目次
服薬アドヒアランスの評価指標について
今回は服薬アドヒアランスのアウトカム指標という臨床研究の内容になりますが、薬局薬剤師も今後はPharmacist-Scientictが求められているので知っておいていい内容だと思います。
うちの薬局では〇〇患者に対して■■の内容を調剤後のフォローアップで実施したことにより服薬アドヒアランスが向上しました。
上記のようなエビデンスをだしたいと思っている薬局薬剤師が多いと思いますが、じゃあ何をもって服薬アドヒアランスが向上したと客観性をもって示せるか?というのは、知らない人もいるのではないかと思います。
薬歴から評価する?
薬歴管理料の要件で残薬の項目があるので、そこを見れば分かるのではないか?と思うかもしれません。
ただこれって皆さんの中でどうですかね?私は、ここの部分が臨床研究で使用できるほどの妥当性がある薬局は少数なんじゃないかなと個人的に思っています。
服薬アドヒアランスの評価指標は大きくふたつに分類
服薬アドヒアランスの評価指標は大きく主観的測定指標と客観的測定指標に分類されます。
主観的なのは、患者自身にちゃんと飲めているかなどを報告してもらう方法です。
患者に回答してもらうなら自作のアンケートを作ればいいんだ!と先走る方いるんですが。落ち着いてください。
測定に求められるものは性能です、自作のアンケートでやりたいかもしれませんが性能が担保されていないもので測定された結果は、客観性に乏しいので注意が必要です。
るるーしゅ
アンケート調査って実施すると量的データになるから安易にやる人多いですけど、妥当性のあるアンケート調査票を作成するのは難しいんです!
そしてもうひとつは、客観的測定指標ですね。これは数字で示せるものなので、主観的測定指標より信頼性は高いですね。
ただどちらかだけで評価するというよりは、アドヒアランスをメインにする研究なら主観的測定指標と客観的測定指標のふたつとも測定したほうがいいと思います。
以下に具体的な評価指標について説明します。
主観的測定指標
服薬アドヒアランスの主観的測定指標は、世界的に利用されているMorisky medication adherence scale(MMAS)が多いと思います。
このMMASも質問内容が4項目のMMAS-4と8項目のMMAS-8があります。MMAS-8のほうが論文で使用されているケースが多いですが、薬局の短時間の中ではMMAS-4でもいいかもしれないなと思います。
MMAS-4の内容は、
「薬を飲み忘れたことがある」「薬を飲む時がいつだったかを忘れたことがある」などの4項目ではい→1点、いいえ→0点といったものです。合計点数が低ければ服薬アドヒアランス良好と判断するようですが、カットオフ値はどうなんですかね(知ってる方教えてください)
MMAS-8についてはネット上では見つけられませんでした。Twitterで聞いてみたら関係者よりMoriskyscale.comからライセンスをリクエストするというアドバイスをいただきました。
尚、どんな質問内容かについては下記のツイートでありましたのでよろしくお願いします。
るるーしゅ
一般的に人間は質問に対して無意識に「はい」と答えようとする傾向があることが知られているため、「薬を飲みましたか」ではなく、逆の形式が取っているようです。
客観的測定指標
つづいて客観的指標としてはピルカウント法とMPR(medication possession ratio)、PDC(proportion of days covered)、DMA(daily medication adherence)がでています。
ピルカウント法は、残薬を確認して客観的に評価する方法です。
MPRは服薬量を総処方量で除した割合を算出する方法で、PDCは処方日数を追跡期間で除した割合を算出する方法とのことです。ただこのあたりの違いがあまりよく分からないです。
この研究の説明資料みると、MPRと記載していても内容はPDCな気もしますし…
DMAについても薬剤処方日数/医療機関受診間隔日数と紹介されていて、これもPDCなのでは…と頭痛が痛いです(汗)
MPRでもPDCでもDMAでも追跡期間360日中に、300日薬が処方されていたら、300/360=0.83とすればいいんじゃないですかね(分からない)
まとめ
意気揚々と服薬アドヒアランスの評価指標について、語り始めたはいいものの調べてたらこのあたりわからないな~というものも出てきました。(詳しい方教えてください)
ただ主観的測定指標としては、保険薬局でやるならMMAS-4で十分ではないかなと思いました。客観的指標はピルカウント法でもPDCでもどっちでもいいような気はしますね。
とりあえず主観的測定指標として自作アンケートを作るよりは、MMAS-4を使って評価したほうがいいと思います(たぶん無料ですよね?評価指標って有料のものも多いので注意しなきゃですが)
薬歴に残す残薬状況もMMAS-4→(0,0,1,0)みたいに記録できると薬歴が研究に利用できそうですよね(大変そうな気もしますが…)
るるーしゅ
私自身もまだまだですが、一緒に薬局薬剤師初のエビデンス作ろうと思える仲間になっていただけれると嬉しいです。
- 靖高井 & 勇樹梶間. 心不全患者に対する病院の薬剤師と保険薬局の薬剤師による協働介入の効果. 医療薬学 46, 279–284 (2020)
- 靖高井 & 勇樹梶間. 薬剤管理サマリーと患者のイベント抑制に関する調査. 医療薬学 46, 446–451 (2020)
- 菅原隆文 et al. 虚血性心疾患患者に対する服薬アドヒアランス評価. 日本病院薬剤師会雑誌 = Journal of Japanese Society of Hospital Pharmacists 57, 530–534 (2021)
- 坂根 & 可奈子. 高齢者の服薬アドヒアランスの測定指標に関する文献検討. 日本医学看護学教育学会誌 = Japanese journal of medical and nursing education : JMNE 28, 55–64 (2019)
- 患者の服薬アドヒアランスをどう評価する?,日経DI(https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/kawakami/202102/569081.html)
- 【第2回】「アドヒアランス」はどのように測るのか、そして 糖尿病患者の服薬アドヒアランスとその関係因子とは?(https://ds-pharma.jp/learning/ph_expert/vol.3/2.html)