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一包化のライン色に「正解」はある?現場のコンセンサスと、変更時の“安全な”判断軸【赤・黄・青・黒】

「朝は赤でいいんですよね?」

転職してきたばかりの薬剤師さんにこう聞かれて、一瞬答えに詰まった経験はありませんか? あるいは、ヘルプで行った店舗の分包機の設定を見て「えっ、夕食後が緑!?」と驚いた経験があるかもしれません。

一包化のラインの色(用法ごとの色分け)。これ、法律で決まっているわけではないので、薬局や病院ごとに微妙な“ローカルルール”が存在しています。

「じゃあ好きにしていいの?」というと、そう単純な話ではありません。実は、業界内である程度の「コンセンサス(合意)」は形成されつつあります。今回は、千葉県薬剤師会の調査や論文データ、さらにSNSで行われた現役薬剤師によるアンケート結果なども交えながら、私たちが現場で迷ったときに立ち返るべき「判断軸」と、絶対に踏んではいけない「変更のリスク」について整理します。

どうですか? 今、あなたの薬局の「寝る前」の色、即答できますか?

業界の「暗黙の了解」? 調査データに見る標準カラー

まず、私たちが「基準」として参照すべきデータから見ていきましょう。現場の肌感覚としても、一番多いパターンはこれではないでしょうか。

「朝=赤、昼=黄、夕=青、寝る前=黒」

この配色の根拠としてよく引用されるのが、2016年の千葉県における調査と、その後に全国規模のWebアンケートをもとにまとめられた2021年の論文(※1, ※2)です。

データで見る「採用率」の現実

2016年の千葉県薬剤師会雑誌に掲載された調査(※1)によると、分包紙のライン色は以下のような割合になっています。

用法1位の色(採用率)2位の色3位の色
赤系 (72.3%)無し (18.4%)青系 (7.8%)
黄系 (45.2%)無し (24.1%)青系 (19.7%)
青系 (60.1%)無し (18.7%)黒系 (11.0%)
寝る前黒系 (35.9%)無し (33.5%)紫系 (17.1%)
*(※数値は薬局における調査結果)*

圧倒的に「朝は赤」ですね。信号機や太陽のイメージとも合致しますし、ここは揺るぎないトップです。夕方の青も6割と強い。
一方で、「昼」と「寝る前」は少し票が割れています。「寝る前」に関しては、黒派と「色無し(ラインなし)」派が拮抗しており、紫という層も一定数います。

SNSでも証明された「現場のコンセンサス」

公的な調査だけでなく、SNS(X/旧Twitter)上でも現役薬剤師を対象とした興味深いデータがあります。
2022年に薬剤師のわたなべさん(@a_w_329)氏が実施したアンケート(※3)では、「過去勤めた薬局での多かった色」について数千票規模の回答が集まりました。

その結果を整理すると以下のようになります。

用法1位2位以下の傾向
赤系圧倒的多数(約8割)が赤を選択。他を大きく引き離す結果に。
黄系黄色が最多だが、「色なし」や「青」という回答も一定数あり。
青系過半数が青を選択。「色なし」「黒」が続く。
寝る前黒系票が割れる傾向。「黒」が最多だが、「色なし」「紫」も多い。

この結果は、前述の千葉県の調査データと驚くほどリンクしています。
論文などの硬いデータだけでなく、こうしたSNS上の「現場のコンセンサス」からも、「朝赤・昼黄・夕青・眠前黒」が、地域や世代を超えた事実上の標準(デファクトスタンダード)であることが裏付けられています。

えーっ、やっぱり朝が赤、昼は黄色、夕が青、就寝前が黒で決まりじゃないですか。これだけ差があるなら、もう全薬局これで統一しちゃえば楽なのに…

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

そう思いますよね。実際、論文(※2)のアンケートでも『統一に賛成』という声は66.2%と過半数を超えています。転居や災害でかかりつけが変わったときに、色が違うと誤飲の元になりますからね。ただ、『統一しないほうがいい理由』も現場にはあるんです

「統一」が正義とは限らない? 現場でハマる判断の落とし穴

ここ、現場だと非常に悩ましいポイントです。
私なら、「世の中の標準はこうだから」という理由だけで、既存患者さんのライン色を安易に変更することは絶対にしません。

なぜなら、患者さんにとっては「今の色」こそが「正解」だからです。

「変更」自体が服薬エラーの引き金になる

想像してみてください。長年「寝る前=緑」で飲んでいた高齢の患者さんに、ある日突然「業界標準は黒なので、今日から黒にしますね」と渡したらどうなるでしょうか?
「あれ? 今日の分の薬が入ってない」と勘違いされたり、「黒は朝だと思っていた(思い込み)」で飲み間違えたりするリスクが跳ね上がります。

実際、薬局の現場では以下のような「例外」に頻繁に出くわします。

  • 機械の仕様: 分包機にセットされているインクリボンの色が4色しかない(緑が入っていて黒がない等)。
  • 病院との連携: 門前の病院が特殊な色分けをしており、それに合わせている。
  • 患者の個別事情: 「赤は危険な薬に見えるから嫌だ」という拒否感。

でも…それだといつまで経っても統一できないですよね? 引っ越してきた患者さんが『前の薬局と色が違う!』って怒るかもしれませんし…

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

その通りです。だからこそ、『新規なら標準カラー』『継続なら現状維持』という使い分け(ダブルスタンダード)が必要になるんです。ここを柔軟にやらないと、クレームや誤薬に直結しますよ

誤解されやすいので先に言うと、私が言いたいのは「統一するな」ではなく、「目の前の患者さんの認知機能を無視してまで、ルールを優先してはいけない」ということです。

「見やすさ」の落とし穴:CUD(カラーユニバーサルデザイン)の視点

もう一つ、私たちがプロとして押さえておきたい視点があります。それはCUD(カラーユニバーサルデザイン)の問題です。
「赤は目立つから一番大事な朝に使う」というのは、実は特定の目の見え方をする人に限定された常識かもしれません。

その「赤」、黒に見えていませんか?

CUDに詳しいTOPPAN株式会社のコラム(※4)などでも指摘されていますが、色覚の特性(P型色覚など)によっては、私たちが鮮やかだと思っている「赤」が、限りなく「黒」や「暗い茶色」に見え、緑との区別がほとんどつかなくなることがあります。

SNSなどでも、「赤色は一部の人には見えにくい色である」という啓発画像が話題になることがありますが、これは薬局の現場でも無視できない事実です。良かれと思って引いた「朝の赤ライン」が、患者さんによっては「寝る前の黒ライン」と混同されたり、あるいは「ただの汚れ(暗い線)」に見えて無視されたりするリスクがあるのです。

青と黒の識別も困難

前述の論文(※2)でも、白内障の患者さんにとって「青」と「黒」の識別は非常に困難であるとされています。
薄暗い部屋で寝る前に薬を飲むシチュエーションを考えると、この「見分けにくさ」は致命的です。

これらを踏まえ、識別しやすさを優先した「推奨4色」として以下の組み合わせが提案されています。

  • 推奨パターン:赤・青・橙(オレンジ)・黄緑

「黄色」は白背景だと見えにくく、「黒」は青と混ざる。そのため、コントラストがはっきりするオレンジや黄緑を採用するという考え方です。

オレンジに黄緑!? 正直、そんなインクリボン在庫に置いてないですよ…。理想論としてはわかりますけど、現場での実装は難しくないですか?

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

現実的には厳しいですよね。だからこそ、『色だけに頼らない』ことが重要になります。文字の大きさや太さ、印字位置でカバーする。色はあくまで補助、と割り切る視点も必要ですね

明日から使える「ライン色」決定のチェックリスト

ここまで読んで、「結局、明日の新規患者さんは何色にすればいいの?」と迷う方もいるでしょう。
私なら、以下の手順で決定します。

安全策を取るための3ステップ

  1. お薬手帳・薬歴の徹底確認
    「前回はどうだったか?」をまず見ます。他局の薬が手帳に貼ってあれば、その写真のライン色もヒントになります。ここ、見落としがちですが最大の情報源です。
  2. 患者さんへのヒアリング(問いかけ)
    「今まで、朝のお薬は何色の線が入っていましたか?」と聞きます。
    わからない場合は、「当薬局では朝は赤色になりますが、見にくくないですか?」と決定前に合意を取ります。
  3. 「標準」への回帰
    まったくの新規、あるいはこだわりがない場合は、調査やアンケートで最大多数である「朝:赤、昼:黄、夕:青、寝る前:黒」を採用します。これが最も他の医療機関とバッティングする確率が低いからです。

どうしても迷ったときの「逃げ道」

逆に言うと、変に色をつけて混乱させるくらいなら、「ラインなし(文字のみ大きく印字)」という選択肢もアリです。
特に、用法が複雑な場合や、色が多すぎて信号機状態になっている場合は、あえて色を引かないほうがスッキリして誤薬が減ることもあります。

いまの状況だと「とりあえず色をつけなきゃ」と思い込みがちですが、一度立ち止まって「その色は誰のため?」と問い直してみてください。

まとめ:色は「ルール」ではなく「ツール」である

記事のポイントを整理します。

  • コンセンサスは存在する: 「朝=赤、昼=黄、夕=青、寝る前=黒」が業界の多数派(約6〜7割)。
  • 統一の強制はNG: 既存患者さんの「いつもの色」を変えることは、誤薬リスクを高める。
  • 弱点を知っておく: 白内障の方や色覚多様性を持つ方には、「赤と黒」「赤と緑」の区別がつかないことがある。
  • 確認フローを持つ: 手帳確認 → 本人確認 → 標準色の適用、の順で判断する。

「誰が担当しても同じ色で出せる」ことは薬局の業務効率として重要です。しかし、それ以上に「患者さんが直感的にわかる」ことが最優先。

もし、あなたの薬局で色のルールが曖昧になっているなら、一度スタッフ全員で「うちの基本色」と「例外対応」について話し合ってみませんか?
小さなライン一本ですが、そこには私たちの「医療安全」への意思が詰まっているはずです。


参考資料
  • (※1) 飯嶋 久志, et al. “薬局における調剤方法の相違と問題点” 千葉県薬剤師会雑誌 62巻2号 (2016) Page77-81 / 千葉県薬剤師会・病院薬剤師会作成 調剤の手引き
  • (※2) 田中 秀和ら, “一包化された分包紙に付す色線の配色パターンに関する調査”, 地域薬局薬学 13(1), 27-38, 2021
  • (※3) X(旧Twitter)ユーザー @a_w_329 氏によるアンケート投稿 (2022年2月22日) https://x.com/a_w_329/status/1495947476532367362
  • (※4) TOPPAN株式会社 「色を見分けるのに、苦労している人がいます。」 伝えるクリニック コラム第9回 https://solution.toppan.co.jp/creative/contents/dentatsuclinic_column09.html
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