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薬局薬剤師になった理由は?職場への不満は?離職理由は?など1000人超えの研究結果から解説

「免許を活かしたかっただけ」で入った職場で、気づけば7年。でも最近、このままでいいのか不安になっていませんか。

私も調剤薬局で働いて10年以上になりますが、ふと「成長している実感がない」と感じることがあります。周りの同期も、給与や条件には大きな不満はないのに、なぜか転職の話ばかり。この漠然とした不安の正体は何なのでしょうか。

実は、1200人以上の薬局薬剤師を対象にした研究データを読むと、この”違和感”の構造が見えてきます。今回は、Nakagomi K らの研究(2017年発表、2007年データ)と最新の離職率データを照らし合わせながら、薬局薬剤師が抱える本音と、判断を先送りにしないための考え方を整理します。

この記事でわかること
  • 1200人のデータから見える「表向きの理由」と「本当の離職動機」のズレ
  • 「不満」と「辞める理由」が一致しない理由
  • 「このままで大丈夫?」と感じたときの判断軸

薬局薬剤師になった理由―「免許を活かす」の裏にあるもの

研究データによると、薬局薬剤師になった理由のトップは「薬剤師免許の実践的な活用」で42.8%。次いで「医療分野での勤務希望」が21.7%、「専門資格取得の機会」が15.1%という結果でした。

一見すると「資格を活かしたい」という前向きな動機に見えます。でも、ここで立ち止まって考えたいのは、「免許を活かす」と「成長する」は別物だということです。

私ならまず、この数字が何を意味するか考えます。「免許を活かす」は、資格に見合った仕事をしたいという意味であって、必ずしも「この会社で何かを成し遂げたい」という意味ではありません。逆に言うと、入職時点では明確なキャリアビジョンを持っていない人が多かったのではないでしょうか。

でも、新卒のときって具体的なキャリアなんて描けませんよね…

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

そうですね。ただ、最初に明確なビジョンがないまま入職すると、後から「成長の実感がない」という不満につながりやすいんです。ここ、迷いやすいところです。

興味深いのは、同じ調査で病院薬剤師の結果と比較すると、病院薬剤師は「医療分野での勤務希望」が46.9%と圧倒的に高く、薬局薬剤師の21.7%とは大きな差があります。つまり、薬局を選んだ理由は「医療への強い志」というよりも、「資格を活かせる安定した職場」としての側面が大きかったと読み取れます。

このデータは2007年のものですが、2022年の厚生労働省調査でも、薬局薬剤師の約5人に1人(17.8%)が1年後以降の数年以内に転職を考えているという結果が出ています。約18年の時を経ても、薬局薬剤師の転職意向は高い水準を保っているわけです。

職場への不満の1位は「給与」?―データが示す意外な傾向

調査では、職場への不満について次の結果が出ています:

不満の内容薬局薬剤師病院薬剤師
雇用条件29.0%22.1%
給与27.5%23.0%
ハードワーク13.4%17.2%
職場の状況6.2%7.2%
成長できなさそう2.7%2.8%

一見すると、給与と雇用条件への不満が大きいように見えます。どうですか、心当たりありませんか。

でも、ここで注目したいのは「成長できなさそう」という不満が2.7%と非常に低い点です。これ、現場だとここで詰まりがちです。

なぜなら、次に見る「離職理由」のデータでは、状況が大きく変わるからです。

離職理由に見る本音―不満と辞める理由がズレる構造

実際に前職を辞めた理由を見てみましょう:

離職理由薬局薬剤師病院薬剤師
雇用条件20.3%11.3%
成長できなさそう14.5%32.1%
仕事内容の問題7.5%4.7%
対人関係7.2%8.5%
給与6.9%5.7%

ここに、重要な”ズレ”があります。

職場への不満では「給与」が27.5%で2位だったのに、実際の離職理由では6.9%と大幅に下がっています。逆に、不満としては2.7%しかなかった「成長できなさそう」が、離職理由では14.5%と5倍以上に跳ね上がっているのです。

それってつまり、給与に不満はあるけど、それだけでは辞めないってことですか?

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

その通りです。給与は「言いやすい不満」なんです。でも、実際に背中を押すのは「ここにいても将来がない」という感覚。誤解されやすいので先に言うと、これは本人が自覚していないケースも多いんですよ。

この構造は、大手チェーン薬局ほど離職率が高いというデータとも符合します。5店舗以下の場合は離職率6%であるのに対して、31店舗以上では離職率16%という数字が示すように、規模が大きいほど「成長の実感」を得にくい構造になっている可能性があります。

不満と離職理由のズレが示すこと

この「不満として語られること」と「実際に辞める理由」のズレは、次のような判断プロセスを示しています:

  1. 日常的な不満(給与、雇用条件)→ 愚痴や相談のレベル
  2. 潜在的な不安(成長、将来性)→ 言語化されにくいが蓄積する
  3. 離職の決断→ 潜在的な不安が一定のラインを超えたとき

つまり、「給与が安い」と言っているうちはまだ踏みとどまれるけれど、「このままここにいても何も変わらない」と感じ始めたら、それが離職のトリガーになるということです。

いまの状況だと、3〜5年目あたりで「スキルが頭打ちになった」と感じやすいです。処方箋応需のルーティンは確立したけれど、次に何を学べばいいか見えない。研修制度はあるけれど、それが自分のキャリアにどうつながるのか不明瞭。こういう状態が続くと、転職を考え始めます。

満足度の高い層・低い層―データが映す組織の構造

研究では、クラスター分析により満足度の高い層と低い層を特定しています。

満足度が高い層:

  • 既婚の30代男性薬剤師

満足度が低い層:

  • 30代後半の独身女性薬剤師
  • 不満の内容:成長できなさそう、対人関係

この結果を見て、「やっぱり女性は不利なんだ」と諦める必要はありません。ただし、この背景にある構造は理解しておく価値があります。

当時(2007年)の大手チェーン薬局では、管理薬剤師やエリアマネージャーへの昇進ルートが男性中心だった可能性が高いです。結果として、女性薬剤師は「ここで頑張っても上が見えない」と感じやすい環境だったと推測できます。

今はだいぶ改善されているんですよね?

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

制度上は改善されていますが、実態はまちまちです。面接時に、実際に管理職の男女比や、産休育休後の復帰・昇進実績を確認するのが安全です。

注意したいのは、この「満足度の低さ」が必ずしも悪いわけではないという点です。満足度が低いからこそ、現状を変えようと動き出す。転職や学び直しを検討し始める。むしろ、漠然とした不満を感じているのに何も行動しない方が、長期的にはリスクが高いと私は考えています。

「このままで大丈夫?」と感じたら最初にやること

データを見てきて、もし「自分も同じような不安を感じている」と思ったなら、次の3つのステップで判断軸を整理することをおすすめします。

ステップ1:不満を言語化する(感情と事実を分ける)

「なんとなく不安」では動けません。まず、次の問いに答えてみてください:

  • いま感じている不満は、給与・条件の問題か、成長・将来性の問題か?
  • 3年後、いまの会社で何ができるようになっているか、具体的にイメージできるか?
  • 上司や先輩の5年後の姿を見て、「こうなりたい」と思えるか?

正直、3年後のイメージが全然湧きません…

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

それ自体が一つの答えです。イメージできないなら、今の環境では成長のルートが見えていないということ。ここは押さえたいです。

ステップ2:「転職活動」と「転職」を分けて考える

転職活動=転職ではありません

転職活動をすることで得られるもの:

  • 自分の市場価値の確認(いまの経験で評価される点、不足している点)
  • 他社の研修制度やキャリアパスの情報
  • 自分が何を重視しているかの再発見

私ならまず、1〜2社のエージェントに登録して、現状をヒアリングしてもらうところから始めます。「転職するかどうか」を決めるのは、その後です。

ただし、転職エージェントとの面談では次の点を明確に伝えておくほうが安全です:「情報収集段階であり、すぐに転職するつもりはない」「キャリアの選択肢を知りたい」

\ 今の職場でこれから10年働き続けられますか/

ステップ3:小さな検証を回す

いきなり大きな決断をする必要はありません。まずは小さく動いてみる。

具体例:

  • 社内で認定薬剤師の取得を目指してみる→会社のサポート体制が分かる
  • 研修会や勉強会に参加してみる→他社の薬剤師と情報交換できる
  • 転職サイトに登録して求人を眺めてみる→市場の相場観が掴める

これらを試してみて、「今の会社でもまだやれることがある」と感じるなら、転職を急ぐ必要はありません。逆に「やっぱり環境を変えないと無理だ」と確信が持てるなら、それが次に動くタイミングです。

でも、時間がなくて勉強会とか行けないんですよね…

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

それも一つの判断材料です。「時間がない」が慢性化しているなら、それ自体が職場環境の問題かもしれません。負荷が高すぎて自己研鑽できない状況は、長期的に見ると不利になります。

まとめ:判断を先送りにしない、でも焦らない

1200人のデータが教えてくれるのは、「言いやすい不満」と「本当に辞める理由」は違うということです。

給与や雇用条件への不満は、実は表面的なものに過ぎません。本当に背中を押すのは「ここにいても成長できない」という、言語化されにくい不安です。

でも、この不安を感じること自体は悪いことではありません。むしろ、それが次のステップに進むきっかけになります。

次の一歩
  1. 今日、5分だけ時間を取って、自分の3年後をイメージしてみる
  2. 転職エージェントに登録して、カジュアルに面談してみる
  3. 社内で認定薬剤師取得を検討してみる

どの選択肢を選ぶにせよ、「判断を先送りにしない」ことが重要です。

「このままで大丈夫かな」と感じているなら、それはすでに答えが出かけているサインかもしれません。焦る必要はないけれど、放置するのも違う。小さく動いて、自分の判断軸を確認する。それが、後悔しないキャリアを築くための第一歩です。


確認先(一次情報):

  • 厚生労働省「薬剤師確保のための調査・検討事業」(2022年)
  • 厚生労働省「雇用動向調査結果」(最新版)
  • Nakagomi K, et al. “Cluster analysis of pharmacists’ work attitudes.” J Gen Fam Med. 2017;18(6):341-353.
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