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シクロスポリンとスタチンの薬物間相互作用について考える

シクロスポリン(ネオーラル🄬)服用中に選ぶスタチンはどれ?

今回は薬剤師の中でよく話題に挙がる免疫抑制剤のシクロスポリン(代表:ネオーラル)とスタチンの薬物間相互作用についてまとめます。

シクロスポリンにはP糖タンパク阻害、CYP3A4阻害、そしてOATP1B1阻害作用を有していて、後者の二つの作用によりスタチンの血中濃度を上昇させるようです。

そしてシクロスポリンによる影響を受ける程度は、個々のスタチンによって異なるようです。

添付文書上で併用禁忌はピタバスタチンとロスバスタチン

まずは添付文書上、禁忌であるピタバスタチン(リバロ🄬)とロスバスタチン(クレストール🄬)は添付文書上、併用禁忌のためあえて使うことはないかと思います。

残りのプラバスタチン(メバロチン🄬)、シンバスタチン(リボパス🄬)、フルバスタチン(ローコール🄬)、アトルバスタチン(リピトール🄬)なのですが、相互作用による血中濃度の上昇度合いがそこまで大きくないのがフルバスタチンであり、また併用による有害事象の報告もあありません。

つまり

安全性を重視するのであれば、フルバスタチン一択

になるかと思います。

ただフルバスタチンでの懸念事項は心血管アウトカムを改善したというエビデンスが乏しいことです。

そうは言っても、血中濃度が10倍とか言われてしまうと…

メガネ

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上記のようになってしまうかと思いますが、血中濃度が10倍になっても、くすりの効果が10倍になるわけではありませんからね。スタチンではrole of six といって、投与量が倍になっても効果は6%しか増えないと言われています。

  • プラバスタチン5㎎→17%、20㎎→29%、40㎎→39%
  • アトルバスタチン5㎎→32%、10㎎→39.6%、20㎎→49.5%
  • ピタバスタチン1㎎→33.6%、2㎎→41.8%、4㎎→47.0%

つまり10倍になってもスタチンの効果としてはプラス20%程度なんだと思います。

ただシクロスポリンとスタチンの併用の際の血中濃度上昇は薬効に影響はあまりないそうです。

以上を踏まえると、心血管イベントのアウトカムが十分ある上にシクロスポリンとの有害事象が数例しか報告されていないプラバスタチンは5㎎で使用するならアリではないかなと思いました。

プラバスタチンの23倍は?

これは学会要旨としての報告であり,その後も,投与や分析方法を含めた詳細な試験条件及び結果の報告が無いため,数値の信頼性は低いと考えられる.とのことです(参考資料1より)

るるーしゅ

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患者の心血管リスクがどの程度なのか、そして今のLDL-Cの数値なども関係してくるかなと思います。

効果不十分の場合の次の一手

シクロスポリン服用中に使えるスタチンとして、フルバスタチンが安全第一としてオススメなのです。ただフルバスタチンで効果不十分の場合はどうする?というのも考えておく必要があると思います。

この場合は、シクロスポリンをタクロリムスフルバスタチンをアトルバスタチンへ変えられないかの検討をしてみてもいいと思います。

るるーしゅ

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ストロングスタチンのほうがやっぱり下がるみたいですね。尚、文献ではシクロスポリン+アトルバスタチンもやっていたので(文献5)そのあたりは一緒に悩んで対応ですかね。

まとめ

今回はよく薬剤師の中で話題になるシクロスポリンとスタチンの併用について色々と調べてみました。フルバスタチンが一番安全に使えるスタチンなことに異論はありません。

ただそれ以外のスタチンは、禁忌相当だいう意見も耳にしますが海外文献など見てみると、プラバスタチンもあり(日本では禁忌のロスバスタチンもですが)となっていたので安全性の距離間みたいなのを共有できればと思いました。

血中濃度が10倍と目にすると「あかんやろ」と思考停止してしまいますが、それがどの程度の影響あるか考えないとやっぱり駄目ですよね。反省です。

参考資料
  1. HIRATA, Sumio, Daisuke KADOWAKI, and Yuki NARITA. “薬剤性腎障害と薬物の適正使用.” 日腎会誌 54.7 (2012): 999-1005.
  2. 大野能之、 医療現場のための薬物相互作用リテラシー、南山堂
  3. Lamprecht, D. G., Jr, Todd, B. A., Denham, A. M., Ruppe, L. K. & Stadler, S. L. Clinical Pharmacist Patient-Safety Initiative to Reduce Against-Label Prescribing of Statins With Cyclosporine. Ann. Pharmacother. 51, 140–145 (2017)
  4. Skalicka, B. et al. Conversion to tacrolimus and atorvastatin in cyclosporine-treated heart transplant recipients with dyslipidemia refractory to fluvastatin. J. Heart Lung Transplant. 28, 598–604 (2009)
  5. Wissing, K. M. et al. Effect of atorvastatin therapy and conversion to tacrolimus on hypercholesterolemia and endothelial dysfunction after renal transplantation. Transplantation 82, 771–778 (2006)
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薬局薬剤師です。
若手の薬剤師教育や学会発表、論文投稿などに興味があります。
m3や雑誌への寄稿や、某大学非常勤講師歴もあります。
ファクトベースで物事を話さない(=感覚でものを言う)人は苦手です。
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