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新人薬剤師がつかえないのは指導者側の問題かも?これだけは知っておきたい教え方の4段階

新人薬剤師の指導を任されて、こんなモヤモヤを抱えていませんか。

「この前説明したよね?」「何回言えばわかるの?」——口に出さずとも、心の中でそう思ったことがある方は少なくないはずです。私も数年前、初めて新人指導を任されたとき、同じ壁にぶつかりました。

ただ、ここで立ち止まって考えてみてほしいことがあります。新人が覚えていないのは、新人だけの問題でしょうか。

実は、指導法には体系化された方法論があります。それがTWI-JI(Training Within Industry – Job Instruction)と呼ばれる「教え方の4段階」です。第二次世界大戦時にアメリカで開発され、日本の製造業でも長く活用されてきた手法ですが、医療現場でも十分に応用できます。

この記事でわかること
  • 「教えたのに覚えていない」が起きる心理学的な理由
  • 教え方の4段階(TWI-JI)の具体的な使い方
  • 薬剤師の現場で詰まりやすいポイントと対処法

「言って聞かせる」「やって見せる」だけでは足りない理由

新人指導でよくあるパターンは、「言葉で説明する」か「やって見せる」のどちらか、あるいは両方です。これ、指導者側としては「教えた」という実感が持てますよね。

でも、新人側から見るとどうでしょうか。

説明を聞いてるときは「なるほど」と思うんですけど、いざ自分でやろうとすると手が止まるんですよね…

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

そう、それが普通なんです。認知心理学では「流暢性の錯覚(fluency illusion)」と呼ばれる現象があります。スラスラ聞けた・読めた=理解できた、と脳が誤認してしまうんですね

ここ、心当たりありませんか。

「わかった気になる」脳のトリック

流暢性の錯覚とは、情報を簡単に処理できることで「もう理解した」と錯覚してしまう心理現象です。説明がわかりやすいほど、実は危険。「なるほど」と思った瞬間、脳は「この情報はもう勉強する必要がない」と判断してしまいます。

最近だと、ChatGPTなどの生成AIに質問して返ってきた説明を読んで「理解できた」と感じることが増えていませんか。AIの回答は整理されていて読みやすい。だからこそ、流暢性の錯覚が起きやすいのです。

「理解している」と「覚えている」は別物。「覚えている」と「できる」もまた別物です。

新人が先輩の説明を聞いて「わかりました」と言ったとき、本当にわかっているかどうかは、やらせてみないと判断できません。ここを見落とすと、「教えたはずなのに、なぜできない?」というすれ違いが起きます。

なぜ「やって見せる」だけでも不十分なのか

言葉だけの説明では、情報の漏れが避けられません。では、やって見せればいいかというと、それも不十分です。

新人は「真似しているだけ」で、なぜその手順なのかという理解には至っていないことが多いのです。動作を再現できても、それは「見慣れた」だけかもしれません。これも流暢性の錯覚の一種です。

特に調剤業務は工程が複雑です。散剤の計量、一包化、最終鑑査、服薬指導——それぞれにキーポイントがあります。ただ見て真似るだけでは、そのキーポイントを見逃してしまう可能性が高いのです。

逆に言うと、「やらせて、言わせて、理由まで説明させる」ところまでやって初めて、本当に理解したかどうかが見えるということです。これが、教え方の4段階の核心部分になります。

教え方の4段階とは?具体的な流れを整理する

教え方の4段階は、以下のステップで構成されています。

教え方の4段階
  1. 第1段階:習う準備をさせる…緊張をほぐす/作業内容を伝える/既知の確認/動機づけ/正しい位置につかせる
  2. 第2段階:説明してやって見せる…主なステップを言いながら実演/キーポイントを強調/理由も説明
  3. 第3段階:やらせてみる…黙ってやらせる→ステップを言わせる→キーポイントを言わせる→理由を言わせる
  4. 第4段階:教えた後をみる…実務につかせる/質問相手を決める/確認方法を伝える/徐々に任せる

私ならまず、この流れを印刷して手元に置いておきます。指導の途中で「今どの段階だっけ?」と確認できるからです。

でも、これ全部やるの、正直時間かかりませんか?業務中にそこまでの余裕がないんですけど…

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

その懸念、もっともです。ただ、最初に時間をかけて教えておくと、後の手直しやミス対応にかかる時間が減ります。結果的に、トータルの負荷は下がることが多いんですね

第1段階「習う準備をさせる」で見落としやすいこと

第1段階でやることは5つあります。

  • 緊張をほぐす:くだらない雑談からでOK
  • 何の作業をやるかを話す:「今から一包化の手順を教えるね」と明示
  • その作業について知っている程度を確かめる:実習で経験があるか、アルバイトで類似作業をしたことがあるか
  • 作業を覚えたい気持ちにさせる:なぜこの作業が大事なのかを伝える
  • 正しい位置につかせる:新人が指導者の動きを見やすい位置に立たせる

この中で、現場だとここで詰まりがちなのが「正しい位置につかせる」です。

向かい合って教えてしまうと、新人は鏡像で動きを見ることになります。右利きの新人なら、指導者の左肩越しの位置が最適です。細かいことですが、後々の習得スピードに影響します。

また、「作業を覚えたい気持ちにさせる」も意外と抜けがちです。「これをやって」と作業を渡すだけでは、新人のモチベーションは上がりません。なぜその作業が患者さんの安全につながるのか、短くてもいいので伝えてみてください。

第2段階・第3段階で押さえたい「キーポイント」の扱い方

第2段階では「やって見せながら説明」、第3段階では「やらせてみる」を行います。

ここで外せないのがキーポイントの強調です。

キーポイントとは、「この作業を成功させるためのコツ」や「ここを間違えると事故につながる注意点」のことです。たとえば一包化調剤なら、「ヒートの切り方」「薬品の確認タイミング」「機械のセット方法」などがキーポイントになります。

キーポイントって、自分でも意識したことなかったかも…。いつの間にかできるようになってたから、何がコツなのかうまく説明できない気がします

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

それ、よくあります。熟練者ほど無意識でやっているので、言語化が難しいんですね。指導前に一度、自分の作業を分解してキーポイントを書き出しておくと、教えるときにスムーズになりますよ

誤解されやすいので先に言うと、キーポイントは「たくさん伝えればいい」というものではありません。1つの作業につき3〜5個程度に絞る方が、新人の頭に残りやすいです。

第3段階では、新人に4回やらせるのが基本です。

  1. 黙ってやらせて、間違いがあれば直す
  2. やらせながら、ステップを言わせる
  3. やらせながら、キーポイントを言わせる
  4. やらせながら、キーポイントの理由を言わせる

「4回もやらせるの?」と思うかもしれませんが、ここを省略すると、新人は「なんとなくできた気がする」で終わってしまいます。理由まで言えるようになって初めて、本当に理解したと判断できます。

第4段階「教えた後をみる」が定着率を左右する

第4段階は、新人を実務につかせた後のフォローです。ここ、迷いやすいところです。

やることは以下の通りです。

  • わからないときに聞く人を決めておく
  • 確かめ方(マニュアルの場所など)を伝えておく
  • 質問しやすい雰囲気をつくる
  • 指導は徐々に減らし、任せていく

特に「聞く人を決めておく」は、思った以上に大事です。

聞く人によって答えが違う、ってよく聞きますよね…。新人も混乱しそう

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

そうなんです。だから、最初に「わからないことがあったら○○さんに聞いてね」と明確に伝えておく。そうすれば、情報のブレを減らせますし、新人も迷わずに質問できます

「大丈夫?」「できる?」という聞き方は避けた方が安全です。新人は「大丈夫です」と答えざるを得ない空気になりがちです。代わりに「質問ある?」「不明なところない?」とオープンに聞く方が、本音を引き出しやすくなります。

ただし、教育担当者の業務が過密になりすぎると、フォローに割く余裕がなくなります。いまの状況だと、指導に十分な時間を確保できていますか。もし難しければ、上司やチームに相談して、教育時間を確保する体制を整えることも検討してみてください。

まとめ:「相手が覚えていないのは、自分が教えなかったのだ」

教え方の4段階の基本概念は、「教えたはずなのに覚えていない」のではなく、「相手が覚えていないのは、自分が教えなかったのだ」という考え方にあります。

厳しく聞こえるかもしれませんが、逆に言えば、教え方を変えれば新人の成長スピードも変わる可能性があるということです。

もちろん、この方法を使えばどんな新人でも必ずできるようになる、とまでは言い切れません。相性や新人側の事情もあります。ただ、「何度言えばわかるんだ」という言葉が出てきそうになったら、一度立ち止まって、自分の教え方を振り返るきっかけにしてもらえればと思います。

次の一歩として
  • 今日教える作業を1つ選んで、キーポイントを3つ書き出してみてください
  • 第3段階の「4回やらせる」を意識して、新人に理由まで言わせてみてください
ポッポ先生

ポッポ先生

より詳しく学びたい方は、TWI-JIの公式研修や、山田紀昭氏の「仕事の教え方」に関する文献、安川康介氏の『科学的根拠に基づく最高の勉強法』(流暢性の錯覚について詳述)も参考になりますよ

参考資料:

  • 山田紀昭 (2020). 仕事の教え方: TWIの仕事の教え方の4段階(解説). Clinical Engineering, 31(7), 602-606.
  • 安川康介 (2024). 『科学的根拠に基づく最高の勉強法』KADOKAWA.(流暢性の錯覚について詳述)
  • 中部産業連盟「TWI監督者訓練 JIコース」https://www.chusanren.or.jp/
  • アイアール技術者教育研究所「TWIの要点解説」https://engineer-education.com/training-within-industry/
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