目次
重複投薬・相互作用等防止加算とは?基本情報と点数
重複投薬・相互作用等防止加算は、薬剤服用歴等または患者およびその家族等からの情報等に基づき、処方医に対して疑義照会を行い、処方に変更が行われた場合に算定できる加算です。患者さんの安全を守るために重要な薬剤師の臨床判断と介入を評価する加算となっています。

ポッポ先生
重複投薬・相互作用等防止加算は、単なる事務的な疑義照会ではなく、薬剤師の薬学的知識を活かした医薬品適正使用のための臨床判断が評価されるものです!患者さんの安全を守るという本来の目的を忘れないようにしましょう。
2024年度改定のポイント
2024年度(令和6年度)の調剤報酬改定では、業務実態を踏まえて「残薬調整に係るものの場合」の点数が見直されました。主な変更点は以下の通りです:
区分 | 2022年度改定 | 2024年度改定 |
---|---|---|
イ:残薬調整に係るもの以外の場合 | 40点 | 40点(変更なし) |
ロ:残薬調整に係るものの場合 | 30点 | 20点(10点減) |
残薬調整の点数が下がってしまったのはなぜですか?

オカメインコ

ポッポ先生
残薬調整による疑義照会は比較的一般的になり、業務実態を踏まえての評価の見直しと考えられます。また、残薬調整以外の重複投薬や相互作用の防止に関する介入をより評価する方向性を示していると言えるでしょう!
算定要件
重複投薬・相互作用等防止加算の算定要件は以下の通りです
- 基本条件
- 薬剤服用歴等または患者およびその家族等からの情報等に基づき、処方医に対して連絡・確認を行うこと
- 処方に変更が行われること
- 調剤管理料を算定していること
- 算定できない場合
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料を算定している患者
- 適切な手帳の活用実績が相当程度あると認められない保険薬局(手帳提示率50%以下)
- 記録要件
- 処方医に連絡・確認を行った内容の要点
- 処方変更内容
- 残薬および重複投薬が生じる理由の分析
対象となる疑義照会の内容
重複投薬・相互作用等防止加算は、疑義照会の内容に応じて「イ:残薬調整に係るもの以外の場合(40点)」と「ロ:残薬調整に係るものの場合(20点)」の2つに区分されます。
イ:残薬調整に係るもの以外の場合(40点)
以下の内容について、処方医に対して連絡・確認を行い、処方変更が行われた場合に算定します
- 併用薬との重複投薬(薬理作用が類似する場合を含む)
- 同一医療機関または他の医療機関から処方された薬剤との重複
- 同一成分または薬理作用が類似する薬剤の重複
- 併用薬、飲食物等との相互作用
- 併用薬との薬物相互作用
- 飲食物(グレープフルーツジュース、納豆など)との相互作用
- 健康食品・サプリメントとの相互作用
- そのほか薬学的観点から必要と認める事項
- 過去のアレルギー歴、副作用歴に基づく処方変更
- 年齢や体重による影響を考慮した処方変更
- 肝機能、腎機能等による影響を考慮した処方変更
- 授乳・妊婦への影響を考慮した処方変更
- 薬学的観点からの薬剤の追加や投与期間の延長

ポッポ先生
「そのほか薬学的観点から必要と認める事項」には、アレルギー歴や副作用歴、さらには薬学的観点からの薬剤の追加や投与期間の延長も含まれます。この点は平成28年の疑義解釈で明確化されたポイントですので、積極的に活用しましょう!
ロ:残薬調整に係るものの場合(20点)
残薬について、処方医に対して連絡・確認を行い、以下のような処方変更が行われた場合に算定します:
- 残薬による処方日数の調整
- 処方日数の短縮
- 一部薬剤の処方中止
- 注意点
- 残薬が生じる理由を分析することが求められている
- 必要に応じてその理由を処方医に情報提供すること
複数の薬について疑義照会をした場合は、両方の点数を合算できるのですか?

オカメインコ

ポッポ先生
残念ながら、複数の項目に該当した場合であっても、重複して算定することはできません。例えば、重複投薬と残薬の両方について処方変更があった場合は、点数の高い「イ:残薬調整に係るもの以外の場合(40点)」を算定するとよいでしょう!
算定対象となるケースとならないケース
算定対象となるケース
- 異なる医療機関の処方箋における重複の指摘
- A診療所とB診療所で同一または類似薬が処方されている場合
- 同一医療機関の同一診療科からの処方箋での処方変更
- 従来は算定不可だったが、平成28年度の改定で算定可能となった
- 薬学的観点からの薬剤追加や投与期間延長
- 必要な薬剤が処方されていない場合の薬剤追加
- 処方日数が不足している場合の日数延長
- アレルギー歴・副作用歴に基づく処方変更
- 過去に副作用があった薬剤の処方変更
- アレルギー歴のある添加物を含む製剤の変更
算定対象外となるケース
- 薬学的観点以外の理由による処方変更
- 保険薬局に備蓄がないための処方変更
- 患者の嗜好による剤形変更
- 処方変更を伴わない疑義照会
- 確認のみで処方変更がなかった場合
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料等を算定している患者
- 服用薬剤調整支援料の提案内容と同一の処方内容の場合
- 2024年度改定で追加された除外規定

ポッポ先生
在庫がないことを理由とした疑義照会は算定対象外となりますので注意が必要です。あくまで「薬学的観点」からの疑義照会が評価されます!
レセプト記載と薬歴記載のポイント
レセプト記載について
重複投薬・相互作用等防止加算を算定する場合のレセプト記載は以下の通りです
- 基本的な記載
- 算定項目と点数(例:重複投薬・相互作用等防止加算(イ) 40点)
- コメントコード
- 疑義照会の内容に応じたコメントコードを選択して記載
コメントコード | 内容 |
---|---|
820101030 | 内容の要点(重複投薬・相互作用等防止加算):同種・同効の併用薬との重複投薬 |
820101031 | 内容の要点(重複投薬・相互作用等防止加算):併用薬・飲食物等との相互作用 |
820101032 | 内容の要点(重複投薬・相互作用等防止加算):過去のアレルギー歴、副作用歴 |
820101256 | 内容の要点(重複投薬・相互作用等防止加算):年齢や体重による影響 |
820101257 | 内容の要点(重複投薬・相互作用等防止加算):肝機能、腎機能等による影響 |
820101034 | 内容の要点(重複投薬・相互作用等防止加算):授乳・妊婦への影響 |
830100775 | 内容の要点(重複投薬・相互作用等防止加算):その他薬学的観点から必要と認める事項;********** |
- 補足記載(必須ではないが推奨)
- 削除した内容についてわかりにくいと判断される場合は、摘要欄にコメントを記載するとよい
レセプトには具体的な変更内容を書かないといけないのでしょうか?

オカメインコ

ポッポ先生
通知上は処方変更の内容を具体的に記載することまでは求められていませんが、審査の際にわかりにくいと判断されるケースもあります。例えば「△△病院でも同じ薬が処方されているため○○薬削除」などと摘要欄に記載するとよいでしょう!
薬歴記載について
薬歴には、以下の内容を具体的に記載することが求められています
- 処方医への連絡・確認内容
- 疑義照会を行った理由
- 具体的な問い合わせ内容
- 疑義照会の日時や相手方
- 処方変更の内容
- 変更前と変更後の処方内容
- 変更理由
- 残薬・重複が生じた理由の分析
- 服薬アドヒアランス不良の背景
- 重複投薬が生じた経緯
具体的な算定事例
事例1:併用薬との重複投薬(40点)
【疑義照会内容】 A診療所処方のムコダイン錠250mgについて、患者がB診療所処方のムコダイン細粒を服用中であることが判明。重複投薬の可能性があるため、A診療所の処方医に確認。 【処方変更内容】 ムコダイン錠250mgの処方削除 【薬歴記載例】 20XX年5月10日、A診療所Dr.佐藤に疑義照会。患者より「B診療所からもらったムコダイン細粒を服用中」との申し出あり。重複投薬の可能性を伝えたところ、ムコダイン錠250mgは削除となった。患者に処方変更の理由を説明し、理解を得た。 【レセプト記載例】 ・重複投薬・相互作用等防止加算(イ) 40点 ・820101030(内容の要点:同種・同効の併用薬との重複投薬)
事例2:残薬調整による処方変更(20点)
【疑義照会内容】 アムロジピン錠5mgについて、患者から「2週間分ほど余っている」との申し出があり、残薬状況を確認したところ、14日分の残薬を確認。残薬が生じた理由を確認すると、「飲み忘れがあった」とのこと。処方医に残薬状況と服薬状況を報告。 【処方変更内容】 アムロジピン錠5mg 28日分 → 14日分に変更 【薬歴記載例】 20XX年5月15日、C内科Dr.鈴木に疑義照会。アムロジピン錠5mgについて14日分の残薬があると伝え、処方日数の調整を依頼。残薬が生じた理由として服薬アドヒアランス不良(飲み忘れ)があることを情報提供。その結果、アムロジピン錠5mgの処方日数が28日分から14日分に変更となった。患者には一包化やお薬カレンダーの利用を提案し、次回受診時までの服用を徹底するよう指導した。 【レセプト記載例】 ・重複投薬・相互作用等防止加算(ロ) 20点
事例3:相互作用による処方変更(40点)
【疑義照会内容】 ワーファリン錠が処方されている患者に新たにクラリスロマイシン錠が処方。クラリスロマイシンがワーファリンの代謝を阻害し、出血リスクが高まる可能性があるため処方医に確認。 【処方変更内容】 クラリスロマイシン錠 → アジスロマイシン錠に変更 【薬歴記載例】 20XX年5月20日、D内科Dr.田中に疑義照会。ワーファリン錠服用中の患者にクラリスロマイシン錠が処方されたが、相互作用によりワーファリンの作用が増強され出血リスクが増加する可能性を伝えた。その結果、相互作用の少ないアジスロマイシン錠に変更となった。患者に処方変更の理由と、変更後も出血傾向に注意するよう説明した。 【レセプト記載例】 ・重複投薬・相互作用等防止加算(イ) 40点 ・820101031(内容の要点:併用薬・飲食物等との相互作用)
事例4:アレルギー歴による処方変更(40点)
【疑義照会内容】 セフジトレンピボキシル錠が処方された患者から、過去にセフカペンピボキシル錠でアレルギー反応(発疹)が出たとの申し出があった。交差アレルギーの可能性があるため処方医に確認。 【処方変更内容】 セフジトレンピボキシル錠 → レボフロキサシン錠に変更 【薬歴記載例】 20XX年5月25日、E内科Dr.山田に疑義照会。患者から過去にセフカペンピボキシル錠服用時に発疹が出現したとの申し出があり、セフェム系抗生物質に対するアレルギーの可能性について情報提供。その結果、レボフロキサシン錠に変更となった。患者にはアレルギー歴を今後も申告するよう指導した。 【レセプト記載例】 ・重複投薬・相互作用等防止加算(イ) 40点 ・820101032(内容の要点:過去のアレルギー歴、副作用歴)
事例5:薬学的観点からの薬剤追加(40点)
【疑義照会内容】 オキシコドン徐放錠が新規処方された患者に対して、便秘対策の薬剤が処方されていないことを確認。オピオイド誘発性便秘のリスクがあるため、予防的な緩下剤の処方を提案。 【処方変更内容】 酸化マグネシウム錠330mg 1日3回 毎食後 14日分が追加 【薬歴記載例】 20XX年6月1日、F緩和ケア科Dr.中村に疑義照会。オキシコドン徐放錠処方に伴い、オピオイド誘発性便秘の予防目的で緩下剤の追加を提案。その結果、酸化マグネシウム錠330mgが追加処方となった。患者には便秘がオピオイドの主な副作用であることを説明し、排便状況の確認方法と水分摂取の重要性について指導した。 【レセプト記載例】 ・重複投薬・相互作用等防止加算(イ) 40点 ・830100775(内容の要点:その他薬学的観点から必要と認める事項;オピオイド誘発性便秘予防のための緩下剤追加)
重複投薬・相互作用等防止加算と他の算定項目との関係
地域支援体制加算との関係
重複投薬・相互作用等防止加算は、地域支援体制加算の実績要件の一つとなっています。
- 処方箋受付回数1万回あたり40回以上の実績が必要
- 在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の算定回数と合算可能

ポッポ先生
地域支援体制加算を算定するためには、重複投薬・相互作用等防止加算の算定を積極的に行うことが重要です。薬局全体で取り組むべき課題と捉えましょう!
服用薬剤調整支援料との関係
2024年度改定で新たに規定が追加され、服用薬剤調整支援料の提案内容と同一の処方内容の場合、重複投薬・相互作用等防止加算は算定できないこととなりました。
- 服用薬剤調整支援料2を算定後、同一の提案内容で服用薬剤調整支援料1を算定することはできない
- 服用薬剤調整支援料は調剤管理料の加算ではないので、調剤日以外でも算定可能
調剤管理加算との関係
調剤管理加算と重複投薬・相互作用等防止加算は、それぞれ条件を満たせば同時算定が可能です。
- 例:2回目以降の来局で内服薬の追加があり調剤管理加算を算定した際に、他の薬の残薬調整を行った場合は、調剤管理料と重複投薬・相互作用等防止加算を算定可能
算定促進のためのポイント
算定が進まない理由
- 算定要件の理解不足
- 算定可能なケースを見逃している
- 薬学的観点からの薬剤追加や投与期間延長が算定対象となることを知らない
- 記録の負担
- 薬歴記載やレセプトコメントの手間を負担に感じている
- 疑義照会自体の躊躇
- 医師との関係性への配慮
- 電話対応の煩わしさ
算定促進のための対策
- 算定要件の正確な理解
- 算定可能なケースの具体例を薬局内で共有
- 疑義解釈資料の内容を確認(平成28年3月31日の疑義解釈など)
- 薬歴記載テンプレートの活用
- 記載例を作成し、共有する
- 電子薬歴システムにテンプレートを設定
- 患者情報の収集強化
- 初回質問の徹底(アレルギー歴、副作用歴など)
- お薬手帳の確認の徹底
- 残薬確認の声かけ
- 医師との良好な関係構築
- 患者の安全確保という共通の目的を意識した疑義照会
- トレーシングレポートの活用
疑義照会をしても処方変更されないことも多いです。そういう場合はどうすればいいでしょうか?

オカメインコ

ポッポ先生
確かに全ての疑義照会が処方変更につながるわけではありません。処方医に的確な情報提供ができるよう、エビデンスを示したり、具体的な提案をすることが大切です。また、処方変更がなかった場合でも、その理由を理解し、薬歴に記録しておくことで今後の服薬指導に活かせますよ!
まとめ:薬剤師による適切な介入のために
重複投薬・相互作用等防止加算は、薬剤師が患者の安全を守るために行う臨床判断と介入を評価する重要な加算です。2024年度改定では残薬調整に係る点数が見直されましたが、薬学的観点からの介入の重要性はむしろ高まっています。
この加算の算定を通じて、以下のような患者メリットが生まれます:
- 安全な薬物療法の実現
- 重複投薬や相互作用のリスク低減
- 副作用やアレルギー反応の防止
- 適正な薬物療法の推進
- 残薬解消による医療資源の有効活用
- 服薬アドヒアランスの向上
薬局全体で算定要件を正確に理解し、患者情報の収集と的確な疑義照会を行うことで、重複投薬・相互作用等防止加算の算定を推進しましょう。これは単なる点数獲得ではなく、薬剤師が専門性を発揮して患者の安全を守るための重要な取り組みです。

ポッポ先生
最後に一言!重複投薬・相互作用等防止加算は、薬剤師の臨床判断と処方提案力を評価する加算です。ぜひ積極的に算定して、薬剤師の専門性をアピールしていきましょう!
参考資料
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する告示(厚生労働省告示第57号)
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和6年3月5日 保医発0305第4号)
- 疑義解釈資料の送付について(その1)(平成28年3月31日 事務連絡)
- 令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】(厚生労働省)