「花粉が眼に入って痒くて仕方なく、眼を取り出して洗いたい!!」
花粉症シーズンになると、このようなことを患者さんからよく耳にしますよね。
特に今年は花粉の飛散量が多いため、このような訴えは多いと思います。
そこで今回は、花粉症による眼のかゆみ症状を緩和するための方法のひとつである洗眼について情報をまとめていきます。
るるーしゅ
洗眼については、医療保険の範囲外なので薬剤師がアドバイスすることが重要です。
目次
花粉による眼のかゆみ対策は?
まず花粉による眼のかゆみへの対策としては、アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)によると以下の内容が紹介されています。
- 花粉防御用メガネの使用
- コンタクトレンズからメガネへの切り替え
- 洗眼
- 外出時の衣類
その他にも花粉情報の活用、屋内に持ち込まないようにする方法も記載されています。
今回は③の洗眼についての掘り下げていきます。
洗眼に使用するものは?
洗眼に使用するものとしては、みなさんが思い浮かぶの以下の4つではないかと思います。
- 水道水
- 人口涙液
- 洗眼用目薬
- カップ式洗眼薬
尚、先ほども紹介したアレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)では以下のように記載されています。
洗眼
眼表面に飛入した抗原などを洗い流すためには,防腐剤を含有していない製剤や人工涙液を用いた洗眼が有用と考えられている.水道水による頻回の洗眼は避ける.眼周囲の皮膚の汚れや皮膚に付着した抗原が眼表面に接触しないように注意を払う.
水道水による洗眼は?
まずは水道水による洗眼についてです。
アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)では、水道水による頻回の洗眼は避けるようにと記載されています。
理由としては、水道水には塩素が0.1㎎/L以上含まれているため、水道水での洗眼は眼に負担がかかることが示唆されているためです。
るるーしゅ
洗眼は頻回実施したほうが効果的なので、眼への負担も考えると水道水はあまりオススメはしにくいですよね。
人口涙液による洗眼は?
つづいて人口涙液を用いた洗眼についてです。
pmdaのウェブサイトで人口涙液と検索すると色々とでてきますが、有名なのはソフトサンティアだと思います。(私もよく購入しています)
こちらはガイドラインでも紹介されているため、患者さんにオススメするのは多分、問題ないと思います。すこし歯切れが悪いのは、人口涙液の効能効果の記載です。
ハードコンタクトレンズまたはソフトコンタクトレンズを装着しているときの不快感、涙液の補助(目のかわき)、目の疲れ、目のかすみ(目やにの多いときなど)
洗眼という記載はないため、このあたりをどう考えるかなというところです。洗眼≒涙液の補助と考えても問題ないかと思いますが…
るるーしゅ
ソフトサンティアは開封後は10日以内が期限なので、オススメする際には忘れずに
洗眼用目薬による洗眼は?
つづいて洗眼用目薬についてです。
洗眼用目薬は、ウェルウォッシュアイしかないと思います。
こちらもソフトサンティア同様に、防腐剤フリーなうえに効能効果で眼の洗浄と明記されているのでおすすめしやすいです。
目の洗浄、眼病予防(水泳のあと、ほこりや汗が目に入ったときなど)
カップ式洗眼薬による洗眼は?
最後にカップ式洗眼薬による洗眼についてです。
カップ式洗眼薬の代表的な商品はアイボンですが、類似の商品も複数販売されています。
目の洗浄、眼病予防(水泳のあと、ほこりや汗が目に入ったときなど)
効能効果もウェルウォッシュアイと同じです。しかし、このカップ式洗眼薬による洗眼については以前までは推奨されていませんでした。
カップ式洗眼薬は推奨しなかった理由は?
アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版)では、カップ式洗眼薬については下記のように記載されていました。
最近市販されているカップ式の洗浄器具は、眼周囲の皮膚の汚れや皮膚に付着した抗原をかえって眼表面に接触させることになり、洗浄器具としては薦められない.また洗浄液中には高濃度の防腐剤が含まれており眼表面に対する安全性の点からも好ましくない.
アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版) 第6章 予防:セルフケアより引用
このように記載されていたため、私も患者さんにはあまりオススメできないので、ソフトサンティアやウェルウォッシュアイを使うように指導していました。
実際のところ、カップ式洗眼薬は危険なのか?
アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版)で否定的であったカップ式洗眼薬ですが、アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)では言及されていません。
アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)で何故、なくなったのか記載があればいいのですが見つけられていません。そのため、推測していきます。
カップ式洗眼薬には高濃度の防腐剤が含まれている?
まずは、カップ式洗眼薬は、洗浄液中には高濃度の防腐剤が含まれており眼表面に対する安全性の点からも好ましくない.といった内容を検証していきます。
Iwashita, M. & Murato, D. Effect of eyewash solution (commercial washing solution) on the corneal epithelium: Adverse effects of benzalkonium chloride on the eye surface. J. Clin. Exp. Ophthalmol. 7, (2016)
上記の論文の中で、昔のカップ式洗眼薬には防腐剤(塩化ベンザルコニウム)が含まれていたようですが、近年ではほとんどの商品には含まれておらず、眼表面に対する安全性は担保されているようです。
アイボン洗眼液の長期使用の眼表面ムチンへの影響
アレルギーの臨床(0285-6379)42巻10号 Page748-751(2022.09)
上記の解説記事によると、アイボンの長期的な使用は眼表面ムチン層への影響は懸念されていたようです。ただ健常人に一カ月使用しても眼表面および涙液機能に悪影響を与えてない旨が記載されています。
眼周囲の汚れや抗原を目に接触させ逆効果?
つづいて、カップ式洗眼薬は、眼周囲の皮膚の汚れや皮膚に付着した抗原をかえって眼表面に接触させることになり、洗浄器具としては薦められない.といった内容を検証していきます。
三村 達哉,”眼アレルギー症状に対する洗眼の有効性”.眼科 61巻12号 (2019年11月発行)
上記の論文では、31人の中等度以上のアレルギー性結膜炎患者の右目にアイボン、左目に生理食塩水による洗眼で、眼の症状等を評価しています。結果は実施前後で眼の症状は改善しました。また左右の目で効果に差はなく、安全性についても問題なかったとのことです。
岩下 正紀,”眼瞼周囲と眼洗浄カップの汚れに関する検討”,眼科(0016-4488)58巻6号 Page691-695(2016.06)
この論文は、カップ式洗眼のカップが汚染されているのかを検討したもので、結果は汚染されていなかったのことです。
アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版)でカップ式洗眼薬に対して懸念されていた内容は、その後の研究などにより解消されているため、第3版では言及されなくなったと考えています。
わたし自身、以前は使わないほうがいいですよと説明していましたが、現在は洗眼の選択肢の一つだと考えています。
尚、アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)でカップ式洗眼薬について触れられてもいないのは、眼科系の学会は、参天製薬(ソフトサンティアやウェルウォッシュアイの販売元)との関係性があるのではないかなと勝手に陰謀論を働かせています(笑)
さいごに
今回は花粉による眼のかゆみを改善するための方法の一つである洗眼について解説しました。
まだまだ花粉の飛散は続きますので、本記事を参考に乗り切っていただければ幸いです。