市販薬濫用が問題視されていることは重々承知ですよね。
私も小学校で薬物乱用教室を実施する際に調べたんだけど、実際の乱用者に出会ったことはありませんでした。
そこで、試しにツイッターのキーワード検索で「ブロン」と検索してみました。
・・・いかがですか?
私は今まで検索することがなかったので、とても衝撃を受けました。
こういう言い方をしてしまうと分断を生んでしまい、市販薬濫用者を救うことができなくなってしまうと思いますが、普段我々薬剤師が相手にする患者とは違うということがわかると思います。
以前、乱用防止教室の際に、若者の薬物濫用者はどういう人が多いかと調べたこと限りだと下記のような特徴があるということは知っていました。
ただ、この文字から想像した人物像と、私がSNS上で検索した際に出てきた人物像がずれていたんですよね。
ズレていたというよりは、私自身が本当に世間知らずのおぼっちゃまだったんだと思います。
実際に私が衝撃を受け、ツイッター上で周りの薬剤師も試してみるように促しましたら、私同様に衝撃を受けていたようです。
薬剤師のみんなはTwitterのキーワード検索で
ブ ロ ン
って調べたことある?
私はさっきやったんだけど、なかなか衝撃を受けています…— るるーしゅ (@ph_lelouch) February 13, 2020
目次
薬剤師会の対応はどうなのか?
2019年11月20日に、日本薬剤師会は濫用等のおそれのある医薬品の取扱いについて(お願い) という通知を出しました。
通知の中で若年者への不適切な販売の防止という項目に
- 濫用の事例が多いとされる若年者には、氏名・年齢を確認し、濫用が助長されないよう注意喚起し、必要に応じて販売しない。
- 学生証等の身分証明書の提出を求めるなど、提出がなければ販売しない。
- その旨を薬局及び店舗内に掲示する。
と、販売しないルールを作成しました。
このルールで、若者の薬物濫用者を救えるのか?自分たちは売らないということで責任転嫁しているだけで根本的な解決には何の貢献もしていないじゃないか。という印象を持っていました。
しかし、今回の若者の薬物濫用者の実態(SNSでの一側面に過ぎませんが)を知ることで、自分の世間知らずさや、無力さを痛感したとともに、「理想を語るにはそれに見合う力が必要だ」と強く思います。
「助けて」が言えない若者たちに対して、今の薬局業界にどの程度手を差し伸べることができる環境を作ることができるか?
乱用するのは本当にごく一部の人に過ぎないですし、乱用に至る背景には、深い闇をもっていることが多く、対応する薬剤師、登録販売者の負担が大きいこともわかります。
今は回復しているようですが、夜回り先生も「もう疲れました」ということをブログに記載して話題をあつめていました。
難しい案件なのはわかります。ただそれでも可能ならば一緒に考えていただければ幸いです。
まず乱用されている市販薬について
こちらのデータは2019年の医薬品・医療機器等安全性情報からです。
このデータ、実はかなりOTCメーカーもびっくりしたようで、今まで商品名での公開はなかったんですよね。
ブロンについて
そしてブロン錠とブロン液が区別されずに1位ですが、圧倒的にブロン錠での乱用が多いです。
理由としてはブロン液は過去に乱用が問題になった際に、メチルエフェドリンが除かれ、味もメントール味になったためと言われています。
しかしブロン錠には、いまだにダウナー系のコデイン、アッパー系のメチルエフェドリンが含まれています。
WEBサイト上では注意喚起のPOPが出ます。(商品の記載はなし)
金パブについて
ブロンの乱用について多くの薬剤師もしっているかと思いますが、金パブことパブロンゴールドに関してはあまりしらない方も多いかもしれません。
こちらの商品もブロン同様に、ダウナー系のジヒドロコデイン、アッパー系のメチルエフェドリンが含まれています。ただブロンが咳止めに対して、金パブは総合感冒薬のため、AAPが含まれています。(かっこつけましたがアセトアミノフェンのことです)
そのため乱用した際は、肝機能障害や、腎機能障害を起こし、白目が黄色くなったり、顔がどす黒くなることもあるそうです。
対策案として、パッケージに記載したらどう?
大包装品を規制する。
外箱にはっきりと「○日を超えて使うと依存するリスクがあります」といった表示を義務づけることだけでも、一定の効果はあると思う。【東洋経済オンライン】
市販薬の「大量服用」に依存する人の切実な実態
販売規制や啓蒙教育だけでは防止できないhttps://t.co/7BLx1t3v3d— 小嶋 慎二@アポネット (@kojima_aponet) February 10, 2020
楽天いってきたけど44包まとめ売り(8個セットもあった)はザラ
現状を軽視し、厚労省が総合感冒薬を規制の対象外にし続けるなら、こんな対策は意味はないパブロンゴールドを販売する大正製薬:
販売店には必要な情報提供をし、適正販売を依頼する。メーカー団体と連携して必要な対策を実施していく— 小嶋 慎二@アポネット (@kojima_aponet) February 10, 2020
日薬「外箱に注意喚起しろ」
OTC薬協「簡単ではない。多くの購入者は適正使用しているから混乱を招いてはいけない。OTC薬は商材でもあるし」
また注意喚起することで、目的外使用を希望する人たちには目印にもなってしまう可能性もありますよね…
っていう内容の業界紙をよんだ記憶があります— るるーしゅ (@ph_lelouch) February 10, 2020
ただ、そんなに効果はあるように思えないというのが本音です。
医薬品販売制度実態把握調査の結果
濫用等のおそれのある医薬品(*1)を複数購入しようとしたときの対応(*2)
- 1つしか購入できなかった 60.4%(54.5%)
- 複数必要な理由を伝えたところ、購入できた 12.9%(14.9%)
- 質問等されずに購入できた 26.7%(30.6%)
- その他0.0%(0.0%)
*1 エフェドリン、コデイン(鎮咳去痰薬に限る)、ジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る)、ブロムワレリル尿素(ブロモバレリル尿素)、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン(鎮咳去痰薬のうち、内服液剤に限る)を成分として含有する医薬品
*2 「1つしか購入できなかった」、「複数必要な理由を伝えたところ、購入できた」、「その他(購入せずに医者を受診するようにすすめられた等)」を販売方法が適切であったとした。
るるーしゅ
H30年にずさんな状況を指摘され改善したかと思いきや薬局はまた下がりつつあります。
上記の令和二年度のデータ、有意差でるのか気になったので検定してみました。
薬局・店舗販売業の店舗販売に関する調査
一般消費者である調査員が、全国5,025件の薬局・店舗販売業者の店舗(薬局1,861件、店舗販売業3,164件)を訪問し、医薬品の販売ルールに係る事項等に関し店舗での販売状況等について調査(調査期間は令和2年11月~令和3年2月)
適切 | 不適切 | 合計 | |
薬局 | 1288 | 573 | 1861 |
店舗販売業 | 2322 | 842 | 3164 |
ピアソンのカイ二乗検定でp<0.05ですので、有意差がありますね。今回のデータからは、薬剤師より登録半橋医者のほうが濫用等の恐れのある医薬品の販売体制がしっかりできていえると言っていいのかもしれませんね。
るるーしゅ
しっかりやろう、薬局薬剤師!!
薬剤師はOTC薬に興味がない
何故なんですかね、整備上の不具合もありますが、やはり
薬剤師がOTC薬に興味がない
もちろん私もそうです…なんとかしていかなきゃいけませんね。
私としては以前スギ薬局が実施していた濫用のおそれのある医薬品を販売する際に、アルクなどの依存症を克服する施設を紹介するリーフレットを添付するという方法を考えていましたが、それもどうなんだろうかと…
この市販薬濫用の問題は、薬剤師会のように販売しないことで責任転嫁する方法は思い浮かびますが、果たしてそれだけでいいのだろうか本当に悩ましいです。
何かいい案がありましたら、教えていただけますと幸いでございます。
- 濫用等のおそれのある市販薬の適正使用について
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- 令和2年度医薬品販売制度実態把握調査
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県の精神保険福祉士会や、臨床心理士会に相談とか如何でしょうか