「EBMを学んだけど、実際に使えているかどうかわからない」「忙しくて、学習を続ける時間がない」。このシリーズを読んでくださっている方の中には、そう感じている方もいるかもしれません。
実は、EBMの最後のステップである「自己評価(Assess)」は、単に「うまくできたか」を振り返るだけではありません。次の学習に活かすためのフィードバックループとして機能させることが、本質です。
この記事では、自分のEBM実践を振り返るためのチェックリストと、忙しい日常の中で継続的に学びを深めるための具体的なアプローチを整理します。完璧を目指さなくてよい、ということも伝えたいポイントです。
目次
EBMの5ステップを振り返る ― どこまでできているか
このシリーズを通じて、EBMの5ステップを見てきました。まず、自分がどのステップまで実践できているかを振り返ってみましょう。
| ステップ | 内容 | 実践のイメージ |
|---|---|---|
| Step 1:Ask | 臨床疑問を定式化 | PICOで疑問を整理する |
| Step 2:Acquire | 最良のエビデンスを見つける | UpToDateやコクランレビューを検索する |
| Step 3:Appraise | エビデンスを批判的に吟味 | RCTの7つのチェックポイントを確認する |
| Step 4:Apply | 患者に適用する | NNTを患者に伝え、SDMを行う |
| Step 5:Assess | プロセスを評価する | この記事の内容 |
正直、5ステップ全部できてないです。Step 2の検索くらいしか…

オカメインコさん

ポッポ先生
それで十分です。Step 2だけでも、以前よりエビデンスに基づいた判断ができるようになっているはずです。全部を完璧にやる必要はありません。まずはできるところから始めて、徐々に広げていくことが大切ですね
どうですか? 最初から5ステップ全部を完璧にやろうとすると、確かにハードルが高すぎます。でも、1つでも2つでもステップを踏めていれば、それはEBMを実践していることになります。
自分のEBM実践を振り返る ― チェックリスト
では、具体的にどのような観点で振り返ればいいのでしょうか。以下のチェックリストを参考にしてみてください。
【Step 1:Ask】疑問の定式化
- 日常業務で「あれ?」と思った疑問を書き留めているか
- PICOの形に整理して、調べやすくなっているか
- 背景疑問と前景疑問を区別できているか
【Step 2:Acquire】情報の検索
- P5アプローチ(上から順に)で検索しているか
- UpToDateやコクランレビューを使っているか
- PubMedの基本的な使い方を知っているか
- プッシュ型(アラート機能)を活用しているか
【Step 3:Appraise】批判的吟味
- RCTの妥当性チェック(ランダム化・追跡率・ITT)を意識しているか
- メタアナリシスのフォレストプロットが読めるか
- ガイドラインの推奨の強さとエビデンスの質を確認しているか
【Step 4:Apply】患者への適用
- NNTやNNHを患者にわかりやすく伝えられているか
- 患者の価値観を聞き出す問いかけをしているか
- RCTの患者と目の前の患者の違いを意識しているか
- 「100%正しい」ではないことを伝えているか
チェックリストを見ると、全然できてない気がします…

オカメインコさん

ポッポ先生
このチェックリストは「全部チェックしなければならない」ものではありません。「ここはできている」「ここはもう少し」という自己認識のツールとして使ってください
忙しい日常の中で継続学習をする ― 現実的なアプローチ
「学び続けることはわかっているけど、時間がない」。これは本当に多くの薬剤師が抱える悩みです。ここでは、忙しい日常の中で実践可能な継続学習のアプローチをいくつか紹介します。
アプローチ1:「学びの場」を作る
継続的な学習には、定期的に情報を受け取る「仕組み」が必要です。
- 学会や研修会への参加:年1回でも構いません。カリキュラムを持った継続教育プログラムがあれば、より効果的です
- 院内・店内の勉強会:定期的な勉強会を設ける。担当者が論文を紹介するのではなく、批判的に吟味するジャーナルクラブ形式が望ましい
- オンライン学習:時間や場所を選ばず学べる。eラーニングやPodcast、YouTubeの解説動画など
アプローチ2:「プッシュ型」情報収集を活用する
能動的に情報を探すのではなく、自動的に情報が届く仕組みを作ります。
- PubMedのアラート機能(My NCBI):特定の検索条件を保存しておくと、新しい論文が出たときにメールで通知される
- Evidence Alerts(McMaster PLUS):臨床的に重要な論文を専門家が選別して配信
- 専門誌のメールアラート:主要ジャーナルのTable of Contentsを定期的に受け取る
でも、届いた論文を全部読む時間ないですよ…

オカメインコさん

ポッポ先生
全部読む必要はありません。タイトルとアブストラクトだけでも、新しい情報の流れを把握できます。興味深いものだけ深く読む、という使い方で十分ですね
アプローチ3:「日常業務に組み込む」
最も現実的なアプローチは、日常業務の中で自然に学ぶことです。
- 処方監査で疑問が浮かんだら、すぐ調べる:PICOで整理して、UpToDateで検索。5分でも構いません
- 患者からの質問に答えるとき、添付文書だけでなくエビデンスも確認する:「ガイドラインではこうなっています」と伝える機会を増やす
- 疑義照会の根拠を、エビデンスベースで整理する:「添付文書に書いてあるから」ではなく「○○のRCTでこの効果が確認されています」と伝える練習
私ならまず、「日常業務で疑問が浮かんだら、すぐ調べる」習慣をつけるところから始めます。これが最も自然で、継続しやすい学習方法です。
完璧を目指さなくてよい ― 小さな一歩から始める
EBMの学習で陥りやすい罠は、「全部を完璧にやらなければ意味がない」と思い込むことです。実際には、小さな一歩でも価値があります。
でも、中途半端にやっても意味ないんじゃないですか?

オカメインコさん

ポッポ先生
そうではありません。「添付文書だけ見ていた」人が「ガイドラインも確認する」ようになれば、それは大きな進歩です。完璧を目指して何も始めないより、不完全でも始めるほうがずっと良いですね
「完璧でないから意味がない」という考え方は、実はEBMの本質と矛盾しています。EBMは「最良のエビデンス」を使うものであって、「完璧なエビデンス」が必要なわけではないのです。同じように、自分の実践も完璧である必要はありません。
まとめ ― EBMは旅の途中
EBMの5ステップを振り返り、自分の実践を評価し、次の学習に活かす。これがStep 5:Assessの本質です。
- 5ステップのどこまで実践できているかを振り返る
- チェックリストは「全部できなければならない」ものではなく、自己認識のツール
- 継続学習には「学びの場」「プッシュ型情報収集」「日常業務への組み込み」のアプローチがある
- 完璧を目指さなくてよい。小さな一歩から始める
- 「できていない」と落ち込むより、「以前よりできている」ことを認める
EBMは「到達点」ではなく「旅」です。完璧を目指すのではなく、今日より明日、少しでも良い判断ができるようになることを目指しましょう。
次の一歩として、自分がよく使うガイドライン1つを選び、その推奨の根拠を確認してみてください。それだけで、あなたのEBM実践は一歩前進します。
確認先(一次情報):日本薬剤師会の研修プログラム、各種eラーニングサイト、PubMedのMy NCBI


