目次
薬局での抗原検査キットの運用を考えましょう
薬局で医療用の抗原検査キットの販売が認められました。この抗原検査キットの活用は、今後の新型コロナとの付き合い方でとても重要になってくると思います。
今回は薬局で取り扱う医療用の抗原検査キットについて理解し、薬局にいる薬剤師全員が適切に販売できるようにしてください。
医療用と研究用の抗原検査キット何が違うの?
薬局で抗原検査キット発売!と聞いても、中には「今までも販売してたじゃん?」と思う方もいるかもしれませんが、全然違います。
今まで一部の薬局、ドラッグストアで販売していたコロナの検査キットはあくまでも”研究用“であり、国が検査の性能をチェックしていない、よくわからない代物なのです。(なのでこれから抗原検査キットを買う場合は、医療用を購入するようにしてください)
るるーしゅ
先日、未承認の抗原検査キットを不適切に販売し、役員が逮捕されたニュースがありました。その際に、販売していた未承認の抗原検査キットの性能についても触れられていました。
医療用と比較して、数百分の1の確率でしかウイルスを検出できないようです。(つまり検査結果がものすごく不適切というわけです)
新型コロナの検査方法について
ちょっとここで、新型コロナの検査方法の確認をしようと思います。
検査種類 | 抗原定性検査 | 抗原定量検査 | PCR検査 |
調べるもの | ウイルスを特徴づける たんぱく質(抗原) | ウイルスを特徴づける たんぱく質(抗原) | ウイルスを特徴づける遺伝子配列 |
精度 | 検出には、一定以上の ウイルス量が必要 | 抗原定性検査より少ない量の ウイルスを検出できる | 抗原定性検査より少ない量の ウイルスを検出できる |
検査実施場所 | 検体採取場所で実施 | 検体を検査機関に搬送して実施 | 検体を検査機関に搬送して実施 |
判定時間 | 約30分 | 約30分+検査機関への搬送時間 | 数時間+検査機関への搬送時間 |
薬局で販売されるものは抗原検査(定性)ですね。
症状がある方の鼻咽頭もしくは鼻腔から検体で判断ができますが唾液ではダメ(まだ研究中)です。
精度としては、一定以上のウイルスが必要なので無症候性の方には不適とされています。
COVID-19病原体検査の指針によると、無症候性の方への抗原検査キットは、以下のように記載されています。
確定診断としての使用は推奨されないが、感染拡大地域の医療機関や高齢者施設等において幅広く検査を実施する際に スクリーニングに使用することは可能。ただし、結果が陰性の場合でも感染予防策を継続すること、また、結果が陽性の場合であって医師が必要と認めれば核酸検出検査や抗原定量検査により確認すること。
薬局での販売の際に注意すること(厚生労働省の通知より)
さて、それではどのように運用するか厚生労働省から出ている通知を基に考えてみましょう。
今般の対応については、新型コロナウイルスの感染が拡がる中、抗原検査キットをより入手しやすくし、家庭等において、体調が気になる場合等にセルフチェックとして自ら検査を実施できるようすることで、より確実な医療機関の受診につなげ、感染拡大防止を図るため、特例的に、新型コロナウイルス感染症に係る医療用抗原検査キットを薬局で販売することを差し支えないこととするものであること。
早期に発見して、他者に感染する前に隔離出来れば、感染拡大を予防できるだろうという考えからだと思います。
医療用抗原検査キットは、無症状者に対する確定診断には推奨されず、有症状者であってもウイルス量が少ない場合には、感染していても、結果が陰性となる場合があるため、陰性であったとしても引き続き感染予防策を講じる必要があること。
無症状の方の場合、陽性と出ても事前確率によって真陽性か偽陽性か変わってくるため、PCR検査で確認しましょうねという意味ですね。また偽陰性の可能性もあるため、症状のある方は陰性だからといって会社への出勤、学校の登校はダメです。
体調不良等の症状を感じる者が購入のために来局することは、感染対策の観点から避けるべきであり、そのような場合は医療機関を受診するものであること。
新型コロナの罹患を疑う場合は、医療機関でPCR検査等で対応したほうがいいということです。ただこの体調不良も白黒はっきりするというよりは、グレーなものだと思うので、そう切り分けられるものでもないかもしれないなと思うところもあります。
医療用抗原検査キットは、薬機法における薬局医薬品として取り扱われるものであり、販売に当たっては、
・ 薬剤師により、必要な情報提供や薬学的知見に基づく指導を行うとともに、適正な使用を確保できないと認められる場合は、販売又は授与してはならないこと
・ 販売した数量や日時、情報提供や指導の内容を理解したことの確認結果の保存等が求められていること等を踏まえ、丁寧な説明や、販売に当たっての記録の保存等を適切に行う必要があること。
薬局医薬品として扱うため、「検査キットください」「はい、2980円です」といった内容ではなく、しっかりと説明することをしっかり説明し、記録に残すことはしっかり記録に残しましょう。
また薬局医薬品のため、調剤併設していないドラッグストアだと取り扱えないですね。(なのでこういうところでは研究用を売るのかもしれないです)
販売に当たっては、使用しようとする者(同居家族等を含む。)に対し販売することとし、以下の対応を適切に行うこと。
(1)症状がある場合は医療機関を受診することを原則とし、家庭等において、体調が気になる場合等にセルフチェックとして使用するものであり、
・ 陽性であった場合は、医療機関を受診すること
・ 陰性の場合でも、偽陰性の可能性も考慮し、症状がある場合には医療機関を受診すること、症状がない場合であっても、引き続き、外出時のマスク着用、手指消毒等の基本的な感染対策を続けること
等について、丁寧に説明を行うこと。
あわせて、必要に応じ、地域の医療機関等と相談の上、受診可能な医療機関や受診・相談センターの連絡先のリスト等を作成、配布する等の対応を行うこと。
(2)検査の実施方法等について、十分に理解できるよう、別添1も活用しながら、説明を行うこと。その際、特に、
・ 検査の実施方法等について十分に理解し、自ら検体を採取すること
・ 採取できる者は実施方法等を理解し、自立して自己採取可能な者とし、困難な者は対象としないこと
について、丁寧に説明を行うこと。
また、販売に当たっては、外箱の写しなど薬機法第 50 条に規定する事項を記載した文書及び同法第 52 条に規定する添付文書又はその写しの添付を行うこと。販売価格については、社会的にみて妥当適切なものとすること。
(3)(1)及び(2)の内容を理解していることを確認するため、別添2に署名を求めること。
(4)薬局医薬品を販売した場合は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和 36 年厚生省令第1号。以下「薬機法施行規則」という。)第 14 条第3項の規定により、品名、数量、販売の日時等を書面に記載し、2年間保存しなければならないこと。
(5)薬機法施行規則第 158 条の7の規定により、他の薬局からの購入等の状況を確認した上で、適正な使用のために必要と認められる数量に限って販売することとされており、販売にあたっては、使用しようとする者(同居家族等を含む。)への販売であることを踏まえ、適切に対応すること。
るるーしゅ
購入者に説明することと、購入者に署名してもらう必要、販売記録をしっかりと記録する、これはちゃんとやりましょう。
また陽性時などにどこの医療機関につなぐかもあらかじめ把握しておく必要があります。ここから調べよう。
るるーしゅ
これが購入者に署名してもらう別添2ですが、これに品名、数量、販売の日時を追加してファイリングしておくってどうですかね?
(詳しい方、教えてください)
薬局での対応事例を検討
ケース1:症状がある方への対応事例について
それでは発熱や咳の症状がある方への対応です。厚生労働省の見解としては事前に購入しておくことが望ましいとのことですが、そうはいっても風邪っぽいから念のため、買いに来たっていう人も出てくるでしょう。
これ、保健所なのかな?このあたりの運用がよくわかりませんが、自分の薬局のまわりで新型コロナ患者へ対応できる病院やクリニックを事前に把握しておかなきゃいけないですよね。
症状があったけど、検査が陰性だった場合、「仕事や学校に行ってもいいですか?」的なのが来るかもしれませんが、ダメゼッタイです。
理由は、抗原検査は感度が低く、一定数、新型コロナ陽性であっても見逃すからです。
というか新型コロナじゃなくても風邪のときに仕事や学校には行ってはいけないというのを当たり前にしていきたいです。(といいつつ、医療現場でもなかなか休めなかったりしますよね…)
また陰性の場合でも、3日過ぎても症状が強い方や、リスク因子がある方は、新型コロナの検査のできる病院やクリニックを紹介する必要がありますよね。
るるーしゅ
新型コロナに罹患したらハイリスクになる方が、薬局で購入できる抗原検査キットで検査して、偽陰性が出て、処置が遅れてしまうことのないように配慮しなきゃダメ。
ケース2:症状がない方への対応事例について
つづいて症状のない方の対応ですが、症状がない方でも濃厚接触者と、そうじゃない方で分けることができると思います。
それでは濃厚接触者で陽性と出た場合は、やっぱりしかるべき場所につなぐ必要がありますよね。また薬局に濃厚接触者なのに薬もらいに来るという事例、耳にしますのでちゃんと自宅待機しているように言うのも忘れないようにしましょう。
食料品などは自治体が提供してくれる場合もあるので、そういったところも確認しておく必要があります。またネットスーパーの利用の情報などもアドバイスできるといいと思います。
濃厚接触者の陰性だった場合の対応です。陰性だからといって仕事や学校には行ってはいけません。
ただ先日、イギリスの医学誌ランセットに毎日、迅速検査を実施し陰性ならば学校に行くのと、10日間隔離で感染拡大の影響に差はなかったという結果が出ていましたので、今後変わる可能性はあります。
また医療従事者には例外規定が設けられています。
- 他の医療従事者による代替が困難な医療従事者であること。
- 新型コロナウイルスワクチンを2回接種済みで、2回目の接種後 14 日間経過した後に、新型コロナウイルス感染症患者と濃厚接触があり、濃厚接触者と認定された者であること。
- 無症状であり、毎日業務前に核酸検出検査又は抗原定量検査(やむを得ない場合は、抗原定性検査キット)により検査を行い陰性が確認されていること。
- 濃厚接触者である当該医療従事者の業務を、所属の管理者が了解していること。
医療従事者である濃厚接触者に対する外出自粛要請への対応についてより
この通知が2021年8月に出ましたが、薬局スタッフは正直毎日、検査することは現実的ではありませんでしたからね。今回ので薬局で”医療用”が購入できるようになると、上記の対応が可能になるかもしれません。
最後に、症状もないけど検査して安心したい人への対応です。何の心当たりがない人でも陽性と出たら、しかるべき場所へつなぐのはもちろんです。
陰性の場合は、「他者へ感染させるリスクは低そうです。でもだからといって羽目を外すのはオススメしません」くらいでしょうか。
最後に
今回は薬局で抗原検査キットを販売した際の対応例について考えてみました。
イギリスなどでは、新型コロナは三分の1が無症候性であり、他者への感染リスクがあることから、抗原検査キットを無料で配布し定期的に検査するように促しています。
日本では、販売の際の説明ひな形に、無症状者への使用は推奨されていません。という記載がされていて、なかなか使いづらいです。
抗原検査キットは、PCR検査と比較して感度が低いことは事実かもしれませんが、PCR陽性=他者への感染リスクを有しているわけではありません。
抗原検査キットは、Ct値が30未満の際にはそこそこの感度(75%)を示すようです。これは他者への感染リスクが高い患者には割と機能するということです。
Ct値については、〇〇だったら感染性はないというカットオフ値はまだないようです(検査機器によってCt値も変わったりするようですし)
ただ30超えると、ウイルス量は少ないと判断されるようです
どこまでゼロリスクを求めるかにもよりますが、今後新型コロナと経済のバランスを取る際には、この無症状者の際には抗原検査キット陰性というので線を引く可能性が高いと思っています。
新型コロナに罹っている人を隔離するのではなく、新型コロナの感染を拡大する人を隔離するという考え方にシフトす
るるーしゅ
薬局での販売に消極的な人もいるようですが、是非ともしっかりと販売し、地域住民の健康情報拠点として活躍してほしいです。