2025年12月26日、中央社会保険医療協議会(中医協)で支払い側と診療側がそれぞれの意見を提出しました。この内容、正直かなり温度差があります。
私が特に気になったのは、支払い側が「敷地内薬局の定義厳格化」「後発品加算の廃止」「かかりつけ薬剤師指導料の廃止」と、かなり踏み込んだ提案をしている点です。一方の診療側は「物価高・賃上げ対応」「調剤基本料の評価」を前面に押し出していますが、この温度差が最終的にどう着地するのか。
この記事では、両者の主張を整理しながら、2026年度改定で薬局経営と薬剤師業務にどんな影響が出そうか、判断の筋道を示していきます。
- 支払い側と診療側の主張の違いと温度差
- 調剤基本料の算定要件がどう厳格化される可能性があるか
- 後発品評価が「加算から減算へ」転換する影響
- 対人業務評価が「実績ベース」になる意味
- 2026年度改定に向けて今から準備すべきこと
目次
最大の焦点「調剤基本料」-門前・敷地内への締め付けは本当に強化されるのか

支払い側の主張:「医療モール含め特別な関係は全て特別調剤基本料A」
支払い側の意見を読むと、かなり強い言葉が並んでいます。
- 敷地内薬局の定義を厳格化し、医療モールを含めて特別な関係にある場合は「全て」特別調剤基本料Aの適用を原則に
- 医療モール薬局は処方箋枚数が上位3位までに限らず、モール内にある全ての医療機関を集中率の分子に含めるべき
- 処方箋600回超かつ集中率85%の小規模薬局で、特に損益率が高い大都市の薬局は調剤基本料1から除外し、薬局の集約化・大規模化につなげるべき
えっ、医療モール全体で集中率を見るって…それ、ほぼ全部アウトになりませんか?

オカメインコ

ポッポ先生
現状の抜け道を塞ぐ意図ですね。ただし、医療資源の少ない地域で自治体運営の医療機関敷地内に薬局を誘致する場合は、条件付きで通常の調剤基本料を例外的に認めるとも書いてあります。すべてが一律ではないですが、都市部の門前・敷地内は相当厳しくなる可能性があります。
診療側の主張:「医薬品供給拠点としての経営基盤強化」
一方、診療側(薬局側)は以下を主張しています。
- 物価高騰、光熱費等の高騰、毎年の薬価改定により薬局経営は極めて逼迫
- 調剤基本料とその加算による評価で、医薬品供給拠点としての経営基盤・機能を強化すべき
ここ、よく読むと「調剤基本料を引き上げて」とは書いていないんです。「評価を」と言っているだけ。
私が考える着地点の筋道
逆に言うと、支払い側の主張が通ると調剤基本料1の算定要件が厳格化される可能性が高いです。特に都市部の小規模門前薬局は、かなり厳しい立場に置かれるかもしれません。
処方箋枚数、集中率、立地条件(医療モールかどうか、敷地内かどうか)を冷静に見て、2026年4月にどの基本料になりそうか、シミュレーションしておいたほうが安全です。
いまの状況だと、変化は避けられないです。ここ、迷いやすいところです。
| 項目 | 支払い側の主張 | 診療側の主張 | 影響を受けやすい薬局 |
|---|---|---|---|
| 敷地内薬局 | 医療モール含め特別調剤基本料A適用 | 記載なし | 医療モール内薬局、敷地内薬局 |
| 集中率計算 | モール内全医療機関を分子に含める | 記載なし | 医療モール内薬局 |
| 小規模門前 | 600回超&集中率85%で基本料1除外(大都市) | 記載なし | 都市部の小規模門前薬局 |
| 調剤基本料2 | 門前薬局の損益率が高いため適正化 | 調剤基本料の評価を | 現在の基本料2算定薬局 |
後発品評価の大転換?「加算から減算へ」の衝撃

支払い側:「後発品加算は廃止し、減算の仕組みに」
これ、かなり大きな転換です。
支払い側の意見を引用すると、「後発医薬品調剤体制加算は廃止して減算の仕組みに移行し、後発医薬品の数量割合の維持は地域支援体制加算の基準として位置付けることも考えられる」
つまり、いままでは「後発品を頑張って使えば加算がもらえる」だったのが、「後発品を使わないと減算される」に変わる可能性があるということです。
減算って…逆にペナルティってことですよね?でも、後発品が供給不安定な状況で、これって現実的なんですか?

オカメインコ

ポッポ先生
おっしゃる通り、供給問題は継続中です。ただし、支払い側の論理は「後発品使用率は相当程度まで上昇したから、もう加算で誘導する必要はない」というもの。減算方式にすることで、財源を他に回す意図があります。ただし、地域支援体制加算の基準に組み込むとも言っているので、完全に評価がなくなるわけではない可能性もあります。
診療側:「後発品の普及割合の維持、更なる使用促進に向けた評価を」
診療側は「評価を」とは言っていますが、「加算を維持」とは書いていません。ここも、温度差を感じるところです。
判断の筋道:減算方式になった場合、何が変わるか
もし減算方式になった場合、後発品使用率が低い薬局は収入が減ることになります。ただし、ここで注意したいのは「使用率の基準がどこに設定されるか」です。
現在の後発品調剤体制加算は、最低ラインが75%です。もし減算方式になって、この基準が例えば「70%未満は減算」となった場合、現在75%ギリギリで運用している薬局は影響を受けないかもしれません。
逆に言うと、現在60%台で運用している薬局は、相当な対策が必要になります。
どうですか?いまの使用率、把握していますか?
対人業務の評価-本当に報われる改定になるのか

支払い側:「調剤管理料は一律点数に、調剤管理加算は廃止」
ここも、温度差があります。
支払い側は以下を主張しています:
- 調剤管理料:日数によらず一律点数に
- 調剤管理加算:ポリファーマシー対策に逆行する懸念があるため廃止
- 重複投薬・相互作用等防止加算:電子処方箋の普及で疑義照会の専門的判断や手間の減少を踏まえた適正化
- 特定薬剤管理指導加算3:長期収載品の選定療養の対象患者を引き続き算定対象とする場合は、後発品に変更した場合のみ算定できる実績評価に
調剤管理加算が廃止って…あれ、麻薬とか特定薬剤の管理で取れる加算ですよね?なんでポリファーマシー対策に逆行するんですか?

オカメインコ

ポッポ先生
調剤管理加算は、処方日数が短いほど点数が高い設計になっています。支払い側の論理は「これだと、分割調剤や短期処方を促進してしまい、長期処方によるポリファーマシー対策(受診回数の削減)に逆行する」というものです。ただし、現場の感覚とはズレがありますね。
診療側:「薬学的知見に基づく管理・指導の評価を」
診療側は以下を主張しています:
- 医薬品適正使用のための薬学的知見に基づく管理・指導への評価
- 重複投薬、ポリファーマシー、残薬解消などへの対応
- 服薬モニタリング、調剤後の継続的な服薬支援の充実
- 薬物療法における医療安全の確保に資する薬学的管理の充実
ここ、よく読むと「現在の点数を上げて」とは書いていないんです。「充実させて」「評価して」という言い方。
私が気になる境界条件:「実績評価」の導入
特定薬剤管理指導加算3のロについて、支払い側は「後発品に変更した場合のみ算定できる実績評価に」と言っています。
これ、実現すると「患者に後発品を提案して変更できた場合だけ加算が取れる」という仕組みになります。つまり、提案しても患者が拒否した場合は加算が取れない。
誤解されやすいので先に言うと、これは「後発品への変更を強制する」という意味ではありません。ただし、「変更実績がないと評価されない」という仕組みになる可能性があるということです。
ここ、現場だとかなり詰まりがちです。患者さんによっては、どう説明しても先発品を希望する方がいますから。
| 項目 | 支払い側の主張 | 診療側の主張 | 影響 |
|---|---|---|---|
| 調剤管理料 | 日数によらず一律点数 | 記載なし | 長期処方の調剤管理料が下がる可能性 |
| 調剤管理加算 | 廃止 | 記載なし | 麻薬・向精神薬等の管理加算がなくなる可能性 |
| 重複投薬等防止加算 | 電子処方箋普及で適正化 | 重複投薬等への対応評価 | 点数が下がる可能性 |
| 特定薬剤管理指導加算3のロ | 後発品変更実績での評価に | 記載なし | 変更実績がないと算定できなくなる可能性 |

ポッポ先生
対人業務の評価は「充実させる」と言いつつ、実際には「実績ベースでの評価」に移行する流れが見えます。つまり、「やった」だけではなく「成果が出た」ことを求められるようになる可能性が高いです。
在宅・かかりつけ機能への期待と現実のギャップ

支払い側:「かかりつけ薬剤師指導料は廃止」
ここ、かなり厳しい指摘です。
支払い側は「かかりつけ薬剤師指導料とかかりつけ薬剤師包括管理料は廃止し、かかりつけ薬剤師として実施した業務の評価にすべき」と主張しています。
つまり、「かかりつけ」という包括的な評価ではなく、「具体的に何をしたか」の実績ベースでの評価に変えるという提案です。
それって、いまのかかりつけ薬剤師指導料がなくなるってことですか?

オカメインコ

ポッポ先生
その可能性があります。ただし、「業務の評価」という言い方なので、完全になくなるわけではなく、例えば「24時間対応をした場合」「服薬フォローで介入した場合」といった個別の業務ごとに点数を付ける方式に変わる可能性があります。
診療側:「かかりつけ機能を活用した薬学管理指導の評価を」
診療側は「かかりつけ機能」の評価を求めていますが、具体的な提案は書かれていません。
在宅医療:「時間外対応」が要件化される?
支払い側は、訪問薬剤管理指導料の要件に時間外対応を位置付けるべきと主張しています。
また、在宅薬学総合体制加算2については、無菌製剤処理の実績が極めて乏しいため、施設基準から無菌調剤設備を除外すべきとも言っています。
これ、現実にどういう影響が出るかというと:
- 時間外対応が要件化されると、24時間対応できない薬局は在宅から撤退せざるを得なくなる可能性
- 無菌調剤設備が要件から外れると、設備投資した薬局の加算が取れなくなる可能性
ここ、迷いやすいところです。在宅に力を入れている薬局ほど、影響が大きくなるかもしれません。
賃上げ・物価対応は実現するのか-ベースアップ評価料の行方

両者の主張:珍しく方向性が一致している
賃上げ・物価対応については、支払い側も診療側も必要性を認めています。
支払い側:
- 医療機関に勤務する労働者の確実な賃上げに向けて、検証が可能な手当ての仕組みを創設するべき
- 物価高の影響が医療機関の機能等により異なることを踏まえ、費用構造の違いを反映した手当てとするべき
診療側(薬局):
- 物価高騰・賃上げ対応のための評価
- ホスピタルフィーである初診料・再診料での評価拡充(医科・歯科)
判断の筋道:「調剤」にどう反映されるか
ここで注意したいのは、医科・歯科では「ベースアップ評価料」が導入されていますが、調剤にはまだ導入されていないという点です。
2026年度改定で、調剤にもベースアップ評価料が導入されるのか。それとも、調剤基本料や調剤料に包括的に反映されるのか。
正直、これは現時点では不透明です。ただし、支払い側が「賃上げの検証が可能な仕組み」を求めている以上、何らかのかたちで賃上げ実績を報告する仕組みが導入される可能性は高いと考えています。
賃上げ実績を報告って…また事務作業が増えるんですか?

オカメインコ

ポッポ先生
その可能性はあります。医科のベースアップ評価料も、賃上げ実績の報告が要件になっていますから。ただし、その代わりに確実に賃上げ財源が手当てされるなら、事務負担とのバランスで判断することになります。
まとめ:2026年度改定で押さえるべき3つのポイント

ここまで見てきた内容を整理すると、2026年度改定で特に注目すべきは以下の3点です。
1. 調剤基本料の算定要件厳格化は避けられない
特に都市部の門前・敷地内薬局は、かなり厳しい状況になる可能性があります。いまのうちに、自分の薬局がどの基本料になりそうか、シミュレーションしておくことが安全です。
2. 後発品評価が「加算から減算へ」転換する可能性
これが実現すると、後発品使用率が低い薬局は減収になります。現在の使用率を確認し、70%を切っている場合は対策が必要です。
3. 対人業務は「実績ベース」での評価へ
「やった」だけではなく「成果が出た」ことが求められるようになります。服薬フォローの実施件数、疑義照会の内容、残薬調整の実績など、記録を残しておくことが重要になります。
最後に、これだけは確認しておいてください。2026年度改定の答申は、2026年2月頃に出る予定です。それまでに、自分の薬局の現状(調剤基本料の区分、後発品使用率、対人業務の実績)を把握しておくと、改定後の対応がスムーズになります。
- 厚生労働省 中央社会保険医療協議会(中医協)資料
- 日本薬剤師会 診療報酬改定関連情報
どうですか?2026年度改定、かなり大きな変化がありそうです。早めの準備が、薬局の生き残りを左右します。

