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【薬剤師のためのEBM講座】第3回_エビデンスの探し方

PICOで疑問を整理できたとして、次の壁は「どこで調べるか」です。PubMedで検索すればいい、とは聞くけれど、英語の論文が大量にヒットしてどれを読めばいいかわからない。そもそもPubMedの使い方がよくわからない。心当たりありませんか。

実は、論文を一から探して読むのは、エビデンス検索のなかでも「上級者向け」のアプローチです。忙しい薬剤師が最初に使うべきなのは、専門家があらかじめ評価・要約してくれた「事前評価済み」の情報源です。

この記事では、エビデンス検索の効率的な順序と、薬剤師が実際に使える情報源を紹介します。「全部やらなきゃ」と思わず、自分に合ったところから1つ取り入れてみてください。


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添付文書だけでは足りない理由 ― 情報源を見直す

薬剤師にとって最も身近な情報源は添付文書とインタビューフォーム(IF)です。これらは日常業務で欠かせません。ただ、添付文書やIFだけに頼ることには限界があります。

添付文書の特徴と限界

  • 承認時の情報が中心で、承認後に蓄積されたエビデンスが十分に反映されないことがある
  • 比較対照の情報が乏しい(「この薬とあの薬、どちらが良いか」には答えにくい)
  • 記載が規制文書としての形式に沿っているため、臨床判断に直結しにくい場合がある

インタビューフォームの特徴と限界

  • 添付文書より詳しいが、製薬企業が作成する文書であり、自社品の情報に限られる
  • 薬剤間の比較情報は基本的に含まれない

でも、添付文書とガイドラインで大体のことは解決できませんか? それ以上って本当に必要?

オカメインコ

オカメインコさん

ポッポ先生

ポッポ先生

日常業務の多くは確かにそれで対応できます。ただ、ガイドラインが扱っていない疑問や、推奨が古くなっている場合もある。“いつもの情報源で答えが出ないとき”の選択肢を持っておくことが大切ですね


P5アプローチ ― エビデンス検索の効率的な順序

エビデンスを探すとき、やみくもにPubMedで検索するのは効率が良くありません。「6Sピラミッド」という情報源の階層モデルがあり、それを実践的に整理したのがP5アプローチ(5段階のエビデンス検索戦略)です。

上から順に調べていくのが原則です。上位の情報源ほど、専門家が吟味・要約してくれているため、薬剤師の手間が少なくなります。

優先順位情報源の種類具体例特徴
1システム(臨床意思決定支援)UpToDate、DynaMed患者情報と連動した推奨
2要約(エビデンスの統合要約)BMJ Best Practice、各種教科書テーマごとに整理された概要
3推奨(診療ガイドライン)各学会ガイドラインエビデンスに基づく推奨
4統合(システマティックレビュー)コクランライブラリ複数の研究を統合した分析
5個別研究(原著論文)PubMed/MEDLINE個々の臨床研究

それってつまり、PubMedは最後の手段ってことですか?

オカメインコ

オカメインコさん

ポッポ先生

ポッポ先生

最後というより、”上位で答えが見つからなかったときの手段”ですね。UpToDateやコクランレビューで答えが見つかれば、個別論文まで遡る必要がないことも多いです

どうですか? この順序、意外に感じるかもしれません。「EBMといえばPubMedで論文検索」というイメージが強いですが、実はPubMedは最終手段に近い。ここを知っているだけで、検索の効率がかなり変わります


各情報源の使い方 ― 薬剤師が押さえるべきポイント

ここからは、主な情報源の特徴と使い方を整理します。全部を使いこなす必要はありません。まずは1つか2つ、自分に合ったものを選んでください。

UpToDate・DynaMed(臨床意思決定支援システム)

これらは「事前評価済みエビデンス」の代表格です。疾患や薬剤ごとにトピックがまとめられており、推奨とその根拠が記載されています。

  • UpToDate:最も広く使われている。エビデンスに基づいた推奨が、定期的に更新される。英語のみ
  • DynaMed:UpToDateと同様のサービス。エビデンスレベルの表示がわかりやすい。英語のみ

現場だとここで詰まりがちです。「英語だから無理」と感じる方も多い。ただ、UpToDateなどは構造化されているので、全文を読まなくても「Summary & Recommendations」のセクションだけ確認すれば要点がつかめます。

コクランライブラリ(システマティックレビュー)

コクラン共同計画が作成するシステマティックレビューのデータベースです。特定の臨床疑問について、複数の研究を系統的に集めて分析しています。

  • 質の高いシステマティックレビューが揃っている
  • 「Plain Language Summary(平易な要約)」が用意されており、日本語訳があるものも一部ある
  • 無料でアブストラクトと要約にアクセスできる(全文は有料の場合あり)

正直、難しくないですか? コクランレビューって分厚い論文みたいなイメージで…

オカメインコ

オカメインコさん

ポッポ先生

ポッポ先生

全文を読む必要はありません。まず“Plain Language Summary”を読む。そこに結論と確実性(エビデンスの質)がまとまっています。ここは押さえたいです

診療ガイドライン

各学会が作成するガイドラインは、日本語で読める大切な情報源です。

  • 日本の診療ガイドラインは「Minds(マインズ)」で検索できる
  • 推奨の強さとエビデンスの確実性が示されていることが多い
  • ただし、改訂頻度にはばらつきがあり、最新のエビデンスが反映されていないこともある

しないほうが安全です、ガイドラインの推奨を無条件に信頼するのは。ガイドラインにも質のばらつきがあります。しっかりとしたシステマティックレビューに基づいて推奨を策定しているものもあれば、専門家の合意をまとめただけのものもあります。「ガイドラインに書いてあるから」と思考停止するのではなく、推奨のそばに記載されているエビデンスの確実性や推奨の強さを確認する


PubMed検索の基本 ― 必要なときのための最低限のテクニック

上位の情報源で答えが見つからなかったとき、PubMed(MEDLINE)の出番です。すべてを使いこなす必要はありませんが、基本的な検索方法は知っておくと便利です。

基本の検索手順

  1. PICOのキーワードを英語にする(P と I が最優先)
  2. PubMedの検索窓にキーワードを入力する
  3. フィルター機能で絞り込む(研究デザイン、出版年、言語など)

知っておくと便利な機能

  • Clinical Queries:PubMedトップページからアクセスできる。治療・診断・予後などのカテゴリで、関連性の高い研究に絞って検索できる
  • MeSH用語:PubMedで使われる統制語彙。検索の精度を上げたいときに使う
  • フィルター機能:「Systematic Reviews」「Randomized Controlled Trial」などで研究デザインを絞れる

でも、英語のキーワードにするのが難しい…。どうやって英語にすればいいですか?

オカメインコ

オカメインコさん

ポッポ先生

ポッポ先生

薬剤名は一般名(INN)をそのまま使えます。疾患名は添付文書の英語版やMeSHブラウザで確認できますね。最初は”薬剤名+疾患名”の2語で十分です


「プッシュ型」のエビデンス活用 ― 自分から探さなくてもいい仕組み

ここまでは「自分で探しに行く(プル型)」の検索でした。でも、忙しい日常のなかで毎回能動的に検索するのは大変です。そこで活用したいのが「プッシュ型」の情報収集です。

プッシュ型の情報源とは:新しいエビデンスが出たときに、自動的に通知してくれる仕組みです。

  • PubMedのMy NCBI(アラート機能):特定の検索条件を保存しておくと、該当する新しい論文が出たときにメールで通知される。無料で利用可能
  • Evidence Alerts(McMaster PLUS):臨床的に重要な論文を専門家が選別し、メールで配信するサービス
  • 学会や専門誌のメールアラート:主要ジャーナルのTable of Contentsを定期的に受け取れる

いまの薬局業務を考えると、情報は日々膨大に増え続けています。すべてを追うのは不可能です。だからこそ、「興味のある領域だけ自動で届く仕組み」を作っておくのが効率的です。


情報を見つけたあとの「もう一歩」 ― うのみにしない姿勢

ここまで情報の探し方を解説してきましたが、最後にひとつ大切なことをお伝えしておきます。どんな情報源であっても、見つけた情報をそのまま受け入れるだけでは不十分です。

第1回、第2回で繰り返し触れてきた「批判的に見る」という姿勢は、情報検索の場面でも必要です。具体的に言うと、次のような問いかけを習慣にしてみてください。

  • この情報は、いつ時点のものか?(古いエビデンスに基づいていないか)
  • どんな研究デザインに基づいているか?(RCTか、観察研究か、専門家の意見か)
  • 自分の患者さんに当てはまるか?(対象集団が違いすぎないか=外的妥当性の確認)
  • 結果の見せ方に偏りがないか?(グラフの軸、効果の表現方法など)
  • この情報源は、何を省いている可能性があるか?(二次資料の要約過程での省略)

でも、そこまでやると時間がかかりすぎませんか? 毎回は無理ですよ…

オカメインコ

オカメインコさん

ポッポ先生

ポッポ先生

毎回やる必要はありません。ただ、“この情報で患者さんへの対応を変えよう”と思ったときには、一度立ち止まってみる。その一手間が、大きな間違いを防ぐことになります


まとめ ― まずは「事前評価済み」の情報源を1つ使ってみる

  • 添付文書・IFは基本だが、「比較」や「最新のアウトカム」の情報が不足することがある
  • エビデンス検索はP5アプローチで上から順に:システム→要約→推奨→統合→個別研究
  • 忙しい薬剤師は、UpToDateやコクランレビューなど「事前評価済み」の情報源から始めるのが効率的
  • 二次資料にも落とし穴がある。要約の過程で省かれた情報に注意
  • ガイドラインの質にもばらつきがある。推奨の強さとエビデンスの確実性を確認する
  • PubMedは「上位で答えが見つからなかったとき」に使う
  • プッシュ型(アラート機能)を併用すると、日常的な情報収集の負荷が下がる
  • どの情報源でも「うのみにしない」姿勢が大切

次の一歩として、まずは1つだけ試してみてください。施設でUpToDateやDynaMedが使えるなら、次に臨床疑問が浮かんだときにそこで調べてみる。使えない場合は、コクランライブラリの「Plain Language Summary」をのぞいてみる。

次回以降は、見つけたエビデンスの「読み方」——研究デザインの理解と批判的吟味について解説していきます。

確認先(一次情報):DiCenso A, Bayley L, Haynes RB. Accessing pre-appraised evidence: fine-tuning the 5S model into a 6S model. ACP J Club. 2009;151(3):JC3-2.

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