薬歴記載はAIで効率化!! 気になる方はこちらを!

薬局薬剤師のためのアンガーマネジメント|現場で「怒り」と上手に付き合う方法

「あの患者さん、なんで毎回こんなに怒るんだろう」「医師の処方意図がわからなくて、問い合わせたらなぜか責められた」——調剤の現場にいると、こうした場面に出会うことがあります。そのとき、自分の中にふっと湧いてくる苛立ちや怒り。それを押し殺して笑顔で対応するたびに、どこかがすり減っていく感覚、ありませんか。

薬剤師のバーンアウト率は約50〜75%という報告があり、医療職の中でも特に高い水準にあることがわかっています(PMID: 36408701)。そして怒りやストレスは、調剤過誤のリスク因子としても知られています(PMID: 11349750)。つまり、「怒り」をどう扱うかは、自分の心身を守るためだけでなく、患者さんの安全を守るためにも、避けて通れないテーマなのです。

この記事では、アンガーマネジメントの科学的なエビデンスをひもときながら、調剤薬局の現場で「今日から使える」実践的なアプローチをお伝えします。私自身、薬局薬剤師として、日々この課題と向き合いながら働いています。根性論ではなく、エビデンスに基づいた「判断の筋道」をお伝えしたいと思います。


そもそも「怒り」とは何か?——メカニズムを知ることが第一歩

怒りは、脅威や不公平を感知したときに生じる「自己防衛のための感情」です。扁桃体が危険を察知すると、交感神経が活性化し、心拍数が上がり、筋肉が緊張します。進化的には「戦うか逃げるか」の反応を引き起こすための仕組みでした。

ここ、迷いやすいところです。「怒り=悪いもの」と思っていませんか?

でも、怒りって抑えなきゃダメなんでしょ? 我慢するしかないのかな…

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

実は『抑える』より『調整する』という考え方が大切です。怒りそのものは自然な反応。問題は、その表現方法や持続時間なんですね。

最新のメタアナリシスによると、怒りと感情調整戦略の関係は明確なパターンを示しています(PMID: 39920186)。

感情調整戦略怒りとの関連解説
反芻(Rumination)正の相関(怒りを悪化)「なんであんなこと言われたのか」と繰り返し考える
抑制(Suppression)正の相関(怒りを悪化)感情を押し殺す、なかったことにする
回避(Avoidance)正の相関(怒りを悪化)問題から目をそらす
認知的再評価(Reappraisal)負の相関(怒りを軽減)状況の捉え方を変える
アクセプタンス(Acceptance)負の相関(怒りを軽減)感情をそのまま受け入れる

誤解されやすいので先に言うと、「我慢する」と「怒りを調整する」はまったく別のことです。

我慢(抑制)は実は怒りを長引かせるのに対し、認知的再評価やアクセプタンスは怒りを効果的に軽減させることが実証されています。


エビデンスが示す「効く」アンガーマネジメント法

では、科学的に「効果がある」とされているアプローチとは何でしょうか。私ならまず、以下の3つを確認します。

① 認知行動療法(CBT)ベースのアプローチ

1998年のBeckとFernandezによる画期的なメタアナリシスでは、認知行動療法による怒りの治療効果として、効果量(effect size)0.70が報告されました。これは、CBTを受けた人の76%が、受けていない人よりも怒りの軽減を示したことを意味します。

2009年の更新されたメタアナリシス(PMID: 20018996)では、96の研究を統合し、心理学的介入全体の効果量は0.76(95%CI: 0.67-0.85)でした。これは「中程度から大きい効果」に該当します。

正直、心理療法って時間もお金もかかりそうで、現実的じゃないんですが…

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

確かにそうですね。ただ、CBTの『考え方を変える』というエッセンスは、日常的なセルフワークでも取り入れられます。後ほど具体的な方法をお伝えしますね。

② マインドフルネス

2025年の最新メタアナリシスでは、118の研究(相関研究・介入研究含む)を統合し、マインドフルネス介入が怒りに対してd = -0.48、攻撃性に対してd = -0.61の効果を示すことが報告されました(PMID: 40222147)。これは「中程度の効果」に分類されます。

特に重要なポイント

この効果が様々な集団(臨床群、法医学群、健常成人、医療従事者、学生)で「ほぼ同等に」見られたという点です。つまり、医療従事者である私たちにも適用できる可能性が高いということです。

③ 覚醒を下げる活動(深呼吸・リラクゼーション)

2024年のメタアナリシス(154研究、10,189名)は非常に興味深い結果を示しました。

  • 覚醒を「下げる」活動(深呼吸、マインドフルネス、瞑想など)→ 効果量g = -0.63で怒りと攻撃性を有意に減少
  • 覚醒を「上げる」活動(サンドバッグを叩く、ジョギングなど)→ 効果量g = -0.02とほぼ効果なし

現場だとここで詰まりがちです。「イライラしたら運動して発散!」と思っている方、いませんか?

えっ、運動で発散って効かないんですか? ストレス解消にはジムがいいって言われてたのに…

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

運動自体はストレス解消に有効ですが、『怒りの直後に激しく動く』ことは、むしろ怒りを維持してしまう可能性があります。怒りを感じたときは、まず『クールダウン』。運動は落ち着いてからの方が効果的ですね。

逆に言うと、「怒りを感じたら、まず身体をクールダウンさせる」というのは、エビデンスに基づいた戦略なのです。


現場で今日から使える5つの実践テクニック

ここからは、調剤薬局の現場を想定した具体的な方法をお伝えします。すべてを一度に実践する必要はありません。いまの状況だと、まずは1つか2つを試してみるのが現実的です。

① 6秒ルール——反射的な反応を遅らせる

怒りのピークは6秒程度で過ぎるとされています。患者さんからの理不尽なクレームを受けたとき、まず6秒だけ「反応しない」ことを意識します。

具体的な方法

  • 心の中で6までカウントする
  • その間、深呼吸を1〜2回行う
  • 相手の言葉を「聞いている姿勢」を見せながら、内容には即座に反応しない

ただし、これには例外があります。患者さんが明らかに身体的な危険がある状態(低血糖など)で興奮している場合は、感情対応より先に医療的な対応が必要です。判断に迷ったら安全優先です。

② 深呼吸(横隔膜呼吸)——生理学的にクールダウンする

システマティックレビュー(PMID: 31436595)では、横隔膜呼吸がストレスマーカー(唾液コルチゾールなど)を生理学的に低下させることが示されています。

薬局でできる方法

  1. 調剤室の奥や休憩スペースへ一時退避(可能な場合)
  2. 4秒かけて鼻から吸い、4秒止め、6秒かけて口から吐く
  3. これを3回繰り返す(約1分)

ポイントは「腹式呼吸」にすること。胸ではなくお腹が膨らむように意識します。この方法は、調剤の合間のわずかな時間でも実践できます。

忙しくて深呼吸する時間もないんですけど…

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

1分あれば十分です。トイレに行くふりでも、薬品棚を見るふりでも構いません。完璧を目指さず、『やらないより1回でもやる』を目標にしてみてください。

③ 認知的再評価(リアプレイザル)——状況の「意味」を変える

認知的再評価とは、状況の解釈を変えることで感情的反応を調整する方法です。怒りとの負の相関が最新のメタアナリシスで確認されています(PMID: 39920186)。

例:患者さんから「この薬、効かないじゃないか!」と怒鳴られた場合

自動的な思考再評価後の思考
「なんで私に怒鳴るの?」「この人は症状がつらくて不安なのかも」
「薬のせいじゃないのに」「効果が出ない焦りを誰かに訴えたかったのかも」
「自分が悪いわけじゃない」「この人の『助けて』のサインかもしれない」

どうですか? これは「相手を許す」こととは違います。自分の感情を守るための「戦略的な解釈変更」です。

ただし、認知的再評価には限界があります。急性ストレス下では認知的再評価の効果が低下するという研究報告があります(Frontiers in Psychology, 2017)。つまり、すでにパニック状態のときは、まず深呼吸など生理的クールダウンを優先し、落ち着いてから再評価を行うのが効果的です。

④ アサーティブ・コミュニケーション——怒りを「伝える」技術

アンガーマネジメントは「怒りを消す」ことではありません。必要なときに適切に表現する力も含まれます。

DESC法の活用

  • Describe(事実を描写):「処方箋を確認するのに5分お待ちいただきました」
  • Express(感情を表現):「お急ぎのところ申し訳なく思っています」
  • Specify(要望を具体的に):「お薬の説明だけでも先にさせていただけますか」
  • Consequence(結果を伝える):「そうすれば、お待ちいただく間に服用方法を確認いただけます」

私ならまず、「事実と感情を分ける」ことから始めます。「あなたのせいで」ではなく「〇〇という状況があって」という表現を心がけるだけでも、かなり違います。

⑤ 組織的アプローチ——「自分だけで抱えない」仕組みをつくる

ここまでは個人でできることをお伝えしましたが、組織としての取り組みも見逃せません。

職場で検討できること

  • クレーム対応のローテーション制(特定の人に負担が集中しないようにする)
  • デブリーフィング(困難事例後の振り返りミーティング)の導入
  • 「タイムアウト」の文化化(限界を感じたら交代を申し出てOKという雰囲気)

薬剤師の燃え尽きに関する研究では、職場の「所属感」がバーンアウト予防に重要であることが示されています(PMID: 39920186)。一人で抱え込まず、チームとして対応する仕組みが、長期的にはもっとも効果的です。

うちの職場、そういう雰囲気じゃないんですよね…

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

すぐに組織を変えるのは難しいですよね。でも、同僚と『今日こういうことがあって』と話すだけでも効果があります。まずは一対一の関係から始めてみてください。


怒りを「適切に使う」という視点

最後に、少し違う角度からお話しさせてください。

怒りは「問題がある」というシグナルでもあります。患者さんの安全を脅かす処方に気づいたとき、不当な労働環境を強いられたとき——そうした場面で感じる怒りは、むしろ「正常な反応」です。

大切なのは、その怒りを「破壊的な形」ではなく「建設的な形」で表現すること。

疑義照会をしっかり行う、職場環境の改善を提案する、必要なら転職を検討する——こうした行動につなげられれば、怒りは「変化のエネルギー」になります。

じゃあ、怒りって完全に消さなくてもいいの?

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

そうです。怒りを感じないロボットになる必要はありません。ただ、怒りに『支配される』のではなく、怒りを『使う』立場でいたいですね。


【まとめ】怒りと上手に付き合うための3つのポイント

① 怒りは「消す」より「調整する」

抑制や我慢はむしろ逆効果。認知的再評価やアクセプタンスが科学的に支持されています。

② まずは「身体から」クールダウン

6秒待つ、深呼吸をする。覚醒を下げる活動が、怒りの軽減に効果的です(効果量g = -0.63)。

③ 一人で抱え込まない

職場の仲間と話す、必要なら専門家に相談する。組織的なサポートがあれば、長期的な燃え尽きを予防できます。


確認先(一次情報)

アンガーマネジメントについてより深く学びたい方は、以下の資料が参考になります。

  • SAMHSA(米国薬物乱用・精神衛生サービス局): Anger Management for Substance Use Disorder and Mental Health Clients (2019)
  • 厚生労働省: こころの健康対策

もし「自分一人では対処しきれない」と感じたら、産業医やカウンセラーに相談することも選択肢の一つです。専門家を頼ることは、弱さではなく「自分を守るための判断」です。


参考文献(主要なPMID付き)

  1. O’Dwyer C, et al. A systematic review and pooled prevalence of burnout in pharmacists. Int J Clin Pharm. 2022. PMID: 36408701
  2. Saini A, et al. A meta-analysis of the psychological treatment of anger. J Am Acad Psychiatry Law. 2009. PMID: 20018996
  3. Beck R, Fernandez E. Cognitive-behavioral therapy in the treatment of anger: A meta-analysis. Cognitive Therapy and Research. 1998;22:63-74.
  4. Pellegrino A, et al. The associations and effects of mindfulness on anger and aggression: A meta-analytic review. Clinical Psychology Review. 2025. PMID: 40222147
  5. Anestis MD, et al. Anger and emotion regulation strategies: a meta-analysis. Scientific Reports. 2025. PMID: 39920186
  6. Zacchia C, et al. A meta-analytic review of anger management activities that increase or decrease arousal. Clinical Psychology Review. 2024.
  7. Hopper SI, et al. Effectiveness of diaphragmatic breathing for reducing physiological and psychological stress in adults. JBI Database System Rev Implement Rep. 2019. PMID: 31436595
  8. Zhan J, et al. Regulating Anger under Stress via Cognitive Reappraisal and Sadness. Front Psychol. 2017.
  9. Pachi A, et al. Family support, anger and aggression in health workers during the first wave of the pandemic. AIMS Public Health. 2023. PMID: 37842267
  10. Flynn EA, et al. Pharmacists’ assessment of dispensing errors: risk factors, practice sites, professional functions, and satisfaction. Pharm Pract (Granada). 2001. PMID: 11349750
  11. Toussaint L, et al. Effectiveness of Progressive Muscle Relaxation, Deep Breathing, and Guided Imagery in Promoting Psychological and Physiological States of Relaxation. Evid Based Complement Alternat Med. 2021. PMID: 34306146
  12. Zaccaro A, et al. How Breath-Control Can Change Your Life: A Systematic Review on Psycho-Physiological Correlates of Slow Breathing. Front Hum Neurosci. 2018. PMID: 30245619
関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。

\薬歴、半分の時間で終わらせませんか? /
「薬歴、溜まってる…」を終わりにする
AI薬歴ディープインパクト
無料で試してみる