「外国人の患者さんが来局したとき、正直どうしたらいいか分からなくて…」
そんな声、私もよく耳にします。2024年の訪日外国人数は約3,687万人と過去最高を更新しました。観光地に限らず、どの薬局でも外国人患者さんに対応する機会は確実に増えています。
ここ、心当たりありませんか? 言葉が通じない不安から、つい身構えてしまう。でも相手も同じように困っているはずです。
- 外国人対応に使える3つの無料ツール(指差し・翻訳アプリ・医療通訳)
- それぞれの「使いどころ」と「限界」
- 意外と使える「やさしい日本語」という選択肢
目次
指差しツール|まず揃えておきたい「言葉なしで伝わる」基本装備

外国人対応の第一歩として、私ならまず指差しツールの準備から確認します。イラストや多言語表記を指で示すだけで、基本的なやりとりができるからです。
でも、指差しツールって種類が多すぎて、どれを選べばいいか分からないんですよね…

オカメインコ

ポッポ先生
確かにそうだね。自治体や薬剤師会が作成したものがいくつかあるよ。用途に合わせて選ぶのがコツだね
おすすめの指差しツール一覧
- 対応言語:9言語(2024年に5言語追加)
- OTC対応に強く、最新版が充実
- 英語・中国語・韓国語・ベトナム語・タイ語など
- 対応言語:4言語
- 症状確認・服薬説明が網羅的
- 薬袋作成支援ツールも用意
- 対応言語:6言語
- 問診表・薬袋シールまで対応
- 英語・韓国語・中国語・タガログ語・ポルトガル語・スペイン語
指差しツールの限界
ただし、指差しツールには限界もあります。「こちらが伝える」ことには強いのですが、「患者さんの質問を聞き取る」のは難しい。ここ、迷いやすいところです。だからこそ、次に紹介する翻訳アプリとの併用をおすすめします。
翻訳アプリ|双方向のやりとりを可能にするツール

指差しツールで基本説明ができたら、患者さんからの質問には翻訳アプリで対応します。
翻訳アプリって、医療用語もちゃんと訳せるんですか? 正直、怖くないですか?

オカメインコ

ポッポ先生
そこは注意が必要だね。旅行会話レベルなら精度は高いけど、専門用語は誤訳のリスクがある。重要な説明には、次のセクションで紹介する医療通訳と組み合わせるのが安全だよ
VoiceTra(ボイストラ)がおすすめの理由
私が現場で使っているのは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が開発した「VoiceTra」です。神奈川県薬剤師会でも紹介されています。
VoiceTraの特徴
- 31言語対応
- 無料(広告・課金なし)
- 音声入力→翻訳→音声出力まで可能
- 「逆翻訳」機能で誤訳の確認ができる
逆に言うと、VoiceTraは「旅行会話向け」として開発されているため、医療専門用語の精度には限界があります。誤解されやすいので先に言うと、翻訳アプリは「完璧なコミュニケーション」ではなく「最低限の意思疎通」のためのツールです。
医療通訳サービス|どうしても解決しないときの最終手段

指差しツールと翻訳アプリでも解決しない場合、または副作用説明など重要な内容を確実に伝えたい場合は、医療通訳サービスを使いましょう。
医療通訳って、高額なイメージがあるんですけど…薬局で使えるんですか?

オカメインコ

ポッポ先生
AMDA国際医療情報センターなら無料で利用できるよ。薬局からの相談も受け付けているので、連絡先は控えておくといいね
AMDA国際医療情報センター
- 電話番号:03-6233-9266
- 対応時間:月〜金 10:00〜15:00(土日祝休み)
- 対応言語:8言語(英語、中国語、韓国語、タイ語、ベトナム語、スペイン語、ポルトガル語、フィリピン語)
- 料金:無料(寄付で運営)
言語によって対応できる曜日が決まっているので、公式サイトで事前確認しておくのがおすすめです。また、「やさしい日本語」での対応も可能です。
注意点
時間外や土日祝は対応していない点に注意が必要です。緊急性がある場合は、都道府県の医療通訳派遣事業や、厚生労働省の「夜間・休日ワンストップ窓口」の利用も検討してください。
見落とされがちな「やさしい日本語」という選択肢

ここまでツールを紹介してきましたが、意外と知られていない方法があります。「やさしい日本語」です。
どうですか? 外国人対応と聞くと、つい「英語で話さなきゃ」と思いがちですが、法務省の調査では在留外国人の約8割が日常会話で日本語を使えると回答しています。

ポッポ先生
やさしい日本語のコツは3つ。一文を短くする、尊敬語・謙譲語を避ける、オノマトペ(ズキズキ、ムカムカなど)を使わない。これだけで伝わりやすさは大きく変わるよ
言い換え例
- ✕「お薬手帳はお持ちでしょうか?」
- ◯「くすりの手帳、ありますか?」
東京都と順天堂大学が連携して「医療×やさしい日本語」の動画教材を無料公開しています。薬局向けの事例も含まれているので、時間があれば一度見ておくと役立ちます。
英語版「くすりのしおり」も活用を

服薬指導の際、英語版の薬情があると便利です。くすりの適正使用協議会が提供している「くすりのしおり」の英語版は、現在10,000種以上をカバーしています。
使い方は簡単で、日本語版を検索→左上の「英語版」ボタンをクリックするだけ。日本語版と対比しながら説明できるので、私自身も重宝しています。
まとめ|「完璧」より「最低限」の準備を

外国人患者対応で大切なのは、「完璧に英語を話せること」ではありません。指差しツール、翻訳アプリ、医療通訳サービスの3つを準備しておき、状況に応じて使い分けること。そして、意外と使える「やさしい日本語」も選択肢に入れておくこと。
- 大阪府の外国人対応マニュアル(9言語版)をダウンロード
- VoiceTraをスマホにインストールしておく
- AMDA国際医療情報センターの連絡先(03-6233-9266)を薬局内に掲示

ポッポ先生
言語の違いで適切な医療を受けられない人を減らすために、私たち薬剤師にできることは確実にあるよ。まずは小さな準備から始めてみてね
参考資料・確認先(一次情報)
- 大阪府「薬局での外国人対応マニュアル」
- VoiceTraサポートページ(NICT)
- AMDA国際医療情報センター
- くすりのしおり(くすりの適正使用協議会)
- 医療×「やさしい日本語」研究会
- 厚生労働省「外国人患者を受け入れる医療機関リスト」


