今回は2019年2月8日にクラスⅠで回収になったアムバロ配合錠「ファイザー」の発がん性のリスクについて考察していきます。
2018年にバルサルタン錠「あすか」でも今回のアムバロ配合錠と同様に発がん性物質が含まれて回収になったため、そのときと今回の事例を比較しながら、アムバロ配合錠は前回のよりリスクが断然低いので、もし服薬してたとしてもそんなに気にする必要ないですよということを解説致します。
えっ?発がん性物質と聞くとやばいって感じしますが大丈夫なんですか?
メガネ
るるーしゅ
うんうん、そう思うよね~順番に説明していくね
まずは今回のあらましからだね
目次
アムバロ配合錠「ファイザー」の回収について
サルタン系医薬品の有効成分(原薬)に発がんの可能性のある物質(ニトロソアミン)が含まれているとの国内及び海外での報告から、当社が製造販売するバルサルタンの原薬の調査をおこなったところ、本剤に使用された原薬2バッチに、規格(管理指標)を超えた微量のN-ニトロソジエチルアミン(以下、NDEA)及び、規格は下回るものの微量のN-ニトロソジメチルアミン(以下、NDMA)が含有していたことが判明したことから、当該原薬を使用した、以下の製造番号品5ロットを自主回収いたします。
包装単位 | 製造番号 | 使用期限 | 出荷開始日 |
---|---|---|---|
100錠(PTP) | X66074 | 2021年4月 | 2018年12月3日 |
100錠(PTP) | AF1679 | 2021年7月 | |
140錠(PTP) | X66073 | 2021年4月 | 2019年1月18日 |
700錠(PTP) | X66072 | 2021年4月 | 2018年12月3日 |
500錠(バラ) | X62678 | 2021年4月 | 2019年1月9日 |
ァイザーのアムバロ錠に、発がん性物質が含まれていたってことですよね
メガネ
るるーしゅ
そうなんだけど、それがどの程度の問題なのかってところをもう少しみていこう
発がん性物質NDMAおよびNDEAの許容摂取量は?
アムバロ錠「ファイザー」で検出された発がん性物質NDMA(N-ニトロソジメチルアミン)とNDEA(N‐ニトロソジエチルアミン)についておさらいします。
どちらの物質も、ヒトに対する発がん性がおそらくあると評価されております。
そのため、どちらの物質も含まれないことが理想ではあるのですが、アムバロ錠に含まれるサルタン系の薬剤は製造過程でどうしても0にすることが難しいため、許容摂取量が認められております。
NDMAおよびNDEAの許容摂取量
NDMA:0.0959μg/日
NDEA:0.0265μg/日
るるーしゅさん・・・この数値見せられても分からないですよ
メガネ
るるーしゅ
確かにそうだね、ただここを知っておいてもらわないと何を根拠にそんなに心配しなくていいって言ってるのかわからなくなるからさ
この許容摂取量に基づいて、各サルタン系の高血圧薬毎に原薬の限度値が決められています。
1日の最高用量×原薬の限度値≒許容摂取量
各サルタン系のNDMAおよびNDEAの限度値について
一般名 | 1日最高用量 | NDMAの限度値 | NDEAの限度値 |
バルサルタン | 160mg | 0.599ppm | 0.166ppm |
イルベサルタン | 200mg | 0.479ppm | 0.133ppm |
オルメサルタン | 40mg | 2.39ppm | 0.663ppm |
ロサルタン | 100mg | 0.959ppm | 0.265ppm |
へ~薬ごとに違うんですね
メガネ
るるーしゅ
そしてこれ国際的な許容摂取量だから、海外のように日本より1日最高用量が多いところは原薬の基準がさらに厳しくなるんだ
アムバロ錠「ファイザー」のNDMAおよびNDEAの量はどれくらい?
ちなみに、アムバロ錠「ファイザー」はどれくらいオーバーしてたんですか?
メガネ
るるーしゅ
ファイザーの発表によると、NDMAが0.10ppm(限度値0.599)、NDEAが0.23ppm(限度値0.166)だね
NDMAは限度値超えていないんですね、NDEAが超えてしまったんですね
メガネ
るるーしゅ
そういうこと~、あとNDEAのほうもアムバロ配合錠を二錠飲んだ場合に限度値超える訳だから、一錠しか飲んでいない人は超えていないから気にする必要はないと思う
ここまでの概要をすこしまとめます。
アムバロ配合錠「ファイザー」に発がん性があるとされるNDMAとNDEAが検出され、一部ロットが回収
NDMAは0.599PPMが限度値のところ、0.10PPM(限度値内)
NDEAは0.166PPMが限度値のところ、0.23PPM(限度値超え)
アムバロ配合錠1錠で服用している場合は、NDEAの許容摂取量を超えない
NDMAおよびNDEAの発がん性リスクはどれくらい?
ここから先は、NDMAおよびNDEAの発がん性リスクについて説明していきます。
バルサルタン錠「AA」のNDMAおよびNDEAについて
まず今回のアムバロ配合錠「ファイザー」より少し前にNDMAおよびNDEAの検出で騒がれて回収になったバルサルタン錠「AA」の事例についてです。
そのときにバルサルタン錠「AA」に含まれていたNDMAおよびNDEAの最大量は以下の通りです。
バルサルタン錠「AA」の検出値
NDMA・・・74PPM(0.599PPM)
NDEA・・・2.5PPM(0.166PPM)
今回のアムバロ配合錠「ファイザー」と比較すると、高用量ですね
メガネ
るるーしゅ
そうだね、その時の服用のリスクについても説明されているから紹介するね
バルサルタン錠「AA」の発がん性リスクはどれくらい?
バルサルタン錠「AA」中に含まれるNDMAの分析結果をもとに、国立医薬品食品衛生研究所において、バルサルタン錠「AA」の服用による健康への影響評価を行った(別添1参照)。その結果、最もNDMA混入濃度の高い原薬から製造された160mg錠(最大用量※1)を販売期間の4年間毎日1錠服用したときの発がんリスクは、1万5千人から3万人に一人(0.0033%~0.0067%)が生涯その暴露により過剰にがんを発症する程度のリスク※2に相当すると評価された。また、バルサルタン錠「AA」中に検出されたNDEAの量はNDMAに比べて微量であり、NDEAの含量を合算しても健康への影響評価の結果に影響するとは考え難いと評価された。
あすか製薬株式会社が製造販売するバルサルタン錠「AA」の服用による健康影響評価とその他の医薬品への影響について
るるーしゅ
ちなみに海外でもバルサルタンのNDMAおよびNDEAの問題があったのでその際の対応についても教えておくね
海外当局でのバルサルタン問題、そしてそのリスク評価
欧州医薬品庁(EMA)発がんリスク評価の状況
暫定的な評価として、NDMA を平均レベルの60ppm 含有する原薬を用いて製造されたバルサルタン製剤を1 日320mg、7年間服用し続けた場合に、5000 人に1人が生涯その暴露により過剰にがんを発症する程度のリスクと推定している。今後、分析データに基づき、リスクについての情報を公表予定(2018年8月2日公表)
アメリカ食品医薬品局(FDA)の発がんリスク評価の状況
回収されたバルサルタン製剤を1日320mg、4年間服用し続けた場合に、8000 人に1人が生涯その暴露により過剰にがんを発症する程度のリスクと推定している(2018年7月27日公表)
カナダの海外当局の発がんリスク評価の状況
1錠中60 ppmのNDMAを含有するバルサルタン製剤320mg錠を3年間服用し続けた場合に、11600人に1人が生涯その暴露により過剰にがんを発症する程度のリスクと推定している。最小用量の40mg錠の場合、3年間の服用で93400人に1人が生涯その暴露により過剰にがんを発症する程度のリスクと推定している(2018年9月10日公表)
まとめ:アムバロ配合錠の発がんリスク評価は?
以上を踏まえて、今回のアムバロ配合錠を実際に服用してた場合のリスクについて考えていきたいと思います。
バルサルタン錠「AA」はNDMAは74PPM、NDEAは2.5PPMで回収、リスクは15000人~30000人に1人がんを発症するレベルと公表されました。
アムバロ配合錠のNDMAは0.10PPM、NDEAは0.23PPMで回収、リスクは公表されていませんが上記のバルサルタンより量が少ないためリスクも低いでしょう。
実際、バルサルタン「AA」のときには、NDEAが今回より量が多かったのですが、リスク評価では微量のため影響を与えないと判断されていました。
るるーしゅ
まぁ発がん性物質なんて、すこしも体に入れたくないと思うのは当然ですが今回のアムバロ配合錠をもし服用していたとしてもまず健康被害にはつながらないと思いますので過度に不安にならないようにしてください
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000414371.pdf
バルサルタン原薬問題で厚労省 ARBに発がん性物質の管理指標を設定 薬食審・安全対策部会
Angiotensin-II-receptor antagonists (sartans) containing a tetrazole group
アムバロ配合錠「ファイザー」 自主回収(クラスⅠ)について
IARC発がん性リスク一覧