災害や新興感染症発生時に対応できる体制を整えている薬局を評価する「連携強化加算」。2024年改定で点数アップ・要件変更があり注目を集めています。本記事では、算定のポイントを薬剤師目線でわかりやすく解説します。
目次
連携強化加算とは?2024年度改定のポイント
連携強化加算は、災害や新興感染症の発生時などにおいても薬局が継続して地域の医薬品供給や衛生管理に関する対応等を維持できる体制を評価する加算です。2022年度診療報酬改定で新設され、2024年度の改定で大きく見直されました。

ポッポ先生
連携強化加算は、調剤基本料1・2・3に5点加算できる点数です。以前は地域支援体制加算の届出が必要でしたが、2024年改定でこの条件が外れ、より多くの薬局が算定しやすくなりました!
2024年度改定での主な変更点
項目 | 改定前 | 改定後 |
---|---|---|
点数 | 2点 | 5点(+3点) |
届出要件 | 地域支援体制加算の届出が必須 | 地域支援体制加算の届出は不要 |
施設基準 | – | 第二種協定指定医療機関の指定が必須 |
体制整備 | – | オンライン服薬指導体制の整備が必須 |
点数が2点から5点になったんですね!でも、第二種協定指定医療機関って何ですか?

オカメインコ
連携強化加算の算定要件
連携強化加算は、他の保険薬局、保険医療機関及び都道府県等との連携により、災害または新興感染症の発生時等の非常時に必要な体制が整備されている保険薬局において、調剤をおこなった場合に算定できます。
算定できる調剤
- 調剤基本料1
- 調剤基本料2
- 調剤基本料3
※特別調剤基本料A・Bは算定対象外です。
算定点数
- 5点(調剤基本料に加算)
施設基準(9つの要件)
連携強化加算を算定するには、以下の施設基準を満たす必要があります。
1. 第二種協定指定医療機関の指定を受けていること
「第二種協定指定医療機関」とは、2024年4月1日に施行された改正感染症法に基づき、都道府県と医療機関の間で医療措置協定を締結した医療機関のことです。薬局は「自宅療養者等に対する医療の提供」を行うため、第二種協定指定医療機関に該当します。

ポッポ先生
第二種協定指定医療機関の指定を受けるためには、都道府県に申請を行い、医療措置協定を締結する必要があります。協定締結には約2ヵ月かかるため、余裕をもって申請しましょう!
指定を受けるための主な要件
- 最新の知見に基づき、適切な感染防止等の措置を実施できること
- 感染症発生時に都道府県知事からの要請により、外出自粛対象者に対して医薬品等対応(調剤・交付・服薬指導等)ができること
2. 感染症対応に係る研修・訓練を年1回以上実施
感染症対応に関する研修・訓練を年1回以上実施する必要があります。公益社団法人日本薬剤師会の「感染対策に関する研修プログラム」などを活用しましょう。
3. 個人防護具の備蓄
マスクやガウン、手袋、フェイスシールドなどの個人防護具を備蓄しておくことが求められます。
4. 要指導・一般用医薬品および検査キットの提供体制
新型インフルエンザ等感染症などの発生時に必要となる要指導医薬品、一般用医薬品、検査キット(体外診断用医薬品)、感染症対応に必要な衛生材料などを提供できる体制を整備します。
検査キットの販売も必要なんですね。どういった種類のものが必要ですか?

オカメインコ

ポッポ先生
新型インフルエンザや新興感染症に対応できるよう、様々な種類の検査キットを取り扱う必要があります。単に最低限の品目を有しているだけでは不十分で、患者さんの症状に応じて適切な医薬品や検査キットが選択できるようにしましょう。
5. 自治体からの要請に対応できる体制
自治体からの要請に応じて、避難所・救護所などにおける医薬品の供給または調剤所の設置に係る人員派遣等の協力などをおこなう体制が整備されていることが求められます。
6. 災害対応に係る研修・訓練を年1回以上実施
災害対応に関する研修・訓練を年1回以上実施する必要があります。
7. 災害や新興感染症発生時の対応手順書の作成
災害や新興感染症発生時における薬局の体制や対応について、それぞれの状況に応じた手順書などを作成しておきます。
8. オンライン服薬指導体制の整備
情報通信機器を用いた服薬指導をおこなう体制を整備する必要があります。これは、厚生労働省が公表している「オンライン服薬指導の実施要領について」に基づき、3省2ガイドラインの情報セキュリティ要件を満たすことが求められます。

ポッポ先生
オンライン服薬指導の体制整備には、単に機器を導入するだけでなく、薬局内の保険薬剤師に必要な知識を習得させるための研修実施も必要です。オンライン服薬指導を専門に扱うシステムの導入が望ましいでしょう。
9. サイバーセキュリティ対策の実施
「薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」及び関連マニュアルを活用し、サイバー攻撃に対する対策を含めセキュリティ全般について適切な対応を行う体制を整えます。
連携強化加算の届出方法
新規に届け出る場合
新規に連携強化加算の届出を行う場合は、特掲診療料の施設基準に係る届出書(様式87の3の4)に必要事項を記入し、地方厚生局長等に提出します。2025年度も継続して算定する場合は、以下のポイントに注意しましょう。
- 各月の末日までに要件審査を終え、届出が受理されれば翌月1日から算定可能
- 月の最初の開庁日に要件審査を終え、受理された場合は当該月の1日から算定可能
経過措置を利用している場合
2024年3月31日時点で連携強化加算の届出を行っている薬局で、第二種協定指定医療機関の指定を受けていない場合は、2024年12月31日までの経過措置が適用されます。その後、2025年1月6日(最初の開庁日)までに届出を行う必要があります。
周知に関する要件
連携強化加算の施設基準では、災害または新興感染症の発生時などにおいて対応可能な体制を確保していることについて、当該保険薬局のほか、当該薬局の所在地の行政機関、薬剤師会等のホームページなどで広く周知することが求められています。
薬剤師会のホームページなどで公表する必要があるんですね。どのような情報を公表すればいいですか?

オカメインコ
以下のような情報を周知する必要があります
- 災害や新興感染症発生時の対応可能時間
- 連絡先
- 提供可能なサービス内容
- 検査キットの販売体制

ポッポ先生
単に厚生局の届出リストにリンクを貼るだけでは要件を満たしません。また、薬剤師会が会員のみを対象として情報を公表している場合も要件を満たしていないので注意が必要です。会員・非会員を問わず、市町村や地区単位で情報を整理・周知することが求められています。
連携強化加算取得のためのチェックポイント
第二種協定指定医療機関への申請
- 都道府県のホームページから協議フォームを確認
- 必要事項を入力して申請
- 協議内容に同意し、医療措置協定を締結
研修・訓練の実施
- 感染症対応の研修・訓練プログラムの選定
- 災害対応の研修・訓練プログラムの選定
- 年1回以上の実施と記録の保管
オンライン服薬指導体制の整備
- オンライン服薬指導対応のシステム導入検討
- 薬剤師向け研修プログラムの実施
- 情報セキュリティ対策の徹底
情報周知の徹底
- 薬局ホームページでの情報公開
- 行政機関や薬剤師会を通じた情報提供
- 薬局内外の見えやすい場所への掲示
連携強化加算が示す今後の薬剤師像・薬局像
連携強化加算は、薬局が非常時にも地域医療に貢献できる体制を評価するものです。この加算の新設と見直しは、今後の薬剤師や薬局に求められる役割の変化を示しています。
- 災害や感染症発生時の地域医療提供体制における薬局の重要性の高まり
- 平時からの連携体制整備の必要性
- 対面だけでなくオンラインも活用した医療提供
- 地域医療の一翼を担う薬局の機能強化

ポッポ先生
連携強化加算の算定を目指すことは、単に報酬面でのメリットだけでなく、地域における薬局の役割を見直し、強化するきっかけにもなります。非常時に貢献できる体制を整えることは、平時からの地域との信頼関係構築にもつながるでしょう。
まとめ:連携強化加算算定に向けて
連携強化加算は、2024年度改定で点数が2点から5点に引き上げられ、地域支援体制加算の届出要件が外れたことで、より多くの薬局が算定しやすくなりました。一方で、第二種協定指定医療機関の指定やオンライン服薬指導体制の整備など、新たな要件も追加されています。
体制整備には時間がかかりそうですね。いつから準備を始めるべきですか?

オカメインコ

ポッポ先生
特に第二種協定指定医療機関の指定には約2ヵ月かかるため、早めの準備が必要です。2025年も継続して算定するためには、経過措置の期限(2024年12月31日)にも注意しましょう。
連携強化加算の算定を通じて、薬局が地域医療において果たすべき役割を再認識し、災害や新興感染症の発生時にも頼られる存在となることを目指しましょう。