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特定薬剤管理指導加算3とは?知っておくべき基本事項
特定薬剤管理指導加算3は、2024年度(令和6年度)の調剤報酬改定で新設された加算です。この加算は、患者に対して特に丁寧な説明が必要となる薬剤が処方されている場合に、薬剤師による適切な情報提供と指導を評価するものです。服薬による副作用や相互作用などのリスク管理を目的とした指導、および選定療養の対象となる先発医薬品の使用を希望する患者への説明や指導などを行うことで算定できます。

ポッポ先生
特定薬剤管理指導加算3は、薬剤師の専門性を活かした丁寧な服薬指導を評価する点数です。単なる説明ではなく、患者さん一人ひとりに合わせた重点的な服薬指導が求められています!
特定薬剤管理指導加算3には「イ」と「ロ」の2つの区分があり、それぞれ算定要件と点数が異なります。また、2025年4月からは特定薬剤管理指導加算3の「ロ」については、点数が引き上げられるなど重要な変更点があります。
算定点数
特定薬剤管理指導加算3の点数は以下の通りです
「イ」と「ロ」って何が違うんですか?それぞれどんな場合に算定できるのでしょうか?

オカメインコ
「イ」と「ロ」の算定要件と対象となる医薬品
特定薬剤管理指導加算3「イ」の算定要件
特定薬剤管理指導加算3「イ」は、以下の場合に算定できます
- 患者向けRMP資材を用いた指導:患者向けの医薬品リスク管理計画(RMP)のある医薬品が新たに処方され、RMPに係る情報提供資材を用いた指導をした場合に算定できます。
- 緊急安全性情報等による指導:緊急安全性情報(イエローレター)、安全性速報(ブルーレター)が新たに発出された際に、安全性に関する情報提供と指導をした場合に算定できます。
ただし、以下の場合は算定できません

ポッポ先生
患者向けRMP資材は医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトで確認できます。「RMP提出品目一覧」で検索して、最新の情報を入手するようにしましょう!
特定薬剤管理指導加算3「ロ」の算定要件
特定薬剤管理指導加算3「ロ」は、以下の場合に算定できます
- 選定療養に関する説明:選定療養の対象となる先発医薬品(長期収載品)を希望する患者に対して説明をした場合に算定できます。この場合、説明の結果、後発医薬品を選択したとしても算定可能です。
- 医薬品供給不安定に関する説明:医薬品供給不安定を理由に、前回と異なる銘柄で調剤・交付する必要があることを説明した場合に算定できます。
選定療養って2024年10月から始まったんですよね?実際どのように説明すればいいのでしょうか?

オカメインコ
長期収載品の選定療養制度について
2024年10月1日から、後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の処方または調剤について選定療養費制度が導入されました。この制度では、医療上の必要性がなく患者が先発医薬品を希望する場合、追加の費用負担が発生します。
選定療養の対象
選定療養の対象となるのは、以下の条件を満たす場合です
- 後発医薬品が存在する先発医薬品(長期収載品)
- 医療上の必要性がない場合(患者の嗜好による選択)
- 薬局において後発医薬品の提供が可能な場合
医療上の必要性がある場合(選定療養の対象外)
以下の場合は、医療上の必要性があると認められ、選定療養の対象外となります
- 患者が後発医薬品の使用により症状が悪化した経験がある場合
- 副作用歴、アレルギー歴等に鑑み、後発医薬品の使用に患者の不安がある場合
- 後発医薬品の添加物により症状が悪化するおそれがある場合
- 薬剤師の判断により、先発医薬品の使用が必要と認められる場合

ポッポ先生
選定療養の対象となる場合でも、対象外となる場合でも、薬歴への記録は欠かせません!特に薬剤師判断で先発医薬品を調剤する場合は、その理由を詳細に記録し、処方元への情報提供も必要です。
患者への説明と費用
患者への説明では、以下の点を伝えることが重要です
- 先発医薬品と後発医薬品の違い
- 選定療養を選択した場合の追加費用
- 追加費用の計算方法(長期収載品と後発医薬品の価格差の1/4)
追加費用は「長期収載品の薬価」と「後発医薬品の最高価格帯の薬価」との差額の1/4に相当する金額になります。この特別料金には消費税も加算されます。
算定上の注意点と記録方法
共通の算定要件
特定薬剤管理指導加算3「イ」「ロ」に共通する算定要件は以下の通りです
- 初回限定:患者1人につき当該品目に関して最初に処方された1回に限り算定可能です。
- 薬歴への記録:薬剤服用歴等には対象となる医薬品が分かるように記載する必要があります。
- 他の加算との関係:特定薬剤管理指導加算1および特定薬剤管理指導加算2と併算定が可能です。
「最初に処方された1回」というのは、その患者さんにとって初めて処方された場合のことですよね?以前から使っている薬でも、私たちの薬局で初めて調剤するなら算定できるのでしょうか?

オカメインコ

ポッポ先生
患者さんにとって初めて処方された場合に算定可能です。以前から使用していても、薬剤師が重点的な服薬指導が必要と判断し、必要な説明・指導を行った場合には初回に限り算定できますよ!
レセプト記載事項
特定薬剤管理指導加算3「ロ」で医薬品供給不安定を理由に説明を行った場合は、調剤報酬明細書の摘要欄に「調剤に必要な数量が確保できなかった薬剤名」を記載する必要があります。
「イ」と「ロ」の併算定
2024年度の疑義解釈資料によると、1回の処方で「イ」に該当する医薬品と「ロ」に該当する医薬品が同時に処方されている場合、「イ」と「ロ」をそれぞれ算定可能です。同一の医薬品が「イ」と「ロ」の両方に該当する場合も、それぞれの観点で必要な説明をしていれば算定可能とされています。
実践のためのポイント
RMP資材の入手方法
RMP資材を入手するためには、以下の方法があります
- PMDAのウェブサイトで「RMP提出品目一覧」を検索
- 製薬企業のウェブサイトで確認
- MRに依頼する

ポッポ先生
患者向けRMP資材がない医薬品については算定できませんので、事前に確認しておくことが大切です!資材を準備しておくことで、スムーズな服薬指導が可能になります。
選定療養に関する説明のポイント
選定療養に関する説明では、以下のポイントを押さえることが重要です
- 後発医薬品と先発医薬品の違い
- 選定療養を選択した場合の追加費用
- 患者の意向確認と記録
具体的な金額はどのように計算するんですか?患者さんに分かりやすく説明するためのツールはありますか?

オカメインコ

ポッポ先生
厚生労働省のウェブサイトには「後発医薬品との価格比較リスト」が公開されています。また、試算ツール用すると、具体的な金額を簡単に確認できますよ!
薬歴記載のポイント
薬歴には以下の内容を記載することが望ましいです
- 対象となる医薬品名
- 説明・指導内容の要点
- 患者の反応や選択
- 選定療養の場合は、患者の希望理由
まとめ:薬剤師が押さえるべきポイント
特定薬剤管理指導加算3を適切に算定するためには、以下のポイントを押さえておきましょう
- 最新情報の把握:RMP資材や選定療養に関する最新情報を常に確認する
- 丁寧な説明と記録:患者への丁寧な説明と薬歴への詳細な記録を心がける
- 併算定の理解:特定薬剤管理指導加算1、2との併算定や「イ」「ロ」の併算定について理解する
- 患者中心の対応:患者の理解度や希望を尊重した対応を心がける
特定薬剤管理指導加算3は、薬剤師の専門性を活かした丁寧な服薬指導を評価する加算です。点数は少なくとも、患者のためになる丁寧な説明と指導を行うことで、医療の質向上に貢献できます。2025年4月からは「ロ」の点数が5点から10点に引き上げられることも踏まえ、積極的に算定を検討しましょう。

ポッポ先生
特定薬剤管理指導加算3は単なる点数アップの手段ではなく、患者さんへの質の高い医療提供のツールです。これを機に、より専門性の高い服薬指導を心がけましょう!
参考資料
- 令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
- 疑義解釈資料の送付について(その1)|厚生労働省 令和6年3月28日
- 疑義解釈資料の送付について(その8)|厚生労働省 令和6年6月18日
- 後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について|厚生労働省
- RMP提出品目一覧|医薬品医療機器総合機構(PMDA)