「システマティックレビューとメタアナリシスの違いって何?」「フォレストプロットの見方がわからない」。エビデンスを統合した研究を読むとき、こうした疑問にぶつかることはありませんか。
この記事では、エビデンス統合と治療効果に関する重要な用語を、薬剤師が実務で使える形で整理します。数式は不要です。概念を正しく理解することが目的です。
目次
エビデンス統合の基本用語
システマティックレビュー(Systematic Review)
特定の臨床疑問に対して、あらかじめ定めた方法で文献を網羅的に検索・選択・評価し、結果をまとめたもの。メタアナリシスを含むこともあれば含まないこともある。
システマティックレビューとメタアナリシス、どっちが上なんですか?

オカメインコさん

ポッポ先生
上下関係ではなく、メタアナリシスはシステマティックレビューの一部(統計的統合の部分)です。システマティックレビューには必ずメタアナリシスが含まれるわけではありませんね
メタアナリシス(Meta-Analysis)
複数の研究結果を統計的に統合する手法。サンプルサイズを実質的に大きくすることで、精度を上げることが目的。ただし、精度が上がっても妥当性は上がらない(Garbage in, garbage out)。
フォレストプロット(Forest Plot)
メタアナリシスの結果を視覚的に示すグラフ。
- 各行の四角(■):個々の研究の点推定値
- 四角の大きさ:その研究の「重み」(サンプルサイズに基づく)
- 横線(━):95%信頼区間
- 縦の基準線(│):効果なし(RRやORなら1.0)
- 最下部のひし形(◆):統合結果
I²統計量
研究間の異質性(ばらつき)を示す指標。0-100%の値をとる。
| I²の値 | 解釈 |
|---|---|
| 0-40% | 低い異質性 |
| 30-60% | 中程度の異質性 |
| 50-90% | 高い異質性 |
| 75-100% | 非常に高い異質性 |
出版バイアス(Publication Bias)
有意な結果が出た研究は出版されやすく、有意でなかった研究は「お蔵入り」になりやすい現象。メタアナリシスの結果を過大評価する原因になる。
ファンネルプロット(Funnel Plot)
出版バイアスを視覚的に確認するためのグラフ。サンプルサイズが小さい研究の結果が片側に偏っていれば、出版バイアスの疑いがある。
治療効果の指標
NNT(Number Needed to Treat:治療必要数)
何人に治療を行うと、1人が恩恵を受けるかを示す指標。
NNT = 1 ÷ ARR(絶対リスク差)
例:ARR = 5%(0.05)の場合、NNT = 1 ÷ 0.05 = 20。つまり、20人に治療すると1人が恩恵を受ける。
NNH(Number Needed to Harm:害必要数)
NNTと同じ考え方で、有害事象について計算したもの。
NNH = 1 ÷ ARI(絶対リスク増加)
NNTとNNHを比較することで、治療のベネフィットとリスクのバランスを判断できる。
相対リスク(RR:Relative Risk)
治療群のイベント発生率を対照群のイベント発生率で割ったもの。
RR = 治療群の発生率 ÷ 対照群の発生率
RR = 1.0なら差なし、1.0未満なら治療群が有利、1.0より大きければ対照群が有利。
絶対リスク差(ARR:Absolute Risk Reduction)
対照群と治療群のイベント発生率の差。
ARR = 対照群の発生率 – 治療群の発生率
同じ研究でも、RRR(相対リスク減少)よりARRの方が臨床的な意味を把握しやすい。
オッズ比(OR:Odds Ratio)
イベント発生のオッズ(確率)の比。ケースコントロール研究でよく使われる。
イベント発生率が低い場合(10%未満)、ORはRRに近い値になる。発生率が高い場合は、ORはRRより大きく見える傾向がある。
ハザード比(HR:Hazard Ratio)
生存時間解析(カプラン・マイヤー曲線など)で使われる指標。一定の時間経過ごとのリスクの比を示す。
HR = 1.0なら差なし、1.0未満なら治療群が有利(イベント発生リスクが低い)。
GRADEの用語
エビデンスの質(確実性)
GRADEシステムで、推奨を支えるエビデンスの信頼度を示す。高・中・低・非常に低の4段階。
推奨の強さ
- 強い推奨:ほとんどの患者に適用される
- 弱い推奨(条件付き推奨):患者の状況や価値観によって最善の選択が異なる
まとめ
エビデンス統合と治療効果の用語を正しく理解することで、システマティックレビューやメタアナリシスを読む力が向上します。
- システマティックレビューは方法論、メタアナリシスは統計的統合
- フォレストプロットは四角・線・ひし形の意味を理解する
- I²で異質性を確認する
- NNT・NNHで臨床的なインパクトを把握する
- GRADEのエビデンスの質と推奨の強さを区別する


