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イトラコナゾール錠50「MEEK」クラスⅠ自主回収
2020年12月4日(金)、PMDAよりイトラコナゾール錠50「MEEK」がクラスⅠでの自主回収のお知らせが出ました。
今までのクラスⅠでの回収事例もテレビや新聞等で取り上げられましたので、今回のイトラコナゾールの事例も同様に報道され、一般の方にも広く周知されることが予想されます。
大変だと思いますが、しっかりと対応しましょう。
そもそもクラスⅠ回収って?
まずは回収のクラス分類についておさらいしましょう。ここ数年は、薬局で取り扱う薬剤のクラスⅠの回収も珍しくないため、知っている人が多いかと思いますが…
クラスⅠ | クラスIとは、その製品の使用等が、重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る状況をいう。 |
クラスⅡ | クラスIIとは、その製品の使用等が、一時的な若しくは医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性がある状況又はその製品の使用等による重篤な健康被害のおそれはまず考えられない状況をいう。 |
クラスⅢ | クラスIIIとは、その製品の使用等が、健康被害の原因となるとはまず考えられない状況をいう。 |
イトラコナゾール錠50「MEEK」の回収理由は?
近年のクラスⅠの回収事例は、ごく微量の発がん性物質が検出といった内容のみで、クラスⅠ回収とされていても、その製品の使用等が、重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る状況とはいいがたい状況でした。
しかし、今回のイトラコナゾール「MEEK」の事例は少し違います。製造元の小林化工株式会社のお知らせ内容は以下の通りです。
『イトラコナゾール錠50「MEEK」』につきまして、一部ロット製剤(製品ロット番号:T0EG08)を処方された患者様にふらつき、意識朦朧などの精神神経系の重篤な副作用が報告されました。弊社において調査したところ、製造過程におきましてベンゾジアゼピン系睡眠剤であるリルマザホン塩酸塩水和物が、通常臨床用量を超える成分量の混入が判明しました。
ちなみにリルマザホン塩酸塩水和物は、先発品名称ですとリスミー錠です。
リルマザホン塩酸塩水和物はベンゾジアゼピン系の薬剤で不眠症に用いられる薬剤です。
不眠症
通常,成人にはリルマザホン塩酸塩水和物として1回1〜2mgを就寝前に経口投与する。
なお,年齢,疾患,症状により適宜増減するが,高齢者には1回2mgまでとする。
麻酔前投薬
通常,成人にはリルマザホン塩酸塩水和物として1回2mgを就寝前又は手術前に経口投与する。
なお,年齢,疾患,症状により適宜増減するが,高齢者には1回2mgまでとする。
今回のクラスⅠの回収は、今までのクラスⅠの自主回収とは違い、患者さんの健康被害から混入事例に気づいたことですね。また案内にあるリルマザホン塩酸塩水和物が、通常臨床用量を超える成分量というのがかなり恐ろしいです。
るるーしゅ
まさか1錠にイトラコナゾールの50㎎入っていたってことないよね…
・内臓真菌症(深在性真菌症):
通常、成人にはイトラコナゾールとして100〜200mgを1日1回食直後に経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
ただし、イトラコナゾール注射剤からの切り替えの場合、1回200mgを1日2回(1日用量400mg)食直後に経口投与する。
・深在性皮膚真菌症:
通常、成人にはイトラコナゾールとして100〜200mgを1日1回食直後に経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
ただし、1日最高用量は200mgとする。
・表在性皮膚真菌症(爪白癬以外):
通常、成人にはイトラコナゾールとして50〜100mgを1日1回食直後に経口投与する。ただし、爪カンジダ症及びカンジダ性爪囲爪炎に対しては、100mgを1日1回食直後に経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
ただし、1日最高用量は200mgとする。
・爪白癬(パルス療法):
通常、成人にはイトラコナゾールとして1回200mgを1日2回(1日量400mg)食直後に1週間経口投与し、その後3週間休薬する。これを1サイクルとし、3サイクル繰り返す。
なお、必要に応じ適宜減量する。
薬剤師として考えてほしいこと
イトラコナゾール錠50「MEEK」ロットT0EG08を調剤していたら
今回のイトラコナゾール錠50「MEEK」、ロット番号T0EG08を調剤していたら、至急患者さんに連絡して回収する必要があると思います。
るるーしゅ
メーカーの案内文に患者宅から回収しろって書いてないからいいのでは?ではないと思いますよ。
そのまま該当医薬品服用したら、患者さんに害が起きる可能性が高いわけですからね
でも回収しても、土曜日だから代替薬が用意できないといったこともあり得ます。近隣の薬局などから分譲してもらうなどして対応する必要があるかと思います。
該当ロットではないけど、イトラコナゾール錠「MEEK」調剤していた場合
イトラコナゾール錠50「MEEK」のロット番号T0EG08以外や100「MEEK」、200「MEEK」を調剤で渡していた場合も、該当ロットでないから何もしなくていいとなるでしょうか。
テレビ等で報道され、患者さんが自己判断で中止してしまう可能性も考えられます。
薬剤師のフォローアップ実施の対象になるかと思いますが、情報の伝え方によっては逆効果になるかもしれませんので伝え方に注意する必要があります。
該当ロット以外の「MEEK」製品の調剤に関しては、制限すべきかどうかは各自でご判断ください。
るるーしゅ
こういう事態のときに、自己判断せずにまずは薬局に連絡してくれるという関係が築けていると本当にいいんですけどね
「MEEK」じゃないけど、イトラコナゾール錠を調剤している場合
イトリゾールのGEは、小林化工以外にも3社販売しております。添付文書見る限り、動態パラメーターが違うので別の製品とみて問題なさそうです。
- イトラコナゾール錠50mg「日医工」
- イトラコナゾール錠50mg「科研」
- イトラコナゾールカプセル50mg「SW」
しかし、患者さんにとってはイトラコナゾール錠「MEEK」というニュースを目にして、自分が服用している薬剤がイトラコナゾールカプセル50mg「SW」だった場合、これは違うものと安心して服用を継続できるでしょうか?
これも上記の事例同様に、フォローアップすることが望ましいのではと思います。
るるーしゅ
該当ロット以外のイトラコナゾール錠50「MEEK」も自主回収だからね。12/4の時点で該当ロットじゃないから、そのまま服用してて問題ないですという対応した人のも回収
今回の回収について
今回のイトラコナゾール錠50「MEEK」の回収事例は、医薬品業界に大きな影響を与えることかと思います。
何故このようなことが起こったのかは、今後明らかになってくるかと思いますが、我々、薬剤師が行うべきこととしっかりと行いましょう。
金曜日の夕方にこのような回収情報がでるのは本当に大変ですよね・・・
もし該当ロットを調剤していたら至急対応しましょう。患者宅への回収指示は受けていないから、やる必要がないというのは指示待ち薬剤師ではなく、しっかりと薬剤師として何をすべきか考えるようにしましょう。
フォローアップに関しては、寝た子を起こすことになるからやめるべきか、それとも安全な薬物療法を実施するために必要なことなのか各自で考えてみてください。
余談
今回のような事例は、わたしは初めてな気がします。2007年にコニール錠のなかにアレロック錠が混入されていたことはありましたが、今回ほど健康被害に結びつくものではありませんでした。
また沢井のエカベトNa顆粒のなかにアセタゾラミドがごく微量含まれた事例もありましたが健康被害がおきるレベルではありませんでした。そのほかにもクラスⅡ回収の中には、別の薬剤がごく微量検出されたとかもあると聞いております。
海外ですと2018年にアメリカで、モンテルカストのボトルの中身がロサルタンだったという事例がありましたが、これは見た目で区別ができたのかなと思いますので、今回のパターンとはまた別なのかなと思います。
この事例から、ジェネリックは~と主語を大きく解釈するケースも増えるかと思います。
・・・頑張ろう、薬剤師。
~追記事項~(12月5日)
12月5日の夜の時点でいくつか明らかになっている情報があるので共有いたします。
今回の事例の詳細について
健康被害のあった患者数
まず健康被害のあった方の情報についてです。12月1日~3日で12名(非重篤7名、重篤5名)です。今回の自主回収で患者さんに健康状況について確認するでしょうから、この数はさらに増えるかと思います。
どれくらい含まれていたのか?
続いて、イトラコナゾールにリルマザホン塩酸塩水和物がどの程度、含まれていたかについてですが福井新聞によると、睡眠導入剤で通常使用する最大投与量の2・5倍に及びと記載されていました。
リスミー錠の1日最大投与量は2㎎ですから、この記載からイトラコナゾールに含まれていたのは5㎎だったのではないかと思います。
なぜ混入したのか?
そして、何故このようなことが起きてしまったかの経緯についても製造元の小林化工がある福井新聞では報道されています。
同社によると、製造工程で原料を計量する際に、社員が睡眠導入剤の成分のリルマザホン塩酸塩水和物を、誤って混入した。同社の規定では1人が作業し、もう1人が立ち会ってダブルチェックするが、当時は1人で作業していた。
県によれば、薬の製造過程で薬の成分の粒子の大きさをそろえたり乾燥させたりする工程がある。各工程で成分を別容器に移し替える際、すべてを移し切れず成分が減ることがある。今回問題となった同社の治療薬イトラコナゾール錠50「MEEK」の製造過程で減った分を補うことは国が承認した製造手順に反するが、同社は補充しようとし、誤って睡眠導入剤の成分を混入させたという。
爪水虫薬の誤混入、服用の1人死亡 製造過程で二重ミス(朝日新聞デジタル) – Yahoo!ニュースより
今後の製薬会社の出した対応について
小林化工のWEBサイトにて、患者からも回収してほしいという指示文書が掲載されています。ご確認していただければと思います。
私自身、配慮が足りなかった部分に気づきました。
混入が確認されたお薬の成分により、翌朝以降まで眠気が残ったり、注意力・集中力が落ちたりすることがあります。自動車の運転や危険をともなう機械の操作は中止するようお伝えください。
るるーしゅ
…これがすぐに出てこなかったのは、まずい…
余談2:川崎の事例を忘れないでほしい
今回の事例、かなりヘビーな内容ですよね。ただあまり必要以上に責めてほしくないなと思っています。
有名な事例なので、ご存じかと思いますが2000年に薬局でセルテクトDSの処方をセレネースで調剤していた大きな調剤過誤がありました。
その過誤の原因は充填ミスで、そして充填ミスの疑いをかけられた薬剤師は自殺しました。
いないと信じたいですが、この充填ミスを起こした製薬会社の社員に死んで償えと思うような薬剤師がいるのであれば、さっさとやめてほしいです。
今回の事例で、健康被害に遭われた患者様が一日でも早く今までの日常を取り戻せることを願っております。
小林化工の薬で3府県12人健康被害 意識消失など副作用、約千箱自主回収へ | 社会 | 福井のニュース | 福井新聞ONLINE
~追記事項~(12月17日)
小林化工の睡眠薬混入事件についてまた色々と情報がでてきていますので追記いたします。ただ情報は随時更新されるため、下記の小林化工のWEBサイトよりご確認ください。
服用していた患者二人目の死亡が確認
睡眠薬が混入されていた薬剤を服用した方の二人目の死亡が確認されたようです。ただ該当薬を服用していたから亡くなったのか?というわけではなさそうです。
本患者様の主治医のご見解は、本製剤を服用することによって傾眠の症状を生じたことがあったものの、本患者様の原疾患等の諸事情を勘案すると、本製剤の服用と本患者様の死亡との因果関係が認められる可能性は低いとのことです。
患者への補償内容について
睡眠薬が混入していたロットを調剤された患者さんへの補償内容が決まったようです。
服用の有無にかかわらず、慰謝料として30万円のお支払いだそうです。ただ、これどこまでいくんでしょうかね…
該当ロットじゃない患者さんにも薬局は回収したかと思うのですが、慰謝料が高額なのでこういうこと言われる可能性ありますよね…
あんたら薬局が回収した水虫の薬は睡眠薬が混入していないと言ってたけど、実は含まれたやつなんじゃないのか?
もしそうなら、わたしは慰謝料の30万円受け取る権利があるんじゃないか?
患者
と、言われる可能性もありませんかね。そしてゼッタイ違うと言えるほどの証明はできず水掛け論になるような気がします。
イトラコナゾール錠 50「MEEK」 患者様専用ダイヤル
TEL:0120-093-291 (受付時間: 8:30~17:30)
るるーしゅ
薬局で対応するより、上記の問い合わせ先に連絡するのがいいかと思います。
小林化工外しをすすめるところも
今回の混入事例で小林化工から出てくるずさんな管理体制…新聞記事なので、どこまでが正しいのか不明ですが小林化工の管理体制で製造された医薬品は使いたくと思ってしまう心理もよく分かります。
るるーしゅ
切り替える薬局はそこそこあると思う…
ただ製造しているのが小林化工って案外わからないんですよね…ジェネリックの屋号で「明治」、「タナベ」、「DSEP」となっていて小林化工の文字すらないのに実は小林化工が作っていますとかいうのもあって…