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薬剤師目線でのアレルギー性結膜炎治療の点眼薬の選び方!思考停止でアレジオンLXにしていませんか?

そろそろ花粉症のシーズンに入ってきましたので、今回は薬剤師目線でのアレルギー性結膜炎治療の点眼薬の選び方について紹介します。

花粉症の際には眼科医以外の非専門医が花粉症用の点眼薬を処方するケースも多いので、薬剤師が有効性や安全性、そしてコストを考慮した推奨リストなどを医師に情報提供することで適切な薬物療法につなげられると思いますので、今回の内容をご活用いただければ幸いです。

アレルギー性結膜炎について

アレルギー性結膜炎は日本では花粉飛散時期に多く発生し、眼のかゆみなみだ目(流涙)眼が腫れるごろごろするといった異物感を訴えます。

アレルギー性結膜炎はⅠ型アレルギーであり、アレルゲンが肥満細胞にくっつく肥満細胞からヒスタミンなどのメディエーターの放出→充血や目のかゆみといった症状を起こすというのが大体の流れです。

そして治療薬としては肥満細胞からメディエーターの遊離抑制するメディエーター遊離抑制薬6種類と、遊離されたヒスタミンが神経や血管のH1受容体に結合するのを妨げる抗ヒスタミン薬4種類があります。

分類成分名商品名
メディエーター遊離抑制薬 クロモグリク酸ナトリウムインタール点眼
メディエーター遊離抑制薬 アンレキサノクスエリックス点眼
メディエーター遊離抑制薬 ペミロラストカリウムアレギサール点眼
ペミラストン点眼液
メディエーター遊離抑制薬 トラニラストリザベン点眼
トラメラス点眼
メディエーター遊離抑制薬 イブジラストケタス点眼
メディエーター遊離抑制薬 アシタザノラスト水和物ゼペリン点眼
抗ヒスタミン薬ケトチフェンフマル酸塩ザジテン点眼
抗ヒスタミン薬 レボカバスチン塩酸塩リボスチン点眼
抗ヒスタミン薬 オロパタジン塩酸塩パタノール点眼
抗ヒスタミン薬 エピナスチン塩酸塩アレジオン点眼
アレジオンLX点眼

点眼薬の選び方について

では治療薬の選び方ですが、まずメディエーター遊離抑制薬を以下の二つの理由から、あえて選ぶ必要はないと思います。

  • 効果発現に日数を要するため、即効性が乏しい
  • 抗ヒスタミン薬にもメディエーター遊離抑制作用がある

そのため、今回は抗ヒスタミン薬を中心に比較していきます。

点眼抗ヒスタミン薬はどれがいい?

それでは日本で処方される抗ヒスタミン薬のケトチフェン、レボカバスチン、オロパタジン、エピナスチンですがどれがいいのか?という話になるのですが、まず有効性についてなんですが、これどれも大差ないです。

るるーしゅ

るるーしゅ

内服抗ヒスタミン薬もあまり差はなかったです。

一応、どれも大差なしだけだと、医師に情報提供する際に、「るるーしゅさんがそのように仰っていましたので…」というわけにはいきませんよね。

ケトチフェン VS オロパタジン

ケトチフェン点眼とオロパタジン点眼の比較は、パタノール点眼液の第Ⅲ相試験で実施しています。

アレルギー性結膜炎の患者にオロパタジン点眼(n=124)、ケトチフェン点眼(n=123)、1日4回、28日間で目の掻痒感や充血を比較した結果、オロパタジンはケトチフェンに非劣性で有効性は同等でした。ただ副作用はケトチフェン点眼で17.3%に眼痛が報告された。


パタノール点眼液の審査報告書より
るるーしゅ

るるーしゅ

ザジテン点眼は有効性は劣らないけど、眼に刺激感があるみたい。(そういうところに需要もありそうですが…)

オロパタジン VS エピナスチン

オロパタジン点眼とエピナスチン点眼薬の比較は、アレジオン点眼液の第Ⅲ相試験で実施しています。

86人の症状の出ていないアレルギー性結膜炎患者に対して、パタノール+プラセボ(43人)もしくはアレジオン (0.05%) +プラセボ(43人)を投与した後、4時間後にアレルゲン投与した際の目のかゆみ、充血を評価した。結果はアレジオン点眼はパタノール点眼に非劣勢であり、有効性は同等でした。

アレジオン点眼の審査報告書より

レボカバスチン VS エピナスチン

アレジオン点眼の申請資料概要の中にあった海外の第Ⅲ相試験のデータからです。

アレルギー性結膜炎の患者にエピナスチン点眼(0.05%)、レボカバスチン点眼、プラセボ点眼を1日2回両眼に点眼、56日間の目の掻痒感を比較した結果、エピナスチン点眼はレボカバスチン点眼に非劣性が示された。

アレジオンLX vs アレジオン(0.05%)

今まで紹介した薬剤は、すべて1日4回でしたが、アレジオンLX点眼は1日2回というベネフィットがあるように思えますので、見ていこうと思います。

アレジオンLX点眼は、第Ⅲ相試験にて、アレジオン点眼液(0.05%)1日4回と比較しています。試験方法はややこしいのですが、とりあえずアレジオン点眼液(0.05%)に非劣性を示しています。

抗ヒスタミン薬の有効性はどれも変わらないのであれば利便性を考えれば1日2回という特性があるアレジオンLX点眼は割とありなんじゃないかと思いますが、ちょっと薬価を考えてみたいと思います。

抗ヒスタミン点眼薬の1本あたりの薬価の比較

アレジオンLX点眼以外はすでにジェネリック医薬品も発売されていますので、それも加えて比較してみます。

成分名商品名1本あたりの薬価
ケトチフェンザジテン点眼473.4
ケトチフェン点眼220.1
レボカバスチンリボスチン点眼538.5
レボカバスチン点眼360
オロパタジンパタノール点眼831
オロパタジン 320
エピナスチンアレジオン点眼(0.05%)1696
エピナスチン点眼(0.05%)799
アレジオンLX点眼(0.1%)3381.5
薬価は2022年1月時点

点眼薬1本は5mlで、大体100滴分です、1日4回の点眼は大体14日分、1日2回の点眼は28日分です。アレジオンは本当に高いです。なんでこんな価格設定になっているか本当に意味不明です。

アレジオン点眼以外の点眼薬は1回1~2滴なところ、アレジオンは1回1滴なので、他の薬剤より二倍持つからなんですよ~と私は参天製薬のMRは言われたことあります。ただ人の眼には1滴以上入らないし、何より第Ⅲ相で1滴ずつで比較してるのにそういうプロモーションするの参天さんは…と思った記憶があります。

1日4回の点眼って1日2回じゃ効果ないの?

アレジオンLX点眼の存在意義についてもう少し考えていきたいと思います。現在、添付文書上では1日4回になっているパタノール点眼やアレジオン点眼(0.05%)は1日2回だとどの程度、効果が落ちてしまうのか調べたいと思います。

これがパタノール点眼の1日2回と4回を比較したデータですが、有意差はついていません。ただ4回のほうが重症度スコアは低いので第Ⅲ相は4回で実施したという感じです。

パタノール点眼の審査報告書より

つづいてアレジオン点眼ですが、こっちはまさかのプラセボとも有意差がついていない…

ただ追加解析で、重症度スコアが高い人では臨床所見重症度合計スコアのベースラインからの変化量(平均値±標準偏差)は、プラセボ群-4.0±2.65(21 例)、 アレジオン点眼 1 日 2 回群- 5.5±2.61(27 例)、 アレジオン点眼 1 日 4 回群-5.9±2.22(27 例)であり、用量反応関係が示唆された(p=0.0236、 Jonckheere-Terpstra 検定)こと、また、花粉飛散量が多かった 3~4 月期にエントリーした患者集団にお いて、臨床所見重症度合計スコアのベースラインからの変化量はプラセボ群-2.4±2.32(90 例)、 アレジオン点眼 1 日 2 回群-3.0±2.27(92 例)、 アレジオン点眼 1 日 4 回群-3.2±2.58(89 例)であり、用量反応関係が示唆された (p=0.0172、Jonckheere-Terpstra 検定)

こうなると、アレジオンLX点眼はアレジオン点眼より改善度が高かったわけでもないことから、アレジオン点眼(0.05%)やパタノール点眼の1日2回より効果的とは思えないんですよね。

防腐剤フリーについて

有効性やコストの面から、アレジオンLX点眼についてボロクソ言いましたが、防腐剤フリーの観点から魅力があることは確かです。

ソフトコンタクトレンズを使用している方は防腐剤のベンザルコニウムが吸着して角膜障害を起こす可能性があり、使用の際はコンタクトを外してから点眼し、10分程度してから再度コンタクトレンズをはめるという手間がかかります(ワンデーやハードは大丈夫です)

またベンザルコニウムにアレルギーがあったり、ドライアイなどある場合はベンザルコニウムが入っていないほうが望ましいのかもしれません。

ただ防腐剤フリーの点眼はアレジオンLX点眼以外にもありますので、あえてこんな高いのを使用する必要はないと思います。

防腐剤フリーの点眼
  • ケトチフェンPF点眼液0.05%「日点」
  • エピナスチン塩酸塩点眼液0.05%

アレジオン点眼の後発品はほとんど防腐剤フリーです。

まとめ

今回はアレルギー性結膜炎に使用する抗ヒスタミン点眼薬について薬剤師視点でどのくすりがいいかを検討してみました。

アレジオン点眼もジェネリックが発売されたこともあり、参天製薬さんのアレジオンLX点眼をプロモーション活動が活発になってるを感じます。アレジオンLXは悪いくすりではありませんが、やはり他の薬剤と比較して高いので敢えてこれをバンバン処方するのは患者さんの負担や医療費のことを考えていないんじゃないかなと思います。

るるーしゅ

るるーしゅ

洗眼用でヒアレインミニを処方という記事も見たのですが…医療費考えましょうよ。人口涙液なんて市販でもそんなに高価なものではないんですから…

私としては、アレルギー性結膜炎の治療薬はオロパタジン点眼液を第一選択薬でいいと思います。オロパタジン点眼よりケトチフェン点眼のほうが安いですが、眼痛の頻度が高いことからこの程度の薬価差ならオロパタジン点眼に軍配があがると考えました。

ただ上記のケースでは難しいソフトコンタクトレンズ使用の患者や、ドライアイの治療中の方などは防腐剤フリーのエピナスチン点眼薬を選択すればいいのかなと思います。

どちらも後発品ですが、添加剤なども含め先発品と同じであることから生物学的同等性試験も免除されているほど気にする必要はありません。

参考資料
  • 高村 悦子,【耳鼻咽喉科医が頻用する内服・外用薬-選び方・上手な使い方-】他科専門医から耳鼻咽喉科医へ 耳鼻咽喉科医が知っておくべきアレルギー性結膜炎に対する内服・点眼薬の使い方,ENTONI (1346-2067)231号 Page152-157(2019.04)
  • 原田 拓,【うまく使おう!外用薬 研修医も知っておきたい、外皮用薬・坐剤・点眼薬などの選び方と使いどころ】その他の外用薬 点眼薬 アレルギー性結膜炎・ドライアイ,レジデントノート (1344-6746)21巻13号 Page2280-2285(2019.12)
  • パタノール点眼の審査報告書
  • アレジオン点眼液の審査報告書
  • アレジオンLX点眼液の審査報告書
るるーしゅ

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るるーしゅ

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薬局薬剤師です。
若手の薬剤師教育や学会発表、論文投稿などに興味があります。
m3や雑誌への寄稿や、某大学非常勤講師歴もあります。
ファクトベースで物事を話さない(=感覚でものを言う)人は苦手です。
今後の業界の変化に対応できるように、業界情報や専門的なスキル、そして薬剤師としての働き方などについて情報発信していきます。
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