薬剤師として働き始めたものの、「この仕事、本当に自分に合っているのかな…」と悩んだことはありませんか?特に若手薬剤師の方々は、理想と現実のギャップに戸惑い、自分のキャリアについて不安を感じることも少なくありません。
薬剤師免許は、長い学生生活と国家試験を乗り越えて手に入れた大切な資格です。しかし、実際に現場で働き始めると、思い描いていた薬剤師像とのズレを感じ、自分には向いていないのではないかと考えることもあるでしょう。
この記事では、「薬剤師の仕事が向いていない」と感じる若手薬剤師の悩みに焦点を当て、先輩薬剤師の視点から具体的なアドバイスをお伝えします。悩みを乗り越え、自分らしいキャリアを築くためのヒントを見つけてください。
本内容は動画でも解説しております。

ポッポ先生
今回の内容は「自分には向いていないかも」と感じている方向けです。薬剤師という仕事に本当に向いていないのか、それとも一時的な壁にぶつかっているだけなのか、一緒に考えていきましょう!
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目次
薬剤師の仕事に向いていないと感じる主な理由
薬剤師として働く中で、「自分には向いていない」と感じる理由は人それぞれです。よくある理由としては、以下のようなものが挙げられます:
- コミュニケーション能力への不安:患者さんや医療スタッフとの会話に苦手意識がある
- 薬の知識不足への焦り:大学で学んだことと実務に必要な知識にギャップを感じる
- 職場の人間関係の難しさ:同僚や上司との関係構築に悩んでいる
- 調剤業務の習得に時間がかかる:正確さとスピードの両立に苦戦している
- ストレス耐性の問題:責任の重さや緊張感に疲れを感じる
私も薬の知識が追いつかなくて、毎日不安です。みんな最初からペラペラと薬の説明ができるわけじゃないんですよね?

オカメインコ

ポッポ先生
その通りです!誰もが最初から完璧な薬剤師ではありません。知識は経験と共に積み重なっていくものです。大切なのは学び続ける姿勢ですよ。
- コミュニケーション能力がない
- くすりの知識不足
- 職場の同僚と人間関係を築けない
- 調剤業務が苦手(遅い等)
- ストレスに弱い等々
仕事に向いていないと感じやすい時期とその特徴
薬剤師として働く中で、「自分には向いていないのでは?」と悩みやすい時期があります。これらの時期を前もって知っておくことで、「今はその時期を通過中なのかもしれない」と冷静に考えることができます。
新人期間(1年目)
新人薬剤師の頃は、学生時代に想像していた薬剤師像と現実のギャップに戸惑うことが多いものです。
- 現実とのギャップ:大学で学んだ理想の薬剤師像と実際の業務内容の違いに驚く
- リアリティショック:就職活動時に聞いていた話と実際の職場環境が異なることも
- 指摘や注意の多さ:ミスを防ぐための上司からの指導に心が折れそうになる
- 基本業務の習得に精一杯:調剤や在庫管理など基本的な業務をこなすだけで精一杯
2〜3年目(中堅へのステップアップ期)
一通りの業務を覚え、新たな責任を任されるようになる時期です。
- 新たな責任の重圧:後輩指導や専門業務を任されるようになり、プレッシャーを感じる
- マンネリ化への不安:日常業務に慣れることで刺激が減り、仕事に対する熱意が低下する
- キャリアの迷い道:今後どのような薬剤師を目指すべきか、進路に悩む時期
30〜40代(キャリアの転換期)
薬剤師としてのキャリアの節目を迎え、新たな役割に挑戦する時期です。
- マネジメント能力の必要性:管理薬剤師やエリアマネージャーなど、人をまとめる立場になることも
- キャリアパスの分岐点:専門性を高める道か、管理職への道か、選択を迫られる
- ライフステージの変化:プライベートの変化(結婚・出産など)と仕事の両立に悩む
2〜3年目で飽きちゃうってことも多いんですね。私もそろそろその時期だけど、このままでいいのかな…と考えることが増えました。

オカメインコ

ポッポ先生
それは成長の証なんですよ!単調に感じ始めたら、新しい挑戦(専門分野の勉強や新たな業務)を取り入れてみることで、また仕事に対する意欲が湧いてくることも多いんです。
先輩薬剤師からの実践的アドバイス
1. 自己分析を丁寧に行おう
自分自身を深く理解することは、薬剤師としてのキャリアを考える上で非常に重要です。
自己分析のポイント
- 得意なこと・苦手なことを書き出す:例えば患者対応が得意、数字に強い、細かい作業が苦手など
- 価値観を明確にする:仕事で何を大切にしたいか(安定、やりがい、成長など)
- 理想の働き方を具体的にイメージする:残業少なめ、専門性を高められる環境など
自己分析は一度きりではなく、定期的に行うことで自分の変化や成長を実感できます。キャリアの節目や転職を考えるタイミングで、改めて自分自身と向き合う時間を持ちましょう。
2. ワークライフバランスを見直す
仕事への不満は、実は仕事そのものではなく、生活全体のバランスが崩れていることから生じている場合もあります。
ワークライフバランス改善のヒント
- 自分の時間を確保する:週に一度は趣味や興味のあることに取り組む時間を作る
- 健康管理を優先する:睡眠時間の確保、適度な運動、バランスの良い食事を心がける
- 人間関係を大切にする:家族や友人との時間を作り、ストレスを解消する場を持つ
忙しい薬剤師の仕事でも、メリハリをつけた働き方を意識することで、燃え尽き症候群を防ぎ、長く働き続けることができます。
3. 薬剤師の仕事の多様性を知ろう
薬剤師の活躍の場は、薬局や病院だけではありません。様々な分野で薬剤師の知識や経験が活かせることを知っておきましょう。
薬剤師が活躍できる主な場所
- 医療機関:病院、クリニック、調剤薬局、ドラッグストア
- 製薬企業:研究開発、臨床開発、メディカルアフェアーズ、営業など
- 行政機関:薬事行政、保健所、医薬品審査機関など
- 教育・研究機関:大学、研究所など
- その他:医薬情報担当者(MR)、治験コーディネーター(CRC)、医療系ライターなど
自分の所属する職場だけが薬剤師の仕事ではありません。様々な薬剤師と交流することで、新たな可能性に気づくことがあります。SNSや学会、研修会などを活用して、視野を広げてみましょう。

ポッポ先生
薬剤師の活躍の場は本当に多様化しています。現在の職場で感じる「向いていない」という感覚は、別の環境では「強み」になることもあるんですよ。
4. グロウスパッション(成長する情熱)を育てる
「グロウスパッション」とは、仕事をしていく中で徐々に芽生える情熱のことです。最初から「天職」と感じる人はむしろ少数派かもしれません。
グロウスパッションを育てるコツ
- 小さな成功体験を積み重ねる:患者さんからの感謝の言葉、難しい処方の理解など
- できることを増やしていく:新しい業務に挑戦したり、得意分野を深めたりする
- 視野を広げる:専門書を読む、セミナーに参加する、異なる業種の薬剤師と交流するなど
ポッポ先生も最初から薬剤師が好きだったわけじゃないんですか?

オカメインコ

ポッポ先生
私も大学時代は成績も良くなかったし、就活もせずテキトーに薬局を選んで働き始めたんですよ。でも知識が増えて患者さんの役に立てるようになると、だんだん面白くなってきたんです。
本ブログの前任者も、20代後半まで「薬剤師の仕事はつまらない、向いていない」と感じていました。しかし、ブログを書き始めて知識を深め、様々な薬剤師と交流する中で、薬剤師という仕事の魅力に気づいていったそうです。
5. 「好きを仕事にする」の落とし穴に注意
「好きなことを仕事にすれば、苦労を感じない」という考え方には注意が必要です。『科学的な適職』という書籍によると、好きなことだけを理由に仕事を選ぶと、その仕事のネガティブな側面(例:クレーム対応、医師との調整など)に直面した際に、より大きなストレスを感じる可能性があります。
重要なのは、仕事の良い面も悪い面も含めて受け入れた上で、それでも続ける価値があると思えるかどうかです。「向いていない」と思い込むことでモチベーションが大きく下がり、スキルも身につかないまま離職してしまうケースも少なくありません。
6. 薬剤師免許にこだわりすぎない視点も大切
薬剤師免許は貴重な資格ですが、それだけで自分のキャリアが決まるわけではありません。
薬剤師免許を活かした多様なキャリアパス
- 弁護士・弁理士:医薬品関連の法律や特許に強い専門家
- 経営コンサルタント:医療機関や薬局の経営に関するアドバイザー
- メディア関係:出版、Webメディアでの医薬情報提供
- 人材紹介:薬剤師の転職支援や人材育成
- ソフトウェア開発:医療系ITサービスの企画・開発
富澤崇氏の研究(薬学教育, 2020, 4巻)では、薬剤師免許を持ちながら様々な分野で活躍している事例が紹介されています。大切なのは、「薬剤師としてどう働くか」だけでなく、「薬剤師の知識や経験をどう活かすか」という視点です。
ファルマスタッフのコラムに登場する後町陽子さんは、「病院、薬局、製薬関連企業といった医療業界だけにとどまっていると、キャリアの情報は限られていて偏っています。人に頼ったり人の手を借りたりすることが重要」と述べています。

ポッポ先生
知らないだけで勝手に絶望してしまう若手薬剤師さんが多いんです。様々な可能性があることを知ってほしいですね。

でも、誰に相談したらいいんでしょう?うまく人に頼れない…

オカメインコ

ポッポ先生
相談できる友人や知り合いがいない場合は、信頼できる人材紹介会社を利用するのも一つの方法です。ただし、紹介料目当てで頻繁な転職を促す悪質な会社もあるので注意が必要です。適正な有料職業紹介事業者の認定を受けている転職エージェントを選びましょう。
まとめ:薬剤師としての多様なキャリアを考える
薬剤師の仕事に「向いていない」と感じることは、キャリアの中での一つの通過点かもしれません。重要なのは、その感覚を単なる「向き不向き」の問題と片付けず、自分が何を大切にしたいのか、どのような環境で力を発揮できるのかを探求することです。
- 自己分析で現状を理解する:自分の強み・弱み・価値観を明確にする
- ワークライフバランスを整える:仕事だけでなく生活全体を見直す
- 薬剤師の多様な可能性を知る:視野を広げ、様々な選択肢を検討する
- 成長の機会としてとらえる:やっているうちに面白くなってくることも
- 薬剤師免許の価値を柔軟に考える:免許の使い方は一つではない
これからの人生で今が一番若い時です。一時的な壁に直面しても、様々な可能性を探りながら、自分らしいキャリアを築いていきましょう。

ポッポ先生
死んだ魚の目をしないで、できることからチャレンジしていくことが大切です。もちろん、精神的に追い詰められているなら、無理せず環境を変える勇気も必要ですよ。
転職活動は、必ずしも転職することが目的ではありません。自分自身を知り、市場価値を確認し、キャリアの可能性を広げるための一つの手段として考えてみてください。様々な選択肢を知ることで、今の仕事の良さに気づくこともあります。
薬剤師としての道は一つではありません。あなたらしい薬剤師のキャリアを、ぜひ見つけてください。
- 『科学的な適職』
- 富澤 崇, 薬剤師のキャリアデザインとキャリア教育の必要性, 薬学教育, 2020, 4 巻
- 「薬剤師のキャリアデザイン」後町陽子インタビュー