「このまま今の職場にいていいのかな」と感じる瞬間、ありませんか。
私も調剤薬局で働く薬剤師として、業界のニュースを見るたびに「キャリアについて、ちゃんと考えなきゃ」と思いながら、日々の業務に追われて後回しにしてきました。でも、薬局業界のM&Aが加速し、厚生労働省の需給推計では2020年から2045年までの間に2万4千人から12万6千人の薬剤師が過剰になるとの見通しが示されています。「免許があれば大丈夫」という時代が、確実に変わりつつあるんです。
ここ、迷いやすいところです。キャリアの悩みって、誰に相談すればいいか分からないですよね。上司? 大学の先輩? それとも転職サイト?
この記事では、「薬剤師のキャリア相談は誰にするべきか」について、それぞれの選択肢のメリット・注意点・実際の活用方法を整理します。判断の筋道を持つことで、あなた自身が納得できる一歩を踏み出せるはずです。
- 薬剤師業界の変化と、今キャリア相談が必要な理由
- キャリア相談の選択肢(上司・大学教授・転職エージェント等)とそれぞれの特徴
- 優良な転職エージェントの見分け方
- 相談前に自分で整理しておくべきこと
- 実際に相談するときの注意点
目次
そもそも、なぜ今「キャリア相談」が必要なのか?

急にキャリア相談って言われても…今の仕事で精一杯なんですけど

オカメインコ

ポッポ先生
その気持ち、よく分かります。でも業界の構造が変わりつつある今だからこそ、立ち止まって考える価値があるんですね
薬局業界の寡占化が進んでいる
調剤薬局業界では、M&Aが急速に進んでいます。大手調剤薬局上位10社の売上をあわせても市場全体の2割に満たず、隣接のドラッグストア業界(6割)や医薬品卸業界(9割)などに比べると低寡占状態ですが、今後さらに統合が進むと予測されています。
これが何を意味するか。小規模薬局で働いていた場合、ある日突然「うちの薬局が大手に買収されます」という話が出てくる可能性があるということです。その時、あなたにはどんな選択肢がありますか?
でも、それってむしろ大手に入れてラッキーってことじゃないんですか?

オカメインコ

ポッポ先生
一概には言えませんね。大手には大手の良さがありますが、働き方や評価制度が変わることもあります。大事なのは、その変化に対して自分がどう動くか、判断軸を持っているかどうかです
薬剤師の需給バランスが変化している
もう一つの大きな変化が、薬剤師の需給予測です。2020年から2045年までの間に、最小想定で2万4千人、最大想定で12万6千人の薬剤師が過剰になるとの見通しが示されています。
逆に言うと、これからは「免許を持っているだけでは差別化できない」時代になるということ。在宅医療や対人業務の充実、専門資格の取得など、「あなたならではの強み」が問われるようになります。
キャリア相談の選択肢と、それぞれの特徴

それでは、具体的にどこに相談すればいいのか。主な選択肢を整理してみましょう。
キャリア相談先の比較表
- 会社の上司・先輩
メリット:社内事情に詳しい、すぐに相談できる
注意点:転職の話はNG、組織の立場がある
向いている人:社内でのキャリアアップを考えている - 大学の教授・恩師
メリット:業界全体を俯瞰できる、利害関係がない
注意点:現場実務には疎い場合も、つながりがないと相談しにくい
向いている人:アカデミックな視点が欲しい、研究職志向 - 転職エージェント
メリット:業界動向に詳しい、本音で話せる、無料
注意点:転職が前提になりがち、質にばらつきがある
向いている人:市場価値を知りたい、選択肢を広げたい - キャリアコンサルタント(国家資格保有者)
メリット:中立的な立場、体系的なサポート
注意点:薬剤師業界に詳しいとは限らない、有料の場合も
向いている人:じっくり自己分析したい、ライフプラン全体を考えたい
会社の上司・先輩への相談
上司に相談するのが一番手軽な気がするんですけど…

オカメインコ

ポッポ先生
社内でのキャリアアップを考えているなら、確かに有効な選択肢です。ただし、転職を少しでも考えているなら、絶対に言わないほうが安全ですね
上司や先輩は、あなたの日常の働きぶりを知っている貴重な存在です。「管理薬剤師を目指したい」「在宅業務を担当したい」といった社内でのステップアップについては、具体的なアドバイスがもらえるでしょう。
ただし、組織の立場もあるため、「会社を辞めたい」という相談には向きません。やめさせないように説得されたり、最悪の場合、異動や待遇に影響が出る可能性もゼロではありません。
境界条件:転職の可能性が少しでもあるなら、社外の相談先を選びましょう
大学の教授・恩師への相談
業界全体を俯瞰できる視点が欲しい場合、大学時代の恩師は良い選択肢になります。特に薬局経営や医療政策に詳しい教授であれば、「今後の薬剤師業界がどうなるか」について示唆に富んだ話が聞けるかもしれません。
ただし、実際の薬局業務や給与水準、職場の人間関係といった現場レベルの情報には疎い場合があります。また、卒業後に疎遠になっていると、いきなり相談するのはハードルが高いですよね。
境界条件:研究職や専門薬剤師を目指す場合には有効。ただし現場の転職相談には不向き
転職エージェントへの相談
転職エージェントって、転職させられそうで怖いんですけど…

オカメインコ

ポッポ先生
その懸念、正しいです。ただ、使い方次第では非常に有効なツールになります。大事なのは「情報収集の場」として活用する意識を持つことですね
転職エージェントの最大のメリットは、本音で話せる相手であることです。今の職場の不満、希望年収、ライフイベントとの兼ね合い―こういった話を、上司や同僚にはできませんよね。
また、薬剤師専門のエージェントであれば、業界動向や各社の内情にも詳しいです。「あなたのスキルなら、こういう選択肢もありますよ」と、自分では気づかなかった可能性を示してくれることもあります。
ただし、エージェントのビジネスモデルは「転職を成立させて紹介料をもらう」ことです。そのため、本当は転職しなくてもいい状況なのに、転職を勧められる可能性もあります。
転職エージェントの使い方のコツ
- 複数のエージェントに登録して、情報を比較する
- 「今すぐ転職するつもりはないが、市場価値を知りたい」と最初に伝える
- 提案内容を鵜呑みにせず、自分で判断する

ポッポ先生
転職エージェントは「情報源」として優秀です。ただし最終判断は自分で下す、というスタンスを忘れないでください
優良な転職エージェントの見分け方
転職エージェントにも質の差があります。ここ、押さえたいポイントです。
国は、医療分野において紹介料目当てで頻繁な転職を促す悪質な人材紹介会社への対策を強化しています。そのため、職業紹介優良事業者の認定を受けているエージェントを選ぶのが安全です。
でも、エージェントの人と合わなかったらどうするんですか?

オカメインコ

ポッポ先生
担当者の変更を依頼するか、別のエージェントに切り替えましょう。遠慮する必要はありません。あなたのキャリアですから
キャリアコンサルタント(国家資格保有者)への相談
あまり知られていませんが、国家資格を持つキャリアコンサルタントに相談するという選択肢もあります。
キャリアコンサルタントは、転職の成否に関係なく中立的な立場でキャリア支援を行います。自己分析から将来設計まで、体系的にサポートしてもらえるのが特徴です。
ただし、薬剤師業界に詳しいキャリアコンサルタントは少数派です。また、有料のサービスもあるため、事前に確認が必要です。
一部の転職エージェント(例:ファルマスタッフ)は、国家資格を持つキャリアコンサルタントによる無料相談を提供しています。こうしたサービスを活用するのも一つの手です。
相談する前に、自分で整理しておくべきこと

どこに相談するにせよ、あらかじめ自分の中で整理しておくべきことがあります。
①「何に困っているのか」を言語化する
「なんとなくモヤモヤする」では、相手も答えようがありません。
- 業務負荷が高すぎて続かない
- 年収が相場より低い気がする
- スキルアップの機会がない
- 人間関係がつらい
- ライフイベント(結婚・出産・介護)との両立が難しい
これらのうち、どれが一番大きいのか。複数ある場合、優先順位はどうか。ここを明確にしておくと、相談がスムーズになります。
②「理想の状態」を具体的にする
「もっと良い職場で働きたい」では抽象的すぎます。
- 年収はいくら欲しいのか(具体的な金額)
- 勤務時間はどれくらいが理想か
- どんな業務に携わりたいのか(調剤、在宅、DI、管理職など)
- 通勤時間はどこまで許容できるか
数字や条件を具体的にすることで、相談相手も的確なアドバイスができます。
③「譲れない軸」と「妥協できる点」を分ける
すべての条件を満たす職場は、ほぼ存在しません。
私なら、次の3つの観点で整理します:
- 負荷(働き続けられるか)
- 成長(スキルや経験が増えるか)
- 回収(給与や待遇)
このうち、どれを最優先するかで選択肢が変わります。たとえば「今は負荷を下げたい」なら高年収は諦める、「成長を優先したい」なら当面の収入は妥協する、といった判断です。

ポッポ先生
判断軸が明確だと、相談後の意思決定も早くなります。逆に軸がないと、何を聞いても迷うだけで終わってしまいます
実際に相談するときの注意点

複数の意見を聞く
一人の意見だけで決めないこと。これ、本当に大事です。
たとえば転職エージェントなら、最低でも2〜3社に登録して話を聞いてみる。上司にも相談するし、エージェントにも相談する。情報を多角的に集めることで、偏った判断を避けられます。
「すぐ決めなきゃ」と焦らない
エージェントから「この求人、人気なので早く決めないと埋まりますよ」って言われたらどうするんですか?

オカメインコ

ポッポ先生
それは典型的な営業トークです。本当に良い求人なら、少し待ってもらうこともできます。焦って決めて後悔するより、納得して決める方がずっと大事ですね
転職は人生の大きな決断です。1週間や2週間考える時間を取ることは、決して悪いことではありません。
相談内容は記録しておく
複数の人に相談すると、誰が何を言ったか分からなくなります。
簡単なメモでいいので、日付・相談相手・話の内容を記録しておきましょう。後で見返したときに、判断の材料になります。
まとめ―キャリア相談は「判断軸」を見つけるプロセス

薬剤師のキャリア相談、誰にすればいいか。答えは一つではありません。
大事なのは、「相談すること自体が目的ではなく、自分の判断軸を見つけるための手段」だと理解することです。
- 社内キャリアアップなら上司・先輩
- 業界全体の視点なら大学の恩師
- 市場価値や選択肢を知りたいなら転職エージェント
- じっくり自己分析したいならキャリアコンサルタント
どの選択肢も、使い方次第です。そして、最終的に決めるのはあなた自身。

ポッポ先生
キャリアに正解はありません。でも、納得して選んだ道なら、たとえ失敗しても次に活かせます。まずは小さく動いてみる、それが一番の近道ですね
今日からできることは、次の3つです:
- 自分の判断軸を紙に書き出す(負荷・成長・回収のどれを優先するか)
- 転職エージェント2〜3社に登録してみる(情報収集として)
- 業界動向を定期的にチェックする習慣をつける(厚生労働省の資料や業界ニュース)
どうですか? 少しは道筋が見えてきたでしょうか。
完璧なタイミングなんて、いつまでも来ません。今のモヤモヤを放置せず、まずは一歩を踏み出してみてください。
- 厚生労働省「薬剤師の需給推計」
- 日本薬剤師会の各種統計資料
- 職業紹介優良事業者認定制度(厚生労働省)


