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薬剤師が退職を切り出せないときの手順書──揉めない辞め方は「準備」で9割決まる

退職を決めたのに、言い出せない。そんな状況、ありませんか。

「明日こそ言おう」と思いながら、朝になると投薬の準備に追われ、昼は監査で頭がいっぱいで、気づけばまた一日が終わっている。私自身、退職を伝えるまでの期間がいちばんしんどかったと感じています。実際、退職は「言えば終わり」ではなく、言うまでの心理的な負荷こそが最大のハードルです。

この記事では、退職を切り出す勇気が出ない薬剤師に向けて、感情に頼らず「手順に落とす」ことで退職を安全に進める段取りだけを書きます。引き止めへの対処、法的な根拠、どうしても自分では無理なときの選択肢まで、一通り整理しました。読み終えた後に「やるべきことリスト」が頭にある状態を目指しています。

退職が言い出せないのは「弱さ」ではなく脳の正常反応

まず前提として、退職を切り出せない自分を責める必要はありません。

人間の脳は現状を維持しようとする傾向があります。心理学では「現状維持バイアス」と呼ばれるもので、変化にともなうリスクを実際より大きく感じてしまう認知の癖です。退職は「人間関係の変化」「収入の不確実性」「上司との対立リスク」を一気に抱えるイベントなので、脳が回避モードに入るのはむしろ正常な反応です。

でも…周りはサクッと辞めてるように見えるんですけど…

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

見えるだけですね。退職を経験した人のほとんどが「伝えるまでが一番つらかった」と振り返ります。サクッと辞めたように見える人も、水面下ではかなり準備しているケースが多いです。

ここ、心当たりありませんか。「辞めたい」とは思っているのに、いざ上司の顔を見ると言えなくなる。それは意志の弱さではなく、脳の防御反応です。だからこそ、感情ではなく手順で動くのがいちばん安全です。

ただし、退職をためらう理由が「本当にこの職場を離れるべきか迷っている」場合は、話が変わります。迷いがあるうちに退職を切り出すと、引き止められたときに揺れてしまい、かえって状況がこじれます。「辞める意思は固まっている。でも言い出せない」という人に向けて、ここから先を書いていきます。

退職までの全体像──4つのフェーズを把握する

退職は一つの「プロジェクト」と捉えたほうが、気持ちが楽になります。全体像が見えると、いま自分がどこにいるかがわかるからです。

私ならまず、全体を4つのフェーズに分けて考えます。

フェーズやること目安の期間
①準備就業規則の確認、退職日の逆算、引き継ぎ資料の下書き退職希望日の3〜4か月前
②意思表示直属の上司に口頭で伝える→退職届を提出就業規則に従い2〜3か月前
③引き継ぎ業務の棚卸し、後任への引き継ぎ、患者情報の整理退職日まで
④最終日備品返却、書類受取(離職票・源泉徴収票等)、挨拶退職日当日〜退職後

正直、3〜4か月前から準備って長くないですか? もう限界なんですけど…

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

気持ちはわかります。ただ、薬剤師は後任の採用に時間がかかる職種です。一般企業なら1か月前で足りることもありますが、薬局では後任の薬剤師が見つかるまでに数か月かかることも珍しくありません。3か月後に設定した退職日が、後任未定でさらに延長…というケースも現実にあります。準備期間を取るほど引き止めや揉めごとの確率が下がるので、逆に言うと、期間に余裕があるだけで交渉力が上がるんです。

ここで押さえたいのは、法的には民法第627条第1項により、期間の定めのない雇用契約であれば退職の申入れから2週間で雇用契約は終了します。就業規則に「1か月前」「2か月前」と書いてあっても、法的には2週間で退職は成立するというのが通説的な解釈です(ただし、学説には一定期間の予告規定を有効とする見解もあり、確定的な判例があるとは言い切れません)。

とはいえ、薬剤師業界は狭い世界です。地域の薬剤師会や医薬品卸の担当者経由で前職の関係者と再会することは珍しくありません。法律上の権利だけを振りかざして2週間で辞めると、その後のキャリアに影響が出るリスクがあります。「法的には2週間。でも薬局の実務的には2〜3か月前が安全ライン」──この二重構造を頭に入れておくと、判断がしやすくなります。

切り出す「前」に準備する3つのこと

退職を伝える前に、次の3点だけは確認しておきましょう。現場だとここで詰まりがちです。

① 就業規則の退職規定を確認する

まず、自分の会社の就業規則で「退職の申出は◯か月前まで」と何日前が指定されているかを確認します。社内ポータルか、人事部門に聞けば手に入ります。

ここ、一般企業の感覚で考えると判断を誤りやすいところです。一般企業では「1か月前」が多いですが、薬局業界では「2か月前」「3か月前」が就業規則に明記されていることが珍しくありません。実務上も、後任薬剤師の採用→引き継ぎ→患者対応の安定化まで考えると、最低2〜3か月はかかるのが現実です。

管理薬剤師の場合はさらに事情が複雑です。管理薬剤師の交代には保健所への届出が必要になります。加えて、地域支援体制加算やかかりつけ薬剤師指導料などの算定要件には「管理薬剤師の在籍期間」が関わっているため、あなたが辞めることで加算が算定できなくなるリスクを会社が懸念します。管理薬剤師なら3か月以上前を見ておいたほうが安全です。

いまの状況だと、就業規則を見ずに退職を切り出してしまう人が意外と多いです。「来月末で退職したいです」と言ったときに、「うちは3か月前申告だよ」と返されると、それだけで気持ちが折れます。先に確認しておくだけで、会話のシミュレーションがしやすくなります。

② 退職日から逆算してスケジュールを引く

退職希望日を仮決めし、そこから逆算して「いつまでに何をするか」をカレンダーに落とします。

たとえば「3月末退職」を希望するなら、就業規則が3か月前申告であれば、遅くとも12月末までに上司へ伝える必要があります。引き継ぎの準備期間や有給消化を入れると、11月〜12月上旬に退職を切り出すのが現実的です。繁忙期(インフルエンザシーズンや花粉症シーズン)や棚卸しの時期と重ならないかも確認しておきましょう。

③ 引き継ぎ資料の下書きを作る

退職を伝える前に、引き継ぎ資料のたたき台を作っておくと、2つのメリットがあります。

一つは、「この人はちゃんと考えて辞めるんだ」と上司に伝わること。もう一つは、「引き継ぎが回らないから辞めさせない」という引き止めの根拠を先につぶせることです。

具体的には、自分が担当している在宅患者のリスト、施設との連携状況、独自に作った業務マニュアル(あれば)、棚卸し関連のタスクなどを簡単にまとめておくだけで十分です。完璧でなくて構いません。「引き継ぎを考えています」という姿勢が見えること自体に意味があります。

引き継ぎ資料まで作ってから言うの、大変すぎません?

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

完璧な資料は不要です。A4で1〜2枚の箇条書きレベルでOK。「担当業務と進行中の案件の一覧」だけでも、退職交渉のときにまったく違う印象になりますよ。

伝え方のテンプレ──短く・理由は薄く・感情を乗せない

ここ、迷いやすいところです。退職の伝え方には、守ったほうがいいルールがあります。

基本方針は「報告」であって「相談」ではない

「退職しようか迷っているんですが…」と切り出すと、相談モードに入ってしまいます。上司は「じゃあ一緒に考えよう」と返してきますし、迷いがあると見れば引き止めにかかります。

伝えるときは、「退職することを決めました」という報告のトーンが基本です。誤解されやすいので先に言うと、報告=冷たい態度、ではありません。丁寧だけど揺れない、というバランスが大切です。

伝え方の型(例)

以下は一般的な伝え方の型です。

「お忙しいところ恐れ入ります。お伝えしたいことがありまして、少しお時間いただけますでしょうか。──実は、◯月末をもって退職させていただきたいと考えております。引き継ぎについてはしっかり対応いたしますので、ご相談させてください」

ポイントは3つです。

  • 短くまとめる:最初の切り出しは30秒以内が目安。長いと防衛反応を引き出します。
  • 理由は「一身上の都合」で十分:詳しい理由を言えば言うほど、そこを突かれます。「新しい環境で挑戦したい」程度のふんわりした理由が、実は一番つぶしにくい。
  • 感情を乗せない:「実はずっと辛くて…」と感情を出すと、上司も感情で返してきます。淡々と、でも礼儀正しく。

どうですか? シンプルに見えますが、事前に一度声に出して練習しておくと、当日の緊張がかなり違います。車の中やお風呂でいいので、口に出す練習を一回だけやっておくことをおすすめします。

タイミングと場所

退職の意思表示は、直属の上司に、1対1の場で伝えるのが原則です。調剤薬局であれば管理薬剤師、自分が管理薬剤師であればエリアマネージャーや上長にあたる人です。直属の上司を飛ばしてさらに上に先に伝えるのはマナー違反とされることが多いので、ここは順番を守ったほうが安全です。

タイミングは、業務が落ち着いている時間帯を選びます。「少しお時間いただけますか」と事前にアポを取る形が無難です。昼休みや終業後など、他のスタッフがいない時間帯がベターです。

うちの薬局、常に人がいて1対1の時間なんてないんですけど…

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

それなら「業務後に15分だけお時間いただけませんか」とメッセージを入れてから伝える方法もあります。物理的に場所がなければ、退勤後に近くのカフェや駐車場で話す人もいます。大事なのは、他のスタッフに聞かれない環境を確保することですね。

引き止めパターン別の返し方

退職を伝えると、ほぼ確実に引き止めがあります。これは上司の仕事でもあるので、引き止められること自体は想定内と思っておいてください。問題は、そこで心が折れないための「返し方」を事前に用意しているかどうかです。

パターン①「給与を上げるから残ってくれ」

待遇改善を提示してくるパターンです。しないほうが安全なのは、「じゃあ具体的にいくらですか?」と交渉モードに入ること。退職理由が給与だけなら検討の余地がありますが、多くの場合、退職を決意した本当の理由は給与以外にもあるはずです。

💬 返し方の例:「ありがたいお話ですが、給与面だけの理由ではないので、お気持ちだけいただきます」

注意点として、口頭での待遇改善の約束は実現しないケースが少なくありません。もし本気で検討するなら、書面での条件提示を求めるのが鉄則です。ただし、一度「検討します」と答えると撤回しにくくなるので、意思が固まっているなら初回で断るほうが双方にとって親切です。

パターン②「あなたがいないと回らない」──情に訴える

人手不足の薬局で特に多いパターンです。「あなたがいないとシフトが回らない」「患者さんが困る」といった訴えかけです。

ここ、心当たりありませんか。責任感が強い薬剤師ほど、ここで引っかかります。

冷静に考えると、人員の確保は組織の責任であって、個人の責任ではありません。「感謝と退職は別もの」です。

💬 返し方の例:「これまで一緒に働けたことにはとても感謝しています。ただ、退職の意思は変わりません。引き継ぎは誠意を持って対応いたします」

パターン③「辞めるなら損害賠償」「後任が見つかるまで認めない」──脅し・拒否

まれにですが、強硬な引き止めに遭うケースがあります。

法的な事実を整理すると、期間の定めのない雇用契約では、労働者は退職の意思表示から2週間で雇用契約を終了できます(民法第627条第1項)。会社には退職を拒否する権限はありません。「退職届を受け取らない」と言われても、意思表示が到達していれば法的には退職は成立します。

また、通常の退職で損害賠償を請求され、それが裁判で認められるケースは非常にまれです。悪質な無断欠勤や機密情報の持ち出しなど、よほどの事情がない限り、退職自体が損害賠償の理由にはなりません。

ただし、退職届を出してから2週間の間は勤務義務が残ります(有給休暇の消化を除く)。この期間を無断で欠勤すると、それは別の問題になりえます。

💬 返し方の例:「法的な権利として退職を申し入れます。引き継ぎには最大限協力しますので、退職日についてご相談させてください」

脅しってほんとにあるんですか? 怖すぎるんですけど…

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

多くの職場ではそこまでいきません。ただ、ゼロではないので知識として持っておくことに意味があります。法的根拠を知っているだけで、冷静に対処できるようになります。それでも不安が強いなら、次のセクションで紹介する第三者の力を借りる選択肢もありますよ。

どうしても自分では無理なケースの選択肢

ここまで読んで、「それでも無理」と感じた方もいると思います。その感覚は否定しません。職場のハラスメントが深刻だったり、上司との関係が極度に悪化していたりする場合、自力での退職交渉が現実的でないケースは確かにあります。

その場合の選択肢を整理しておきます。

① 総合労働相談コーナー(厚生労働省管轄・無料)

都道府県の労働局や労働基準監督署に設置されている窓口です。退職に関するトラブルを含め、労働問題全般について匿名で相談できます。「まず何をすればいいかわからない」という段階なら、ここが最初の窓口になります。厚生労働省のサイトから最寄りの窓口を検索できます。

② 弁護士への相談

退職を拒否された、損害賠償をちらつかされたなど、法的な対応が必要になった場合は弁護士が適切です。法テラス(日本司法支援センター)では、収入要件を満たせば無料相談が可能です。

③ 退職代行サービス

自分で退職を伝えること自体が難しい場合、退職代行サービスを使う選択肢もあります。ただし、注意点があります。弁護士資格を持たない退職代行業者は、あくまで「意思の伝達」しかできず、退職条件の交渉(有給消化の交渉や未払い賃金の請求など)を行うと弁護士法に抵触する可能性があります。交渉が必要な場合は、弁護士が運営する退職代行サービスか、労働組合が運営するサービスを選ぶのが安全です。

④ 内容証明郵便での退職届送付

対面で伝えることが困難な場合、退職届を内容証明郵便で送付する方法があります。「退職の意思表示が会社に到達した」ことを証明できるため、「届いていない」「聞いていない」というトラブルを防げます。

退職代行や内容証明は「最終手段」であって、使えば必ず円満になるわけではありません。薬剤師業界の特性として、同じ地域で働き続ける場合に前職の関係者と接点が残ることは珍しくありません。可能な範囲では、自分で伝えて引き継ぎを丁寧に行うほうが、長い目で見ると安全です。「可能な範囲で」が大事で、心身の健康を壊してまで円満にこだわる必要はありません。

退職代行って使ったらもう元の職場の人とは気まずくなりますよね…?

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

率直に言えば、関係性は変わる可能性が高いです。ただ、自力で切り出せない状態が長期化して体調を崩すほうがリスクは大きい。「自分でやる」が理想だけど、「使ってでも辞める」が必要な場面もあります。個別事情によるので、迷ったらまず公的相談窓口に聞いてみるのがいちばん確実ですね。

まとめ:揉めない退職は「準備」で決まる

最後に、この記事のポイントを整理します。

退職を切り出せないのは、脳の正常な防御反応です。だからこそ、感情ではなく手順で動くのがいちばん安全な方法です。

具体的には、次のステップを踏みます。

  1. 就業規則の退職規定を確認する(薬局は2〜3か月前が一般的)
  2. 退職日から逆算してスケジュールを引く
  3. 引き継ぎ資料の下書きを作る(A4で1〜2枚でOK)
  4. 上司に「報告」のトーンで、短く、淡々と伝える
  5. 引き止めには事前にパターン別の返し方を準備しておく
  6. 自力で難しい場合は、公的相談窓口や専門家を頼る

退職を切り出す前に、次の職場の情報を持っておくだけで、心の余裕がまったく違います。「いつでも動ける状態」を作ることが、退職交渉の難易度を下げる最大のコツです。転職サービスで相場や候補を見ておくだけでも、気持ちの支えになります。

そして、個別の事情が複雑な場合は、一人で抱え込まないでください。厚生労働省の総合労働相談コーナー(無料・匿名可)や法テラスなど、公的な相談先は想像以上に身近にあります。

退職は終わりではなく、次のキャリアへの入口です。淡々と、でも丁寧に。段取りさえ整えれば、退職は思っているほど怖いものではありません。


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