令和8年(2026年)調剤報酬改定で、長年使い慣れてきた「重複投薬・相互作用等防止加算」と「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」が廃止されます。代わりに新設されるのが「調剤時残薬調整加算」と「薬学的有害事象等防止加算」の2本立て。名称が変わっただけ、と思っていたら少し危ないです。
算定要件の文言が根本的に変わっており、電子処方箋の活用要件や手帳活用実績の条件が明文化されました。この記事では、中医協答申(2026年2月13日)および調剤報酬点数表(改正後)の原文を軸に、「どの業務でどちらを算定するか」という判断の境界線を整理します。算定漏れや返戻を防ぐための確認軸として使ってください。
本記事の根拠:中医協答申・個別改定項目(令和8年2月13日)および調剤報酬点数表(別紙1-3)。細部の運用については改定後の厚生労働省留意事項通知を必ず確認してください。
目次
廃止される旧加算──まず原文で確認しておく

旧「重複投薬・相互作用等防止加算」の規定
中医協答申の改定案には以下の記載があります。この規定がまるごと削除されます。
【調剤管理料】〔算定要件〕(削除)
注3 薬剤服用歴等に基づき、重複投薬、相互作用の防止等の目的で、処方医に対して照会を行い、処方に変更が行われた場合(別に厚生労働大臣が定める保険薬局において行われた場合を除く。)は、重複投薬・相互作用等防止加算として、次に掲げる点数をそれぞれ所定点数に加算する。
イ 残薬調整に係るもの以外の場合 40点
ロ 残薬調整に係るものの場合 20点
旧「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」の規定
同様に廃止される在宅版は、点数表で以下のように定められていました。外来・在宅ともにこれらはすべて削除されます。
15の6 在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料
1 処方箋に基づき処方医に処方内容を照会し、処方内容が変更された場合
イ 残薬調整に係るもの以外の場合 40点
ロ 残薬調整に係るものの場合 20点
2 患者へ処方箋を交付する前に処方医と処方内容を相談し、処方に係る提案が反映された処方箋を受け付けた場合
イ 残薬調整に係るもの以外の場合 40点
ロ 残薬調整に係るものの場合 20点
削除はわかりましたが…正直、今まで通りに動いてダメなんですか?同じことをしていれば算定できませんか?

オカメインコ

ポッポ先生
そう感じるのは当然です。ただ、新加算では対象患者の定義・算定要件・施設基準が具体的に明文化されています。旧加算の感覚で動くと、要件の一部を見落として返戻になるリスクがあります。ここで一度、原文をもとに確認しておくことが大切です。
(新設)調剤時残薬調整加算──原文で読む対象患者・算定要件・施設基準

対象患者(原文)
〔対象患者〕
調剤管理料を算定する患者であって、飲み残した医薬品や飲み忘れた医薬品(残薬)が確認された患者
「残薬が確認された」という条件が先に立ちます。残薬の有無を確認せずに算定を試みることはできません。
算定要件(原文)と点数
注3 患者又はその家族等から収集した情報等に基づいて残薬が確認された患者において、処方医の指示又は処方医に対する照会の結果に基づき、残薬の調整のために7日分以上相当の調剤日数の変更が行われた場合(別に厚生労働大臣が定める保険薬局において行われた場合を除く。)は、調剤時残薬調整加算として、次に掲げる点数をそれぞれ所定点数に加算する。ただし、保険薬剤師が患者の服薬状況等により必要性があると判断し、処方医の指示又は処方医に対する照会の結果に基づき、6日分以下相当の調剤日数の変更が行われた場合には、その理由を調剤報酬明細書に記載することで算定可能とする。
| 区分 | 内容 | 点数 |
|---|---|---|
| イ | 在宅患者へ処方箋が交付される前に処方内容を処方医に相談し、処方に係る提案が反映された処方箋を受け付けた場合 | 50点 |
| ロ | 在宅患者について調剤日数の変更が行われた場合(イの場合を除く。) | 50点 |
| ハ | 服薬管理指導料の注1に規定するかかりつけ薬剤師が調剤日数の変更が行われた場合(イ及びロの場合を除く。) | 50点 |
| ニ | イからハまで以外の場合 | 30点 |
施設基準(原文)
調剤時残薬調整加算に規定する保険薬局
適切な手帳の活用実績が相当程度あると認められない保険薬局であること。
施設基準が「相当程度あると認められない保険薬局であること」って…算定できない側の要件が書かれているんですよね?

オカメインコ

ポッポ先生
そうです。「手帳活用実績が不十分な薬局は算定不可」ということを裏側から表現しています。「相当程度」の具体的な数値基準は施設基準の告示・通知で示される予定なので、正式通知が出たら即確認が必要です。
在宅患者の定義(原文)
イ区分の「在宅患者」に含まれる患者の範囲も原文で確認しておきます。
調剤時残薬調整加算のイに規定する患者
- 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料を算定している患者
- 在宅患者緊急時等共同指導料を算定している患者
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準に規定する居宅療養管理指導費(薬局の薬剤師が行う場合に限り、注2に規定する場合を除く。)を算定している患者
- 指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準に規定する介護予防居宅療養管理指導費(薬局の薬剤師が行う場合に限り、注2に規定する場合を除く。)を算定している患者
(新設)薬学的有害事象等防止加算──原文で読む対象患者・算定要件・施設基準

対象患者(原文)
〔対象患者〕
調剤管理料を算定する患者であって、処方医に確認すべき点(残薬に係るものを除く。)がある処方箋が交付された患者
「残薬以外」の問題点がある患者です。逆に言うと、残薬が原因で処方変更になったケースはこちらではなく、調剤時残薬調整加算の対象になります。
算定要件(原文)と点数
注4 薬剤服用歴、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律に基づく電磁的記録をもって作成された処方箋の仕組みを用いた重複投薬の確認等に基づき、処方医に対する照会(残薬調整に係るものを除く。)の結果、処方に変更が行われた場合(別に厚生労働大臣が定める保険薬局において行われた場合を除く。)は、薬学的有害事象等防止加算として、次に掲げる点数をそれぞれ所定点数に加算する。
| 区分 | 内容 | 点数 |
|---|---|---|
| イ | 在宅患者へ処方箋を交付する前に処方内容を処方医に相談し、処方に係る提案が反映された処方箋を受け付けた場合 | 50点 |
| ロ | 在宅患者について処方に変更が行われた場合(イの場合を除く。) | 50点 |
| ハ | 服薬管理指導料の注1に規定するかかりつけ薬剤師による照会の結果、処方に変更が行われた場合(イ及びロの場合を除く。) | 50点 |
| ニ | イからハまで以外の場合 | 30点 |
施設基準(原文)
薬学的有害事象等防止加算に規定する保険薬局
適切な手帳の活用実績が相当程度あると認められない保険薬局であること。
調剤時残薬調整加算と同一の施設基準です。薬局単位で手帳活用実績の整備が求められています。
電磁的記録をもって作成された処方箋…つまり電子処方箋を使った重複確認が必要ということですよね。電子処方箋を導入していない薬局はどうなるんでしょう?

オカメインコ

ポッポ先生
原文の規定通りに読むと、この確認を行える体制が算定要件に含まれると解釈されます。電子処方箋を発行していない処方箋への対応も含めた詳細は、留意事項通知の確認が必要です。ただ、少なくとも「電子処方箋に対応していれば優先的に活用する体制」は整えておかないと安全とは言えないですね。
2加算の使い分け──判断フローを整理する

トリガーの違いがすべて
2加算を区別する軸はたった一つです。「なぜ処方変更になったか」。現場だとここで詰まりがちです。
| 状況 | 算定する加算 |
|---|---|
| 残薬確認 → 調剤日数の変更 | 調剤時残薬調整加算 |
| 残薬以外の問題(相互作用・重複・副作用等) → 処方変更 | 薬学的有害事象等防止加算 |
「処方変更が行われた場合」という条件
どちらの加算も、処方医が実際に処方を変更しなければ算定要件を満たしません。照会をかけても変更にならなかった場合は算定できない点は旧加算と変わりません。
ただし──6日以下変更のケースに注意
調剤時残薬調整加算の原文にはこう書かれています。この例外規定を知らないと、6日以下の変更ケースをすべて算定なしにしてしまいます。
保険薬剤師が患者の服薬状況等により必要性があると判断し、処方医の指示又は処方医に対する照会の結果に基づき、6日分以下相当の調剤日数の変更が行われた場合には、その理由を調剤報酬明細書に記載することで算定可能とする。
→ 私ならまず、6日以下変更が発生した際のレセプト記載フローを先に決めておきます。
現場への落とし込み──準備を今から始めるための確認リスト

心当たりありませんか──「点数はわかったけど、現場の誰が何を変えるかが決まっていない」という状態。準備は「今動けるもの」と「通知待ちのもの」を分けて考えると整理しやすいです。
✅ 今日から動けること
- 電子処方箋の導入状況と重複確認の運用手順の整備
- 手帳活用実績の集計体制(件数管理・データ抽出方法)の確認
- 残薬介入と薬学的問題介入の記録を分けて残す習慣づくり
- 6日以下変更時のレセプト記載ルールの院内決定
⏳ 正式通知を待つもの
- 手帳活用「相当程度」の具体的な数値基準
- かかりつけ薬剤師区分(ハ)の詳細要件
- 電子処方箋未発行処方箋への対応方法の解釈
- 施設基準の届出要件の変更有無
旧加算から新加算へのコード切り替えだけでは足りない
しないほうが安全です──旧加算の感覚のまま新加算のコードで算定すること。算定根拠を記録から組み立て直すことが最初のステップです。
運用通知が出てからじゃないと全部は決められないですよね。改定施行日まで時間もないし…。

オカメインコ

ポッポ先生
通知待ちの部分は待つしかないです。ただ、電子処方箋の体制整備や手帳実績の集計は今日から動けます。通知が出たときに「確認→即反映」できる体制を作っておくことが、施行日を乗り越えるための現実的な準備ですね。
まとめ:再結論と次の一歩

2026年調剤報酬改定で旧加算が廃止され、「調剤時残薬調整加算」と「薬学的有害事象等防止加算」に再編されます。原文に基づいた要点を整理します。
調剤時残薬調整加算
- 対象:調剤管理料を算定する患者で残薬が確認された患者
- 要件:処方医の指示または照会の結果に基づき、残薬調整のために7日分以上の調剤日数変更(6日以下はレセプト記載で可)
- 施設基準:手帳活用実績が相当程度あること
- 点数:在宅・かかりつけ薬剤師関与 50点 / それ以外 30点
薬学的有害事象等防止加算
- 対象:調剤管理料を算定する患者で残薬以外の問題がある処方箋が交付された患者
- 要件:薬剤服用歴および電磁的記録(電子処方箋)を用いた重複投薬確認等に基づく照会の結果、処方変更
- 施設基準:手帳活用実績が相当程度あること
- 点数:在宅・かかりつけ薬剤師関与 50点 / それ以外 30点
次の一歩:今日中に①自薬局の電子処方箋の導入状況と重複確認の運用手順、②手帳活用実績の集計方法を確認してください。この2点は運用通知を待たずに動けます。
本記事は2026年2月13日の中医協答申および調剤報酬点数表に基づいています。点数・要件の引用部分は原文を尊重していますが、正式な算定については厚生労働省通知・地方厚生局への確認を必ず行ってください。



