「転職エージェントって、結局は紹介料目当てでしょ?」
そう感じたこと、ありませんか。
きっかけは、遠山薬局・遠山社長のYouTube動画でした。テレビ出演も多い現役経営者が語る「薬剤師転職の闇」。プレミアムプランの存在、紹介料のカラクリ、情報源の裏側──。見終わったとき、正直「やっぱりそうだよね」という気持ちと、「じゃあどうすればいいんだ」という気持ちが同時に湧きました。
私自身、このブログを通じて転職サービスを紹介しており、登録があれば報酬が発生する立場です。だからこそ、煽るつもりはありません。ただ「使うな」とも言いません。
この記事では、遠山社長が指摘した「闇」の中身を整理しつつ、それでもエージェントを使う意味があるのか、使うならどう付き合えばいいのかを、学術的な根拠も交えながら考えていきます。
目次
転職エージェントの「闇」──まず知っておくべきお金の流れ

遠山社長の動画で詳しく語られていた内容を、まず整理しておきます。
紹介料の実態
薬剤師が人材紹介会社経由で転職する場合、薬局側は紹介会社に手数料を支払います。
- 基本手数料:推定年収の35%+消費税
- 例:年収600万円の場合、約231万円が紹介料
この金額、どう感じますか。薬局側から見れば、230万円かけて採用しても、すぐ辞められたりミスマッチだったりすれば、数ヶ月分の店舗利益が吹き飛ぶレベルです。
紹介料が35%って、薬剤師だけ特別に高いんですか?

オカメインコ

ポッポ先生
いえ、人材紹介業界全体で30〜35%が相場です。薬剤師に限った話ではありません。ただ、薬剤師は年収が高めなので、金額としては大きくなりやすいですね。
「プレミアムコース」の存在
ここ、知らない方も多いのではないでしょうか。
遠山社長によると、エージェントには「一般コース」と「プレミアムコース」のようなランク付けが存在するそうです。
| コース | 紹介料の目安 | 優先度 |
|---|---|---|
| 一般コース | 年収の35%程度 | 通常の紹介順 |
| プレミアムコース | 年収の50%など | 優先的に良い人材を紹介 |
つまり、追加料金を払った薬局には、経験豊富な30代薬剤師などが優先的に紹介される。一般コースの薬局に回ってくるのは、未経験者や他で決まらなかった人材が多くなる傾向がある、と。
「A薬局とB薬局、どちらがいいですか?」と提案されても、最初から紹介会社の利益が高い方へ誘導されている可能性がある──これが遠山社長の指摘です。
私ならまず「なぜこの求人を勧めてくるのか」の理由を聞きます。説明が曖昧だったり、やたらと特定の求人を推してきたりするなら、そのエージェントとの距離は少し置いたほうが安全です。
「直接応募」は本当に正解か──現実的なリスクを考える

遠山社長は「直接応募」を強く推奨しています。
直接応募のメリット
- 年収アップ:紹介手数料(200〜300万)が浮くため、その分を給与に還元できる
- 評価アップ:「自分で調べて行動できる」「コスト意識がある」と評価される
- ミスマッチ防止:自分の目で見て、直接話を聞くことでギャップが減る
これは経営者の視点からすれば、まったくその通りだと思います。
ただ、現場だとここで詰まりがちなポイントがあります。
直接応募なら紹介料もかからないし、企業も喜ぶんじゃないですか?

オカメインコ

ポッポ先生
理屈ではそうです。ただ、直接応募にもリスクがあります。労働条件の交渉が自分任せになる点、相手が誠実な経営者かどうか見極めが難しい点ですね。
実際に聞いた話として、SNSで見つけた薬剤師募集に応募して話を進めていたら、途中で「やっぱりいらない」と言われたケースもあるそうです。間に第三者が入っていれば、こうしたトラブルは起きにくくなります。
直接応募が向いている人・向いていない人
| 向いている人 | 向いていない人 |
|---|---|
| 自分で情報収集・交渉ができる | 交渉が苦手 |
| 行きたい薬局が明確にある | 選択肢を広く見たい |
| 経営者と直接話すことに抵抗がない | 第三者のサポートがほしい |
| 労働条件を自分で判断できる | 相場観がわからない |
逆に言うと、「自分が何を求めているのかわからない」「選択肢を比較したい」「交渉は苦手」という方には、エージェントを使う意味があります。問題は、使い方です。
薬剤師のキャリアリテラシー問題──なぜ「判断軸」がないのか
ここで、もうひとつ重要な視点を共有させてください。
薬剤師自身のキャリアリテラシーが、他職種と比べて高くないという構造的な問題があります。
薬学教育の分野で発表された論文(富澤, 2020)では、薬剤師の就職・転職支援に携わってきた人材紹介会社の担当者がこう述べています。
「待遇の良さを求めて転職を繰り返したり、現在の保有スキルに満足してエンプロイアビリティ(雇用されうる能力)を高める努力をしていなかったりする薬剤師を多く見てきた」
これは批判ではなく、構造的な問題です。
薬剤師は求人倍率が高く(2019年時点で4.66倍)、売り手市場が続いてきました。キャリアを深く考えなくても、次の職場が見つかってしまう。その結果、「自分が何を求めているのか」「どんな環境が合うのか」を言語化する訓練を積む機会が少なくなりがちです。
別の論文(中山, 2017)でも、薬学部の学生に「どんな薬剤師になりたいの?」と訊ねると、「患者さんの立場に立って考えてあげられるような薬剤師になりたい」という基本スタンスは答えられても、「薬剤師としてどのようなキャリアを積んでいきたいのか?」と重ねて訊ねると、「わからない」という答えが全員から返ってきた、と報告されています。
ここ、心当たりありませんか。私自身、最初の転職のときは「なんとなく今より条件が良さそう」くらいの判断軸しか持っていませんでした。
キャリアカウンセリングの効果──メタ分析が示すエビデンス

「判断軸がない」という問題に対して、キャリアカウンセリングは有効なのでしょうか。
2025年に発表されたメタ分析(Milot-Lapointe & Arifoulline, 2025)では、個別キャリアカウンセリングの効果について、35の独立したサンプルを統合して分析しています。
メタ分析の結果
- キャリアアウトカム(意思決定能力、キャリア適応力など)への効果量:g = 0.82(大きい効果)
- メンタルヘルスアウトカムへの効果量:g = 0.68(中〜大の効果)
効果量 g = 0.8 以上は「大きな効果」と解釈されます。つまり、キャリアカウンセリングには統計的に有意な効果があることが示されています。
さらに、効果的な介入には5つの要素があることも明らかになりました。
- 意思決定プロセスに関する心理教育(キャリア選択の考え方を学ぶ)
- 認知再構成(自分の思い込みや制限を見直す)
- 書面による演習(職業分析、自己分析のワーク)
- 個別フィードバック(キャリア選択に対する具体的な助言)
- 障害の軽減(転職の不安や障壁への対処)
でも、転職エージェントってカウンセリングしてくれるんですか?求人を紹介するだけじゃ…

オカメインコ

ポッポ先生
そこがポイントです。求人紹介だけならAIでもできます。キャリアの棚卸しや意思決定のサポートができるかどうかが、エージェントの質の差になります。
国家資格キャリアコンサルタントがいるエージェントを選ぶ意味

では、どんなエージェントを選べばいいのか。
ひとつの基準として、国家資格のキャリアコンサルタントが在籍しているかどうかがあります。
キャリアコンサルタントは、2016年に国家資格化された専門職です。キャリア理論、カウンセリング技法、労働法規などを体系的に学んでいます。
先ほど紹介したメタ分析で効果が実証された「5つの介入要素」──意思決定プロセスの教育、認知再構成、書面による演習、個別フィードバック、障害の軽減──を提供できる可能性が高いのは、こうした専門的な訓練を受けた人です。
資格があるかどうかで、そんなに違いますか?

オカメインコ

ポッポ先生
絶対ではありませんが、「求人紹介」と「キャリア支援」は別物です。後者を求めるなら、訓練を受けた人のほうが頼りになります。
この基準で言えば、ファルマスタッフは国家資格キャリアコンサルタントとの面談ができることを明示しています。キャリア相談を重視したい方には選択肢になるでしょう。
\ 今の職場でこれから10年働き続けられますか?/
ただし、すべての相談がキャリアコンサルタント対応とは限りません。登録時に「キャリアコンサルタントとの面談は可能か」を確認しておくと安心です。
私なりの使い方──情報収集から始める
最後に、私自身の考え方をお伝えします。
転職エージェントは「転職を決めてから使うもの」ではありません。情報収集のツールとして使うという発想が大事です。
どういう求人があるのか、自分の経験やスキルはどのくらいの市場価値があるのか。これを把握するだけでも、今の職場で働き続ける判断材料になります。
「登録=すぐ転職」ではありません。情報を集めながら、判断軸を磨いていく。そのプロセス自体がキャリアを考えることにつながります。
情報収集を兼ねるなら、求人数が多い薬キャリも登録しておくと比較しやすくなります。複数のエージェントを使うことで、特定のエージェントの偏りにも気づきやすくなります。
結局、どこに登録すればいいんですか?

オカメインコ

ポッポ先生
まずは大手から。キャリア相談重視ならファルマスタッフ、求人の幅を見たいなら薬キャリ。両方登録して比較するのも一つの手です。
おすすめ薬剤師転職エージェント 2選
用途が違う2社を並べておくと、読者が「自分に合う方」を選びやすくなります。
ファルマスタッフ
待遇・年収を優先して、薬局/ドラッグストア中心に「選択肢を広く比較したい」人向け。 地域密着で“求人票にない情報”まで確認しながら提案してもらえます。
こんな人におすすめ
- 薬局・Dgsの求人を多数比較して、待遇アップの可能性を最大化したい
- 職場の雰囲気や方針など、求人票に出ない情報も踏まえて選びたい
強み(要点)
- 全国対応・地域密着で求人情報の解像度が高い
- 書類作成・面接調整・給与や休日の条件交渉まで手厚い
- 日本調剤グループの教育ノウハウを活かした支援の訴求あり
注意点(デメリット)
- 企業求人は相対的に弱め(企業志望が強い場合は併用が無難)
連絡頻度や希望条件は、最初に「ここまで」と決めて伝えるとストレスが減ります。
薬キャリAGENT
忙しくても効率よく進めたい/まず候補を短時間で作りたい人向け。 非公開求人や条件交渉、裏側情報の確認まで“スピード×実務代行”で進めやすいのが特徴です。
こんな人におすすめ
- 仕事が忙しく、転職活動の手間(調整・交渉)を減らして進めたい
- 求人票だけでは判断できない点(働きやすさ等)も確認してミスマッチを減らしたい
強み(公式が掲示している特徴)
- 最短即日で求人提案(最大10件/派遣は最大5件)
- 非公開求人多数+市場に出ていない募集の有無も個別確認
- 面接日程の調整や条件交渉を代行
- 求人票に出ない“裏側”情報まで調査
※上記は薬キャリAGENT公式の特徴説明に基づく表現です。
注意点(デメリット)
- 提案テンポが速いと感じる場合あり(連絡ペースは最初に指定がおすすめ)
- 企業一本志望なら、企業特化サービスの併用も検討
エージェントとの付き合い方を学ぶ
「使うな」でも「盲目的に信じろ」でもなく、仕組みを理解した上で、自分に有利に使う。それが結論です。
ただ、「仕組みを理解する」と言っても、具体的に何を知っておけばいいのかわからない方も多いと思います。
そこで、エージェントとの付き合い方について、別の記事で詳しくまとめています。
まとめ:転職エージェントは「知って使う」が正解

転職エージェントの「闇」として指摘されていること
- 紹介料は年収の35%(年収600万なら約231万円)
- プレミアムコースにより、紹介先が偏る可能性がある
一方で、エージェントを使う意味もある
- 直接応募にもリスクがある(交渉、トラブル、情報不足)
- 薬剤師のキャリアリテラシーが高くないという構造的問題
- キャリアカウンセリングには統計的に有意な効果がある(メタ分析で実証済み)
- 第三者の視点で選択肢を広げられる
エージェントを使うなら
- 小規模は避けて大手を選ぶ
- 国家資格キャリアコンサルタントがいるかを確認する
- 「なぜこの求人を勧めるのか」の理由を聞く
- 複数登録して比較する
- 転職を決める前に、情報収集として使う
参考文献
- 中山一郎「士師業を目指す学生へのキャリア支援を考える―薬剤師を事例として―」『流通科学大学論集―人間・社会・自然編―』第29巻第2号, 2017年
- 富澤崇「薬剤師のキャリアデザインとキャリア教育の必要性」『薬学教育』第4巻, 2020年
- Milot-Lapointe, F., & Arifoulline, N. (2025). A Meta-Analysis of the Effectiveness of Individual Career Counseling on Career and Mental Health Outcomes. Journal of Employment Counseling, 62(1), 49-57. https://doi.org/10.1002/joec.12239
- 遠山薬局・遠山社長「薬剤師転職の闇」YouTube動画 https://youtu.be/mpbnemGzrWc



-1.png)

