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ゾフルーザがインフルエンザ予防の適応追加
2020年11月27日に抗インフルエンザ薬のゾフルーザも、インフルエンザ予防の適応を取得しました。これにより日本ではインフルエンザの予防に使用できる薬剤としては以下の4種類になります。
薬剤名 | 剤型 | 日数 |
---|---|---|
タミフル(オセルタミビル) | カプセル or 粉薬 | 7日~10日 |
リレンザ | 吸入薬 | 10日間 |
イナビル | 吸入薬 | 単回 or 2日間 |
ゾフルーザ | 錠剤 or 顆粒 | 単回 |
ゾフルーザも予防としての適応が追加されたことにより、単回投与で可能な内服製剤が選択肢に加わったことになります。
インフルエンザの治療薬として承認された時は、わたしも否定的なことを言いましたが、今回の予防に関してはアリなんじゃないかなと思っています。その理由なども踏まえて紹介していきます。
ゾフルーザのインフルエンザ予防についての基本情報
今回、適応追加されたゾフルーザのインフルエンザの予防の部分について、添付文書を確認していきます。
〈ゾフルーザ錠20mg、ゾフルーザ顆粒2%分包〉
A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療及びその予防
効能・効果 | 錠10mg | 錠20mg 顆粒2%分包 |
治療 | 〇 | 〇 |
予防 | × | 〇 |
ゾフルーザ錠10㎎は、インフルエンザ予防に適応ナシ
〈予防〉
原則として、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共同生活者のうち、インフルエンザウイルス感染症罹患時に、重症化のリスクが高いと判断される者※を対象とする。
※高齢者(65歳以上)、慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者、代謝性疾患患者(糖尿病等)等
小児に対する投与については、流行ウイルスの薬剤耐性情報に留意し、他の抗インフルエンザウイルス薬の使用を考慮した上で、慎重に検討すること。
本剤のB型インフルエンザウイルス感染症に対する予防投与について、有効性を示すデータは限られていることを考慮した上で、本剤の投与を慎重に検討すること。
るるーしゅ
重症化のリスクが高いと判断される者については、CDCの基準を引用していますので、この患者ハイリスクかな?と迷ったら確認しましょう。
るるーしゅ
20㎏未満の子どもには使えないだけで、予防だからといって用法用量が異なるということはありません。
〈予防〉
インフルエンザウイルス感染症患者に接触後2日以内に投与を開始すること。接触後48時間経過後に投与を開始した場合における有効性を裏付けるデータは得られていない。
本剤を服用した日から10日を超えた期間のインフルエンザウイルス感染症に対する予防効果は確認されていない。
〈予防〉国内第Ⅲ相臨床試験
インフルエンザウイルス感染症患者の同居家族又は共同生活者を対象に、本剤のインフルエンザウイルス感染症の発症抑制効果(10日間)を、無作為化二重盲検並行群間比較試験で検証した。インフルエンザウイルス感染症患者の発症から48時間以内に、その同居家族又は共同生活者に本剤(年齢及び体重に応じてバロキサビルマルボキシル1mg/kg、10mg、20mg、40mg、若しくは80mg)又はプラセボを単回経口投与したとき、主要評価項目である症候性インフルエンザウイルス陽性被験者(発熱かつ呼吸器症状あり)の割合は表のとおり、本剤群で1.9%(7/374例)、プラセボ群で13.6%(51/375例)であり、プラセボに対する本剤の優越性が検証された。インフルエンザウイルス感染症患者のウイルス型・亜型別の症候性インフルエンザウイルス陽性被験者の割合は、本剤群及びプラセボ群でそれぞれ、A/H1N1pdm型では1.1%(2/176例))及び10.6%(19/180例)、A/H3型では2.8%(5/181例))及び17.5%(32/183例)、B型ではいずれも0%(それぞれ0/2例及び0/3例)であった。
ゾフルーザの審査報告書を読んでいく
予防投与の安全性について
まずは第Ⅲ相試験の有害事象について確認する
安全性について、有害事象(臨床検査値異常変動を含む)は本薬群83/374例(22.2%)及びプラセボ群77/375例(20.5%)、副作用は本薬群7/374例(1.9%)及びプラセボ群6/375例(1.6%)に認められ、1%以上に認められた有害事象及び副作用は表14のとおりであった。重篤な有害事象及び中止に至った有害事象はプラセボ群で1例(精神病性障害)認められた。なお、死亡に至った有害事象は認められなかった。
るるーしゅ
有害事象などについてはあまり気にならないですね
B型インフルエンザウイルス感染症に対する予防投与について
本剤のB型インフルエンザウイルス感染症に対する予防投与について、有効性を示すデータは限られていることを考慮した上で、本剤の投与を慎重に検討すること。
添付文書上に上記の記載がありますので、実際にB型に対する有効性を確認してみると…
るるーしゅ
B型は、事例数が少ないので本当に予防効果があるのかは不明です。ただ理論上、B型に効かないとは思えないとのことで承認されています。
12歳未満の適応について
つづいて年齢や20㎏未満の子どもについてです。海外でもゾフルーザは予防の承認がとおりましたが12歳以上となっていました。
このあたり、今回の審査報告書でなかなか見どころのあるところで、まずpmdaは12歳未満については以下のように評価しているんですよね。
12歳未満の小児に対する本薬の予防投与に係る用法・用量を承認し、日常診療下において本薬をインフルエンザウイルス感染症予防薬の選択肢の一つとして使用可能とした場合に得られる医療上のメリットよりも、低感受性変異ウイルスの蔓延を助長する可能性があるという公衆衛生上の懸念(リスク)を重視すべきと考える
しかし、この後の専門協議会で、下記の意見により12歳未満にも使用が可能になっています。
特に変異ウイルス発現に対する懸念の観点から、小児に対して本剤を広く使用することは避けるべきであるが、既存のインフルエンザウイルス感染症予防薬(ノイラミニダーゼ阻害剤)とは作用機序が異なることを考慮し、ノイラミニダーゼ阻害剤に対する耐性ウイルス蔓延時などの緊急時に際しては、12歳未満の小児に対しても投与対象をより厳格に管理した上で本剤を使用可能としておくことが望ましい。また、そのような限られた範囲での使用であれば、変異ウイルスの発現頻度を増加させるリスクは大きくないと考えられる。
体重20kg未満の小児については、体重20kg以上の小児及び成人と比較して、低感受性アミノ酸変異の発現がより高い傾向にあることを踏まえると、用法・用量の検討が十分でない可能性がある。
個人的見解
予防へ使う集団のことを考えると、この単回投与の内服薬というのはメリットがあるように感じます。
高齢者施設でのインフルエンザの発生時に、タミフル等はすこし服薬負担が多いのでは?と思いますが、いかがでしょうかね。(値段は割高になりますが…)
今回は、薬剤師という薬のプロフェッショナルだからこそ、添付文書に書かれている情報の裏側まで知っておくとカッコよくない?ということを伝えたくて、ブログにアップしてみました。
医師から、「B型のインフルエンザの際の予防にゾフルーザってどうなの?」と質問されたら、どう回答するか?
タミフル、イナビル、リレンザ、ゾフルーザの4種類は、予防の際に使用する場合はどのように使い分けるのがいいのか?
もし分からないのであれば、じゃあ医薬品のどういうデータがあればわかるのか?患者さんのどういう情報があればわかるのか?そして、そのために今からできることはなにか?など考えてみてください。
るるーしゅ
色々と自分で考えることが大切ですよ
- ゾフルーザの添付文書
- ゾフルーザの審査報告書