転職したいけど怖い。そう感じている薬剤師さん、かなり多いと思います。
私の周りでも「求人サイトは開くけど、そこから先に進めない」という声をよく聞きます。ある友人は「転職サイトのタブを開いたまま3ヶ月放置した」と笑っていましたが、笑い話ではなく、それくらい最初の一歩が重いんですよね。
この記事では、まだ応募しなくていい段階でできる「転職準備」を具体的にまとめました。条件の整理、年収相場の確認、スキルの棚卸し、面接対策、そして最初の1社を間違えないための条件づくりまで。怖さの正体を分解して、動ける状態に近づけるのがゴールです。
目次
転職が怖いのは「普通」です──その不安には根拠がある

転職が怖いと感じること自体、おかしなことではありません。むしろ、怖いと思える人のほうが慎重に判断できるタイプだと私は思います。
なぜ怖いのか。ここ、一度ちゃんと言語化してみませんか。
薬剤師の転職が怖い理由は、だいたい次のどれかに当てはまります。
- 失敗したときのコストが大きい:年収が下がる、人間関係がさらに悪化する、通勤が遠くなる……「今より悪くなったらどうしよう」が先に来る
- 比較材料がない:今の職場しか知らないから、自分の市場価値がわからない
- 忙しすぎて考える余裕がない:日々の業務で精一杯で、転職活動に割くエネルギーがない
- 面接が怖い:何を聞かれるかわからない、うまく話せる自信がない
全部当てはまるんですけど……これ、動ける気がしません。

オカメインコ

ポッポ先生
全部同時に解決しなくていいんです。不安って、分解すると一つひとつは対処可能なサイズになりますよ。今日は“応募しないでできること”だけ見ていきましょう。
ここ、迷いやすいところです。「怖い=動けない」と思いがちですが、怖さの中身を分解するだけなら、応募する必要はありません。
ただし、怖いからといって「何もしない」を続けると、比較対象がないまま現状に耐え続けることになります。逆に言うと、情報を集めるだけで、不安の半分くらいは「思い込み」だったと気づけることもあります。
まず”応募しない”でやること3つ──条件メモ・相場確認・スキル棚卸し

「転職活動=応募すること」だと思っていませんか。実はその前段階にやるべきことが3つあります。私ならまずここから手をつけます。
① 条件メモ:「嫌なこと」から逆算する
いきなり「理想の職場は?」と聞かれても困りますよね。そこで、逆から攻めます。「これだけは嫌だ」をまず書き出す。
たとえばこんな項目です。
| 項目 | 書き出す内容の例 |
| 年収 | 「今より下がるのは絶対に嫌」「最低○○万は欲しい」 |
| 通勤 | 「片道1時間超えは無理」「車通勤がいい」 |
| 人間関係 | 「1人薬剤師は避けたい」「教育体制がある職場がいい」 |
| 業務内容 | 「在宅はまだ自信がない」「門前の大型薬局は疲れた」 |
| 働き方 | 「土日どちらかは休みたい」「残業月10時間以内」 |
ポイントは、スマホのメモでいいので「書く」こと。頭の中だけで考えると、堂々巡りになりやすいです。
でも、全部叶う職場なんてないですよね?

オカメインコ

ポッポ先生
そのとおりです。だから優先順位をつけます。”絶対に譲れない条件”と”できれば欲しい条件”を分けておくと、あとで求人を比較するときにブレにくくなりますよ。
② 相場確認:自分の「値段」を知る
ここ、心当たりありませんか。「自分の年収が適正なのかわからない」という状態。
令和6年の賃金構造基本統計調査によると、薬剤師の平均年収は約599万円です(平均年齢40.9歳、経験年数8.8年)。職場別に見ると、調剤薬局の正社員で約490万〜500万円前後、調剤併設型ドラッグストアで約547万円という調査データもあります。
いまの状況だと、こんなズレが起きやすいです。
- 「自分は年収が低い」と思っていたが、実はエリア相場では平均的だった
- 逆に「うちは待遇いいほうだ」と思っていたが、同規模の薬局と比べると低かった
相場を知るだけなら、転職サイトに登録して求人を眺めるだけで十分です。応募しなくて大丈夫。この段階では「自分の年収が市場でどの位置にあるか」を把握するのが目的です。
誤解されやすいので先に言うと、求人票の年収は「上限値」が書かれていることが多いです。たとえば「年収450万〜650万」と書いてあっても、実際のスタートラインは下限寄りになるケースが一般的です。
③ スキル棚卸し:「できること」を書き出す
転職が怖い人ほど、自分のスキルを過小評価しがちです。でも、毎日やっている業務の中に「転職市場で評価されるスキル」が隠れていることは多い。
たとえば、こんなことはありませんか。
- 処方箋の枚数が多い店舗で回してきた(=処理スピードと正確性)
- 在宅の患者さんを担当したことがある(=在宅経験は転職市場で評価されやすい)
- 新人の教育を任されている(=マネジメント経験の入口)
- かかりつけ薬剤師の指名がある(=患者対応力の証明)
これをA4用紙1枚でいいので書き出してみてください。転職するかどうかは関係なく、「いま自分が持っているもの」を可視化するだけで、気持ちの整理になります。
職歴・年齢が不安な人向け:不利になりにくい見せ方

「転職回数が多いから不利になるんじゃないか」「もう30代後半だし……」。こういう不安、周りの友人からもよく聞きます。
結論から言うと、薬剤師の転職市場は他の職種に比べるとまだ有利な状況です。2025年9月時点の「医師・歯科医師・獣医師・薬剤師」の有効求人倍率は1.87倍。全職業平均の1.10倍を大きく上回っています。つまり、求職者1人に対して約2件の求人がある計算です。
ただし──ここは押さえたいポイントです。「薬剤師ならどこでも受かる」という時代は変わりつつあります。厚生労働省の推計では、薬剤師数は2045年に約45万8,000人に達し、供給過剰になる可能性が指摘されています。「資格があるから安泰」ではなく、「何ができるか」が問われる方向に進んでいます。
転職回数が多い場合の見せ方
転職回数が多いこと自体は、薬剤師の場合そこまで致命的ではありません。ただ、面接では「なぜ転職を繰り返したのか」は必ず聞かれます。
私ならまず、各転職に一貫したテーマを見つけることから始めます。たとえば「門前薬局→在宅対応の薬局→病院」と移っているなら、「患者さんとの関わりを深めたいという軸があった」とまとめられます。
正直、人間関係が理由で辞めたこともあるんですが……それも言わないといけないですか?

オカメインコ

ポッポ先生
ネガティブな理由はそのまま伝えないほうが安全です。“チームで連携しながら働ける環境を求めた”のように、前向きな表現に変換しておきましょう。嘘をつくのではなく、事実の中からポジティブな側面を選んで伝えるイメージですね。
年齢が気になる場合
30代後半〜40代の転職では、即戦力として「管理薬剤師の経験」「在宅対応の経験」「マネジメント経験」が評価されやすい傾向があります。逆に、これらがなくても「今から積める環境に移りたい」という意思が伝わればマイナスにはなりにくいです。
ただし、50代以降の転職は選択肢が狭まる傾向があるのも事実です。年齢が気になる方ほど、「今のうちに相場だけでも確認しておく」ことをおすすめします。
面接が怖い人向け:よく聞かれる質問リストとテンプレ回答

面接が怖い。これ、転職が怖い理由のなかでもかなり大きいですよね。
でも、薬剤師の転職面接で聞かれることは、実はだいたいパターンが決まっています。私ならまず以下の6つを押さえておきます。
薬剤師の面接で頻出の質問と回答のポイント
① 自己紹介をお願いします
→ 1分以内で、卒業大学・経験年数・直近の業務内容・応募の動機をコンパクトに。長く話しすぎないのがコツです。
② 転職理由は何ですか?
→ ネガティブな理由(人間関係、給与不満)はポジティブに言い換える。「より専門性を高められる環境で働きたい」「在宅医療の経験を積みたい」など、転職先でやりたいことに焦点を合わせます。
③ 志望動機を教えてください
→ その職場の特徴や方針を調べたうえで、「自分のやりたいこと」と「その職場だからこそできること」を結びつけます。「どこでもいい」と思われるのが一番まずいです。
④ これまでの経歴・業務内容を教えてください
→ 処方箋枚数、担当科目、在宅の有無、管理薬剤師経験など、数字で伝えられるものは数字で。「1日平均80枚の処方箋を3名体制で対応」のように具体的だと説得力が出ます。
⑤ 長所と短所は?
→ 短所は「改善のために何をしているか」とセットで伝えます。「慎重すぎるところがありますが、チェックリストを活用して効率とのバランスを取るようにしています」のように。
⑥ 何か質問はありますか?(逆質問)
→ ここが意外と差がつくポイント。「入社までに勉強しておくべきことはありますか」「研修体制について詳しく教えてください」など、前向きな姿勢が伝わる質問を1〜2個準備しておきましょう。
頭ではわかるんですけど、本番になると頭が真っ白になりそうで……

オカメインコ

ポッポ先生
丸暗記しようとすると逆に飛びやすいです。“この質問にはこのテーマで答える”くらいのざっくりした方針だけ決めておいて、あとは会話のなかで肉付けするほうが自然に話せますよ。友人相手に練習するのも効果的です。
現場だとここで詰まりがちですが、面接官も「完璧な受け答え」を求めているわけではありません。薬剤師の面接は、一般企業のような圧迫面接は少ない傾向にあります。「この人と一緒に働けそうか」を見ているので、誠実に答えることが一番の対策です。
最初の1社を間違えない条件のつくり方

ここまでの準備ができたら、いよいよ「どんな職場を選ぶか」の基準づくりです。
最初の1社選びで失敗しやすいのは、「なんとなく良さそう」で決めてしまうパターン。条件メモで書き出した「絶対に譲れないこと」をここで使います。
求人票で確認すべき5つのチェックポイント
- 年収の内訳:基本給と手当の比率を確認する。手当込みで高く見えても、基本給が低いと賞与に響きます
- 薬剤師の人数体制:1人薬剤師なのか、複数体制なのか。休みの取りやすさに直結します
- 処方箋の枚数と科目:「忙しさ」の具体的な指標になります
- 研修・教育体制の有無:特にキャリアチェンジ(薬局→病院など)の場合は確認必須
- 在宅対応の有無と頻度:2025年の薬機法改正で対人業務の比重が増しています。在宅の経験が今後のキャリアに影響する可能性があります
求人票だけじゃ本当のことわからなくないですか?

オカメインコ

ポッポ先生
おっしゃるとおりです。求人票は”広告”の側面があるので、そこだけで判断しないほうが安全です。転職エージェント経由なら内部情報を教えてもらえることもありますし、口コミサイトを参考にするのも一つの手段です。ただし口コミは退職者の声に偏りやすい点は差し引いて読んでくださいね。
どうですか? ここまでの内容で、「とりあえず応募しなきゃ」という焦りは少し和らいだのではないでしょうか。
もう一つ、これは友人の受け売りですが──「最初の1社は”練習”のつもりで受けると気が楽になる」という話があります。本命じゃない求人で面接の雰囲気を掴んでおくと、本命のときに落ち着いて臨めるそうです。ただし、練習とはいえ相手の時間をもらっている以上、失礼のないように臨むのは当然のマナーです。
まとめ:応募しなくても、動いた分だけ不安は小さくなる

ここまで読んでいただいて、一つ伝えたいことがあります。
転職が怖いと感じている時点で、あなたは十分に真面目で慎重な人です。勢いで飛び出すよりも、「応募しない転職活動」から始めるほうが、あなたに合っている可能性が高い。
今日からできることを3つだけ挙げるなら──
- 条件メモを書く(スマホのメモで5分)
- 転職サイトで年収相場を確認する(登録して眺めるだけ)
- 自分のスキルを書き出す(A4用紙1枚)
いまの職場で頑張り続けるのも、もちろん立派な選択です。
でも、比較対象がないまま耐えると「これが普通」と思い込みやすい。まずは転職サービスで相場と条件を見て、自分の状況を客観視してみてください。
応募しなくても大丈夫。判断材料を増やすだけで、気持ちはかなり軽くなります。
不安の正体がわかれば、「怖い」は「慎重に進められる」に変わります。焦らなくていい。でも、止まったままでいる必要もありません。
参考情報(一次情報の確認先)
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」──薬剤師の平均年収データ
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年9月分)」──薬剤師の有効求人倍率
- 厚生労働省「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 とりまとめ」──将来の薬剤師需給推計
- 中央社会保険医療協議会「第24回医療経済実態調査」──一般薬剤師・管理薬剤師の年収データ
※年収や求人倍率は調査時点の数値であり、地域・職場・個人の経験によって大きく異なります。あくまで相場を把握するための参考としてください。


