
将来の事ですね。予後もそうですし、病気を抱えてる事によって、家族の事とか仕事の事とかに影響が無いかなという漠然とした不安です。
でもいつかいい薬が発明されて、完治したらいいなとは思ってます。
まぁでも、それほど「つらい」みたいなのは無いですよ。
運が悪いなとは思いますけど、まぁ仕方ないですね。どちらかと言うと、薬のありがたみを実感しています。
薬のありがたみを感じるか、薬剤師から聞くと色々思うところはありますね
仕事しすぎだったと、仕事へのスタンスを変えたっていうところ回収したいのですが…
4,5年ほど前から働き詰めでしたね。残業・休日出勤は、月100時間を超えてたと思います。大学訪問などで休みが無い事も多かったですね。
それ以外に薬剤師会の仕事もしてたので、結果として睡眠時間も少なかったです。それなりに仕事をこなしてしていたので、雪だるま式に仕事が増えてくんですよ。
月100時間って…
いや、そんなに自分働けないです
どこかで自分に制御を掛けないと、いつか身体は壊してしまいます。
今は働き方を見直して、ワークライフバランスを大切にしています。
それがいいですね
製薬会社の情報サイトなど見ると、「アスリートでも病気と付き合い頑張ってる」というコラム記事が多いんですが、確かに勇気を貰えるのは事実です。
でも私は普通の会社員なので、頑張り過ぎず緩く働きたいです(笑)
もっともそれは潰瘍性大腸炎の患者さんだけでなく、「病気と仕事との付き合い方」ですから、個人によって考え方がかなり分かれる部分かもしれませんね。
ただやはり一度、心や体を壊してしまうと、そこから「新天地で働く」とかって厳しめなのが実情です。仕事が出来る人ほどオーバーワークになってしまう傾向が強いですし、病気関係なく身体には注意して欲しいですね。
今ストレスを抱えながら働いてる人も、客観的に自分をみて欲しいです、相当ひどい環境で働いてる薬剤師も多いですから。
最後に
今回は、知り合いの薬剤師にインタビューして色々と普段、関係が築けていない患者さんには聞きづらい内容なども聞いてみました。
か | 解釈 | 患者が病気や薬をどのように考えているか |
き | 期待 | 患者が薬に期待していることは? |
か | 感情 | 病気や薬を飲むこと等に対して、どのように感じているか? |
え | 影響 | 病気や薬を飲むことで、日常にどのような影響があるか? |
感情や影響、なかなか難しいですよね。ただこれからの薬剤師は、こういう部分も引き出してフォローしていけるといいのではないかなと思います。(現状は患者にも求められていないかもしれませんが…)
相当ヒドイ環境で働いている薬剤師の皆さんも気を付けてくださいね
チェーン薬局勤務、30代男性(既婚)
まず初めにお断りしたいんですが、今日お話するのはあくまで私のケースです。「潰瘍性大腸炎」と言っても、10人いれば10通りの症状があって、治療薬に対する有効性にも差があります。
私の話がどなたにもあてはまる訳ではありません。
でも「指定難病」と言っても、意外と薬局でメサラジン(5-ASA製剤)を始めとする治療薬を調剤する機会って多いと思うんですよね。患者さんの数は20万人を超えるとも言われてますし、今日の話が何か少しでも勉強に役立つヒントになってもらえればなと思います。