今回のはSNSで情報が出回っていた内容に腎臓病の超スペシャリストが誤解を招く内容なので注意してねと言っていたため、自分の中でもよく咀嚼して他者へ説明できるように内容をまとめとくことをメインとしています。
目次
NSAIDsは透析患者に禁忌ではない?
それでは本題に入りたいと思います。
まず、NSAIDsといったら、腎機能が低下している患者に注意が必要な薬剤という認識は薬剤師みんなもっていると思います。なので透析患者にも注意が必要でしょ?という認識はありますよね。
そういったいわゆる常識に対して、今回SNSで出回った情報は
NSAIDsは重篤な腎機能障害の患者には禁忌だが、透析患者は禁忌ではない。透析患者は既に腎機能が最悪の状態まで悪くなっているため、これ以上腎機能が悪化しないため問題はない。
上記のような内容でした。
るるーしゅ
というわけで調べてみましょう!!
まずは普通にググってみる
まずはグーグルで「NSAIDs 透析 禁忌」と検索してみますと、お題を解決できる内容のものがいくつかでてきますね。
上位に表示された内容の中から、古い順に紹介していきます。
まずは日経DIクイズで2015年の内容です。無尿の透析患者には減量不要だが添付文書上、禁忌になるので疑義照会が必要の旨が記載されています。
つづいて2017年の福岡県薬剤師会のQ&Aですね。内容は上記の日経DIと同じかと思います。
最後に2020年の日本医事新報さんの記事ですが、こちらでは下記のように注意が記載されています。
慢性透析患者に対しNSAIDsは,残存腎機能低下や消化管出血のリスクとなること,小腸出血・穿孔が生じることが知られています。
SNSで出回っていた情報と、今回ググった内容を比較してみると
NSAIDsは重篤な腎機能障害の患者には禁忌だが、透析患者は禁忌ではない
透析患者は添付文書上の、重篤な腎機能障害の患者に該当するため、禁忌に該当すると思います。
透析患者は既に腎機能が最悪の状態まで悪くなっているため、これ以上腎機能が悪化しないため問題はない。
無尿状態の透析患者の腎機能障害については、注意する必要はないが消化管出血のリスクになるため問題ないとは言えないのでと思います。
その他の検索をしてみる
普通にググって上位表示ページだけで判断したら、それはそれでヘルスリテラシー低いと思われちゃいますので医中誌でも検索もしたいと思います。
月刊薬事2020年12月号 [雑誌] (特集:合併症管理に強くなる! 透析患者の薬の使い方 )上記の中で、透析患者に臨床でよく使用する薬の使い方 鎮痛薬とまさにコレという内容がありました。
重篤な腎障害患者〔以下, GFR<30(mL/分)〕では腎障害を悪化させるおそれがあることから禁忌となっている。腹膜透析を行っており残存腎機能を保持したい患者、または尿量をできるだけ長く保持したい血液透析患者でも同様に禁忌となるが、無尿の血液透析患者ではNSAIDsは減量の必要がない。しかし消化管粘膜の脆弱な透析患者への長期にわたる処方は.消化器障害を引き起こすため推奨されない。
成末 まさみ,月刊薬事2020年12月号(Vol.62No,16)99~100ページより引用
るるーしゅ
腹膜透析を行っており残存腎機能を保持したい患者→NSAIDs禁忌
尿量をできるだけ長く保持したい血液透析患者→NSAIDs禁忌
NSAIDsは腎機能障害に注視してしまいますが、その他のリスクも考えた上で判断しなきゃダメだなと痛感いたしますね。またその他にもNSAIDsには心血管リスクもありますのでその影響なども見ていきたいと思います。
Lai, Ka Man, et al. “Association between NSAID use and mortality risk in patients with end-stage renal disease: a population-based cohort study.” Clinical epidemiology 11 (2019): 429.
この研究は末期腎不全患者におけるNSAIDsの使用と死亡リスクとの関連を調査したコホート研究です。(n=3383)
NSAIDs非使用と比較して、いずれかのNSAIDs、非選択的NSAIDs、選択的シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤の使用は、全死亡リスクの有意な上昇と関連しており、調整後のHR(95%CI)は、それぞれ1.39(1.21-1.60)、1.36(1.19-1.55)、1.61(1.42-1.83)であった。
つづいて心血管リスクも検討した研究もありました。
Jo, Hyung Ah, et al. “Cardiovascular risk of nonsteroidal anti-inflammatory drugs in dialysis patients: a nationwide population-based study.” Nephrology Dialysis Transplantation 36.5 (2021): 909-917.
これは韓国の保険データベースを使用した研究だと思います。
NSAIDsは,MACCEs{調整オッズ比(aOR)1.37(95%信頼区間(CI)1.26-1.50)}および死亡率(aOR 1.29(95%CI 1.22-1.36))のリスクを有意に増加させた。透析患者にNSAIDsを処方する際には特に慎重になるべきであり、これらは曝露の用量や期間とは無関係に発生する可能性がある。
最後に
今回はSNSに出回っていた情報をフォローしていた専門家が指摘していただいたので、「あっこれはアヤシイ情報なんだ」とすぐに気づくことができました。
影響力の強い方でも誤った情報を拡散してしまうことはあるかと思いますので、そのときの対応というのはしっかりしておく必要がありますね。(わたしもここは仲のいい人たちにもお手伝いの内諾をとってたりします)
と、ちょっと関係ない話をしてしまいましたが、透析患者へのNSAIDsの使用は添付文書通り禁忌という認識でいいのかと思います。
無尿の場合は、腎機能障害を考慮する必要はないが、消化管障害や心血管リスクを考慮した上で使用を検討する必要があるのかと思います。