「服用薬剤調整支援料2の要件に『薬剤レビュー』が入るらしい」——そんな話を耳にして、「薬剤レビューって何?」と思った方、いませんか。
私も最初、言葉だけ聞いたときはピンときませんでした。処方監査とは違うの?トレーシングレポートの延長?調べてみると、オーストラリアでは20年以上前から薬剤師の高度な専門業務として位置づけられていて、日本でも上田薬剤師会が10年以上前から研修を続けてきた歴史があるとわかりました。
この記事では、薬剤レビューとは何か、従来の減薬提案とはどう違うのか、具体的にどんなプロセスで進めるのかを整理します。「なんとなく聞いたことがある」を「概要は説明できる」にするのが目標です。
目次
薬剤レビューとは?処方監査や減薬提案との違い

薬剤レビュー(Medication Review)は、薬剤師による包括的かつ高度な専門的業務プロセスです。定義としてよく引用されるのは、「薬物治療に関連する問題を評価し、患者固有の情報を収集する体系的なプロセスであり、薬物治療の効果を最大化し、リスクを最小限におさえ、無駄を減らすことを目指すもの」というものです。
ここ、迷いやすいところです。「処方監査と何が違うの?」と思いますよね。
違いを整理すると、こうなります。
| 薬剤レビュー | 処方監査(調剤時) | |
|---|---|---|
| 視点 | 患者主体 | 医薬品主体 |
| 対象 | 治療計画全般 | 個々の処方箋 |
| タイミング | 継続的・定期的 | 調剤のたび |
| 目的 | 薬物治療の最適化 | 処方の適正確認 |
| 販売との関係 | 独立 | 通常、調剤に付随 |
処方監査は「この処方箋に問題はないか」を確認する作業です。一方、薬剤レビューは「この患者さんの薬物治療全体は最適か」を評価します。
じゃあ、減薬提案とはどう違うんですか?結局、薬を減らす話になるんじゃ…

オカメインコ

ポッポ先生
いい質問ですね。減薬は「手段の一つ」であって、目的ではありません。評価の結果、薬を追加したほうがいいケースもあれば、用法を変えたほうがいいケースもあります。出発点が「減らす」ではなく「最適か」なんです。
上田薬剤師会の飯島常務理事も、2026年度改定の短冊で求められる内容について「まさに薬剤レビューだ」と指摘しています。従来の服用薬剤調整支援料2は重複投薬の解消に向けた減薬提案が対象でしたが、改定後は「必ずしも減薬によらない」処方提案が評価される方向です。
薬剤レビューの3ステップ——ASK・ASSESS・ADVISE

オーストラリア薬剤師会のガイドでは、薬剤レビューのプロセスを「3つのA」として整理しています。順番に見ていきます。
ステップ1 ASK(情報収集)
患者の薬物治療に関連する問題を特定するための最初のステップです。
「情報収集なら普段もやっている」と思うかもしれません。ただ、薬剤レビューで求められる情報収集は、かなり広範囲です。具体的には以下のような項目が挙げられています。
- 服用している薬、サプリメント、OTC薬、それらに関する患者の知識
- 治療目標、コントロール状況、アドヒアランスに影響を与える要因
- 家庭環境、日常生活の活動、食事、飲酒、喫煙、身体・社会活動
- 患者の懸念事項と、患者自身の現在の対処方法
- 疾病特異的な事項
いまの状況だと、ここまで聞けている薬局は少ないのではないでしょうか。私ならまず「患者さんが何を気にしているか」から確認します。薬の効果より、生活への影響を気にしている方も多いですから。
情報源は患者だけではありません。薬局の記録、医師や他の医療従事者、病院や介護施設の文書記録なども含まれます。
ステップ2 ASSESS(問題の分析と特定)
集めた情報をもとに、薬剤関連問題を特定し、優先順位をつけます。
現場だとここで詰まりがちです。「問題があるような気がするけど、どう整理すればいいかわからない」という状況ですね。
オーストラリア薬剤師会のリリー・チョン氏は「問題特定マトリックス」を作成することを推奨しています。これは、病状と薬剤を対応させた表を作り、それぞれについて「知るべきこと」「考えること」をメモしていく方法です。
たとえば、虚血性心疾患の患者さんがクロピドグレルとシンバスタチンを服用している場合、以下のようなメモが考えられます。
| 観点 | メモ内容 |
|---|---|
| 疾病に関するメモ | 治療目標は何か(狭心症のない状態?)/心筋梗塞の既往歴、冠動脈バイパス術やステント挿入の有無/脂質レベル、食事、運動習慣 |
| 薬剤に関するメモ | ステント挿入後1年以上経過していれば、抗血小板薬をアスピリンに変更可能か/シンバスタチンの副作用(筋肉痛)は出ていないか/冠動脈疾患には高効力スタチンが必要では |
そこまで深く考えたことなかったです…。時間もかかりそうですね。

オカメインコ

ポッポ先生
そうなんです。だから「高度な専門業務」とされているんですね。ただ、すべての患者さんに毎回やるわけではありません。対象は6種類以上の内服薬を服用している方で、頻度も半年に1回程度。じっくり取り組む業務という位置づけです。
ステップ3 ADVISE(情報伝達)
分析した結果を、処方医と患者に伝えます。
文書化の形式としては、SOAP(主観的事項・客観的事項・評価・計画)やFARM(所見・評価・提案・マネジメント)が使われます。構造化されたフォーマットを使うことで、伝えるべき内容が整理され、医師にも伝わりやすくなります。
誤解されやすいので先に言うと、「問題がない」という評価も立派な情報伝達です。すべての患者に薬剤調整が必要なわけではありません。逆に言うと、問題がないならないで、その根拠を示せることが求められます。
トレーシングレポートとは違うんですか?

オカメインコ

ポッポ先生
形式は似ていますが、内容の深さが違います。浪速区薬剤師会の朴氏も「従来のトレーシングレポートと変わらない」と思われないよう、質を研修で担保していく必要があると指摘しています。
日本ではどこで学べる?普及の現状

薬剤レビューは、オーストラリアでは1995年から制度化され、20年以上の歴史があります。日本ではまだ広く普及しているとは言えませんが、いくつかの団体が研修を行っています。
上田薬剤師会(長野県)
日本で薬剤レビュー研修の先駆けとなった団体です。オーストラリア薬剤師会と戦略的提携を結び、毎年講師を招いてワークショップを開催しています。10年以上の実績があり、全国から薬剤師が参加しているそうです。
2025年2月の研修会は経験者のみを対象とし、「上田以外の地域でも研修や症例検討を主導する人材を養成したい」という狙いがあるとのこと。
浪速区薬剤師会(大阪府)
2024年から愛染橋病院・大阪医科薬科大と共同で研修会を立ち上げました。実際の症例を持ち寄り、薬剤レビューのプロセスを学ぶ形式です。
同会の朴氏は、薬剤レビューに必要な患者情報の把握には「医師との連携が不可欠」と強調しています。地域薬剤師会・病院・大学が連携する「浪速モデル」を大阪全域に広げていきたいとのことです。
昭和医科大学薬学部
生涯研修プログラムで演習講座を企画しています。2025年3月は対面(定員20人)、7月・11月はオンライン形式で実施予定。「アクセス性の面でもう少しハードルが下がれば」という思いから、オンライン開催を取り入れたそうです。
興味はあるんですが、地方だと参加しにくくて…

オカメインコ

ポッポ先生
そうですよね。オンライン講座が増えてきているので、チェックしてみる価値はあります。また、オーストラリア薬剤師会の『薬剤レビュー 薬剤師のためのプロセスガイド』は上田薬剤師会が日本語訳を出しています。まずは書籍で概念を理解しておくのも一つの方法ですね。
2026年度改定でどう位置づけられる?

2026年度調剤報酬改定で、服用薬剤調整支援料2は薬剤レビューを評価する内容に見直される見込みです。厚労省の担当者も、この見直しは「実質、薬剤レビューを評価するもの」と認めています。
ただし、短冊には「薬剤レビュー」という文言は使われていません。厚労省は「『薬剤レビュー』と書いてしまうと一意に定まらないので、その文言は用いないこととした」と説明しています。
短冊に示された「具体的に必要な実施事項」
- 薬物治療に関する患者又はその家族等からの主観的情報の聴取
- 検査値等の薬物治療に必要な客観的情報の収集
- 服薬支援に必要な患者の生活状況及び意向に関する情報の聴取
- 各服用薬剤がもたらす治療効果及び有害事象の評価
- 解決すべき薬剤関連問題の特定及び整理
- 服用薬剤調整後の観察計画及び対応案の立案
研修の詳細もまだ明らかになっていません。厚労省は「座学だけでなく、実務も想定している」としており、上田薬剤師会の飯島氏は「学会など一定の規模があり中立的な機関が担うのではないか」と予測しています。
適用開始は令和9年(2027年)6月1日の予定です。まだ1年以上ありますが、研修体制が整うまでには時間がかかる可能性があります。
まとめ

薬剤レビューは、患者の薬物治療を包括的に評価し、最適化を図るための専門的な業務プロセスです。「減薬ありき」ではなく、追加処方や用法変更も含めた提案を行う点が、従来の減薬提案との大きな違いです。
プロセスは「3つのA」——ASK(情報収集)、ASSESS(問題の分析と特定)、ADVISE(情報伝達)で構成されます。オーストラリアでは20年以上の歴史がある業務ですが、日本ではこれから普及が進む段階です。
2026年度改定で服用薬剤調整支援料2の要件に組み込まれる見込みであり、今後、研修機会が増えていくと考えられます。
次の一歩として
まずは「薬剤レビューとは何か」を押さえておくことをおすすめします。上田薬剤師会が翻訳した『薬剤レビュー 薬剤師のためのプロセスガイド』や、各地の研修情報をチェックしてみてください。



