お昼を食べたのか食べてないのか、もう思い出せない。立ちっぱなしで足がむくんで、帰宅したらソファに倒れるだけ。休みの日は回復に消えて、また月曜日がくる。
ここ、心当たりありませんか。
私も薬局で働いてきた30代の薬剤師ですが、友人の話を聞いていると「休憩が取れないまま何年も働いている」人が思った以上に多いです。しかも本人は「忙しいからしかたない」と飲み込んでしまっている。
でも、はっきり言います。休憩が取れない状態が常態化しているなら、それは仕組みの問題であって、あなたの体力や根性の問題ではありません。
この記事では、休憩が取れない薬局がなぜ危険なのか、「忙しいだけの薬局」と「壊れる薬局」はどこが違うのか、そして現職での交渉方法から転職時の求人票チェックまで、判断の筋道を整理します。体験談ではなく、労働基準法の規定や調剤安全の考え方を根拠に、「次にどう動くか」を一緒に考えていきましょう。
目次
休憩が取れない職場が危険な理由——判断力が落ちるから医療職として危ない

まず法律の話:「忙しかったから」は通用しない
誤解されやすいので先に言うと、休憩を取れなかった理由が「忙しかったから」であっても、それは法律上の免責にはなりません。
労働基準法 第34条のポイント
- 労働時間が6時間超→少なくとも45分の休憩
- 労働時間が8時間超→少なくとも1時間の休憩
- 休憩は労働時間の途中に与える義務あり
- 違反した使用者→6ヶ月以下の懲役 or 30万円以下の罰金(第119条第1号)
ここで押さえたいのは、「休憩を取るように言っていた」という会社側の主張だけでは免責されない点です。実際に休憩が取れていなければ違法になりえます。人員不足が常態化しているなら、使用者は休憩が取れるだけの人員を確保しなければなりません。
でも、うちの薬局は一人薬剤師の時間帯もあって、物理的に休めないんですけど……。

オカメインコ

ポッポ先生
それ自体がオペレーション設計の問題ですね。一人薬剤師で8時間超の勤務なら、休憩中に調剤室を閉める・パート薬剤師を充てるなどの対応が本来は必要です。「人がいないから仕方ない」を受け入れ続けると、法的リスクは会社だけでなく管理薬剤師にも及ぶことがあります。
疲労で「判断の質」が落ちる——これは精神論じゃなく脳の話
ここ、現場だとつい見過ごしがちです。休憩が取れないということは、脳に連続負荷がかかり続けるということ。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、睡眠不足や過労による注意力・判断力の低下が事故リスクの上昇につながると指摘されています。睡眠不足の状態では、脳の前頭葉の活動が極端に低下し、集中力や注意力・判断力に関わる機能がダメージを受けるという報告があります。
薬剤師の仕事は、処方内容の読み取り、用量の確認、相互作用のチェック、疑義照会の判断——どれも「持続的な注意力」を要するタスクです。疲労や休憩不足でこの注意力が低下すれば、調剤ミスのリスクが上がるのは当然の帰結です。
実際、日本薬剤師会の調剤事故対応マニュアルでも、調剤過誤の人的原因のひとつとして「身体的・心理的問題」(疲労・ストレス等)が明記されています。
私ならまず、ここを自分ごととして捉えます。「今日、鑑査でうっかり見落としそうになった瞬間があったか」と振り返ってみてください。それが週に何度も起きているなら、赤信号です。
“忙しい薬局”と”壊れる薬局”の違い

忙しさには2種類ある
「どこの薬局も忙しいですよ」——転職の相談をすると、こう言われることがあります。たしかに処方箋枚数が多い薬局はどこもバタバタします。でも、忙しさの「質」がまるで違う場合がある。ここは区別しないほうが危険です。
| 忙しいけど回る薬局 | 壊れる薬局 | |
|---|---|---|
| 休憩 | シフト制で交代休憩が確保されている | 休憩時間が存在しない/名目だけ |
| ピーク対応 | 繁忙時間帯にパート・応援を増員 | ピークも通常も同じ人数 |
| 残業の性質 | 季節的・一時的(繁忙期のみ) | 毎日1〜2時間の残業が前提 |
| ミス対策 | ダブルチェック体制あり | 一人で調剤→鑑査→投薬 |
| 退職頻度 | 年に数人の自然な入れ替わり | 半年〜1年で人が辞める |
いまの状況だと、「忙しいから仕方ない」と思っていても、実は「壊れる薬局」の特徴にいくつも当てはまっている可能性があります。どうですか?
正直、うちは右の列が3つ以上当てはまるんですが……これはやっぱりマズいですか?

オカメインコ

ポッポ先生
3つ以上当てはまるなら、「忙しい」ではなく「構造的に無理がある」と捉えたほうが安全です。忙しさは一時的なもので乗り越えられますが、構造の問題は個人の努力では解決しません。次のセクションで、まず現職でできる交渉の筋道を整理しますね。
「慣れた」は回復ではない
もうひとつ気をつけたいのが、「最初はきつかったけど慣れた」という感覚です。
逆に言うと、慣れたのではなく、限界のサインを感じなくなっているだけかもしれません。疲労の蓄積は、本人の自覚よりも先に認知機能に影響を与えるという研究報告があります。「もう平気」と思っている状態こそ危ないことがある——ここは覚えておいてほしいです。
現職での交渉ポイント——まず「記録」、次に「伝え方」

いきなり辞めるのは最適解じゃない場合もある
「もう無理だから転職する」と動く前に、ちょっと立ち止まってみませんか。現職で改善できる余地があるなら、転職のコスト(時間・環境変化のストレス・収入の一時的変動)を回避できます。ただし、交渉にはコツがあります。
ステップ1:まず事実を記録する
交渉の土台は「感覚」ではなく「記録」です。私ならまず、以下を2週間〜1ヶ月つけます。
- 実際に休憩を取れた時間(0分の日は「0」と記録)
- 始業・終業の実時間(タイムカードと実態がズレていないか)
- 休憩中に対応した業務(電話番、来局対応など)
- 身体の不調メモ(頭痛、集中力低下、めまい等)
手帳やスマホのメモで十分です。この記録があるだけで、交渉の説得力が段違いに変わります。
ステップ2:伝え方のテンプレ
上司や管理薬剤師に伝えるとき、「休憩が取れなくてツラい」だけだと感情論に聞こえがちです。しないほうが安全なのは、いきなり「労基法違反じゃないですか」と切り出すこと。最初は相談のスタンスが得策です。
伝え方の骨格はこうです:
「事実(記録)+ 影響(安全面)+ 提案(具体策)」
伝え方の例:
「この1ヶ月の記録を見ると、休憩を1時間取れた日が月に3日しかありません。午後の鑑査で集中力が落ちている自覚があり、安全面で不安です。ピークの11〜13時にパートさんを1名追加する、あるいは交代で30分ずつ確実に休める仕組みを試せないでしょうか」
それってつまり、「人を増やしてください」って話ですよね? 経営側が聞いてくれるイメージがないんですが……。

オカメインコ

ポッポ先生
気持ちはわかります。でも、ここで効くのが「安全面」というフレーミングです。調剤過誤が起きれば、法的責任は当事者だけでなく管理薬剤師や開設者にも及びます。コストの話ではなくリスクの話にすることで、経営判断として動きやすくなるケースがあります。ただし、それでも動かない会社なら、次の手段を考える段階ですね。
ステップ3:改善しない場合の相談先
社内で改善されない場合、労働基準監督署に相談するという選択肢があります。相談時には、就業規則のコピーや上記の記録を持参するとスムーズです。
ただし、労働基準監督署は会社全体の法令遵守をチェックする機関なので、個人の個別トラブル解決には必ずしも直結しない点は知っておいてください。
休憩が取れる職場の特徴——オペレーション設計・人員・導線で見る

「休憩が取れる」は結果であって、原因がある
転職を視野に入れるとき、どうですか?「休憩が取れる薬局」を探そうとして求人票の文言だけ見ていませんか。休憩が取れるかどうかは、いくつかの構造的要因で決まります。求人票に書いていない部分こそ確認が必要です。
チェックすべき4つの構造要因
① 薬剤師数と処方箋枚数のバランス
1人あたりの処方箋枚数が1日40枚を超えると、業務に余裕がなくなりやすいという目安があります(あくまで目安で、処方内容の複雑さや在宅業務の有無で大きく変わります)。店舗見学の際に「薬剤師何名体制で1日何枚くらいですか」と聞くのが手堅いです。
② ピーク時間帯の増員体制
常勤の人数だけでなく、「ピーク時間帯にパートや応援がいるか」が分かれ道です。午前の診察終わり〜13時頃が最も混む薬局が多いですが、そこに人が足りていなければ、交代休憩は物理的に不可能になります。
③ 調剤室の導線設計
意外と見落とされがちですが、調剤室のレイアウトが悪いと動線のロスで業務時間が膨らみます。たとえば、分包機と薬品棚が離れている、鑑査スペースが狭くてすれ違いに時間がかかる、など。見学時に「ここで一日動き回るイメージ」を持てるかどうか。
④ 在宅業務の頻度と分担
在宅業務が多い薬局は、外出中のカバーが発生します。在宅専任の薬剤師がいるか、外出中の店舗対応はどう回しているかは必ず確認しておきたいところです。
見学に行っても、ピーク時間帯に見せてもらえなかったら意味ないですよね?

オカメインコ

ポッポ先生
いい指摘です。見学は可能であればピーク帯を希望するか、難しければ「一番忙しい時間帯は何時頃で、その時間帯のスタッフ数は?」と口頭で確認するのが現実的です。エージェント経由でこの質問を投げてもらうのもアリですね。
求人票の「残業少なめ」を疑うチェック項目

「残業少なめ」には定義がない
ここ、迷いやすいところです。求人票に書かれた「残業少なめ」は、法律で定義された表現ではありません。月5時間を「少なめ」と呼ぶ会社もあれば、月20時間でも業界水準より少ないから「少なめ」と表記する会社もあります。だから数字を確認するしかないのです。
求人票で具体的に確認すべき5項目
| 確認項目 | なぜ大事か | どう確認するか |
|---|---|---|
| 月平均残業時間(数字) | 「少なめ」の定義は会社次第 | 具体的に「月何時間ですか」と聞く |
| 固定残業代(みなし残業)の有無 | 含まれている場合、その時間分の残業が前提 | 月何時間分が含まれているか確認 |
| 薬剤師の常勤人数と処方箋枚数 | 1人あたりの負荷がわかる | 店舗ごとの数字を聞く |
| 離職率・平均勤続年数 | 人が定着しない=構造に問題がある可能性 | エージェント経由で確認が無難 |
| 休憩時間の運用方法 | 「60分」と書いてあっても分割・カットの実態がありうる | 「交代制で1時間取れていますか」と直接確認 |
給与が「相場より明らかに高い」求人は立ち止まる
他と比べて明らかに給与が高い求人は、慢性的に人手不足の職場である可能性があります。離職率が高い、業務量が膨大で残業が多いなど、「高給の裏側」を想像する癖をつけたいところです。
これは絶対に裏がある、というわけではなく、確認する動機にしてほしいという話です。
でも、求人票でそこまで聞いたら「面倒な応募者」って思われませんか?

オカメインコ

ポッポ先生
自分で直接聞くのが気まずければ、エージェントに代わりに聞いてもらえばいいんです。「休憩が確実に取れる体制(常勤人数・ピーク時の応援体制)が最優先条件」と最初に伝えておけば、それに合う案件だけフィルタリングしてもらえます。むしろ条件をはっきり言ったほうが、ミスマッチが減って結果的に双方の時間を節約できますよ。
おすすめ薬剤師転職エージェント 2選
用途が違う2社を並べておくと、読者が「自分に合う方」を選びやすくなります。
ファルマスタッフ
待遇・年収を優先して、薬局/ドラッグストア中心に「選択肢を広く比較したい」人向け。 地域密着で“求人票にない情報”まで確認しながら提案してもらえます。
こんな人におすすめ
- 薬局・Dgsの求人を多数比較して、待遇アップの可能性を最大化したい
- 職場の雰囲気や方針など、求人票に出ない情報も踏まえて選びたい
強み(要点)
- 全国対応・地域密着で求人情報の解像度が高い
- 書類作成・面接調整・給与や休日の条件交渉まで手厚い
- 日本調剤グループの教育ノウハウを活かした支援の訴求あり
注意点(デメリット)
- 企業求人は相対的に弱め(企業志望が強い場合は併用が無難)
連絡頻度や希望条件は、最初に「ここまで」と決めて伝えるとストレスが減ります。
薬キャリAGENT
忙しくても効率よく進めたい/まず候補を短時間で作りたい人向け。 非公開求人や条件交渉、裏側情報の確認まで“スピード×実務代行”で進めやすいのが特徴です。
こんな人におすすめ
- 仕事が忙しく、転職活動の手間(調整・交渉)を減らして進めたい
- 求人票だけでは判断できない点(働きやすさ等)も確認してミスマッチを減らしたい
強み(公式が掲示している特徴)
- 最短即日で求人提案(最大10件/派遣は最大5件)
- 非公開求人多数+市場に出ていない募集の有無も個別確認
- 面接日程の調整や条件交渉を代行
- 求人票に出ない“裏側”情報まで調査
※上記は薬キャリAGENT公式の特徴説明に基づく表現です。
注意点(デメリット)
- 提案テンポが速いと感じる場合あり(連絡ペースは最初に指定がおすすめ)
- 企業一本志望なら、企業特化サービスの併用も検討
例外:「残業少なめ」が本当の場合もある
すべての「残業少なめ」が怪しいわけではありません。医薬品卸の管理薬剤師や、処方箋枚数が少なめの門前薬局、マネージャーが応援に入れる体制の中規模チェーンなどは、実際に残業がほぼ発生しないケースもあります。
ただし、「なぜ少ないのか」の理由を確認することが、求人票だけで判断しないための安全装置になります。
まとめ——「普通じゃない」を認めることが、立て直しの第一歩

休憩が取れない状態が続いている薬局で働いているなら、それは根性の問題ではなくオペレーション設計の問題です。そして、疲労による判断力低下は、調剤という仕事の性質上、患者さんの安全に直結します。
「自分が我慢すればいい」で済ませていいラインを、すでに超えている可能性があります。
次の一歩:まずはどれか1つだけ
- 2週間、休憩時間の実態を記録する(何分取れたか、0の日は0と書く)
- 上記の表で「壊れる薬局」に何項目当てはまるか数える
- エージェントに「休憩が取れる体制が最優先」と伝えて、情報だけ集める
3番目は転職を決めていなくてもできます。情報を持っているだけで、「ここにいるしかない」という思い込みが緩みます。
確認すべき一次情報
- 労働基準法 第34条(休憩時間):e-Gov法令検索で原文を確認できます
- 日本薬剤師会「調剤行為に起因する問題・事態が発生した際の対応マニュアル」:調剤過誤の原因分析と対応策が整理されています
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」:疲労・睡眠不足が認知機能に与える影響の根拠があります
- 労働基準監督署:休憩に関する相談は管轄の労基署が窓口です
いまの職場で頑張り続けるのも選択肢です。
でも、比較対象がないまま耐えると「これが普通」と思い込みやすい。
まずは転職サービスで相場と条件を見て、自分の状況を客観視してみてください。応募しなくても大丈夫。判断材料を増やすだけで、気持ちはかなり軽くなります。
残業や休憩の実態は、求人票よりも「現場の運用」の差が大きい領域です。複数の案件を比較しつつ、エージェントに「休憩が取れる体制(人数・ピーク帯の対応)が最優先」と言って絞るのが手堅いです。
あなたの体力と判断力は、あなたのキャリアの土台そのものです。壊してからでは遅い。だから、まず「これは普通じゃない」と認めるところから始めてみてください。


