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メンタルが限界の薬剤師へ:応募しなくていい転職活動の始め方

限界のときに「転職しなきゃ」と思うほど、動けなくなります。朝、出勤前にスマホで求人を開いて、そのまま画面を閉じてしまう。あの感覚、心当たりありませんか。

疲れているのに眠れない。休みの日に何もできない。「このままじゃまずい」と頭ではわかっているのに、転職サイトに登録するエネルギーすら出ない。そんな状態で「よし、履歴書を書こう」なんて無理です。

だからこの記事では、応募しない転職活動の話をします。目的は内定ではなく、「逃げ道がある」と確認すること。選択肢が見えるだけで、気持ちの余白が少し戻ります。今の職場が世界のすべてじゃないと知ること。これだけで十分な一歩です。

まず前提:動けないのは”怠け”じゃない

誤解されやすいので先に言うと、動けないのは意志の問題ではありません。

WHO(世界保健機関)がICD-11で定義したバーンアウト(燃え尽き症候群)は、「適切に管理されていない慢性的な職場ストレスに起因するもの」とされています。怠けでも甘えでもなく、構造的なストレスの蓄積が原因です。

薬剤師の仕事は、対人援助職であると同時に、ミスが許されない高度な注意業務でもあります。処方監査、服薬指導、疑義照会、在庫管理——ひとつひとつは小さくても、これらが途切れなく続く環境では、心のエネルギーは確実にすり減ります。研究でも、対人援助職は燃え尽き症候群のリスクが高いことが繰り返し指摘されています。

でも、同僚は普通にやれてるし……自分だけダメなんじゃないかって思います

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

バーンアウトは、むしろ真面目に取り組んできた人ほど陥りやすいと指摘されています。使命感が強い人が消耗しやすいのは、複数の研究で共通する知見ですね

ここで私なら、まず「自分の状態がどのレベルか」を確認します。以下のサインがいくつか当てはまるなら、それは気合いで乗り越える段階ではない可能性があります。

サイン内容
情緒的消耗感仕事への感情がなくなった。患者さんへの関心が薄れた
脱人格化患者さんや同僚に対して冷淡になっている自覚がある
達成感の低下何をしても「意味がない」と感じる
身体症状不眠、食欲不振、朝起きられない、頭痛が続く

ただし、不眠や食欲不振が2週間以上続いている場合は、バーンアウトではなくうつ病の可能性もあります。その場合は転職活動の前に、まず医療機関(心療内科・精神科)への受診が優先です。ここを飛ばして転職を進めても、状態は改善しません。


応募しない転職活動の目的——安心材料を作る

「応募しない転職活動って、何の意味があるの?」と思うかもしれません。

目的はひとつ。「ここしかない」という思い込みを外すことです。

いまの状況だと、職場の不満も、将来の不安も、全部がひとかたまりになって「どうしようもない」に変わっていませんか。それは視野が狭まっているサインです。選択肢が見えなくなると、人は現状に縛られます。逆に「他にも場所はある」と知るだけで、現職への向き合い方が変わることがあります。

応募しない転職活動とは、具体的にはこういうことです。

  • 自分の条件を整理する(何が嫌で、何があれば続けられるか)
  • 求人の相場を見る(自分のスキルにどのくらいの値段がつくか)
  • 相談先を確保する(話を聞いてくれる人がいる状態を作る)

どれも、履歴書も職務経歴書もいりません。応募ボタンを押す必要もありません。

正直、それだけで気持ちが楽になるものですか?

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

心理学では”コントロール感”と呼びますが、自分に選択肢があると認識できるだけで、ストレスへの耐性が変わることが知られています。逃げ道を確認する行為自体が、メンタルケアの一部になりますね


最小行動①:条件の優先順位を3つだけ決める

いきなり理想の職場を描こうとすると詰まります。私ならまず「これだけは嫌」から考えます。

ポイントは、3つだけに絞ることです。5個も10個も挙げると、現実にはどこにも当てはまらなくなって、逆にしんどくなります。

考え方の例を挙げます。

ステップ1:「いま一番しんどいこと」を言語化する

  • 残業が月40時間を超えている
  • 人間関係で逃げ場がない
  • 年収が仕事量に見合わない
  • 通勤が片道1時間以上
  • やりがいがまったく感じられない

ステップ2:「どうなれば続けられるか」に変換する

  • 残業月20時間以内
  • 薬剤師3人以上の職場
  • 年収480万以上
  • 通勤30分以内
  • 在宅や専門領域に関われる

ステップ3:上位3つを選ぶ

ここ、迷いやすいところです。全部大事に思えるかもしれません。でも「もしこの3つが叶うなら、残りは我慢できるか?」と自分に聞いてみてください。それでOKが出たら、その3つがあなたの判断軸です。

でも、それすら考える気力がないんですけど……

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

その場合は、1つだけでいいです。「これだけは絶対に嫌」をひとつ決めるだけでも判断の起点になります。完璧にやる必要はありませんね

ただし、この作業は元気なときにやるのが前提です。落ち込みが強い日に無理に向き合うと、ネガティブな結論しか出ません。休日の午前中、少し調子がいいときに10分だけ。それで十分です。


最小行動②:相場を見る(求人を眺めるだけ)

条件が決まったら、次は「市場を見る」ステップです。ここでも応募はしません。眺めるだけです。

やることはシンプルで、薬剤師向けの求人サイトを1つ開いて、自分の条件に合う求人がどのくらいあるかを確認するだけです。

このとき意識したいのは、次の2点です。

① 自分の「相場感」を知る

  • いまの年収は業界的に高いのか低いのか
  • 自分の経験年数・スキルで、どの程度の条件が提示されるのか
  • 地域によってどのくらい差があるのか

厚生労働省の調査によると、薬局薬剤師のうち約23%が転職意向を持っているとされています。つまり、転職を考えること自体は決して珍しくありません。

② 「あるんだ」という感覚を持つ

求人が5件見つかるのか、50件見つかるのか。それを知るだけで、「自分には選択肢がある」という感覚が生まれます。いまの職場が「唯一の居場所」ではないと確認する。これが目的です。

どうですか? ここまで、まだ何も応募していませんよね。それでいいんです。

ポッポ先生

ポッポ先生

求人を見るときの注意点をひとつ。年収の表記は幅があるので、下限の数字で判断してください。「450万~600万」なら450万がベースと考えたほうが安全です

ただし、求人を見すぎるのも逆効果になることがあります。比較しすぎて「どれも微妙」「やっぱり無理」と感じ始めたら、それは疲れのサインです。1日15分、週に2回くらいが目安。ここは”がんばらないこと”がポイントです。


最小行動③:相談先を確保する(話すだけ・応募しない宣言)

3つ目の行動は、「話を聞いてくれる人」を確保することです。

ここ、心当たりありませんか。しんどい状況を一人で抱えていると、自分の判断が正しいのかどうかすらわからなくなります。「辞めたいのは甘えかも」「もう少し頑張るべきかも」——こういう堂々巡りは、一人では抜け出せません。

相談先は、大きく3つあります。

相談先メリット注意点
身近な人(家族・友人・同業の知人)気軽に話せる。共感してもらいやすい「辞めちゃえば?」か「もう少し頑張れば?」の二択になりがち
転職エージェント(薬剤師専門)市場の相場や選択肢を客観的に教えてもらえる成功報酬制のため、応募を急かされるケースもゼロではない
産業医・かかりつけ医・カウンセラーメンタル面の専門的な評価が受けられる転職の具体的な相談には向かない

私ならまず、エージェントと医療者を並行して確保します。「キャリアの相談先」と「体調の相談先」は別物です。どちらか一方では片手落ちになりやすい。

エージェント登録時に大事なのは、最初の面談で「いま応募するつもりはありません。情報収集だけです」と宣言することです。多くの薬剤師向け転職エージェントは、情報収集やキャリア相談だけの利用も可能とされています。登録=即応募ではありません。

エージェントに登録したら、電話がバンバン来るんじゃないですか? それがしんどい……

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

連絡の頻度や方法は、最初に「メール連絡のみ希望」と伝えれば対応してもらえることが多いです。それでも頻繁に来るようなら、担当者の変更をお願いするか、別のサービスに切り替えるのも手ですね


しんどい時に避けたい転職の失敗パターン

ここまで「応募しない」前提で話してきましたが、逆にやらないほうがいいことも整理しておきます。メンタルが落ちているときの転職活動には、独特の落とし穴があります。

NG①:勢いで応募する

「もう限界!」という夜に、一気に5社応募してしまう。現場だとここで詰まりがちです。

問題は、応募した翌日から選考のスケジュールが動き始めること。書類準備、面接日程の調整、企業研究——いま余裕がないから転職したいのに、転職活動自体がさらなる負担になります。不採用が続くと自己否定感が強まり、状態がさらに悪化するリスクもあります。

NG②:「どこでもいいから早く」の即決

条件をよく見ずに内定を承諾してしまうパターンです。逃げたい一心で決めた転職先が、前の職場と同じ構造的な問題を抱えていることは少なくありません。

NG③:退職してから考える

経済的なプレッシャーが加わると、焦りが倍増します。薬剤師は資格職なので再就職は比較的しやすいとはいえ、ブランクへの不安が新たなストレス源になります。「辞めてからゆっくり」は、メンタルに余裕があるときの戦略です。

NG④:誰にも言わずに進める

孤独な転職活動は判断ミスを招きやすいです。先ほど挙げた相談先のうち、最低1つは確保してから動くのが安全です。

全部当てはまりそうで怖いです……

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

だからこそ、いま応募しないことに意味があるんです。「動かない」のではなく、「動く準備を整えている」——この違いは大きいですよ


まとめ:回復と並走でいい

この記事でお伝えしたかったのは、転職活動は「応募」から始めなくていいということです。

もう一度、3つの最小行動を振り返ります。

  1. 条件の優先順位を3つだけ決める(「これだけは嫌」から始める)
  2. 相場を見る(求人を15分だけ眺める。応募しない)
  3. 相談先を確保する(エージェントには「情報収集のみ」と宣言する)

どれも10~15分でできることです。全部やらなくても、1つだけで構いません。

応募しなくて大丈夫です。「逃げ道がある」と知ること自体が、いまのあなたを支えてくれます。回復しながら、少しずつ準備を進める。その並走で十分です。

もしいま、身体的にも精神的にもつらい状態が続いているなら、転職の前に専門家への相談を優先してください。厚生労働省が運営する「こころの耳」(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)では、電話やメールでの無料相談窓口が案内されています。

あなたが「動けない」と感じていること自体が、これまでがんばってきた証拠です。いまは準備だけしておいて、動き出すのは少し元気が戻ってからで大丈夫。そのタイミングは、あなたが決めていいんです。

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