2026年2月13日、中医協の答申が出ました。令和8年度(2026年度)の調剤報酬改定、いろいろ気になる項目はありますが、私がまず目を止めたのは調剤管理料の2区分化です。
これまで内服薬の処方日数に応じて4段階だった調剤管理料が、「28日分以上(長期処方)=60点」と「27日分以下=10点」のたった2区分に。正直、最初に短冊を見たときは点数が●●点のままだったので「まあ多少の調整だろう」と思っていました。ところがフタを開けてみたら、27日分以下が一律10点。ここ、驚いた方はかなり多いのではないでしょうか。
この記事では、今回の調剤管理料の見直しが薬局の収益にどう影響するのかを、2024年6月の社会医療診療行為別統計の件数データをもとにした試算を交えて整理します。「うちの薬局は大丈夫?」を判断するための材料を、できるだけ具体的にお伝えしたいと思います。
この記事でわかること
- 調剤管理料の改定内容(4区分→2区分)の正確な中身
- 全国データを使った試算と「帳尻が合うか」の検証
- マイナス影響が大きい薬局・プラスに転じうる薬局の特徴
- 調剤管理加算の廃止による追加ダメージ
- 改定の背景にある「メッセージ」と次の打ち手
目次
まず押さえたい:調剤管理料はどう変わったのか

改定の中身を正確に把握するところから始めます。ここを飛ばすと試算の前提がずれるので、少しだけお付き合いください。
現行(令和6年度改定ベース)の調剤管理料
| 区分 | 処方日数 | 点数(1剤につき) |
|---|---|---|
| イ | 7日分以下 | 4点 |
| ロ | 8日分以上14日分以下 | 28点 |
| ハ | 15日分以上28日分以下 | 50点 |
| ニ | 29日分以上 | 60点 |
| 2 | 内服薬以外 | 4点 |
改定後(令和8年6月施行予定)
| 区分 | 処方日数 | 点数(1剤につき) |
|---|---|---|
| イ | 28日分以上(長期処方) | 60点 |
| ロ | 27日分以下(イ以外) | 10点 |
| 2 | 内服薬以外 | 10点 |
さらに、現行の調剤管理加算(6種類以上の内服薬に係る加算)は廃止されます。
ちょっと待ってください。28点や50点だった中間層が一気に10点って…さすがに下がりすぎじゃないですか?

オカメインコ

ポッポ先生
気持ちはわかります。ただ、28日ちょうどの処方が60点に”格上げ”される部分もあるので、全体でどう相殺されるかがポイントです。薬局ごとの処方構成で明暗が分かれますね。
ここ、迷いやすいところです。「全部下がった」わけではなく、28日分ちょうどの処方は現行50点→60点に上がっています。つまり、処方日数の構成比によって、プラスにもマイナスにもなるというのが今回の改定の性質です。
試算してみた:全国データで見る「帳尻」の行方

「2区分にしたら、トータルの調剤管理料の総額は同じくらいになるのか?」——ここが一番知りたいところですよね。
2024年6月の社会医療診療行為別統計から、調剤管理料の算定件数を使って試算してみます。
現行の総点数(2024年6月ベース)
| 区分 | 件数(件) | 現行点数 | 合計点数 |
|---|---|---|---|
| 7日分以下 | 25,457,606 | 4点 | 101,830,424 |
| 8〜14日分 | 14,808,218 | 28点 | 414,630,104 |
| 15〜28日分 | 20,514,040 | 50点 | 1,025,702,000 |
| 29日分以上 | 46,187,781 | 60点 | 2,771,266,860 |
| 内服薬以外 | 12,576,156 | 4点 | 50,304,624 |
| 合計 | 4,363,734,012 |
改定後の試算で問題になる「15〜28日分」の内訳
ここが試算の最大の変数です。現行の「15〜28日分」には15日処方も、21日処方も、28日処方も混在しています。改定後は27日分以下なら10点、28日分なら60点。つまり、この約2,051万件のうち「28日ちょうど」がどれだけあるかで結論が変わります。
いまの統計では15〜28日分の内訳は公表されていないため、仮定を置くしかありません。仮に「28日ちょうど」が全体の70%、15〜27日分が30%と置いた場合の試算がこちらです。
改定後の推計総点数(28日処方=70%の仮定)
| 区分 | 件数(件) | 改定後点数 | 合計点数 |
|---|---|---|---|
| 7日分以下 | 25,457,606 | 10点 | 254,576,060 |
| 8〜14日分 | 14,808,218 | 10点 | 148,082,180 |
| 15〜27日分(30%) | 6,154,212 | 10点 | 61,542,120 |
| 28日分(70%) | 14,359,828 | 60点 | 861,589,680 |
| 29日分以上 | 46,187,781 | 60点 | 2,771,266,860 |
| 内服薬以外 | 12,576,156 | 10点 | 125,761,560 |
| 合計 | 4,222,818,460 |
差分:約−1億4,092万点(金額換算で月あたり約−14.1億円)
全体の約−3.2%です。「帳尻が合っている」とは言いにくい数字ですね。
じゃあ全体としてマイナスなんですか? うちの薬局やばいかも……

オカメインコ

ポッポ先生
落ち着いてください。これは”28日処方が70%”という仮定での話です。実際に28日処方が84%くらいを占めるなら、ほぼ帳尻が合う計算になります。比率をどう見るかで結論がかなり変わるんですね。
比率を変えたときの差分(参考)
| 15〜28日分のうち28日処方の割合 | 月次差分(概算) |
|---|---|
| 70% | 約−14.1億円 |
| 75% | 約−9.0億円 |
| 80% | 約−3.8億円 |
| 84%(損益分岐点) | ほぼ±0 |
| 85% | 約+1.3億円 |
| 90% | 約+6.4億円 |
どうですか? 感覚的に「15〜28日分の処方のうち、28日処方がどのくらいの割合を占めているか」をイメージしてみてください。皆さんの薬局の実感と合いそうでしょうか。
ただし、この試算は全国データの集計であって、個々の薬局の事情は反映していません。ここは誤解されやすいので先に言うと、あなたの薬局がプラスかマイナスかは、あなたの薬局の処方構成でしか判断できません。
影響が大きい薬局・小さい薬局を分けるもの

私ならまず、自薬局のレセコンデータを引っ張って「処方日数別の件数構成比」を確認します。そこが起点です。
マイナス影響が大きくなりやすいケース
次のような処方構成が中心の薬局は、収益への影響が相対的に大きくなります。
14日処方が多い薬局(内科・耳鼻科門前など)
現行28点→10点で、1剤あたり18点の減少です。たとえばアレルギー性鼻炎で3剤14日分が出ている処方なら、調剤管理料だけで54点(540円)のマイナス。月に同様の処方が200枚あれば、それだけで月10万円以上の減収です。
21日処方が多い薬局
現行50点→10点で、1剤あたり40点の減少。3剤×21日分なら1処方で120点(1,200円)のマイナスになります。3週間処方がメインのドクターが近くにいる薬局は、ここ、心当たりありませんか。
でも、処方日数って薬局側ではどうしようもなくないですか? 先生の処方ですし…

オカメインコ

ポッポ先生
その通り。だからこそ、変えられない部分(処方日数)と変えられる部分(他の加算の算定強化や対人業務の充実)を分けて考えることが大事になります。
プラスに転じうるケース
逆に言うと、以下の薬局は増収の可能性があります。
- 小児科門前の薬局:小児の処方は3〜7日分が中心です。現行4点→10点への増点になるため、短期処方が多い薬局ではプラスに作用します。
- 眼科門前の薬局:点眼薬等は「1以外(内服薬以外)」に該当し、現行4点→10点に。処方箋受付1回あたりの増点は小さいですが、件数が多い薬局では積み上がります。
「調剤管理加算の廃止」も忘れずに

ここ、調剤管理料の2区分化に話題が集中しがちですが、もう一つ大きな変更があります。調剤管理加算が廃止される点です。
現行の調剤管理加算は、複数の医療機関から6種類以上の内服薬が処方されている患者に対して、服薬状況等を一元的に把握し薬学的管理を行った場合に算定できるものでした。
ポリファーマシー対応を現場で頑張っている薬局にとっては、この廃止も経営面での影響が出る可能性があります。いまの状況だと、高齢患者が多い薬局ほど、この廃止と調剤管理料の変更がダブルで効いてくることになりやすいです。
正直、加算の廃止まで重なると対応しきれる気がしないんですが…

オカメインコ

ポッポ先生
まずは自薬局の調剤管理加算の算定件数を確認してみてください。月に何件算定していて、何点分になっていたか。影響の大きさを”数字”で把握してから動いたほうが安全です。
改定の背景にある「メッセージ」を読む

今回の2区分化は、突然降って湧いたわけではありません。中医協の議論をたどると、支払側から「処方日数に応じて点数が大きく変わる合理性が乏しい」との指摘が繰り返し出ていました。
令和4年(2022年)の改定で「調剤料」が「薬剤調製料」と「調剤管理料」に分離された際、調剤管理料は対人業務の評価として位置づけられました。つまり、薬学的管理の質を評価する点数であって、処方日数の長さそのものを評価する点数ではないというのが建前です。
その観点に立てば、日数ごとに4段階の点数差がつく構造は「合わない」と言えます。今回の2区分化は、この考え方を一歩進めたものと読めます。
長期処方(28日以上)に60点を残したのは、長期処方特有の残薬管理や重複チェック等の薬学的管理の負荷を評価しているからでしょう。逆に27日以下を一律10点にしたのは、短期処方間の点数差をなくす方向に舵を切ったということです。
私ならこの改定を「日数で稼ぐ時代が終わった」というシグナルとして受け止めます。
好むと好まざるとにかかわらず、調剤管理料以外の加算や対人業務の充実で差をつける方向へ、報酬設計がシフトしている。そう考えるほうが、次の打ち手が見えやすくなるのではないでしょうか。
理屈はわかるけど、現場は忙しいのに加算を増やせって無理がありませんか?

オカメインコ

ポッポ先生
正直、全部を一度にはできないです。ただ、たとえば服用薬剤調整支援料や、薬学的有害事象等防止加算(旧・重複投薬等防止加算)など、日常業務の延長で取れる加算を見直すだけでも変わることはあります。まずは”今取れていない加算”の棚卸しから始めるのが現実的ですね。
まとめ|令和8年度の調剤管理料改定で押さえるべき3つのポイント

最後に、今回お伝えした内容を整理します。
- 影響は処方構成で決まる。全国一律の話ではありません。
短期処方(特に8〜27日分)の比率が高い薬局ほどマイナス影響が大きく、7日以下や内服薬以外が中心の薬局はプラスになりえます。まず自薬局のレセコンデータで処方日数別の件数構成を確認してください。 - 「15〜28日分」の内訳が盲点。
全国データでは15〜28日分が一括計上されていますが、28日ちょうどの比率が84%以上であればマクロではほぼ帳尻が合うと推計できます。ただし、この比率は薬局ごとにまったく異なります。 - 調剤管理加算の廃止も合わせて影響を見る。
調剤管理料の変更だけに注目せず、廃止される加算や他の改定項目(調剤基本料の見直し、地域支援・医薬品供給対応体制加算の新設等)も含めたトータルで収支を見積もることをおすすめします。
次の一歩として私がおすすめするのは、自薬局の2024年度のレセプトデータをもとに、処方日数別の件数と現行点数の一覧を作成し、改定後の点数で再計算してみることです。
それだけで、自分たちに必要な対策の優先順位がぐっとクリアになります。
なお、本記事の試算は2024年6月の社会医療診療行為別統計をもとにした概算であり、確定した公式データに基づくものではありません。正式な改定内容・算定要件については、厚生労働省が公表する告示・通知・疑義解釈を必ずご確認ください。令和8年度改定の施行は2026年6月の予定です。
参考:中央社会保険医療協議会 令和8年度診療報酬改定 答申(2026年2月13日)
参考:社会医療診療行為別統計(厚生労働省)


