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医療情報取得加算とは?基本情報と目的
医療情報取得加算は、オンライン資格確認等システムを導入し、患者に関する十分な情報を活用して調剤を実施することを評価するための加算です。2024年度(令和6年度)診療報酬改定で、従来の「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」から名称が変更され、2024年12月からは区分や点数、算定頻度が見直されました。

ポッポ先生
医療情報取得加算は、オンライン資格確認を導入した薬局で患者情報を活用して調剤を実施することを評価する加算です。単にシステムを導入するだけでなく、実際に患者情報を活用して薬学的管理を行うことがポイントです!
2024年度改定のポイントと変更点
医療情報取得加算は、2024年度の診療報酬改定、さらに2024年12月の変更によって大きく見直されました。以下に主な変更点をまとめます。
2024年12月以前(2024年4月~11月)の算定
区分 | 対象 | 点数 | 算定頻度 |
---|---|---|---|
医療情報取得加算1 | 健康保険証での受付 | 3点 | 6月に1回 |
医療情報取得加算2 | マイナ保険証での受付 | 1点 | 6月に1回 |
2024年12月以降の算定
区分 | 対象 | 点数 | 算定頻度 |
---|---|---|---|
医療情報取得加算 | 健康保険証・マイナ保険証問わず | 1点 | 12月に1回 |
なぜ区分が一つになって、算定頻度が12ヶ月に1回に変わったのですか?

オカメインコ

ポッポ先生
2024年12月から健康保険証の新規発行が終了し、マイナ保険証への移行が進められているためです。区分の一本化と算定頻度の見直しは、マイナンバーカードの保険証利用の普及を踏まえた変更と言えるでしょう!
算定要件と施設基準
算定要件
医療情報取得加算を算定するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 施設基準を満たす保険薬局であること
- 調剤に係る十分な情報を取得・活用して調剤を行うこと
- 調剤管理料を算定していること
- 同一患者につき12月に1回に限り算定
施設基準
医療情報取得加算の施設基準は以下の4つです。
- 電子情報処理組織(電子レセプト)を使用した診療報酬請求を行っていること
- オンライン資格確認を行う体制を有していること
- オンライン資格確認の導入時には、医療機関等向けポータルサイトで運用開始日の登録が必要
- 次の事項を薬局の見やすい場所に掲示していること
- オンライン資格確認を行う体制を有していること
- 患者に対し、薬剤情報、特定健診情報その他必要な情報を取得・活用して調剤等を行うこと
- 上記の掲示事項をウェブサイト等に掲載していること
- 2025年5月31日までは経過措置あり

ポッポ先生
施設基準の届出は不要ですが、要件を満たしていることを常に確認しておくことが大切です。特に掲示やウェブサイトへの掲載は忘れがちなので注意しましょう!
情報取得と薬歴記載のポイント
医療情報取得加算を算定する際には、患者から以下のような情報を取得し、薬剤服用歴等に記載する必要があります。
取得すべき情報
- 患者の体質に関する情報
- アレルギー歴
- 副作用歴
- 薬学的管理に必要な患者の生活像
- 後発医薬品の使用に関する患者の意向
- 疾患に関する情報
- 既往歴
- 合併症
- 他科受診において加療中の疾患に関する情報
- 併用薬等の情報
- 要指導医薬品、一般用医薬品、医薬部外品、健康食品の使用状況
- 服用薬と相互作用が認められる飲食物の摂取状況
- 服薬状況等に関する情報
- 服薬アドヒアランス
- 服薬に関する問題点
これらの情報は、患者さんに直接聞くだけでいいのでしょうか?オンライン資格確認から得られる情報はどのように活用すればいいですか?

オカメインコ

ポッポ先生
オンライン資格確認システムから取得できる「薬剤情報」「特定健診情報」などの情報と、患者さんから直接聞き取った情報を組み合わせることが重要です。例えば、システムから他の医療機関で処方されている薬剤を確認し、重複投薬や相互作用のチェックを行いましょう!
薬歴記載のポイント
薬歴への記載は、以下のポイントを押さえると良いでしょう。
- 取得した情報を具体的に記載
- 「オンライン資格確認により確認」などの記載があると良い
- 情報源(患者本人、オンライン資格確認システム等)を明記
- 情報活用による薬学的判断や対応を記載
- 重複投薬のチェック結果
- 相互作用の確認結果
- 必要に応じた処方医への情報提供内容
- 次回の服薬指導に活かせるよう整理して記載
- 新たに得られた情報と以前からの情報を整理
- 経時的な変化がわかるよう記録

ポッポ先生
薬歴記載は単なる事務的な作業ではなく、次回以降の質の高い服薬指導につなげるための重要なプロセスです。実際に情報を活用した内容や、それによる判断を具体的に記載することを心がけましょう!
算定時の注意点とよくある質問
算定タイミングと注意点
- 12ヶ月に1回の算定
- 例:2024年12月15日に算定した場合、次回は2025年12月1日以降に算定可能(2025年12月15日からではない)
- 医療機関ごとではなく患者ごとの算定
- 同一患者が複数の医療機関からの処方箋を持参した場合でも、医療機関ごとに算定することはできない
- 患者単位で12ヶ月に1回のみ算定可能
- 従来の医療情報・システム基盤整備体制充実加算からの移行
- 医療情報・システム基盤整備体制充実加算を算定した場合、その後6ヶ月間は医療情報取得加算を算定できない
- 2024年12月以降の取扱いについては今後の疑義解釈等を確認する必要がある
患者さんが情報提供に同意しなかった場合や、マイナ保険証の読み取りがうまくいかなかった場合はどうすればいいですか?

オカメインコ

ポッポ先生
患者さんが一部でも情報提供に同意しなかった場合や、マイナ保険証が破損等で利用できない場合でも、算定は可能です。ただし、患者さんには情報活用のメリットを丁寧に説明し、同意を得られるよう努めることが大切です!
オンライン資格確認ができない場合の対応
以下のようなケースでオンライン資格確認ができない場合の対応を理解しておきましょう。
- システム障害時の対応
- 一時的なシステム障害の場合は、従来の方法で資格確認を行い、後日オンライン資格確認を行う
- 長期にわたるシステム障害の場合は、保険者に問い合わせる
- マイナ保険証の破損・読み取り不能時の対応
- 患者の同意を得て、券面の情報を入力することでオンライン資格確認を行う
- 健康保険証を使用して資格確認を行う
- ネットワーク環境の不具合時の対応
- 薬局のネットワーク環境を確認し、適切に修復する
- 一時的に従来の方法で資格確認を行う
医療情報取得加算と医療DX推進体制整備加算の違い
医療情報取得加算と混同されやすい医療DX推進体制整備加算について、その違いを理解しておきましょう。
項目 | 医療情報取得加算 | 医療DX推進体制整備加算 |
---|---|---|
目的 | オンライン資格確認を導入した薬局で患者情報を活用して調剤を実施することを評価 | オンライン資格確認の体制に加え、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスを導入するなど医療DXに対応する体制を評価 |
加算対象 | 調剤管理料 | 調剤基本料 |
点数 | 1点 | 4点~8点(区分により異なる) |
算定頻度 | 12月に1回 | 処方箋受付1回につき |
2024年の見直し時期 | 2024年12月 | 2024年10月 |

ポッポ先生
両者は似ていますが、医療情報取得加算は「情報を取得し活用することを評価した点数」、医療DX推進体制整備加算は「体制を評価した点数」という違いがあります。算定できる場合は両方とも算定するようにしましょう!
実務での運用のポイント
局内掲示と患者説明
- 局内掲示の工夫
- 患者の目につきやすい場所(受付カウンター付近など)に掲示
- わかりやすい表現で、簡潔に記載
- 必要に応じて図やイラストを活用
- 患者説明時のポイント
- オンライン資格確認のメリット(正確な情報に基づく調剤、重複投薬の防止など)を説明
- 情報提供の同意を得る際は、プライバシー保護の取り組みも併せて説明
- マイナ保険証の利用方法を丁寧に案内
ウェブサイト掲載のポイント
- 掲載場所
- トップページや「お知らせ」など、見つけやすい場所に掲載
- 「当薬局の取り組み」といったコーナーを設ける
- 掲載内容
- オンライン資格確認を行っていること
- 患者情報を活用して調剤を行う旨
- 患者のメリット(安全な薬物療法の提供など)
- 経過措置の活用
- 2025年5月31日までの経過措置を活用しつつ、早めに対応
うちの薬局はウェブサイトを持っていないのですが、どうすればいいでしょうか?

オカメインコ

ポッポ先生
薬局独自のウェブサイトがない場合は、チェーン薬局のグループサイトや、自治体・地域薬剤師会のホームページなどに掲載する方法もあります。疑義解釈資料にもあるように、公的な場所での情報公開が認められています!
薬剤師の教育と研修
- オンライン資格確認システムの操作研修
- 操作方法を全スタッフが理解する
- トラブル発生時の対応も含めて研修
- 個人情報保護に関する教育
- 情報セキュリティに関する基本的な知識
- 患者情報の適切な取り扱い方法
- 薬学的管理への活用方法の共有
- 取得した情報の薬学的管理への活用事例の共有
- 事例検討会の実施
まとめ
医療情報取得加算は、オンライン資格確認システムの導入と患者情報の活用を評価する加算です。2024年12月からは区分が一本化され、算定頻度も12ヶ月に1回となりました。以下のポイントを押さえて適切に対応しましょう。
- 施設基準の確認
- 電子レセプト請求を行っていること
- オンライン資格確認体制を整備していること
- 院内掲示とウェブサイト等への掲載を行っていること
- 情報活用と薬歴記載
- 患者の体質、疾患、併用薬等の情報を取得・活用
- 情報活用による薬学的判断や対応を具体的に記載
- 算定タイミングの注意
- 患者ごとに12ヶ月に1回のみ算定可能
- 複数医療機関からの処方箋でも1回のみ
- 患者へのメリット説明
- 安全な薬物療法の提供
- 重複投薬や相互作用の防止
情報を単に取得するだけでなく、実際の薬学的管理に活かすことが重要です。医療DXが進む中、薬剤師が情報を適切に活用し、患者の安全な薬物療法に貢献する取り組みを進めていきましょう。

ポッポ先生
医療情報取得加算は、点数は少なくても患者さんの安全な薬物療法を提供するための重要な役割を担っています。マイナ保険証の利用促進とともに、患者情報を活用した質の高い服薬指導を行っていきましょう!