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OTC類似薬の保険給付見直し|2025年政調会長間合意で何が変わる?77成分リストと現場への影響を解説

はじめに

2025年12月19日、自民党と日本維新の会の政調会長間で「OTC類似薬の保険給付見直し」に関する合意が成立しました。

維新の会が連立参加の条件としてOTC類似薬の保険適用除外を掲げていたことが背景にあります。「医療費削減の切り札になるのでは」と期待された方も多いかもしれません。

ただ、正直なところ、私がこの合意内容を見たときの第一印象は「思ったより対象が限定的だな」というものでした。

今回は、この見直しの概要と77成分のリスト、そして現場で懸念される課題について整理してみます。


見直しの概要|何がどう変わるのか

見直しの趣旨(厚生労働省資料より)

今回の見直しには、大きく2つの趣旨があります。

  1. 公平性の確保
    OTC医薬品で対応できる症状にもかかわらず、他の被保険者の保険料負担で医療用医薬品の給付を受ける患者と、平日の診療時間中に受診困難などの理由でOTC医薬品で対応している患者との公平性を確保する
  2. 現役世代の保険料負担軽減

つまり、市販薬で済ませている人と、わざわざ病院でもらっている人との不公平を是正したいってことですか?

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

そういうことですね。ただ、「市販薬で済ませられる症状かどうか」の判断は簡単ではないので、ここは議論が分かれるところです。

見直し内容の詳細

項目内容
対象医薬品77成分(約1,100品目)
選定基準OTC医薬品と成分・投与経路が同一で、一日最大用量が異ならない医療用医薬品を機械的に選定
特別の料金対象薬剤の薬剤費の1/4
実施時期令和8年度中

従来の「定率負担(1〜3割)」に加えて、薬剤料の1/4が「特別の料金」として保険外負担となる仕組みです。

ここ、迷いやすいところですが、保険適用が完全になくなるわけではありません。あくまで「追加の自己負担が発生する」という形です。

配慮対象者(特別の料金を求めない方)

以下に該当する方は、特別の料金が免除される方向で検討されています。

  • こども
  • がん患者
  • 難病患者など配慮が必要な慢性疾患を抱えている方
  • 低所得者
  • 入院患者
  • 医師が対象医薬品の長期使用等が医療上必要と考える方

配慮対象かどうかって、誰が判断するんですか?

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

「医師が医療上必要と考える方」という項目があるので、現場の医師の判断に委ねられる部分が大きそうです。ただし、具体的な運用基準はまだ明確になっていません。

対象となる主な症状

今回の77成分は、以下のような症状に対応する薬剤です。

  • 鼻炎(内服・点鼻)
  • 胃痛・胸やけ
  • 便秘
  • 解熱・痛み止め
  • 風邪症状全般
  • 腰痛・肩こり(外用)
  • みずむし
  • 殺菌・消毒
  • 口内炎
  • おでき・ふきでもの
  • 皮膚のかゆみ・乾燥肌

特別料金の対象となる77成分一覧

以下が、厚生労働省が機械的に選定した77成分のリストです。

No有効成分用途
1アシクロビル抗ウイルス薬
2アシタザノラスト水和物抗アレルギー薬
3アスコルビン酸ビタミン剤
4アンモニア水鎮痛鎮痒収斂消炎剤
5イソコナゾール硝酸塩抗真菌薬
6イソプロパノール殺菌消毒剤
7イトプリド塩酸塩胃薬
8イブプロフェン非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
9イブプロフェンピコノール非ステロイド系消炎鎮痛剤
10インドメタシン鎮痛消炎剤
11エタノール殺菌消毒剤
12エピナスチン塩酸塩抗アレルギー薬
13L-カルボシステイン去痰薬
14塩酸テトラヒドロゾリン・プレドニゾロン点鼻用血管収縮剤
15オキシコナゾール硝酸塩抗真菌薬
16オキシテトラサイクリン塩酸塩・ヒドロコルチゾン抗生物質・副腎皮質ホルモン配合剤
17オキシドール殺菌消毒剤
18オリブ油皮膚保護剤
19希ヨードチンキ殺菌消毒剤
20クロトリマゾール抗真菌薬
21クロラムフェニコール抗生物質
22クロラムフェニコール・フラジオマイシン硫酸塩・プレドニゾロン抗生物質
23クロルヘキシジングルコン酸塩殺菌消毒剤
24ケトチフェンフマル酸塩抗アレルギー薬
25サリチルアミド・アセトアミノフェン・無水カフェイン・プロメタジンメチレンジサリチル酸塩総合感冒剤
26サリチル酸寄生性皮膚疾患剤
27サリチル酸メチル・dl-カンフル・トウガラシエキス鎮痛消炎剤
28サリチル酸メチル・l-メントール・dl-カンフル鎮痛消炎剤
29サリチル酸メチル・l-メントール・dl-カンフル・グリチルレチン酸鎮痛消炎剤
30酸化マグネシウム制酸・緩下剤
31酸化亜鉛収れん・消炎・保護剤
32次亜塩素酸ナトリウム殺菌消毒剤
33ジクロフェナクナトリウム非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
34消毒用エタノール殺菌消毒剤
35静脈血管叢エキス痔治療薬
36精製水溶解剤
37炭酸水素ナトリウム胃腸薬
38沈降炭酸カルシウム・コレカルシフェロール・炭酸マグネシウムカルシウム配合剤
39チンク油消炎薬
40デキサメタゾンステロイド
41テルビナフィン塩酸塩抗真菌薬
42トコフェロール酢酸エステルビタミン剤
43トリアムシノロンアセトニド口内炎・舌炎薬
44尿素皮膚軟化剤
45白色ワセリン軟膏基剤
46ハチミツ矯味剤
47ピコスルファートナトリウム水和物緩下剤
48ビサコジル便秘薬
49ビダラビン抗ウイルス薬
50ヒドロコルチゾン酪酸エステルステロイド
51フェキソフェナジン塩酸塩抗アレルギー薬
52フェキソフェナジン塩酸塩・塩酸プソイドエフェドリン抗アレルギー薬
53フェルビナク非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
54ブテナフィン塩酸塩抗真菌薬
55複方ヨード・グリセリン口腔用殺菌消毒剤
56ブドウ酒滋養強壮薬
57フラボキサート塩酸塩頻尿・残尿感薬
58フルチカゾンプロピオン酸エステルステロイド
59プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルステロイド
60ベタメタゾン吉草酸エステルステロイド
61ベタメタゾン吉草酸エステル・フラジオマイシン硫酸塩ステロイド
62ヘパリン類似物質血行促進・皮膚保湿剤
63ベポタスチンベシル酸塩抗アレルギー薬
64ペミロラストカリウム抗アレルギー薬
65ベルベリン塩化物水和物・ゲンノショウコエキス止瀉剤
66ベンザルコニウム塩化物殺菌消毒剤
67ホウ砂眼科用剤
68ホウ酸眼洗浄・消毒薬
69ポビドンヨード殺菌消毒剤
70ポリエンホスファチジルコリン高脂血症薬
71マルツエキス乳幼児用便秘薬
72ミコナゾール硝酸塩抗真菌薬
73無水エタノール殺菌消毒剤
74モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物アレルギー性鼻炎治療薬
75ヨウ素殺菌消毒剤
76ロキソプロフェンナトリウム水和物解熱消炎鎮痛剤
77ロラタジン抗アレルギー薬

今後の方針|令和9年度以降の拡大を目指す

政調会長間合意では、今後の方針として以下が示されています。

  • セルフメディケーションに関する国民の理解促進
  • OTC医薬品に関する医師・薬剤師の理解を深める取組
  • 医療用医薬品のスイッチOTC化に係る政府目標の達成に向けた取組
  • 令和9年度以降:対象範囲の拡大、特別の料金の引き上げを検討

逆に言うと、今回の77成分はあくまで「第一弾」であり、将来的には対象拡大が前提となっています。


現場で懸念される4つの課題

ここからは、私なりに懸念している点を整理してみます。

1. 医療費削減効果は限定的ではないか

日本総研の資料によると、OTC類似薬全体(処方箋医薬品以外の医療用医薬品)は約7,000品目、市場規模約1.0兆円とされています。

今回の77成分(約1,100品目)はその一部に過ぎません。しかも、殺菌消毒剤や軟膏基剤など、処方頻度や金額がそこまで大きくないものも多く含まれています。

「精製水」や「ブドウ酒」「ハチミツ」が対象に入っているのを見て、正直「これで医療費削減になるのか?」と思った方も多いのではないでしょうか。

期待していたほどのインパクトではない気がします…

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

機械的に選定した結果なので、処方実態を反映しているわけではないんですね。令和9年度以降の拡大がどこまで進むかが本当の勝負です。

2. 同効薬への処方シフトが起きる可能性

ここ、現場だと詰まりがちなところです。

対象薬剤が特別料金の対象になるなら、医師は患者の負担を考慮して対象外の同効薬に処方を変更する可能性があります。

想定される処方シフトの例

対象薬剤処方シフト先(対象外)
フェキソフェナジンビラノア、デザレックス、ルパフィン など
ロキソプロフェンセレコキシブ など
フェルビナクパップロコアテープ など
酸化マグネシウムアミティーザ、モビコール など

これらの処方シフト先は、対象薬剤よりも薬価が高いものが多いです。結果として、かえって薬剤費が増加する可能性もあり、医療費削減効果が相殺される恐れがあります。

それって本末転倒じゃないですか?

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

その通りです。日本総研も同様の懸念を指摘しています。フォーミュラリーの整備や処方のモニタリング体制がないと、この問題は解決しにくいでしょう。

3. 長期収載品の選定療養との計算複雑化

対象薬剤の中には、すでに長期収載品の選定療養の対象となっているものがあります。

長期収載品の選定療養は次回改定から1/4 → 1/2への引き上げが予定されています。

両方の制度が適用される場合、計算方法がどうなるのか、現時点では明確になっていません。

私ならまず厚生労働省からの通知を確認しますが、レセプトシステムの改修も含めて、現場の事務負担増加が懸念されます。

4. 調剤薬局経営への影響も考えておきたい

医療費削減を考えることは大切ですが、調剤薬局の立場からすると、経営への影響も無視できません。

受診控えによる処方箋枚数の減少

今回の対象には風邪症状や胃腸薬など、軽症で受診するケースの薬剤が含まれています。「特別料金を払うくらいなら市販薬で済ませよう」と考える患者が増えれば、そもそも医療機関にかからなくなる可能性があります。

結果として、処方箋枚数の減少→薬局の売上減少という流れは十分考えられます。

1日10円程度の差額でも油断は禁物

「対象となっている内服薬は薬価が安いものが多いし、1/4の差額なら1日あたり10円程度では?」と思うかもしれません。

ただ、2024年10月から始まった長期収載品の選定療養では、後発品使用割合(数量ベース)が全体で約90%まで上昇しました。患者の行動変容は、金額の大小だけでは測れない部分があります。

でも、OTCで買ってくれるなら薬局としては売上になるんじゃないですか?

オカメインコ

オカメインコ

ポッポ先生

ポッポ先生

そこが難しいところです。OTC販売の利益と保険調剤の利益には差がありますし、そもそも調剤薬局でOTCを買う人がどれだけいるか。ドラッグストアやAmazonで買う人のほうが多いのが現実ではないでしょうか。

調剤薬局としては、処方箋調剤の減少分をOTC販売でカバーできるとは限らない、という点は認識しておいたほうが安全です。


補足:OTC類似薬とは何か|日本総研の整理から

ここで、そもそも「OTC類似薬」とは何かを整理しておきます。

日本総研のViewpoint(2025年3月4日)によると、OTC類似薬の定義は以下の通りです。

医薬品の区分

区分処方箋品目数
処方箋医薬品必須約13,000品目
処方箋医薬品以外の医療用医薬品(OTC類似薬)原則必要(通知による)約7,000品目
OTC医薬品不要約13,000品目

誤解されやすいので先に言うと、OTC類似薬は「類似」という名称から劣るイメージを持たれがちですが、実際には以下の特性があります。

比較項目OTC類似薬OTC医薬品
価格安価(1/10程度のものも)高価(広告宣伝費等が上乗せ)
効能有効成分含有量が多い独自の承認基準で含有量が抑制
成分構成単味剤が多い配合剤が多い(不要な成分を含むことも)

保険適用の是非と処方箋の要否は別問題

日本総研は、以下の2つを分けて考えるべきと指摘しています。

保険適用の是非処方箋の要否
本来的な基準医療へのアクセスリスクの高低
所管法律健康保険法薬機法

現在は、医療用医薬品として承認されれば自動的に保険適用されるため、両者がセットになっています。しかし本来は、高価でアクセス困難な医薬品は保険適用し、そうでなければ外すという視点が必要ではないか、という議論です。


まとめ|今後の動向に注目

今回の政調会長間合意によるOTC類似薬の保険給付見直しは、セルフメディケーション推進と医療保険財政の持続可能性確保を目指す第一歩といえます。

ただし、以下の点から、実効性については慎重に見る必要があります。

  • 対象範囲が限定的(77成分、約1,100品目)
  • 同効薬への処方シフトによる医療費削減効果の相殺可能性
  • 長期収載品の選定療養との計算複雑化
  • 受診控えによる調剤薬局の処方箋枚数減少の可能性

令和9年度以降の対象拡大や特別料金の引き上げがどのように進むかが、今後の注目点です。


確認すべき一次情報

  • 厚生労働省「第209回社会保障審議会医療保険部会 資料」
  • 日本総研 Viewpoint「『OTC類似薬』議論のポイント―薬機法改正法案は修正を―」(2025年3月4日)
  • 自由民主党・日本維新の会 政調会長間合意(令和7年12月19日)

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