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【適用外処方】夜間頻尿にNSAIDsって有効なの?ガイドラインではどうなってるの?

夜間頻尿にNSAIDs(COX阻害薬)は有効なのか

今回はお勉強ネタです。

夜間頻尿にNSAIDsを適用外で使うことがあるんですよ

とドヤ顔で言うと、「知ってるよ…」と冷めた目で見てくる薬剤師もいるかと思いますが、そんなの関係ねえでやっていきたいと思います。

この「知っている」というのも解像度があるかと思います。
適用外で使用することもあるので疑義照会しなくてもいい!みたいな思考停止ではなく、ベネフィットとリスクを把握したうえで疑義照会しないというレベルまであるといいんじゃないかなと思います。

るるーしゅ

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最近、「解像度を上げる!」みたいな表現が流行っているけど、今回のもそんな感じです。

夜間頻尿について

今回の趣旨に入る前に簡単に夜間頻尿についておさらいです。

夜間頻尿は加齢とともに罹患率が増加し、睡眠の障害のみならず、高齢者の転倒のリスク要因となることから、健康長寿を目指す本邦において重要な疾患症候です。

夜間頻尿診療ガイドライン[第2版]より引用

るるーしゅ

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夜トイレに起きるくらい、大したことない!とは言えないですよね。わたしだったら朝までぐっすり寝ていたいですもん。

ガイドラインの記載はどうなっている?

まずは夜間頻尿診療ガイドライン[第2版]での記載について確認してみましょう。

CQ18 夜間多尿を伴う夜間頻尿患者に対してCOX阻害薬の投与は推奨されるか?

非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs:COX阻害薬)
推奨グレード:保留(保険適用外)

NSAIDs(COX阻害薬)は糸球体血流を減少させて尿量減少に働き、夜間多尿に起因する夜間頻尿に有効との報告がみられるが【レベル2~4】、長期投与にて腎障害をきたすこともある。
Nocturia(夜間頻尿),nonsteroidal anti-inflammatory drugs(NSAIDs、非ステロイド性抗炎症薬)をキーワードとして検索を行い、27編の論文を得たがRCTは2編だった。総説を含め7編を引用した。

プロスタノイド(prostanoids)は過活動膀胱の発生に関与する分子であり、これを抑制する非ステロイド性抗炎症薬は過活動膀胱の治療にも効果があると推定されている。

夜間頻尿診療ガイドライン[第2版]より引用

るるーしゅ

るるーしゅ

これ、悩ましいやつだ…

メカニズムに関しては下記の記事も参考になるかと思います。

ガイドラインで引用されている文献を確認

文献その①

Andersson KE, Van Kerrebroeck P. Pharmacotherapy for Nocturia. Curr Urol Rep. 2018 Feb 9;19(1):8. doi: 10.1007/s11934-018-0750-y. PMID: 29427214; PMCID: PMC5807446.

まずは2018年の総説からですね、NSAIDsに関連するところをDeepL様にお任せします。

One of the rationales for using nonsteroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) in the treatment of nocturia is that prostanoids may be involved in the pathophysiology of OAB , and the fact that several NSAIDs have shown efficacy in the treatment of this condition . The effects of several NSAIDs, e.g., diclofenac and celecoxib have been evaluated specifically in patients with nocturia.

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を夜尿症の治療に使用する根拠の一つは、プロスタノイドがOABの病態生理に関与している可能性があること、およびいくつかのNSAIDsがこの病態の治療に有効性を示しているという事実である。ジクロフェナクやセレコキシブなどの非ステロイド性抗炎症薬の効果は、特に夜尿症患者において評価されている。

In a randomized crossover study on 26 patients with nocturnal polyuria (male n = 20; female n = 6), Addla et al. studied the effects of diclofenac (50 mg daily, taken in the evening). The mean nocturnal frequency significantly decreased from 2.7 to 2.3 and the mean ratio of night-time to 24-h urine volume decreased from 44 to 39%. No significant side effects were reported. A prospective, randomized, double-blind, placebo-controlled study of celecoxib 100 mg versus placebo was performed in 80 men with BPE and 2 nocturia/night . In the celecoxib group, mean nocturnal frequency decreased from 5.2 to 2.5 compared with 5.3 to 5.1. No significant side effects were reported in either study. In some studies, NSAIDs have been combined with various treatment modalities .

夜間頻尿の患者26人(男性n=20、女性n=6)を対象とした無作為化クロスオーバー試験において、Addlaらはジクロフェナク(50mgを1日1回、夜間に服用)の効果を検討した。夜間頻尿は平均2.7回から2.3回に有意に減少し、夜間尿量と24時間尿量の平均比は44%から39%に減少した。有意な副作用は報告されなかった。BPEと夜間頻尿2回/夜尿症の男性80人を対象に、セレコキシブ100mgとプラセボを比較した前向き、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験が実施されました。celecoxib群では、平均夜尿回数が5.3回から5.1回に減少したのに対し、5.2回から2.5回に減少した。いずれの研究でも有意な副作用は報告されていない。いくつかの研究では、NSAIDsは様々な治療法と併用されている。

総説のなかで2つのRCTが紹介されていますが、簡単にビジュアルアブストラクトにします。

文献その②

Addla SK, Adeyoju AB, Neilson D, O’Reilly P. Diclofenac for treatment of nocturia caused by nocturnal polyuria: a prospective, randomised, double-blind, placebo-controlled crossover study. Eur Urol. 2006 Apr;49(4):720-5. doi: 10.1016/j.eururo.2005.11.026. Epub 2006 Jan 13. PMID: 16455186.

う~ん、あまり劇的に効いている感じはなさそうですね。わたしはジクロフェナク飲むと胃が痛くなっちゃうので、正直これみる限りではあまり飲みたいとは思いませんね

文献その③

Falahatkar S, Mokhtari G, Pourreza F, Asgari SA, Kamran AN. Celecoxib for treatment of nocturia caused by benign prostatic hyperplasia: a prospective, randomized, double-blind, placebo-controlled study. Urology. 2008 Oct;72(4):813-6. doi: 10.1016/j.urology.2008.04.069. Epub 2008 Aug 9. PMID: 18692876.

これはすごい効果でてますが、夜トイレで5回起きるってけっこうな人たちですね…

ロキソニンの夜間頻尿に関するエビデンスは?

ちなみにロキソニンについては、before afterの研究しか紹介されていなく、有効性を評価するほどの質の高い研究ではないようですね。

Araki T, Yokoyama T, Kumon H. Effectiveness of a nonsteroidal anti-inflammatory drug for nocturia on patients with benign prostatic hyperplasia: a prospective non-randomized study of loxoprofen sodium 60 mg once daily before sleeping. Acta Med Okayama. 2004 Feb;58(1):45-9. doi: 10.18926/AMO/32115. PMID: 15157011.

ベネフィットとリスクをどのあたりで天秤にかける?

薬剤師として重要なのは、この情報をどのように活用するかだと思います。夜間頻尿に適用外で使用することもあるので疑義照会する必要はないとだけ、覚えておくのは残念ですよね…

行動療法をしたうえで、デスモプレシンが効果がない(もしくは使えない)からNSAIDsを処方するといったパターンと、患者が夜にトイレ行くから薬くれって言うから、とりあえずロキソニンだしておいたというパターンは同じじゃないですよね…

行動療法(治療の第一選択)

治療法推奨グレード
飲水に関する指導A
塩分制限B
食事B
運動療法B
禁煙C1
統合的生活指導B
神経変調療法など保留
夜間頻尿診療ガイドライン[第2版]より引用

夜間多尿の薬物利用

薬剤推奨グレード
デスモプレシン(男性)A
デスモプレシン(女性)保留(保険適用外)
利尿薬C1
NSAIDs保留(保険適用外)
三環系抗うつ薬保留(保険適用外)
夜間頻尿診療ガイドライン[第2版]より引用
るるーしゅ

るるーしゅ

ちなみにUpToDateでは紹介されていませんでした。

NSAIDsは高齢者に注意が必要

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)において、NSAIDsは高齢者に注意が必要な薬剤として紹介されています。

消炎鎮痛薬

NSAIDsは上部消化管出血腎機能障害心血管障害などの薬物有害事象のリスクを有しており、高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬剤の一つである。

高齢者の特性を考慮した薬剤選択

NSAIDs(セレコキシブ[セレコックス]、ロキソプロフェン[ロキソニン]、ロルノキシカム[ロルカム]、ジクロフェナク[ボルタレン]など)の使用はなるべく短期間にとどめるとともに、上部消化管出血の危険があるため、プロトンポンプ阻害薬やミソプロストール[サイトテック]の併用を考慮する。
セレコキシブ、メロキシカム[モービック]等の選択的 COX-2阻害薬はNSAIDs潰瘍発生のリスクの低減が期待できるため、特に消化性潰瘍の既往のある高齢者でNSAIDsを使用せざるを得ない場合に使用を考慮する。
アセトアミノフェン[カロナール]はNSAIDsには分類されないが、消化管出血や腎機能障害、心血管障害などの薬物有害事象のリスクがNSAIDsに比べて低いと考えられるため、高齢者に鎮痛薬を用いる場合の選択肢として考慮される。

投与量、使用方法に関する注意

NSAIDsは腎機能を低下させるリスクが高いため、軽度の腎機能障害を認めることが多い高齢者においては、可能な限り使用を控え、やむを得ず使用する場合でもなるべく短期間・低用量での使用を考慮する。また、心血管疾患のリスクも高めるため、これらの基礎疾患を合併する高齢者への投与についても注意が必要である。NSAIDsの外用剤と内服薬の併用や、NSAIDsを含有する一般用医薬品等との併用でも薬物有害事象が問題となる可能性があるため、注意が必要である。
アセトアミノフェンを高用量で用いる場合は肝機能障害のリスクが高くなるため注意が必要である。一般用医薬品等を含めて総合感冒剤等に含まれるアセトアミノフェンとの重複にも注意する。
いずれの鎮痛薬を用いるにしても、疼痛の原因・種類を評価した上でその内容に応じた治療を行うことが重要であり、適切な評価を行うことなく鎮痛薬を漫然と継続することは避けるべきである。

他の薬効群の薬剤との相互作用に関する注意

抗血小板薬や抗凝固薬、糖質ステロイドの併用患者ではNSAIDs潰瘍のリスクが上昇するため、これらの薬剤を使用する場合は、なるべくNSAIDsの変更・早期中止を検討する。レニン・アンジオテンシン系阻害薬(ARB、ACE阻害薬など)、利尿薬(フロセミド[ラシックス]、アゾセミド[ダイアート]、スピロノラクトン[アルダクトン]、トリクロルメチアジド[フルイトラン]など)とNSAIDsの併用により
腎機能低下や低ナトリウム血症のリスクが高まるため、これらの併用はなるべく避けるべきである。

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)より

CKD患者にNSAIDsは安全か?については、twitterでバンテリン先生が紹介してくれてましたので共有いたします。

るるーしゅ

るるーしゅ

ひとつの情報だけではなく、複数の情報を基に患者のナラティブも踏まえて、イイカンジの落としどころを見つけてください。

るるーしゅ

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薬局薬剤師です。
若手の薬剤師教育や学会発表、論文投稿などに興味があります。
m3や雑誌への寄稿や、某大学非常勤講師歴もあります。
ファクトベースで物事を話さない(=感覚でものを言う)人は苦手です。
今後の業界の変化に対応できるように、業界情報や専門的なスキル、そして薬剤師としての働き方などについて情報発信していきます。
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